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2018.12.25

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対ロシア外交の苦い教訓「変化の連続の中に置くことが情報力強化の決め手である
複雑時代における専門家の陥穽

【斬新な着眼】

個性的才能を引き出す性格診断の勧め
― 人生・仕事・人間関係の問題解決者の思想紹介 ―


第4部 悲劇の人生の裏に臨機応変力のなさがある ─ 人生・仕事の問題解決者を登用しなかったことが悔やまれる ─


性格の無知が人をどん底に追い込む
 ― 映画『赤い砂漠』から考える ―

                                                             2018.9.25更新

物語のあらすじを予め理解しておくことをお勧めします

誤った診断に振り回されてしまった ── 磨き抜いた現実直視力に裏付けられた創造的問題解決力の入手が複雑時代を生き抜く要諦であることは、男女・尖閣諸島・企業経営・TPPの4問題解決に共通している(日本・日本人・企業の根本的問題解決策) ──

その場しのぎの習慣が招くマンネリズムが閉塞状態を招いていることに気づこう!
── 安易に専門家に飛びつくと、誤った診断に振り回されてしまいがちとなる ── 

 政治は混迷(アベノミクスには大きな限界があるのに、本質を突く経済政策不在など)を続け、国家財政は破綻寸前、るのみ。これは「国頼りの姿勢=自滅」となることを意味します。一方、わくわくするような新成長機会が待ち受ける時代になりました。これは「自立と創造=躍進」となることを意味します。

 しかしながら、「自立と創造=躍進」となるためには、大地震発生の先が読めないが故に陥る「パニックの心理」を予防する工夫が必要です。なぜなら、この心理状態になると、視野が極端に狭くなり、とんでもないことをしでかしかねないからです。先行きがどんどん不透明になっていくにもかかわらず、古き良き時代のような支えが得られにくくなったことを認識しなければなりません。

 ここに、世界の中における日本の行く末をしっかり認識して異変の先を読めるようにする工夫の必要性があります。

 異性間のボタンの掛け違い、尖閣諸島中国漁船衝突事件、企業の業績不振、TPP等の本質理解が上記したことの心からの納得や実現を可能にしてくれるはずです。



複雑な問題を量的効率で対処しようとしたことが悲劇を招いた(複雑時代における専門家の陥穽

(節子)
彼女は救われなかった。のみならず、絶望の淵に追いやられてしまった…というべきではないかしら? だってそうでしょう。コラドはジュリアナを惹きつけるだけ惹きつけておいて引越し問題で彼女を叩きのめしちゃうんだから。悪意はまったくないにしても、これは重大な犯罪よ。「生兵法は怪我の元」ではなく、「生兵法は命取り」だと思ってしまう。

(高哉) そりゃそうだ。コラドがイタリアから南米に引越しをすることになったことに対して、ジュリアナが「貴方は私の一部になってしまっている。だから、引越しをしないで!」と懇願をしても受け入れない。そして、引越しに対する考え方の根本的な違いが露呈してしまった。

 ジュリアナは「戻ってきた時に困るから灰皿も含めて何から何まで捨てられない」と言うのに対して、コラドは「生活に必要不可欠な物だけを持っていく。あとは捨てる」という言葉を返すんだから。彼は気持ちを大事にする女性のことがまったく分かっていない。これで万事休す。「信頼を深く裏切られた ⇒ 精神状態は一段と不安定になった」という図式がジュリアナに残されるのみになってしまった。

(節子) コラドは「私は孤独。だから、馴染んだ場所は宝物。だから引越しをしてもいつか戻りたい。だから、馴染んだ場所と関係したものは捨てられない。捨ててしまうと、馴染んだ場所との関係が失われてしまう」というジュリアナの深層心理がまったく分かっていなかったわねぇ。

(高哉) 貴女の言う「生兵法は命取り」はジュリアナを担当した医師にも当てはまる。「犬でもなんでもいいから愛しなさい。そうすれば、貴女の心の病は治る」なんてとんちんかんな診断をくだすんだから。

 この医師は「何かに夢中になる ⇒ 内向している心を開放する」という図式の実現を期待しているんだろうけど、彼女に必要なのは、「自分を理解し、共感してくれる人が現れる ⇒ 精神状態が安定する ⇒ 心安らかに世界中を観察できる ⇒ 自分の支えになる人物や事柄が追加できる ⇒ 自分に対する自信が強化される」という図式の実現なんだ。

(節子) ジュリアナを診断した医師は精神科医でしょう? 心の専門家がどうして貴方が今言ったようなことに気がつかないのかしら?

(高哉) この専門家の誤診問題は、ある企業のコンサルティングをベテランのコンサルタントと一緒にやった時の面白い経験の説明から入っていくのが分かりやすいかもしれない。

 問題意識が旺盛であるが故に必要な情報の方から飛び込んでくるようにするために早めに仮説を立てるが、予断は一切持たない。これが経営コンサルティングにおける僕の変わらない姿勢。こういう態度で僕が仕事をしようとしたら、このベテラン・コンサルタントは「コンサルタントは研究者じゃないだからさっさと仕事をしなければならない!」と苦情を言うんだ。

 むっとしたよ。・・・・・冷静になって考えると、予め用意されている解決策の中から適切な解決策を選定するために企業診断を行う伝統的な業界慣行がこのベテラン・コンサルタントの発言の背景にあることに気づいたんだ。

 でも、この業界慣行は本質的に間違っているんだ。もっとも「洞察力が大幅に不足している + 世の中を支配してきたロジックが通用する ⇒ 洞察力をあまり必要としない手法の選択が必要である」という図式がこの業界慣行に結びついた…とも言えるけどね。

 経営は変化対応業。そして、どんな変化が起きるかは予測できない。しかも、企業を構成する要素は多様。したがって、企業経営は総合芸術のようなもの。単一芸術でも総合科学でもないんだ。

 世の中が複雑になるにつれて他の分野でも同じことが当てはまるようになってきた。健常者と人格障害者の区別がつきにくくなっていることなんかが良い例じゃないかなぁ。専門家受難時代がやって来たと言ってもいい。

 大分前のことだけど、「精神分裂病」と診断され、薬漬けが原因して意識が朦朧となるだけではなく肉体も衰弱しきっていた若い女性を預かったことがある。

 事情をよく聞いて分かったことがあったんだ。ある時期から甘やかされて育てられたために、周りの人にすぐに依存する体質がしっかりとできあがっている。こういう体質の彼女が一人暮らしを始めた。そして、若い男性と同棲。これが発覚して二人は強引に引き離されしまったために、次の図式ができあがってしまった。

 この若い男性に依存しきってしまっていた彼女は狂乱状態になってしまった ⇒ 精神病院に連れこまれた ⇒ 精神科医は表面的な現象だけで精神分裂症と診断して薬漬けにしてしまった ⇒ 肉体的健康も損なわれることとなった ⇒ 精神状態がますます悪くなってしまった。

 僕はこの娘の母親の了解の下に、彼女の治療方針を一変させた。薬を止めさせた代わりに食事と運動療法と精神的ケアーを3ヶ月ほど行い続けたんだ。そしたら、彼女の健康が完全に回復したんだ。僕は「精神科医って一体なんだろうか?」「薬品業界育成型医療制度の犠牲になっているんではなかろうか?」等など色々考えさせられた結果、

 いわゆる専門家は「発生した問題の因果関係がそれほど複雑ではない」「解決すべき問題を抱えている人の数が多い」「発生した問題を解決する専門家の数が限られている」という三つの条件が揃っていることを前提に養成されたために、量的効率だけを念頭に置いた仕事をするようになったんだろう、という僕なりの見解に達したんだ。

(節子) なるほど。ジュリアナを診断した医師は心の専門家であるべきなのに彼女の深層心理を見抜くことができなかった理由が分かったわ。この映画が上映された1964年当時のイタリアの実態のことはさておいて専門家受難時代がやってきたことがよく分かった。貴方が前に言ったことも考慮に入れると、「複雑な問題を抱えたら偉大な素人を登用しよう!」をモットーにしなければならないわね。

(高哉) 複雑な問題が起きたら視野の広い人が直感に基づいて大筋の結論を出し、いわゆる専門家がこの結論を検証・肉付けする。こういうやり方を採用しない限り複雑時代における問題の創造的解決はあり得なくなったんだ。(対策の具体例 ⇒ 『有名だが視野狭小の医師達に振り回された少女の悲劇現象衆知を生かして複雑問題を解決するための秘策』)

(節子) 業界の伝統的なやり方の限界を打破するための努力をしてきたのは貴方だけではないわよね。「生物学モデル」に基づいて診断をする業界の限界を痛感してカウンセラーに転向した精神科医。貴方がさっき指摘した業界慣行の限界を打破するために同じようなことを試みた経営コンサルタントがそうだけど。でも、結果は芳しくなかった。

 貴方の知り合いの経営コンサルタントの「資格を取ってカウンセリングを始めました。でも、駄目でした。気づかせることはできても行動を引き出せないのです」という発言にあるようなことになってしまったのはどうしてなのかしら?

