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【斬新な着眼】


個人のパワーが大幅に不足している (2003/10/6号)


 世界金融危機』が勃発する前でも日本人は脆弱だったのだ。この脆弱さを克服しなかったために世界金融危機がダントツ世界一のダメージを日本人に与えたのだ。 そして、このままの放置は多くの日本人の生活が悲惨になっていくことに結びつく。── こういう認識を持って以下の文章を読んでください。(2010.2.1記)

 企業環境が大きく変化している割には、企業の中のサラリーマンの生活ぶり、仕事ぶりは大きく変わっていない── 、と言われがちですが、サラリーマンはのほほんとしているのでしょうか? 「否」です。変わりたくても変われない場合がほとんどなのです。

 男性の54%、女性の36%が「独立・開業」を考えた (2002年の第一生命の「ライフデザイン研究所」の調査結果)。ところが、実際の起業率は世界最低の水準にある。 (証明データ ⇒ 『The Economistの図表』) ── この数字が変わりたくても変われないことを示しているのです。

    Nikkei Business 2003年1月27日号の36頁から転載

 羽ばたきたくても羽ばたけない状態に陥ってしまっているのはどうしてなのでしょうか? 原因は大きく分けて三つありそうです。

(理由1) 孤独でゆとりを失っている

 “同病相哀れむ”形で気楽に話し合える人が日本的経営の崩壊傾向によって自分の周囲から姿を消しつつある。「この人は…」と思っても頼りにならない。なぜなら、無責任な人が増加しているからです。何が原因している、と思いますか?
 
 環境が様変わりしたために、「真面目に働き続ければそれなりの地位と収入が得ることができる ⇒ 無責任な行動を採りたい…という誘惑に勝つことができる」という図式が姿を消してしまった。さりとて、
 
 個性的な生き方をする ⇒ 信念に基づいた行動を採る ⇒ 誘惑に強い──、という図式も期待できない。信念に基づいた行動を仮に採っても、「長年に亘って癒着した人間関係を続けてきた ⇒ 正しくない行動をお互いに黙認してきた ⇒ “脛の傷”をお互いにかばいあう体質が醸成された」という図式が色濃く残っているからなのです。(補足説明 ⇒ 『長引く不況と無責任行動は同根である』)
 
 日本の社会には「正直者は馬鹿を見る」ところがまだまだ沢山あるのです。あの雪印が牛肉の産地を偽った事実を告発した業者は仕事を失ってしまった。 ── この事実が何よりの証拠です。
 
 上記したようなことが孤独を、リストラによる人員減の中で仕事量の増加がゆとり喪失を、招いているのです。日本のサラリーマンは朝早くから夜遅くまで働いてアップアップしています。特徴のない同じような事業をしているために過当競争に陥っていることが大きな原因になっているからなのですが…。
 
 「くもん研究所」が1992年の夏に全国の小学校4年生から高校3年生の子どもを持つ父親をミニコミ誌で募集し、531人を対象に実施した、下記の調査結果が上記したことを数字で裏付けています。


 
腹を割って付き合える友人 ── 「職場の同僚・仲間」が前回の32%から今回の24%に減り、高校までの友人、大学時代の友人に次いで3番目になった。「そういう関係の人はいない」に○をつけた人も6人に1人いた。

家族に心がけていること ── 前回1位の「家族の誕生日等は一緒に過ごす」は49%から37%へと大きく減った。

妻への期待 ── 1位は「家を守って欲しい」で42%から46%に増えた。「夫の言うことに逆らわないで欲しい」が増えるなど上に立ちたがる傾向もうかがわれる。

 (夫は家庭にいる時間が少ない。妻は余暇活動や家計助力のために社会化が進んでいる。 ── この二つが結びついて妻の夫離れが進んでいることの証しである、と理解すべきでしょう)

子どもに求める将来像 ── 「家族を大切にする人になって欲しい」が7割。(仕事に打ち込める人になって欲しい」の倍以上だった。


(理由2) 改革は短期的かもしれないが豊かさの放棄に結びつく

 個人破産が急増しています (証拠 ⇒ 『The Economist』掲載のデータ)が、世界第2位の経済大国になったことが生み出した過去の蓄積はまだ十分にあります。そのために、

 親と同居すれば働かなくてもよい。健康保険は家族単位だから心配ない。親が死んだら家を売ってそれで生活する。お金がなくなったら生活保護を受ければよい──、という意識を持っている人が少なくないのです。

 帝政ロシア崩壊はより良い生活をその先に約束しました。だからロシア人の創造に火をつけました。ところが、日本の場合はそうはならないのです。なぜなら、今は良い生活であるので、それを壊しかねない改革には気が進まないのです。


(理由3) チャレンジしたくてもチャレンジできない

 多くの日本人は二つの意見に折り合いをつけることができない状態に置かれています。

(意見1) 競争しても、だれが有利なのか最初からわかっている。チャンスが平等とは思えず、努力しても仕方がない。そんな不平等な社会になりつつあることが停滞感をもたらしているのではないか?

