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                                    2003.9.30新規掲載(2011.8.218更新)
民間経済は中枢機能の麻痺が目立っている (2003/9/30号)

『The Economist』September27th 2003の71頁から転載

 世界金融危機』がダントツ世界一のダメージを日本経済に与えたのは、深く潜在していた日本経済の脆弱さが顕在化したからにすぎないからです。この脆弱さとは何か? 素材を適切に組み合わせて素晴らしい建物を創るように人材などの経営資源を使いこなしていないことです。企業経営における構想力・独創力が決定的に不足しているのです。(関連記事 ⇒ 『デフレ経済の本当の理由』)

 こうしたところに3.11ショックが起きました。デフレ経済の本当の理由を踏まえた抜本的対策を講じない限りは日本経済の再生は困難でしょう。『個人のパワー不足は内需低迷にも結びついている』ということもあることを忘れてはなりません。

 こういう状態を放置したまま財政政策・金融政策を講じてもほとんど効果がないことを覚悟しなければなりません。日本経済はローラー・コースターに乗っているような危うい状態なのです。この根拠を二つ示しましょう。

(根拠1)
日本経済は砂上の楼閣に似ている

 日本経済のエンジンである輸出産業は「アメリカの旺盛な消費需要が中国経済の躍進を支えている ⇒ 中国経済の躍進がアジア経済の躍進を支えている」という図式の下に成り立っていた。しかも、この図式を支えているのがアメリカの膨張し続ける巨額の赤字だったのです。

(根拠2) 日本経済が乗っている地盤は崩れかねない

 輸出産業が支えている日本経済は「アメリカ経済の赤字拡大は現状路線を歩む限り長続きしない(金融危機が財政危機になってしまった) ⇒ アメリカによる世界経済牽引が困難になる ⇒ 中国経済躍進を支えている輸出拡大が困難になる ⇒ アジアの外需主導型経済にブレーキがかかる」という図式の餌食になる可能性がある。


 日本経済を支える企業と個人が3・11ショックを乗り越えつつ新時代に相応しく再構築できれば、「ローラー・コースターに乗っている = 再構築の時間が与えられている」となるのですが、果たしてどうなるのでしょうか? 再構築は容易ではなさそうです。主な理由として三つあげることができます。



(理由1) 将来を見通す能力が大幅に不足している

 
様変わりした環境への適応に成功するためには、異変待ち受け型の事業展開をしなければなりません。ところが、過去の延長線上のやり方でよりよいものをより安く…という思考パターンが染み付いていることが三つの例を生み出しましたが、同じようなことが繰り返される危険性があるのです。

(例1) インテルはDRAMでずるずる後退。そこで、マイクロプロセッサーやデザイン系で勝負することを決断し、そこへR&D投資を行っている。一方、わが国の半導体業界は正反対の行動を採り、苦境に陥った。

(例2) アメリカは将来性があれば、2〜3年は利益が出なくてもOK。ところが、日本は目先利益追求主義 ── こういう事情の下に、特殊技術を持った日本の中小企業のアメリカによる囲い込みが進んでいった。(財政危機に陥ったアメリカには世界的に優良な企業が多いのです)

(例3) よりよいものではアメリカはITを駆使することにより日本を凌駕。より安いものではローコスト・ハイテク化の開発途上国の方が日本よりも上である場合が多い。


(理由2) ビジネス・モデルが再構築できていない

 1993.9.6日付けの『The Economist』によると、技術開発のあり方別 (trend following との比較) の成否の割合は次のようになっています。

        ・
mental inventionの場合は3対1
        ・
need spotting の場合は6対1
        ・solution spotting の場合は7対1
        ・
aking advantage of random eventsの場合は13対1

 上記の数字は技術開発の投資効率を上げるためにも事業構想を先に確立することの必要性を示唆しています。(必要性に応えるための具体策 ⇒ 『異変待ち受け型の事業展開』 )

 ところが、日本の産業界の大勢は逆で様変わりした環境に適応することなく相変わらず過去の延長線上を歩んでいるのです。
この結果、1990年に1位だった国際競争力の順位が2008年には22位に転落してしまったのです。IPadが爆発的に売れている理由を考え抜ぬいて反省しなければなりません。

 
「どんな社会をデザインするかが教養教育の柱になるのだが、今の日本にはそれに当たるものがない。専門知識だけがどんどん増えて、それを束ねる基準が現れない」という是認するしかない識者の批判は日本の産業界にも当てはまるのです。(関連記事 ⇒ 『デフレ経済の本当の理由』)


(理由3) 銀行は最後の頼みの綱になれそうでなれない

 環境が様変わりしたにもかかわらず、日本の企業が過去の延長線上を歩みがちである。── このような状態に陥っているのは、前述したようなことだけが原因しているのではありません。日本の社会が蛸壺型社会から脱出できていないために、適切な思考の結果を生かせないことも原因しています。

(証拠1) ある建機メーカーは佐藤工業に倒産の危険性があることを知りながら販売して貸し倒れとなり、巨額の不良債権を抱え込んでしまった。(この背景には、「従業員の新しい就職先を斡旋できない ⇒ 従業員を解雇して時節到来を待つことができない + 倒産不安のない新しい販売先を開拓できない」という図式があるようなのです)

(証拠2) 世の中はこれからどうなるかを的確に予測する ⇒ 予測結果に基づく事業を構想する ⇒ 構想した事業具現化のために必要な技術を設定する…という図式の行動を企業が採ることができにくい or  臨機応変の異業種交流ができにくい ⇒ 世界のトップ水準の技術開発力を持ちながら経済が再生できていない。

 銀行は様々な業種にまたがった数多くの企業や個人と取引関係にあります。したがって、蛸壺型社会における社会横断的なネットワーキングの頼みの綱です。ところが、この能力が潜在したままであることが多いために、上記「証拠」のような悲劇を招いてしまっているのです。

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