(高哉) 「諸悪の根源は夫婦仲が悪いことにある」という提言が適切な行動の引き出しに結びつけることができるのは例外中の例外の人物。このようなことを理解していないからじゃないかな。

 現象としての解決を要する問題は同じでも原因は各人各様、同一人物であっても状況によって異なる。このようなことを念頭に置いた問題解決策を提起するためには性格と立場、引き金となった事象を見抜かなければならない。そういうことなしで提起された問題解決策であると、クライアントは悩み解決のための適切な第一歩を踏み出すことはできないことを肝に銘じなければならない。(関連記事 ⇒ 『一人一人の“小宇宙”を理解した対策の必要性』)

(節子) 貴方が今言ったことを実現できるようになるためには個性的才能を引き出す性格診断が必要となるわけだけど、そのためには、次の図式に陥っていることを認識しなければならない。というのは陥っている状態の根本的原因の認識なくしては必要な行動を引き出せないから。

 日本的集団主義の影響を強く受けた人生を送る ⇒ その場しのぎの習慣が染みつく ⇒ マンネリズムに陥る ⇒ 性格に振り回されっ放しとなる ⇒ 問題の核心を見抜く力が培われない。(関連記事 ⇒ 『悩み事払拭策』)


 短絡的な判断・問題解決を回避する秘訣
 ▼
難問の創造的解決を確実にするための条件「潜在事象発掘のための執拗なQ&A」


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〔目次〕(赤い砂漠) 〔目次〕(人間関係創造)


 磨き抜いた現実直視力に裏付けられた創造的問題解決力の入手が複雑時代を生き抜く要諦であることは、男女・尖閣諸島・企業経営・TPPの4問題解決に共通している(日本・日本人・企業の根本的問題解決策)だけに興味のある方は『赤い砂漠』の考察結果を飛ばして以下のコンテンツを引き続きお読みください。

尖閣諸島などを巡っての日本の弱腰外交は日本特有の中枢機能不全に起因する(関連記事 ⇒ 『民間経済は中枢機能の麻痺が目立っている2010.12.6記

日本人特有の曖昧模糊では様変わりした環境「中国の超大国化」に適応できない

 尖閣諸島周辺で起きた中国漁船衝突事件で民主党政権のふらつきも問題の核心を見抜くことができなかったからなんでしょ? でも、深刻化する事態の収拾策はありそうよ。「大平・鄧小平会談時における『尖閣問題は孫たちに任せましょう!』」という鄧小平談話を持ち出せば事態は改善するのでは…」という専門家筋の意見がそうだけど。

中国は東シナ海・南シナ海の領海権死守を国是とすることとなった

(高哉) 貴女の言う通りにはなりにくい。というのは、当時の中国は国土面積と人口こそ膨大だったが、国際社会における地位は低かったので、「力がつくまでは穏忍自重する」が中国側の基本的考えだった。ところが、世界で一番早くリーマン・ショックを乗り越えて世界経済の牽引車になり、日本を抜いてGDPで世界第二位に躍進。中国は「穏忍自重の時期は終わった」となったからだ。

 
胡錦濤政権が標榜してきた対日融和政策が2009年からやや強硬路線に転じ、中国人民軍は「沿海を守る」から「世界に打って出る」と方針を大転回したことが何よりの証拠。こうした背景の下に中国は軍事費を拡大し続けてきたことを理解しなければならない。中国は世界的に大きな影響力を持つ超大国になったのだ。

 
この背景には根付いている中華思想が生み出した三点セットの国家目標「急速な経済成長 ⇒ 極めて迅速な軍備拡張 ⇒ 国際的影響力の増大」がある。そして、この国際的影響力増大策の延長線上に海洋大国化、尖閣諸島の奪取意図があることを忘れてはならない。(関連記事 ⇒ 『中国が暴走しやすくなった理由』)2013.9.21追記

(節子) だからと言って、中国が尖閣諸島を奪取することは『尖閣諸島問題』にあるように歴史的経緯を考えても国際的にも許されないんじゃないかしら? 埼玉県大宮市在住の日本人が地主として登記されているというじゃないの。領土問題決着の決め手である実効支配が成り立っているのよ。

(高哉) 実効支配が領土問題決着の決め手になることは間違いない。そうでなければ、先住民を征服して建国した、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等の存在が許されなくなる。だから、この考え方が日本の尖閣列島領有権に当てはまる。しかし、こういうことを一方的に主張することが簡単ではなくなりつつある。

(節子) 尖閣諸島には日本人は一人も住んでいない。石原都知事たちが灯台を昔々建設しただけ。周辺に出漁する日中の漁船数を比較すると見る影もないほど日本の漁船数は激減した。貴方はこういうことを危惧しているんでしょ?

(高哉) そうなんだ。尖閣諸島周辺に出漁する日本の漁船の実態は次の図式のようになってしまっているんだ。

 
後継者問題がある上に船を出漁させるための燃料費が大幅に上昇した ⇒ 漁業の意欲が低下した ⇒ 尖閣諸島周辺に出漁する漁船数が大幅に減った ⇒ この間隙を突くかのように国内の魚消費量急増に応えるために中国の漁船数が増えた ⇒ 安全不安のために日本の漁師はこの地域に出漁しなくなってきた。

(節子) だからと言って、「日本の尖閣諸島の実効支配権が風前の灯となった」ということにはならないんじゃないかしら。強引なことをしたら中国は国際社会の中で生きていけなくなる。中国社会の安定のためには経済成長が必要不可欠。この経済成長は外国資本の投資、資源の輸入、製品の輸出に大きく依存しているんだから。

(高哉) そうであることを願ってやまないけど、深刻な事態が発生したことを重く受け止めなければならない。僕がさっき言った中国の外交路線の変更と人民軍の方針変更がある上に、胡錦濤国家主席が密かに押していた人物ではなく、中国人民軍をバックに持つ反対勢力が押してきた習近平副主席が次期国家主席として事実上確定した。この人物が軍事委員会副主席に就任したことを指しているんだけど。

(節子) アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランド等が先住民を征服して建国した。にもかかわらず、それぞれの存在が国際的に認められているように領土問題は歴史的に決着がつけられる。したがって、超大国・中国が強引に尖閣諸島の実効支配権を確立してしまうと、元に戻りにくい。こういうことを言いたいことは分かるけど、なんとなくすっきりしない。

(高哉) 社会的なできごとや存在は相対的なものであって絶対的なものではない。したがって、次の図式が実現されることが多いのがこの世の中。このことを理解しなければならない。

 あることがうやむやのうちに既成事実になってしまう ⇒ この既成事実は次々と新たな既得権益を生む ⇒ 既成事実を覆そうとする動きに対して既得権益者が束になって猛反対する ⇒ この猛反対を支持する世論ができあがる。

 この図式実現を狙って中国が将来一段と強硬な姿勢を採る可能性は否定できない。尖閣諸島周辺には膨大なエネルギー資源が眠っているからね。「なんとかなるだろう」といったような漂うような生き方をする日本人特有の姿勢は後で「しまった」となり、わが国のじり貧路線に拍車をかけることに結びつく危険性がある。(教訓 ⇒ 『貴重な存在であるマイノリティーの圧殺が横行している』)


(節子) なるほど。中国漁船が日本の海上保安庁巡視船に衝突した事件は貴方が今言ったことを顕在化させることに結びついたのかもしれないわね。というのは、この事件は次の図式に結びついてしまったと考えられるんだから。

 日本側は乗組員全員を逮捕し、船長を長期間拘留することとなった ⇒ 「尖閣諸島の領有権は中国に帰属すべきものである」と教え込まれている中国人が猛烈に反発した ⇒ 中国政府はレアーアース禁輸などの対日制裁処置を採ることとなった ⇒ 日本は船長を急いで釈放した

 ⇒ 「日本には尖閣諸島問題を解決する信念がない。したがって、強硬姿勢を採れば日本は思い通りにすることができる」という印象を中国側は持つに至った。

 行き当たりばったりの対応をしたために国民の失望を買ってしまった日本政府はどうすべきだったのかしら? 事故現場を撮影したビデオの公開だって逸早く行えば、日本側の正当性を国際社会にアピールできた。しかし、日中関係がこじれてしまった後だと具合が悪いかもしれない。こういうことだってある。


(高哉) 日本が世界の中で大事にしなければならないことは何か? だからどのような国家目標を持つべきか? だから日中関係はどうあるべきか? ── こういう詰めをまず行う。その上で、

 日中戦略的互恵関係とは何か? どういうことが起きるとこの関係が崩れるか? どうしたら関係が崩れるのを防止できるか?── をテーマにして徹底的なシミュレーションを行い、その結果に基づいてノウハウの理論モデルを創る。そして、この理論モデルを海上保安庁を含む関係者全員の頭に叩き込むことをすべきだったのだと思う。

 この考え方は民主党政権が発足して間もない頃に提唱した政治主導の日本国運営のあり方の延長線上にあるんだ。

アメリカは日本のために尖閣諸島を守ることができにくいことを認識しよう!

(節子) 危機意識を適切に高め、適切なビジョンを構築して初めて強い信念を持つことがいかに重要であるかがよく分った。

 民主党の女王と言われている蓮舫さんの事業仕分け会議での言動は勇気に満ち、かつシャープでジャンヌ・ダルクみたいで格好がいい。でも、「日本を再生するためにはこういうことをやらなければならない。したがって、財政難の下ではこれは切らなければならない」というのがないので、迫力がイマイチ。同じことが中国漁船衝突事件を契機に浮上した尖閣諸島問題を巡る政府の態度にも当てはまるんだと思う。

 適切に開発したビジョンを持つことが生み出す信念欠如に起因する日本人特有の曖昧模糊とした態度では様変わりした環境「中国の超大国化」に適応しにくいことがよく分った。でも、万が一の場合は日米安保条約があるから大丈夫じゃないかしら? それに中国による尖閣諸島の奪取はアメリカの制海権、ひいては制空権が脅かされることとなり、グローバル経済化したアメリカの死活問題になるんだから。

 だからこそ、前原外務大臣との会談でクリントン国務長官が「アメリカは日本の尖閣諸島領有権を日米安保条約5条を適用して守る」と言った…と報道されたじゃないの。

(高哉) その報道についてコメントする前に事業仕分けのことで言っておかなければならないことがある。事業仕分けの発案者である加藤秀樹氏は「事業仕分けというものは、予算編成でも政策の議論でもなく、使ったお金をチェックする、いわば決算です」と言っているそうだ。

 とはいうものの日本再生役を担わなければならない政権党は発案者の考えを鵜呑みにするのではなく、貴女が言っているように国家ビジョンの下に行政仕分けを位置づけることが求められている。にもかかわらず、そうならないのは創造的統合戦略が不在だからだ。

 ところで、貴女が紹介した報道は間違いのようだ。というのは前原発言報道の直後に国務省は駐米大使を呼んで次のことをきちっと確認しているとのことだからだ。

 「尖閣問題にはアメリカは介入しない」「アメリカは日本の施政下にあるものは守る」「尖閣諸島は日本の施政下にある」

 このアメリカ国務省の説明は尖閣諸島は日本の施政下でなくなると守らないことを意味し、アメリカの新聞はこのことを報道したそうだ。こういう緻密な言い回しについていけない日本人が実に多いことを認識しなければならない。だから、日本を代表する大企業でも適切なコミュニケーション成立率は僅か15%程度になっているんだ。

 話を尖閣諸島問題に戻したい。領土が一度確定すれば奪われることがないのであればともかくもそうではなく、世界の歴史が物語るように「領土は不可侵ではない」ことを考えると、僕が危惧していることは否定できない。

(節子) でも、2010年10月29日の朝日新聞は「尖閣諸島は日米安保条約の第5条の範囲内に入る」とクリントン長官が明言したと報道している。これはその前に述べた彼女の本件に関する見解を再確認したことになるんじゃないかしら? それに前原外務大臣が同じことを話しいるのを2010年11月1日のテレビは報道しているの。

(高哉) 実態の全体像を伝えるのではなく受け入れたい部分だけを報道した可能性があるんじゃないかな。視聴者が望むような結論にするために事実を編集することだってよくあるからね。

(節子) 今回の場合は歪曲された真実が報道されたとは思えない。というのは翌日の朝日新聞は日米尖閣発言に反発して中国がハノイで予定されていた日中首脳会談を突如として拒否したことを伝えているのよ。

(高哉) 問題提起であれば安心だけど、朝日新聞の記事を金科玉条のように受け取ることは断じてあってはならない。そんなことをすると、一流誌に掲載された“事実”報道を盲信する日本人が圧倒的に多いけど、貴女もその一人になってしまうからだ。

(節子) この記事を文字通りに受け取るつもりはない。私は貴方の指導を長年受けてきた人間よ。そういう前提で聞くんだけど、中国側が日中首脳会談を突如として拒否したことをどのように解釈すればいいのかしら? 福山副官房長官の「中国側の真意を測りかねている・・・・・」の通りなのかしら?

