中国が共産党一党支配体制を敷いている理由は二つあります。トップダウンで政策を遂行しなければならない。これがひとつです。トップダウンで外国と対峙しなければならない。これがもうひとつです。それぞれの理由の理由を分析してみましょう。
(理由1) 膨大な貧困層が存在している + 情報化社会が進展している ⇒ 貧困状態の放置は国内政治を不安定にする ⇒ 建国をピッチアップしなければならない──、という図式があるからです。 (理由2) 中国人は自己主張が強い。にもかかわらず、民主的に事を決定する経験が乏しい。したがって、ボトムアップであると政策がまとまりにくい。
(理由1) 建国をピッチアップするためには巨額の直接投資を外国から誘導しなければならない。そのためには、分裂を抑止して巨大な統一市場を誇示しなければならない。 (理由2) 清朝時代に「近代兵器を持っていなかった ⇒ 列強の草刈場にされた」という苦い経験があるので、軍事力を増強しなければならないという強迫観念がある。
小泉首相の靖国参拝の背景にある(詳しくは ⇒『中国の反日感情が急速に高まっている』)ことがそうですが、別の観点から補足してみましょう。
体制と体制維持のための政策が下記の図式に示すように獅子身中の虫のような存在になってしまっているのです。 (官僚が許認可権を握っている + 伝統的な人治主義が色濃く残っている ⇒ 行政が不透明である ⇒ 官僚の腐敗が拡大している) + (経済成長なくして膨大な貧困層を養うことができない ⇒ 経済の持続的成長が必要である ⇒ 市場経済体制に移行した ⇒ インテリジェンスや行動力の差が国民間で顕著になった ⇒ 貧富の格差が拡大の一途を辿っている) ⇒ 大多数の貧困層の不満が溜まりに溜まり、一触即発の状態になっている。
中央政府は貧困層である農民の税金を免除した ⇒ 財源がなくなった地方政府は土地を財源にすることにした ⇒ 地方政府は農民からただ同然で土地を奪った ⇒ 農民の不満が一層募り、都市部に流民となって押し寄せてきた ⇒ 生活基盤が全くない貧困層が都市を徘徊するようになった。
前頁で述べた「国内経済のネットワーク化を急ピッチで進める + 消費意欲を高めるために社会保障制度を整備する ⇒ 内需が拡大する ⇒ 輸出が縮小する ⇒ 中国経済の対米依存度が減る ⇒ 中国の独自性が高まる ⇒ 中国経済圏としてのアジア共同市場形成に尽力する」の図式は円滑に実現できるでしょうか? 別途対策を講じない限り、「否」です。主な理由は二つあります。
裏日本は晴天の日でも空がどんよりしていることが多い。このことから明らかなように中国の空気汚染は限界に達しつつあります。そうしたところに、「内陸部の工業化が進む + 生産物の国内流通量が拡大する ⇒ 空気中に撒き散らされる廃棄物の量が拡大する」という図式が加わる。 ── このことを忘れてはならないです。
銀行の融資残高は国民総生産額の145%、しかも、40%程度が回収不能。そして、約90%が過剰生産 ── これが躍進を続けている中国経済の実態です。(中国経済のとてつもない供給過剰の根拠 ⇒March 20th 2004付け『The Economist』の『A survey of business in China』) にもかかわらず、中国元に信用不安が生じていません。どうしてなのでしょうか? 前頁で述べた中国経済の輸出入の占める異常な高さに謎を解く鍵があります。そうです。極端な言い方をすると、外国企業の工場機能を担っている。つまり、外国の本社機能は別の箇所で利益を出しているから工場機能は利益に拘らなくてもすむのです。仕事を発注してくれる企業が牽引してくれるので、加工貿易は楽チンなのです。 内需主導型経済に転換するということは中国の国内企業は自力で自分を牽引していかなくてはならないことを意味します。いいかえれば、利益に拘ることが必要不可欠になるのです。なぜなら、下記の図式が現在の中国経済を支えているからです。 (金融が自由化されていない ⇒ 元をドルに交換して資金を海外に逃避させることがしにくい) + (中国は世界一の成長ゾーンである + 先進国の脱工業化が遅れている ⇒ 外国の対中国直接投資が拡大している ⇒ 中国の国内に外貨がたっぷりとプールされている) ⇒ 中国に金融不安が発生しようがない。 内需主導型経済になった。しかしながら、中国の国内企業が適切な利益を上げることができない。こういう事態になったらどうなるのでしょうか。 外国の対中国直接投資は急激に冷え込み、金融が自由化されていなくても金融不安が発生することは必至です。そうなると、貯蓄性向の高い中国人の消費は一気に縮小して、内需主導型経済は白昼夢になってしまうことでしょう。
上記の理由1・2を読み、「日本の出番だ」と思われたことでしょう。その通りです。空気中に撒き散らされる廃棄物問題を解決できるクリーン・テクノロージーは世界ダントツ。しかも、円は基軸通貨としての力を今のところ持っているからです。 「クリーン・テクノロージーはお金を出すだけですか? 日本経済の基調は需要不足なのですよ」と思う必要はありません。中国経済のネットワーク化は日本経済にとって巨額の新規需要になり得るからです。
日本列島が中国から先制攻撃を受けたらどうなるのでしょうか? 「日米安保条約、それに米軍基地再編成の合意があるから大丈夫だ」となるのでしょうか? 事は簡単ではありません。アメリカは間違いなく中国に対して報復攻撃をするでしょう。しかしながら、戦争が泥沼化すると事情が変わってきます。 アメリカは世論を重視する国です。したがって、アメリカ国民に嫌戦気分が広がると、日本列島から米軍基地を撤収することが十分に考えられます。それでは日本は単独で抗戦すべきでしょうか? 断じて「否」です。(理由 ⇒『軍事力を質・量共に突出する形で拡大させているのはなぜなのか?』) したがって、他国が日本を決して軍事攻撃しないようにすることが日本の国防の完成像であることを忘れてはならないのです。だから、上記した日中のウィン−ウィンの経済関係確立が必要なのです。
日中融合は不可避であることを認識するための考察は個人の人生の送り方にも貴重な教訓を残してくれました。
終戦記念日の8月15日が目の前に迫りました。そこで、小泉首相の靖国参拝は許容されるか否か?…についての筆者の現段階での結論を述べさせて頂きます。
日中融合は不可避である。中国共産党の独裁体制の正当性が必要不可欠であるにもかかわらず揺らぎ出している。中国の不気味な動きには深遠な意味がありそうである。 大方の非難の対象となっている小泉首相のこれまでの靖国参拝には納得できる根拠がある。── この四つが考慮に入れるぺき事柄です。
日本のマスコミの主だった論調である「小泉首相が靖国参拝を止める ⇒ 外交関係を正常化する ⇒ 首脳会談を再開する」という図式を実現させる必要はありません。改めるべきは居丈だけな中国側の態度です。適切な方向で向学心に燃える子供に対して周囲が細かく干渉することはマイナスであるのと同じことなのです。したがって、日中問題は当分の間は政経分離の考え方で臨むのが上策でしょう。 日本の社会に根づいている、その場しのぎを続けているととんでもないことになってしまうことでしょう。日本人を未曾有の悲劇に陥れた太平洋戦争、失われた20年の原因となったバブルとその後始末…を思い出してください。(要参照 ⇒『歴史的大転換期に道を誤りがちな権威に代わる新権威を確立しよう!』) 斬新な着眼力のない専門家の意見、マスコミに迎合することは日本再生を不可能にすることでしょう。今こそ、日本人は目覚めなければならないのです。 最後に一言。「日米中の関係は正三角形でなければならない」ということを民主党の小沢代表が最近強調していますが、これは斬新な着眼が欠落した大きな誤りです。日米協調が最優先。その上での日中協調でなければ、日本の国益は大きく損なうことに結びつくのです。(理由 ⇒『日米経済融合を基軸にしなければならない』)
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