(高哉) この突如としての拒否は中国国内向けのものであると理解する必要があるんじゃないかな。僕がさっき言った中国内の対立があるので、中国国内の反日デモが政権転覆に結びつくのを恐れての国内向けリップサービスであると考えるのが妥当だと思う。その証拠に翌々日の朝日新聞は一面に二つの記事を掲載している。

日中首相、一転10分間「懇談」 対話継続で一致
中国外相、尖閣問題「言動を慎むべきだ」と米長官を牽制

 中国政権の本音は「我々は尖閣諸島の領有権を今すぐに奪取する気持ちはまったくない。でも、対外的な強硬姿勢を採らないと政権維持が危うくなるんだ。このことを分って欲しい」ということだと思う。レアーアースの一次加工品生産量の世界シェアーは日本が50%。したがって、原産品供給シェアー97%を楯にとっての禁輸は中国自身の首を絞めることに結びつく。

 こういうことを中国側は十分に承知しているはずなのだ。但し、尖閣諸島領有権を虎視眈々と狙っていることは否定できない。それでなければ、国民に「尖閣諸島領有権は中国にあり」と教育したりしない。


(節子) さっき貴方が紹介したアメリカ国務省の尖閣諸島問題での見解に戻るんだけど、沖縄の米軍基地が中国をも睨んだものであることを考えると、アメリカが尖閣諸島を守らなくなる可能性があるという貴方の見解は信じられない。「中国は尖閣諸島の次に沖縄全体の奪取をも狙っている」という専門家筋の意見もあるのよ。

(高哉) アメリカが世界ダントツの超大国であり続ければ、アメリカは尖閣諸島を死守するだろうけど、そういう時代はいずれ終わる。アメリカはこのことを十分意識して海洋支配権を中国と分かち合う方向に転換することを検討するんじゃないかと思う。

 アメリカの尖閣諸島に対する考え方はさっき言った通りだけど、ブッシュ政権時代は「日本の領土には安保5条が適用される。尖閣諸島は日本の施政下にある。したがって、アメリカは尖閣諸島を守る義務がある」ということだった。このオバマ政権とブッシュ政権の微妙な違いが何よりの証拠じゃないかな。

(節子) アメリカは日本に対してもっと友好的じゃないかしら。旧・ソ連(現・ロシア)は北方領土を占領したままだったけど、アメリカは沖縄を返還してくれたじゃないの。

(高哉) アメリカが中国などの猛反対を押し切って日本に沖縄を返還した背景に次の図式があったと考えるのが素直だと思う。

 世界の半分をアメリカナイズする役割も担った東西冷戦構造時代が始まった ⇒ 貧困に喘ぐアジアの共産化を阻止する必要があった ⇒ アジアを西側に惹きつけるためのショーウインドー役を日本に担わせることになった ⇒ 日本の力をも活用しつつ軍事基地を作るために沖縄を返還した。

 アメリカは多様な価値観を包含した人工的にできあがった超大国。したがって、分裂しやすい。「世界全体をアメリカナイズする」ということで国家の統一が保たれているとも言える。したがって、この考え方に沿うことが保障されれば、アメリカは海洋支配権を中国と分かち合うために尖閣諸島領有権が中国に移行することを認める可能性は否定できない。

 アメリカは日本と違って実利を追うためにグランドデザインをする国であり、かつ「ダブルスタンダードだ」とよく非難されるように現実的な国策を採る国。このことを認識しないと、日本は懲りもせずに世界の潮流に乗り遅れてしまう。(関連記事 ⇒ 『今必要なのは偉大な素人です』)

(節子) 日本の報道機関は日本が世界の潮流に乗り遅れてしまうことがないようにできないのはどうしてなのかしら?

(高哉) 故・森嶋教授の嘆きは日本のジャーナリズムにも当てはまることが実に多い。このことに尽きるんじゃないかな。『あるべき世論形成も容易ではない』、『世間知らずが若者から夢と希望を奪っている』を順次読めば、僕の言っていることがよく分かるはずだ。世界の潮流に乗り遅れて悲劇に突入したくなければ、『今必要なのは偉大な素人です』にあることを肝に銘じなければならない。

 このように言うと、「個人には関係ない」と思われる人がいるかもしれないけど、『グローバル経済を生き抜く要諦』のことを考えると、この考えは間違っている。(関連記事 ⇒ 『「問題先送り=“ゆで蛙”の運命」に気がつかなければならない』)

実質的な社会主義国家であることが問題の核心を見抜き、構想・独創することを困難にしていることを認識しよう!

(節子)
新しい潮流ができあがりつつある中にあって、盲目的な世論ができあがりつつあるようよ。9月7日に起きた中国漁船が日本の海上保安庁巡視船に衝突した事件の取扱いを巡って日中間に生じた深刻な亀裂を踏まえて実施した読売新聞の「日本人の84%が中国を信用しない」という調査結果のことだけど。

 新聞報道を信じた国民のヒステリックな後押しで日本を悲惨な状態に追い込んでしまったアジア太平洋戦争を思い出してしまう。尖閣諸島問題でのクリントン国務長官の発言を日本の新聞は誤解しっぱなしであったかもしれないことを考えると、私だって「またか」となってしまうの。・・・・・ 『複雑な問題の核心を見抜くことができない実態』を分かりやすく補足説明してくださらないかしら?

(高哉) 歴史的転換期に日本が世界の新しい潮流に必ずと言っていいくらい乗り遅れてしまう根本的原因を図式化すると、次のようになるんじゃないかと思う。

各セクターの中枢機能不全が露呈しがちとなる根本的原因
 日本的集団主義の影響を強く受けている ⇒ (その場しのぎがDNA化する ⇒ 考え方がころりと変わりやすくなる ⇒ 裏切り予防のために密着型人間関係が志向される(関連記事 ⇒ 『信を相手の腹中に置くことができない (閉鎖性の原因3)』) ⇒ 「朱に染まれば赤くなる」という現象が生まれる ⇒ 異俗に対する免疫力がなくなる ⇒ 社会横断的な人的交流ができにくくなる ⇒ タコツボ型社会構造が堅牢化する) 

 + (様変わりした環境への臨機応変力が鍛えられない ⇒ 安定した枠組みにしがみつきがちとなる ⇒ 人間関係・実績重視至上主義となる) ⇒ 人間関係が「密着」から「癒着」になり、“脛の傷”をお互いになめ合うようになる ⇒ 内向きになる ⇒ 世の中を幅広く学問することがおざなりになる ⇒ 老害発生の仕組みにはまりこんでしまう ⇒ 問題の核心を見抜いた構想・独創が困難になる。

(節子) 貴方が今指摘したことがあっても両国間に太いコミュニケーションのパイプがあれば、漁船衝突事件は深刻化しなかったんじゃないかしら?

 民主党に中国と太いパイプを持っている人材がいない。さりとて、さっき貴方が指摘したような工夫がない政治主導一点張りが災いして民主党と外務省の関係も断絶に近い状態となっていた。したがって、中国側は外務省とも話し合いができにくかった。こういうことらしいのよ。

(高哉)
どうしてそうなってしまったのかが問題なのだ。人間関係をウチとソトに分ける習性が災いして内部での論戦が支配的になってしまったことが「思考の三原則(全体を見る/長い目で見る/根本的に考える)を適用しない野党時代の蔭の内閣を引きずったまま政権党になったんじゃないかと思う。(関連記事 ⇒ 『シミュレーションの協力者は客観的立場にある適切な第三者でなければならない』)

 この推測が正しいとすれば、民主党に中国と太いパイプを持っている人材がいないことは中枢機能不全が露呈しがちとなる根本的原因と無関係ではない。

(節子) 混ぜ返すようで申し訳ないけど、尖閣諸島に対する中国人の正しい認識の欠如に起因するものすごい圧力が温家宝首相の強硬姿勢に結びついたことを考えると、日本政府の対中国広報活動の欠如にも原因があるんじゃないかしら?

(高哉) 質の良さを伴わないコミュニケーションは量をいくら増やしても殆ど効果がないことを認識しなければならない。何を言いたいのかが不明確になりがちな日頃の言葉づかい習慣に起因する曖昧模糊とした日本語の翻訳が説得力を持つかどうかをよく考えなければならない。(関連記事 ⇒ 『所得増を実現したければ論理的コミュニケーション能力を身につけよう!』)

(節子) 各セクターの中枢機能不全が露呈しがちとなる根本的原因論理的コミュニケーション能力不足に、この不足が無責任を生む詰めの甘さに、この甘さが前原発言に関する日本の報道のずさんさの可能性に結びついた。こういうことね。

 但し、これを個人の問題として片付けるわけにはいかないかもしれない。日本には昔から「親分がこけると子分もこける」という独特の文化があるから。このことをどう考えればいいのかしら?

(高哉) 安定した枠組みにしがみつきがちとなる ⇒ 日米のビジネス・パーソンの行動の際立った違い』が示すように社会構造はタコツボ型から時代が要請するネットワーク型に転換しにくい ⇒ 日本の伝統である秩序重視がなくならない ⇒ 組織の上層部が組織員の生殺与奪権を握りやすい──、という図式のなせる業であると考える必要がある。

 したがって、ここにも各セクターの中枢機能不全が露呈しがちとなる根本的原因の影響があると考えなければならない。

(節子) となると、「大変な努力をしても報われない」となって、論理的コミュニケーション能力を身につける必要性を感じてもその気になりにくいわね。どうすればいいのかしら?

(高哉) 適切で好きな道を歩む人生を送るようにすることだ。というのは、そうなれば大変なことを楽しくやれるようになるから「大変な努力をしても報われない」なんてことにはならないからだ。背中を押して欲しい人は『どんな立場の人であっても閉塞状態と訣別して羽ばたけるようになります』を熟読することを勧めたい。


老害発生の仕組みからの脱却は企業の業績拡大を可能にする
── 点を見抜く→点と点を結んで線にする→線と線を結んで面にする→深く潜在している商機獲得…となろう!さもなくば、新成長機会は深く潜在したままとなる時代になった ──

(節子) 北方領土問題や尖閣諸島中国漁船衝突事件への対応の誤りが民主党政権の根幹を揺るがすことに結びついたこと。国民に真実を伝えないことがあるマスコミ報道 ── これらの分析は複雑を増す一方の世の中を生き抜くためには鋭い洞察力に裏打ちされた創造的問題解決力が必要不可欠であることを認識させてくれた。このことを他人事にしないために、身近なビジネスの例でも説明してくださらないかしら?

 フィットネス・クラブの宣伝チラシが繰り返し入っていたので、買物のついでに立ち寄って覗いてみたら客は思っていたよりずっと少なかった。業界通の友達に聞いたら業績が全体的に年々悪化しているとのこと。成熟した市場にデフレが直撃したからなんでしょうね。このようになってしまっているフィットネス・クラブでも活路があるのかしら?

(高哉) 世の中の変化をきちっと認識すれば、この業界にも潜在需要があることに気づくはずだ。現実直視力がないからエアー・ポケットの中をもがくのみのような状態になってしまうのだ。『複雑な問題の核心を見抜くことができない実態』を諳んずるほど読み込んで欲しい。

(節子) インターネットの普及が「小売店は立地産業である」というこれまでの常識を覆してしまった。団体旅行では満足できない人が急増したといったように市場成熟化に伴ってニーズが個性化した。だから、フィットネス・クラブに新しい活路が生まれている ── ということなんでしょうけど、具体策が思いつかない。

(高哉) ニーズの個性化は市場成熟化が生み出すだけではない。他の要因もある。情報化社会の中で地方都市がどうなったかを考えて欲しい。

(節子) 農業を止めた人が増えた。大都会のような電車網がないこともあって自動車を足にする人が増えた。こういうことの影響を受けて運動不足となり健康志向が高まった。・・・・・そうか、「こんな田舎にもフィットネス・クラブがあればいいなぁ」という気持ちが芽生えてもおかしくないわね。でも、田舎の人にとってはフィットネス・クラブは夢にしか過ぎないんじゃないかしら? 利用料金が高いんだから。

(高哉) 大都会のフィットネス・クラブの利用料金がなぜ高いのかを考える必要があるんじゃないかな。そういう風に思考を巡らせないと、閉塞状態の生みの親である、ちまちました枠内思考に留まってしまう。

(節子) 大都会、特に集客に有利な駅周辺の不動産利用料金は目の玉が飛び出るほど高い。屋上にプールがあるところが多いけど、これは堅牢な建築物であることを必要とするので建設コストも凄くかかる。それから、人件費もばかにならないんでしょうね。プロのインストラクターを雇用しなければならないんだから。・・・・・そうか、地方都市であることを生かせば、こういう高コスト要因をかなり吹き飛ばすことができるわね。

 自動車という足があるので、駅からずーっと離れた場所でも構わないし、それにプールは屋上にこだわらず1階にすればいい。でも、地方都市にはプロのインストラクターはいないと思った方がいい。したがって、呼び寄せなければならない。そうすると、その分利用料金が高くなってしまう。どうしたらいいのかしら?

(高哉) 「健康志向が高まった」ことに焦点を当てればインストラクターの技量はプログラムを粛々とこなすことができる程度でいいので、促成インストラクターで十分。高額の報酬を支払う必要があるプロのインストラクターを招へいする必要はまったくない。

 大都会の
フィットネス・クラブは他の高コスト要因とのバランス上プロのインストラクターを登用している面があるんじゃないかな。高級化粧品に高額の印刷を施した瓶が使われるように。

(節子) 悪しき固定観念の源となっている枠を取っ払って本質を純粋に追及していくことが大きな隙間市場の発見・創造に、これが閉塞状態の打破に結びつくことがよく分った。

 このような考え方を適用すれば、空き室が放置されて見るからにみすぼらしくなったニュータウンの再生でも可能になるのかしら? 私の知人が多摩ニュータウンに住んでいるけど、空き室だらけですっかりさびれてしまっているのよ。建設当時は憧れの対象だったのにね。

(高哉) フィットネス・クラブのことを考えた時と同じように「ニュータウンが空き室放置により見るからにみすぼらしくなったのはなぜなのか?」を考えれば打開策は自ずと出てくるはずだ。

(節子) 少子高齢化の下に人口の高齢化が進んだので、若い世代の新規入居者が必要になった。ところが、この必要性に応える条件がなかったことが原因しているんでしょうね。

 共稼ぎ夫婦にとって必要不可欠な託児所がない。リフォームが必要だけど、費用が高すぎて手が出ない。人口減の影響を受けて近くに小学校がなくなってしまった。こういった条件が重なれば、「ニュータウンの空き室に引っ越そう!」とは決してならない。でも、こういう状態の打破には総合的な対策が必要なので、お手上げじゃないかしら?

(高哉) 貴女が今言った総合的対策を講じたことが活気に満ちたニュータウン実現に結びついた例がある。千葉県佐倉市のユーカリが丘ニュータウンがそうだけど。

(節子) 思い出した。テレビで紹介された民間デベロッパーの成功物語のことよね。このデベロッパーは交通の便を提供するために鉄道を新設したり、リフォーム料金を割安にしたり…だったわね。こんなことをして採算がとれるのかしら?

(高哉) 稼働率が低くばらつく中でサービスビジネスを行うとなると、どうしても料金を高くしなければならない。ところが、このデベロッパーはこの宿命から脱することができた。沢山の顧客が目に見える形でしっかりと存在している。顧客に安心感を与えることができる。こういうことはサービスビジネスにとって極めて大事な稼働率を高水準で平準化することを可能にする。だから、割安の料金でもペイできるんだ。

(節子) デフレ時代を乗り切るためには沢山の顧客を囲い込むための創意工夫を凝らさなければならないことがよく分った。この創意工夫の一環としてこのデベロッパーのように一企業が何から何までやらないとこれからの時代は乗り切れないのかしら? 総合的創造的な対策があって初めて需要の掘り起こしができ、これがデフレからの脱却を可能にすることは理屈としては分かるけど。

(高哉) そういうことが必要になるのは一企業だけではない。先見力を活かして新規事業の開発に成功させたい。しかし、所属企業に実績も支援体制もないのであれば、1個人だって総合的創造的な対策が必要になる場合がある。僕が三菱総合研究所で経営コンサルティングのパイオニアー役を演じることができるようになった背景には、

 マルチクライアント・プロジェクト『新規事業開発の手引き』をたった一人で企画・実行して、業績ノルマのクリア―・必要ノウハウの習得・顧客の開拓の三つを同時に実現させるという離れ業を演じたことがあるんだ。

 グローバル経済を積極的に生き抜くための要件であるプロフェッショナルを目指したいのであれば、『縦横無尽の動きができるヘリコプターのような働き方が必要になった』ことを認識しなければならない。

(節子)
環境が様変わりしたことはよく分った。新成長機会の追い求め方が様変わりしたことを読者が理解できるように説明してくださらないかしら?

(高哉) 思考様式を変えないと、閉塞状態から脱出できないことを理解してもらうために新成長機会の追い求め方を過去と今後を対比させると、次のようになる。

(過去) 新成長機会は過去の延長線上に存在していた ⇒ 「ここ掘れワンワン」のようなことでよかった ⇒ 各人は与えられた役割を遂行することでよかった。

(今後)
「(新成長機会は散在する素材のような形で深く潜在するようになった ⇒ 潜在事象の発掘が必要である) + ビッグ・チャンスを狙う時代になったジグソーパズル思考知的アクロバットが必要になった」「企業間競争が激化の一途を辿る ⇒ 現事業強化に結びつくように新規事業を開発しなければならない。いいかえれば、成長分野に成功裡に進出する秘訣の習得が必要である」

 世の中を幅広く学問するだけではなく、『日米のビジネス・パーソンの行動の際立った違い』にある日本人の悪しき習性からの脱却が必要不可欠になったのだ。実績主義・人間関係主義に凝り固まっていると、チャンスを掴めないだけではなくピンチに陥りやすくなることを肝に銘じなければならない。(関連記事 ⇒ 『実績よサヨナラ、ギブ&テイクよコンニチワになる洞察力はやり方次第で短期間に身につくものです今必要なのは偉大な素人(総合的創造的脳力者だ)


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個性的才能・違いを認める力の必要性が増していくTPP不参加は日本没落を加速する

アメリカは仲間の輪を拡大し、そのリーダーを目指すことになったようだ

(節子) 貴方が今言った日本人の悪しき習性からの脱却は急がなくてはならないわね。マスコミ報道で接しない日がないほどブームとなったTPPへの日本の参加は避けられそうにないんだから。そこで、聞きたいんだけど、アメリカはTPPに参加しただけではなく拡大しようとしている。この背景には今後5年間で輸出を倍増させようとしていることがある。

 そして、この目論見をバックアップすることも狙ってFRBは来年6月までに6,000億ドル、40兆円程の資金を市中に注入しようとしている。こういう理解でいいのかしら?

(高哉) 日本のTPP参加という現実を、読者が覚悟して受け止めるようになるためにはもっと深い理解が必要だ。そうでないと、さらっと受け止めてチャンスを生かせず、ピンチに追い込まれてしまう。「準備をしていた者だけがチャンスを掴み取ることができるし、リスクを回避できる」のが世の常だからね。そうならないためには、世界統治の仕組みの変遷の理解が何よりも大事だ。ごく単純化すると、次の通りになるんじゃないかな。

欧米先進国は国内だけでは膨らむ欲望を叶えることができなくなり、植民地獲得に乗り出した。その結果、世界は分割統治時代を迎えることになった。

ドイツと日本も植民地獲得に乗り出し、先発組と衝突することなった。その結果、第2次世界大戦が勃発した。

第2次世界大戦終了後、アメリカと旧ソ連がイデオロギーの違いで覇権を争うこととなった。その結果、東西冷戦構造時代を迎えることとなった。

旧ソ連が崩壊して、東西冷戦構造が終結した。その結果、共産圏諸国が自由世界に参加することとなり、世界経済統合時代を迎えることとなった。

開発途上国は経済的躍進を遂げた。一方、先進国の新市場創造に結びつく新事業開発が遅れた。その結果、従来型の製品・サービスは供給過剰に陥り、これが根本的原因となり、世界金融危機が発生した。

世界金融危機の根本的原因が取り除かれないままに世界経済が推移し、先進国は経済不況から脱出できない状態が続いた。その結果、通貨戦争に表れたように各国は国益優先主義となり、本格的な協調が困難になった。

国益優先主義の下ではG7WTOは協調機能を発揮しにくいので、アメリカは拡大TPPを新・協調機能として用いることを企図するに至った。

(節子) 核廃絶、グリーン革命、貧富の格差是正、国民皆保険など市民運動指導者出身らしい政策を推進してきたオバマ大統領が経済至上主義に転じた大きな理由の一つとして11月の予備選で大敗北を喫したことがあることは理解できるけど、理路整然と説明してくださらないかしら? 6,000億ドルばらまきの論理的根拠も含めてだけど。

アメリカ経済再建策
(高哉) アメリカの失業率は統計に表れていない分も含めると17%に達していると言われている。雇用拡大が至上命令なのだ。ところが、GDPの60パーセントを占めている、頼みの綱である消費拡大を通じての経済成長は見込み薄。 

 リーマン・ショックの痛撃を受けたことが「住宅価格が大幅に低下した ⇒ 借金額が売却価格を大幅に上回ることとなった」「雇用情勢が非常に厳しくなった ⇒ 給与所得が大幅に減少した」というダブルパンチとなったからだ。

 小さな政府を標榜する共和党が下院議院を圧倒的に支配することになったので、財政出動はほぼ不可能。そこで、次のストーリーができあがったと思う。

 今後5年間で輸出を倍増させなければならない ⇒ 拡大TPPという手段を使って輸出市場を拡大しなければならない ⇒ 輸出競争力強化のためにドル安を誘導しなければならない ⇒ ドルの過剰流動性を実現させなければならない。

(節子)
輸出競争力強化のためにドル安を誘導しても販売するモノがなければならないので、アメリカは金融大国から製造業大国への転換が必要になる。この転換が進むことは衰退してきたモノづくり大国・日本の舵取りを難しくするわね。このままでは産業の空洞化に拍車がかかってしまう。・・・・・日本にはインドとASEANが締結したEPAをアジア全体に広げるという選択肢もあるんじゃないかしら?

資料:2010.11.15付け『日経ビジネス』

アメリカのバックアップなしの日本は生き抜きが困難になるかも

(高哉) 国益優先主義に転じた世界の中にあって日本丸の舵取りを自力できるのであれば、貴女が今言った選択肢を採用することも可能かもしれない。でも、中国とロシアの日本をなめきった最近の言動はこの選択肢採用の難しさを物語っている。

(節子) ロシアは「北方領土はロシアのもの。したがって、ロシア大統領が訪問するのは当たり前」と主張。中国も尖閣諸島領有権を断固として主張。その上で、中国の漁船が領海を侵犯して海上保安庁の巡視船に衝突した事実がありながら「両国首脳の会談ができるかどうかは日本側の態度次第だ」と発言した。

 こうした両国の態度が貴方の見解の背景にあるんでしょうけど、このような歴史的事実を無視した乱暴なことがどうして許されるのかしら?

(高哉) 人間の本能を認識した日頃の交流のあり方が欠落していたからだ。恒常性維持と生存の拡大を実現したい。時間とエネルギーに限りがある以上は努力vs効果を最大化したい。こういう本能は個人だけではなく人間集団である国家にもある。これが認識すべき人間の本能。友好的に付き合うと利益が継続的に得られる。隙がない。敵に回ると手強い。こういう条件が揃うと、相手はこちらの立場を尊重した態度を採ってくれる。逆も真である。これが日頃の交流のあり方なのだ。

(節子)
そう言われると、納得できる。多くの日本人が知ることになった尖閣諸島中国漁船衝突事件の処理の仕方ではAPECの会議の合間に行われた日中首脳会談で「尖閣諸島は中国の領土である」と突っぱねられても仕方がない。

 弱体化した日本経済の対中依存が極めて大きいことを楯にして尖閣諸島周辺に膨大な地下資源や戦略的な地点での海洋航行の占拠を狙っていることは明白であるのよね。このだらしなさは対ロシアについても当てはまるんじゃないかしら。

 ロシアは鳩山政権時代に北方領土周辺で軍事演習をした。ところが、日本側の反応はなかったので、「日本には反発力はない」と判断し、「よしそれでは」と大統領が初めて北方領土を訪問することになった。日本はやっと重い腰を上げて駐ロシア大使を一時帰国させたが、数日間のみ。それ以外の反応はない。

 となれば、APECの会議の合間に開催された日ロ首脳会談で「北方領土は将来共にロシアのもの」と突っぱねられても仕方がない。漁業権と海底に眠る膨大な地下資源が眠っていることを考えると、「日本の反発は無視しよう!」となってもおかしくない。

 対中国・ロシア外交の失敗は「国益優先主義に転じた世界という大きな変化に自力で適応できる力は日本にはない」というしかないわね。この背景には日本人の体質があるんだから国だけの問題ではないんでしょ?

(高哉) その通りだ。「練り上げた業務改革案を上司に提出したけど、適当にあしらわれていいとこどりされてしまった」と嘆いたサラリーマンがいたけど、このサラリーマンは自分の日頃の仕事ぶりを反省しなければならない。無視できない人物であれば、この人物の気分を害しない反応が必ずあるものだよ。『人間関係のあり方を様変わりさせる』を熟読して欲しい。

 共同体の崩壊は時代の流れである。その代り、きらりと光る才能と違いを認めることができる個人の羽ばたきを可能にするデジタルネイティブ時代になりつつあることを肝に銘じなければならない。

 それでも共同体にしがみつく人は老害発生の仕組みにはまり、不確実性が増す時代の中にあっては淘汰の運命が待っていることを覚悟しなければならない。共同体の崩壊を国益優先主義に転じた世界といいかえれば、国家も同じことなのだ。


対ロシア外交の苦い教訓「変化の連続の中に置くことが情報力強化の決め手である
 (節子) 対中国・対ロシア関係のあり方をも含む日本の国家目標がない。いいかえれば、イノベーションのロジックが注入されていない。となれば、問題を先送りしたり、その場しのぎの対処方法を採用するしかない。こういう習性の付けが回ってきたことがよく分った。

 でも、「何か厄介なことが起きそうだ。未然防止策を採ろう!」となっていれば、日本は相手国から付け込まれなかったと思う。どうしてそういうことができなかったのかしら? 認識しにくいことを認識する秘訣を知りたいために聞くんだけど。・・・・・ロシア大統領の北方領土訪問の直前になるまで日本側は気がつかなかったことを例に採ってとって説明してくださらないかしら?

(高哉) ロシアの大統領が北方領土を訪問するとなれば現地は受け入れ準備で大わらわになる。したがって、日常とは違う現象が何日にも亘って発生することとなる。ぼやっとしていたためにこのことに気づかなかったからだ。

 対ロシア関係のあり方をも含む日本の国家目標がきちっと確立されていないことに根本的原因がある。というのは、そうでなければ次の図式実現が可能になるからだ。

 対ロシア外交を担う人々はロシアの動きを鋭く観察する気概に満ちている ⇒ 脳細胞間のネットワーキングが円滑にできる状態になっている ⇒ 変化の連続の中に身を置く努力をする ⇒ 『異変待ち受け効果』にあるように必要な情報の方から飛び込んでくる。

(節子) 勝ち組メーカーに学ぶサービス事業戦略』の読者がこの異変待ち受けのことを「面白経営で現実離れしている」とインターネット上で批判していたのを知って、『様変わりした環境に主体的に適応する精神が養われなくなった』は日本に蔓延していることを痛感したのを思い出した。

 こういう体質が是正されないと、どのセクターも世界の不透明化現象に飲み込まれてしまう。困ったことだわね。

(高哉)
そうなんだよ。異変待ち受けができれば弱者でも躍進できるんだ。次の図式が示すように鉄鉱石のような地味な仕事でもそういうことが可能であったことを強調したい。

創造的思考が参入困難な市場開拓を可能にする
 溶鉱炉は流動性を失うとうまく機能しないので、シリカ(SiO2)バランスを保つことが必要不可欠である + 特定の鉱山と長期契約を結んで出荷される鉄鉱石の成分は大きく変わりにくい ⇒ 製鉄所のシリカ(SiO2)含有率の時系列データを掴むことでシリカ(SiO2)含有率の高い鉄鉱石を使って鉄鉱石ビジネスの新規参入が可能になる。その他→9

(節子) ビジネスだったら貴方の言うように弱者でも躍進できる。でも、国家間の外交ではそうはならないんじゃないかしら。力関係がものを言うんだから。

(高哉) 相手国の未来進行形の致命的な弱点をリストアップして、これらを臨機応変に切り札として使うことが考えられる。中国の人権問題やエアーアースを使った産業戦略、ロシアのチェチェン問題やモノづくり小国性などの弱点はその気になればいくらでも見つかるからね。

 
でも、そういうことが切り札になるためには、中国を例に用いると次の図式を見抜いた対策を講じることが必要になる。あくまでも考え方の例として用いるんだけどね。

 日本のレアーアース市場の97%を占めるに至らせた ⇒ レアーアース供給難をちらつかせる ⇒ 日本のハイテク企業を中国内に誘致し、省資源・省エネルギー型の産業構造に転換する ⇒ 高い経済成長が持続して可能になる ⇒ 共産党政権を保つことができる。

(節子) レアーアース供給源を他国に分散させる。インドやASEANとの経済交流を拡大させて中国依存度を大幅に減らす。こういったことが貴方が今紹介した図式に対応した対策というわけね。既に一部実施が予定されているけど。でも、中国が日本を屈伏させるために砲艦外交を展開したら日本はお手上げね。日本は憲法の縛りがあるので軍事行動を採りにくいんだから。

(高哉) そうなんだ。だから、緊密な日米関係が必要不可欠になる。そういう意味で普天間基地問題で日米関係を希薄化させてしまった民主党前政権の責任は重いかもしれない。ここに、日米関係の緊密化のみならず“される国際化”を通じて日本の他国攻撃抑止力に結びつく、アメリカが主導するTPPに参加することの必要性がある。

 菅内閣がTPP協議を始めることを決定したことはこの必要性に応える第一歩。でも、アメリカのオバマ大統領は昨年11月14日にTPPへの参加意欲を表明していることを考えると、「唐突過ぎる」という非難を全面的に受け入れて体質改善を急がなければならない。ロシア大統領の北方領土訪問の直前になるまで日本側は気がつかなかったことと根っこは同じだからね。


脳細胞間の円滑なネットワーキング ⇒ 必要情報の円滑な入手 ⇒ 天啓の入手…の方程式は新成長機会を地球的規模で創りだすことを可能にする

成長が必要不可欠な世界経済はアメリカ経済再建策の趣旨を容認しなければならない

(節子) アメリカが主導するTPPに参加することが日本の安全保障にも結びつくことは理解できる。でも、「アメリカ経済再建策はヘリコプターから世界中にドルをばらまくようなものだ」と言われているじゃない。これって世界金融危機のようなことを再び引き起こすことに結びつくんじゃないかしら? そうではないことが保障されないと、日本のTPP参加は慎重にしなければならないんじゃないかしら?

過剰度を増すドルは開発途上国の経済成長に結びつくインフラ投資に向かう可能性がある
(高哉) 世界中にドルがばらまかれる ⇒ ドルの供給が需要を大幅に上回る ⇒ ドル安が進む ⇒ 米国財務省証券の形で大量のドルを保有している日本・中国・ASEAN諸国の資産が激減する ⇒ これらの国々はデフレ脱却に結びつく先行投資をしにくくなる──、という図式が実現することを恐れているんだろうけど、この図式は単純すぎる。「大量のドルを保有している国が自らの首を絞めることになるドル売りをするだろうか?」と考える必要がある。

(節子) 有効な使い道があれば過剰になったドルは自らの首を絞めるようなことに向かわないでしょうけど、そんなことってあるかしら?・・・・・ありそうね。インドで仕事をした経験のある貴方は「インドでインフラが十分整備されているのは道路網だけ」と言っていたものね。鉄道網、電力発電所と配電網、上下水道、国民教育への投資が進めば、インド経済は爆発的に成長するかもしれない。

(高哉) そういう可能性を秘めているのはインドだけではなく、東南アジア諸国、アフリカ諸国にもある。こういう国々が高度経済成長を続けることは『アメリカ経済再建策』の実現を確実にしてくれるはずだ。それからもうひとつ忘れてはならないのは次の図式のことだ。

 労働市場の統合に結びつくグローバル経済の度合いが進む + 知識経済の時代になればなるほど情報力格差が大きくなる ⇒ 貧富の格差が拡大する ⇒ 全体のパイが拡大しないと、配分問題が深刻になる。

世界経済は持続力のある成長が可能である
(節子) 全体のパイが拡大すれば貧困層の底上げが可能になるので、貧富の格差が拡大しても社会秩序はなんとか保つことができる。したがって、世界経済は成長し続けなければならない。ここに、『アメリカ経済再建策』の人類的な意義がある。こういうことでしょうけど、資源・エネルギーの制約や地球環境のことはどう考えればいいのかしら?

(高哉) 企業経営の要諦は新成長機会の発見・実現を通じて安定的成長を実現させること。そのためには、「商品開発 = 問題解決」という考え方の導入が必要不可欠。同じことが世界運営にも当てはまる。このように言うと、「商品開発に結びつく、世の中が解決を求めている問題は何か? うーん」となってしまう人が少なくないけど、「過剰と過疎を嫌うのが宇宙の法則である」と考えると気が楽になるはずだ。

 こういう問題意識で世界が抱えている問題をしっかり認識すれば、資源・エネルギーの制約や地球環境問題を乗り越えて世界経済は成長し続けることができることに気づくはずだ。

(節子) 爛熟期に入った物質文明を謳歌している人々は「大自然に身を浸したい」「ゆったりと寛ぐことができる空間が欲しい」となりやすい。進展した情報化は潜在していた欲望を刺激して「やりたいことが沢山ある。短い人生を精一杯楽しみたいので、健康を増進しなければ」となりやすい。

 そういうことであると、貴方が10年ほど前から提唱している『新・農業革命』が資源・エネルギーの制約や地球環境の心配を吹き飛ばしてくれる新成長機会として燦然と輝いてくるわね。

 とは言っても、『新・農業革命』を実現させ、進化させ続けることを可能にする新しい技術が絶えることなく生まれなければならない。それに、『成長が見込める新しいサービス事業の開発が容易ではない 』という課題も解決しなければならない。こういう点はどうなのかしら?

(高哉) 僧侶などの宗教指導者がどうして誕生したのか? この誕生はどういうことを可能にしたのか?…を考えれば、回答は自ずと見つかるはずだ。

(節子) 時間的余裕のある僧侶などの宗教指導者は宇宙などのことを研究するようになり、こうしたことが新しい技術開発のきっかけとなった。その背景には次の図式がある。

 その日暮らしから脱出できる人が増えた ⇒ より良い生活をするために物々交換が行われるようになった ⇒ 物質生活の充実に伴い「心の平和が欲しい」「教育を受けたい」といったような高度な欲求が生まれた ⇒ 僧侶などの宗教指導者が職業的存在として誕生した。

(高哉) そういうことなんだよ。貴女が今提起した図式は、世界中の人々の相互依存が拡充すればするほど新技術・新サービスが生まれるようになることを意味している。(関連記事 ⇒ 『永遠の経済成長を可能にする秘訣』) 『アメリカ経済再建策』はこの壮大なロマンに結びつく可能性を秘めていることを理解しなければならない。

内外需を拡大して国難を吹き飛ばすチャンスが日本に到来したことに気づこう!

(節子) 世界経済は成長路線に乗る可能性があることは分ったけど、日本はどうなるのかしら? ヒト・ モノ・カネの自由移動に結びつくTPPへの参加は日米融合に、日米融合は日本の安全保障に結びつくであろうことは理解できるけど、日本とアメリカは国民の体質が全く異なるのよ。

 キリスト教原理主義の下で個人パワーを発揮しやすいので、小さな政府を推進できるのがアメリカ人。一方の日本人には「安定した枠組みを強く求める ⇒ 政府を最後の頼みの綱にしたがる ⇒ アメリカのように小さな政府を推進しにくい」という体質があるんだから。(関連記事 ⇒ 『大多数の日本人が世の中を支配する新しいロジックに適応できない理由
)

(高哉) デジタル・ネイティブの時代になっていく ⇒ 世界は無極化に向かう ⇒ 世界中の人々の相互依存が拡充する──、という図式が支配的になるので、頼みの綱がなくなるわけではない。但し、ウチとソトを明確に分ける生き方をしていると、次の図式が待ち受けていることを覚悟しなければならない。

 人間関係が癒着する ⇒ 個が埋没する ⇒ 個性的才能も違いを認める力も養われなくなっていく ⇒ 世界中の人々と相互依存することができなくなっていく ⇒ 孤独死の危険性が増す。

 このように言うと、「だから世界の無極化よりも集団主義の方がありがたいのだ」という意見が出てくるかもしれない。こういう向きには次の言葉を返したい。

 共同体崩壊傾向が顕著になってきたので所属集団の永続は保障されない。仮に存続できていても集団への所属は“村八分”になるのを恐れるあまり個の埋没に結びつく。その結果、脳力・能力の進化が困難になり、活路をよそに求めることができなくなる。

(節子) グローバル経済を生き抜く要諦』の受け入れは必要不可欠ということね。でも、デジタル・ネイティブの時代になることは日本人の長所である協調性を大いに発揮できる可能性が広がることを意味する。個性的才能と違いを認める力がありさえすればだけど。でも、『アメリカ経済再建策』を前提とするTPPへの参加に伴う心配がまだある。

 アメリカは日本が長年に亘って貿易黒字を続けてきたことを楯にして内需拡大を求める。しかし、国内市場が成熟している上に殆どの人が将来不安を抱えているので、この要求に応えることができにくい。

 財政破綻寸前、ドル安による国家資産の目減り、貯蓄率下落に結びつく少子高齢化…のことを考えると、先行投資資金を活用しての公共事業も難しい。どうしたらいいのかしら?

(高哉)
羽田空港国際化とTPP参加を結びつけて考えれば、そんな心配は吹き飛んでしまう。というのは、大ざっぱに言って次のシナリオが考えられるからだ。

 (日本列島は世界の成長ゾーン・アジア太平洋の拠点である + 東京はオフィス環境が整っている上に交通網が縦横無尽に巡らされている点では世界ダントツ1位である + 羽田がとうとう国際空港として再出発することになった ⇒ 東京は先行投資案件のひとつになった) + 日銀はデフレ経済の下で金融の量的緩和に踏み切った ⇒ 東京の不動産に対する先行投資が進む ⇒ 不動産、株の価格が上昇する ⇒ 資産効果が生まれ、製品・サービスに対する需要が拡大する。

(節子) シンガポールや韓国の国際空港は再出発した羽田よりも国際的ハブ空港としては上であることを考えると、シナリオ通りにならないんじゃないかしら?

(高哉)
羽田・成田・茨城の3空港の一体的運用ができるようにすれば他国の国際空港より上になる。それに日本は中国やシンガポールのような強権発動の余地のない民主主義が確立されている上に、インフラが整備されているし、ハイテクが利用できる。いいかえれば、収益性を除けば外国資本は極めて投資しやすい。

 この収益性も大分前に提起した『米軍基地再編成は大きな果実を生む先行投資 』の「アジア共同市場」を「拡大TPP」に読みかえれば、「収益性も問題なし」となる可能性が大であることに気づくはずだ。

(節子)
羽田空港の国際化とTPPへの参加は資産効果を生み出し、製品・サービスに対する需要だけではなく、交通手段や不動産の需要も拡大させることがよく理解できた。「東京の可能性が飛躍的に拡大する ⇒ ローリスク・ハイリターンの大きな可能性が生まれる ⇒ 交通手段を含めて東京中心の再開発が進む」という図式が実現する可能性が大いにあるものね。

 TPPに参加すると、ヒトの移動も自由になるのよ。これは賃金水準の低い外国の人々が日本の労働市場に参加することを、これは日本人の賃金水準の引き下げに結びつき、日本人のワーキング・プアーを更に増加させてしまいかねない。

(高哉)
TPPに参加しなくても適切な自助努力を怠ることは日本人のワーキング・プアーを更に増加させることに結びつくことは警告ずみだ。『グローバル経済を生き抜く要諦』をもう一度読んで欲しい。『引きこもり状態で社会生活を送っている人もいる』にあるように生き抜くためには環境変化への適応が要求されるのは今に始まったことではない。心すべき環境変化がグローバルになっただけのことだ

(節子)
輸出のGDP寄与率はEUの一員であるドイツが40%、日本が16~17%であることを考えると、拡大TPPへの参加を衰退モノづくり大国・日本の輸出促進に結びつける考え方も必要だと思うけど、どうかしら?

(高哉)
日本が没落路線をひたすら歩むようになった背景には閉鎖性がジャパン・パッシングに結びついたことがある。そういう意味で開国に結びつくTPPへの参加は国民パワーがアップすれば、日本にとって福音となり、ドイツのようになれるんじゃないかな。このように言うと、「TPPへの参加は農業、特に米作りに大打撃となるのでは」となりがちだが、次の図式を真剣に考える必要がある。

 (日本の開国が遅れる ⇒ ジャパン・パッシングが一段と進む ⇒ 老害発生の仕組みにはまる人が日本中にひしめく) + (少子高齢化が進む ⇒ 国民貯蓄率がどんどん減る) ⇒ 日本経済の生産性向上に結びつく投資がどんどん減っていく ⇒ 日本の財政が完全に破綻する ⇒ 日本はIMFの管理下に置かれることとなる ⇒ 日本は強制的に開国させられる ⇒ ぬくぬくしてきた日本農業は壊滅的打撃を受ける。

(節子) 米作プロフェッショナル・石井稔さん』の生き方は農業の質的生産性革命を可能にすることは理解できるけど、狭い国土のことを考えると、TPPに参加して食糧の自給率を一定水準に維持することは難しいんじゃないかしら?


(高哉)
食糧の自給率を一定水準に維持するためには農業用地を拡大させて規模の利益が出るようにしなければならい。一方において『成長が見込める新しいサービス事業の開発が容易ではない』ということもある。脱工業化のためにはこの放置は許されない。この二つの課題を同時に解決するためには、サービス・ビジネス振興に結びつく大都市への人口集中を促進しなければならない。というのは、次の図式実現が期待できるからね。

 人口が一箇所に集中する ⇒ (人々の相互依存が拡充する ⇒ 例外需要をかき集めやすくなる ⇒ 新しいサービス・・ビジネスが起業しやすくなる) + 農業用地が拡大できる。 ── こういう目で6年程前に提起した『広域を一体的に捉えた再開発が必要になる』をよく読んで欲しい。

新サービス・新技術の輩出と新旧インフラ整備投資が世界経済を活性化させる

(節子) 羽田空港国際化とTPP参加の活用が内外需を拡大して国難を吹き飛ばすチャンスを創り出す可能性があることは理解できた。でも、このチャンスが実を結ぶためには世界経済の発展が必要不可欠。日本は世界の中でしか生きていけないんだから。この点はどうなのかしら?

(高哉) 大都市への人口集中が進む。ヒト・モノ・カネの国境を越えての自由移動が進む。オープンスカイ協定が多国間で結ばれる時代になる。デジタル・ネイティブの時代になっていく。 ── この四つが重なることはどういうことを意味するかを考えれば、回答は自ずと見つかるはずだ。

(節子) 国家的支援の下での世界都市間競争がどんどん行われるようになるんでしょうね。デジタル・ネイティブの時代になっても世界国家ができない限りは国益が大事だから。

(高哉)
そういう時代に羽田が国際空港になった上にTPPに参加することが世界都市・東京の大発展に結びつく可能性が生まれた。このことを東京と覇を争う世界都市を持つ国が手を拱いているはずがない。

(節子) 各国は競って自由貿易拡大に舵を切り、これを背にして東京以外の世界都市も負けじと投資を行う。その結果、世界の主要国に日本同様の経済効果が生まれるというわけね。そして、開発途上国は『過剰になるドルは開発途上国の高度経済成長に結びつくインフラ投資に向かう可能性がある』にあるようなことになる。

 これで世界経済は万々歳となりそうだけど、資源・エネルギーや環境問題のことがどうしても心配。『世界経済は持続力のある成長が可能である』の説明にあとひと押しが必要な気がする。

(高哉) 6年ほど前に提起した『「成長の限界説」は誤りであることを認識する』にあることが実現できれば、資源・エネルギーや環境問題解決の可能性が高まる。その上、今回議論したことの統合がこの問題解決を盤石にする見通しを与えてくれる。というのは、この統合は次の図式をクローズアップさせることができるからだ。

 世界都市、地方中核都市への人口集積が進む + 地球環境回復の欲求が高まる + 快適空間に対する需要が拡大する ⇒ 『新・農業革命』が推進しやすくなる ⇒ 省資源・省エネルギーに結びつくシンプルライフが普及する。


磨き抜いた現実直視力に裏付けられた創造的問題解決力を入手したければ、性格を乗りこなそう!

日本人の脳力は全般的に劣化すべくして劣化した

(節子) デジタル・ネイティブの時代になっていき、世界が無極化に向かうことは協調性を活かせる点で日本人にとってプラス。しかし、個性的才能と違いを認める力が必要になるという点ではマイナスと言わざるを得ない。圧倒的大多数の日本人はその場しのぎで生きてきたからね。

 このその場しのぎが災いして日本人一般に創造的問題解決力が欠如していたことは常識。この常識を受けて日本人の構想力・独創力の抜本的強化が必要であることは古くして新しい課題であることは『問題を創造的に解決するために』を読めば分かることだけど、問題が深刻化してきた理由を分りやすく説明してくださらないかしら? 危機意識が高まって人間改造に必要不可欠なイノベーションのロジックが注入される人が沢山出てきて欲しいの。

(高哉) 内発的動機に基づく自己決定が粘り強い挑戦を、粘り強い挑戦が創造力の強化を可能にする。「なんとしてでもやり遂げたい」という気持ちは次の図式実現の習慣形成に結びつき、老害発生の仕組みを寄せ付けないからね。

 「ああでもない」「こうでもない」と考え抜く ⇒ 脳細胞間のネットワーキングが執拗に行われる ⇒ 気づきにくいことに気づく。いいかえれば、複雑な事象の核心を見抜くことに必要不可欠な勘が働く ⇒ 斬新な着眼が入手できる。(関連記事 ⇒ 適切な方向で無我夢中で頑張り続けることが凡人を非凡にする脳細胞間のネットワーキングが円滑にできる)

 健康増進に役立つ運動は「やらなくては」と思ってもついつい億劫になる。ところが、習慣になると生活リズムになり、運動をしないと罪悪感に陥ったり気持ちがすっきりしない。これと同じように脳力・能力を進化させ続けたかったらそれなりの習慣を培わなくてはならない。

 ところが、親から保護される時代も社会人になってからも内発的動機に基づく自己決定力を培いにくい環境になっている。このことが創造的問題解決力の抜本的強化を妨げている。

(節子) (「あれをやっては駄目。これをやりなさい」と過干渉になりがちな親に育てられた ⇒ 広い視野に基づく思考力が鍛えられない) + (世の中が複雑になった ⇒ マニュアルやルールが横行するようになった) + (共同体が崩壊してきた ⇒ 身の安全のためにマニュアルやルールに逃げ込みがちとなった)

 ⇒ 内発的動機に基づく思考・行動はすっかり影をひそめてしまった──、という図式が支配的になったことを指すんでしょうね。

 このように整理してみて、応用が限定的な旧態依然とした診断論理にしがみつく医者、顧客を大事にする姿勢が欠如した紋切り型の企業のインフォメーション・センター係り、「KY(空気が読めない)と言われるのが怖くて“空気に従う”大衆…のことがよく理解できる。

 こういう人たちは訴訟やリストラを恐れて頭が固いふりをしている面もあるんでしょうね。でも、そんなことを続けることは老害発生の仕組みにはまり、本当に頭が固くなってしまうことに確実に結びついてしまう。とは言うものの、自分で今言っていることがすべてだとは思わない。

 過干渉になりがちな親に育てられたとしても親は24時間子供につきっきりではない。子供にはそれなりの自由な時間がある。こういうことを考慮に入れると、創造性開発の源「
内発的動機に基づく自己決定」をする余地が大いにあると思う。・・・・・どのように解釈すればいいのかしら?

(高哉)
遊ぶ対象が大自然ではなくTVゲームやインターネットが中心になったので、創造性開発に結びつくような内発的動機に基づく意思決定が行われにくくなったことに注目しなければならない。

 大自然
は不思議さに満ち溢れているので、「どうしてなの?」という疑問を発する習慣形成に大いに役立つ。これは創造性開発にとって大きい。というのは、何事にも疑問を抱き、この疑問を解こうとする気持ちが創造性開発に結びつくからだ。

 ところが、TVゲームにはそういうことを期待しにくい。コンテンツのコピー&ペーストを繰り返すだけで考え抜くことをしなくても新たなコンテンツづくりを可能にするインターネットはなおさらだ。

(節子) なるほどね。もうちょっと詰めたいけど、いいかしら? TVゲームやインターネットが中心になると、大自然とは違って人間関係を希薄にする。こういうことも子供の創造性開発にマイナスになるんでしょうね。この理由を理論的に説明してくださらないかしら?

(高哉)
仲良くなりたい。自分の主張を通してみたい。こうした人間関係から生まれる意欲は次の図式実現に結びつきやすい。

 旺盛な問題意識を持つ ⇒ 記憶創出機能を司る海馬の状態が良くなる ⇒ 相手の発する言葉が脳裏に染み込む ⇒ 新しいものの見方ができるようになる ⇒ 脳細胞の再編成が進む ⇒ 脳細胞間のネットワーキング力が強化される ⇒ 気づきにくいことを気づかせてくれる勘が良くなる ⇒ 斬新な着眼に基づくジグソーパズル思考力の強化が子供なりに進む。いいかえれば、創造的問題解決力の強化が進む。

 しばしば出てくる「脳細胞間のネットワーキング力」は社会の活性化に重要な役割を担う交通・通信網のようなものだと理解して欲しい。優れた人材が社会に存在していても相互依存・連携を可能にする交通・通信網の整備が不十分であると、個々の優れた人材はその分有効活用されず、宝の持ち腐れになる場合だってある。同じことが脳内の記憶にも当てはまる。ここに、次の図式の重要性が浮上してくるわけだ。

 「疑問を解明したい」「何とかして成し遂げたい」と強く思いこむ ⇒ 考え抜く(記憶を総動員して記憶と記憶の結び付けを行う) ⇒ 適切な解が得らない。しかし、強い思い込みがあるので、諦めない ⇒ 助言を求めたり、「これだ!」と思う形で耳目に触れる情報が飛び込んでくる。

 この図式の「考え抜く(記憶を総動員して記憶と記憶の結び付けを行う)」を円滑に行えるかどうかはその人の「脳細胞間のネットワーキング力」次第。したがって、創造力が極めて重要になった時代における「頭がいい」は「脳細胞間のネットワーキング力が鍛え抜かれている」を意味するのだと理解する必要がある。(効果的対策の例 ⇒ 『悩み事解決を可能にする日記分析ワタナベ式問題解決へのアプローチ』)

 このことは小学校二年生になった快君にも当てはまる。彼が3歳の時にスケートボードを使って滑り台遊びをしていることを聞いて「将来性が豊かな子供だ」と思った。というのは、映画とラジオの複合融合製品であるテレビのようにジェットコースターとスケートボードを結びつけた遊びを開発したことが窺われたからだ。究極の創造は森羅万象の独創的な組み合わせであることを忘れてはならないんだ。

 「森羅万象」は極端な表現かもしれないが、もっともっと…という状態になって博覧強記になることが創造性を養うために必要不可欠なことであると理解して欲しい。(関連記事 ⇒ 『意欲満々になるための定石がある』)

(節子)
貴方が今提起した図式を大人に適用するためにはどんなことに留意すればいいのかしら? 『意欲満々になるための定石がある』をよく読み、納得して適切で好きな道を歩めるようにする。こういうことを認識しさえすればいいのかしら?

(高哉) 認識するだけでは駄目だ。というのは『日本は人材ミスマッチ大国である』にあるようなことがあるからだ。具体的に言うと、『時代はプルのマーケティング力を必要としている』を念頭に置いて自分で人生の舵取りをする決意を持たなければならない。


「携帯電話よサヨナラ、適切で好きな道よコンニチは」の時代になる 2012.1.12更新

(節子) 人生を自分の判断で舵取りするためには精神的な余裕が必要。ところが、そうなりにくい。というのは、円高は世界における日本の賃金水準の引き上げに、これはより安い人件費を求めて企業の海外への移転に結びつき、雇用情勢が一段と厳しくなってしまう。したがって、精神的余裕を持ちにくい。 ── こういう時代にどのように人生の舵取りをしたらいいのかしら?

(高哉)
人生の舵取りの仕方を云々する前に円高の必然性を理解する必要がある。デフレ経済が長期化しているために物価水準が低く推移しているのは日本だけ。これが突出する形で円高に結びついている。

 こういう経済学のイロハだけでは駄目で、世界金融危機の根本的原因が取り除かれることなくそのままになっていることが根本的原因になっていることを理解しなければならない。さもないと、DNA化しているその場しのぎが災いして腰が入った対策を講じることができない。


(節子) 世界金融危機の根本的原因が取り除かれることなくそのままになっている。こういう状態の下に先進国の中にあって日本だけが金融を長いこと緩和しなかったことが突出する形での円高に結びついたと考えればいいのかしら。だとすると、次の図式が実現したのでしょうね。

 (不景気をものともしない新市場創造に結びつく新規事業開発が遅れている ⇒ 新規需要の創出が遅れている ⇒ 世界は供給力が過剰になっている ⇒ 先進国は金融を緩和して需要増を図ろうとした) + 投資利回りは先進国よりも開発途上国の方が高い

 ⇒ 先進国の金融緩和によって生まれた資金は内需拡大に直結せず、余剰資金が開発途上国に流出した。いいかえれば、先進国通貨が売られることになった ⇒ 先進国の為替レートが下がった ⇒ 金融を緩和しない日本は物価安もあいまって突出する形で円高になってしまった。

(高哉) そうなんだ。そういうこともあって日本は慌てて為替介入することになった。しかし、この為替介入は「ここが円高の許容限界点だ」という間違ったシグナルを為替市場に送ることに結びついた可能性がある。

 先進国の為替レートが下がることは開発途上国の為替レート上昇に結びつき、開発途上国は輸出がしにくくなる。通貨戦争が勃発したわけだ。為替介入には大きな限界があることもあって円高は収まりそうにない。政策当局は「複雑な実態の核心を見抜く力が欠如していた」と批判されても仕方がないんじゃないかな。事の本質は中国漁船衝突事件のビデオ公開を早々に行わなかったことと似ている。

 
この説明に接して、「人生・仕事・人間関係の岐路で似たようなことをしていたために取り返しがつかないことになってしまった」という人が少なくないんじゃないかな。そうでなければ、長引く閉塞状態に悩まされる人が圧倒的大多数を占める今の日本の実態になっていないはず。反省する人は『複雑な問題の核心を見抜くことができない実態』にあることを肝に銘じて欲しい。

(節子)
為替介入で円高を是正できないとすれば、根本にあるデフレ退治に乗り出すしかない。でも、デフレ退治のために内需を振興しようとしても市場が成熟している上に将来不安があるので、消費拡大は困難。企業の投資も海外にばかり向いている。

 『老害発生の仕組みからの脱却は企業の業績拡大を可能にする』にあるようなことをする企業が沢山出てくることが望まれるわけだけと、日本人特有の将来不安のことを考えると、限界がありそうね。どうしたらいいのかしら?

(高哉) さっき貴女が言った「不景気をものともしない新市場創造に結びつく新規事業開発が遅れている」ことに結びついている原因を除去することだ。「気が向いた時に、一人で腹筋運動もできる」座椅子の腹筋くんがヒット商品になったことは「市場が成熟しているから…」という言い訳は通用しないことを意味するからだ。

(節子) 腹筋の必要性を感じているが、“3日坊主”の壁にぶち当たったことが多いので、行動に至らない。一方において座椅子は必需品化している。ここに目を点けたのが腹筋くんというわけね。『老害発生の仕組みからの脱却は企業の業績拡大を可能にする』にある例と同様に

 深く潜在している需要を見抜く ⇒ 潜在需要を顕在化するための条件を見抜く ⇒ 条件充足に向けて果敢に行動する──、という図式をさっと実現させたことがポイントね。貴方が主張する『脳細胞間のネットワーキングが円滑にできる』と『縦横無尽の動きができるヘリコプターのような働き方が必要になった』の重要性を痛感する。・・・・・どうしてこうならない人が多いのかしら?

(高哉) 今貴女が説明した思考・行動の原動力となる鋭い直観回路が欠如しているからだ。見えにくいものが見えたり、気づきにくいことに気づいて初めてわくわくした気持ちになり、この気持ちが一気呵成の行動を生みだす。何をしていいか分からないので本を読んだり、人に教えて貰うようなことでは駄目であることに気づかなくてはならない。(関連記事 ⇒ 『私共 (新創業研究所) の役割』)

 適切で好きな道を歩むことを止めず鋭い直観回路入手に結びつく人生を送る。これが幸せな人生の要諦だ。さっき僕が話題にした新成長機会の追い求め方も必要であるのは言うまでもない。

(節子) 話は変わるけど、政府主導の内需拡大も可能なんでしょ。貴方は内外需を拡大して国難を吹き飛ばすチャンスが日本に到来したことに気づこう!』と主張しているんだから。

 
羽田は第4滑走路がオープンしても増加し続ける需要にいずれ応えられなくなるので、交通整備などの施策を講じることを前提とする羽田・成田・茨城の三空港の一体化が貴方が言う通り実現するでしょうね。そういいうことを見込めば、東京の不動産需要は増加の一途を辿る。

 これに量的に緩和された資金が先行投資資金に使われれば、東京を中心とする不動産の価格が高騰して、これが株式市場に飛び火して、多くの人に金持ち感を与えてくれた資産効果が生まれるというわけね。貴方がさっき言ったことだけど。

(高哉) 資産効果だけではない。羽田国際空港の乗降客は第4滑走路がオープン前と比較して80%増になるという予測もある。この乗降客は素通りするだけではなく、東京などで仕事をするようになったり、住んだりするようになるので、オフィス、住居、関連施設・サービス需要を生み出すようになる。こういう実需がぐんと増えることを忘れてはならない。僕ががさっき言ったことの補足だけど。そうなると、

 個人の自立と創造の抜本的強化が必要不可欠になることに結びつく“される国際化”が進むにつれて『成長が見込める新しいサービス事業の開発が容易ではない』は昔物語になると思う。

(節子) ところが、現実は「日暮れて道遠し」となっている。 「24時間化」を標榜しているにもかかわらず、早朝と深夜に空港にアクセスできる公共交通手段がないために、国際線が竣工僅か一年で空洞化してしまった。早朝と深夜でなくても空港アクセスが悪いし、乗降手続きに時間がかかる。こういうことが原因して飛行機のスピードアップは意味をなさなくなっている。

 貴方の受け売りだけど、中枢機能の不在ぶりは酷すぎる。(関連記事 ⇒ 『政治主導欠如に起因する中央官庁の全体思考欠如が日本再生の足を引っ張っている』)どうしてこうなってしまっているのかしら?

(高哉) 僕が主張する『脳細胞間のネットワーキングが円滑にできる』と『縦横無尽の動きができるヘリコプターのような働き方が必要になった』とが程遠い状態になっているのは日本の中枢機能も例外ではないからこうなってしまっているんだ。

(節子) 日本再生のための標語は「鋭い直観回路入手に結びつく人生航路に舵を切ろう!」にしなければならない。難問に遭遇したらその場しのぎではなく考え抜くことをモットーにしないと、この標語は意味をなさなくなる。そういう意味で聞くんだけど、意思疎通円滑化手段である携帯電話の普及のことをどう思っているのかしら?

(高哉) 次の図式が実現していることに気づいたから携帯電話の利用は必要最低限に留めることを勧めたい。

 日本人は情緒一体感をものすごく大事にする + 共同体は崩壊に向っている ⇒ 日本人の心情を捉えて携帯電話が普及した ⇒ 独りで考え抜く時間が大幅に減った ⇒ 脳細胞間のネットワーキング力がますます弱体化した ⇒ 老害発生の仕組みにはまりやすくなった。


個人が依存する手段の変遷


2006年11月26日作成の上記フロー図の正当性が7年3ヶ月後に具体例で証明されました。→『昭和な会社が強い』(2014年2月17日号「日経ビジネス」)


 「携帯電話よサヨナラ、適切で好きな道よコンニチは」の時代になる
「しまった」となることの背景にマンネリズムがある

 しかし、長年の習慣から脱却することは至難の業。「習慣は変えられない」は心理学の常識だからね。ここに、「このままでは駄目だ」となるカルチャー・ショックを与えて悪しき習慣を吹き飛ばし、良き習慣を身につけることを可能にする方法があることを知ってほしい。→ワタナベ式問題解決へのアプローチ


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