(意見2) チャンスはむしろ等しく開かれている。問題は、伸びるべき能力の足を引っ張ってやる気を失わせている日本の画一主義にある。横並びの仕組みを取り払って競争することが、社会に活力を呼び戻す道だ!

 これでは閉塞感に悩まされて当たり前です。どうしてこうなってしまっているのでしょうか?

 日本の社会は元々人間関係が癒着しやすいので、アメリカのようなオークション (auction) 性は期待できない。その上、成長の限界によりチャンスが少なくなったので、「横並びするしかないように思われる ⇒ 親と子の地位の継承性を強化したい、という動機が高まる」という図式が実現しやすくなっているからなのです。

 こういうときに必要なのは一人一人が様変わりした環境に適応できるように『ビジョンと実現策』を適切に策定することです。なぜなら、そうすることによって、
 
 自分の市場性のある特徴並びに自分の特徴を増殖しつつ発揮するための課題が掴める ⇒ 自分のプレゼンテーションの仕方が分かる ⇒ 適切な人物が適切な問題意識を持って異業種交流会に参加する ⇒ ネットワーク型社会が急速に進展する ⇒ 不足能力が臨機応変に補える ⇒ イノベーション・ラッシュが生まれる ⇒ 既得権益が急速に価値を失う ⇒ 癒着的な既存の人間関係が価値を急速に失う──、という図式の実現が可能になるからです。

 ところが、この可能性を現実のものにすることを妨げる二つの壁が立ちはだかっていることが実に多いのです。

(第1の壁) 構想力・独創力の大幅不足

 問題を解決しなければならない事態に遭遇すると、「思考の三原則」(全体を見る/長い目で見る/根本的に考える)を適用することなく、小手先的な対策を講じることしか頭に浮かばない。このようなパッチワークのような問題解決策が通用しにくくなったにもかかわらず。(通用しなかった具体例 ⇒ 『バブルが発生した本当の理由』&『東北新幹線「はやて」のずさんな事業計画等から考える』)

 パッチワーク主義が日本人のDNAのようになってしまったのはどうしてなのでしょうか?

 蛸壺型社会の中に閉じ込められ続けてきたために、世の中全体を幅広く学習する習慣は醸成されようがなかった。他国で創造された制度や技術を導入して改良・改善をひたすら積み上げさえすれば成功できた。したがって、改良・改善の枠を超えた思考・行動を抑制するために減点主義が採用された ── こういう環境に日本人は置かれ続けてきからです。


(第2の壁) 周囲の人々の習慣の壁

 抜本的強化に成功した構想力・独創力を駆使して、ビジョンと実現策を適切に策定する。そうすることによって、上記「図式」実現の可能性はすんなりと実現されるでしょうか? 「否」です。なぜなら、

 ビジョンと実現策にしたがって自分を改造するためには、人間関係を変えなければならない。ところが、この人間関係のドラスティックな変更は容易ではないからです。蛸壺型社会が超長期に亘って続いてきたために、人間関係を変えることを妨げる巨大な習慣の壁があるのです。

(第3の壁) 異俗を排除する文化の壁

 抜本的強化に成功した構想力・独創力を駆使しての、ビジョンと実現策の適切な策定並びに人間関係をドラスティックな変更に成功しさえすれば、上記「図式」実現の可能性はすんなりと実現されるでしょうか? 「否」です。なぜなら、脱横並び的行動を排除する傾向を多くの日本人は持っているからです。

 「異端児社員が評価されないのはなぜか?」の理由が次のようになっている。 ── これが上記したことのひとつの証拠になるものと思われます。

     上司が使いこなせない・・・・・・・・・・・54%
     周囲と和を保てない・・・・・・・・・・・・・43%
     従来のやり方を無視する・・・・・・・・・27%
     周囲がついていけない・・・・・・・・・・・24%

 上司も周囲も視野が狭い。このことが上記の結果を生んだと考えられるのです。無論、異端児にも視野を広げて相手の立場を考慮に入れた言動を採る等の反省が必要です。 (解決策 ⇒ 『概念拡大と論理化型の会話』)


第1部 わが国の現状認識の結論 : 羽ばたかぬ人は“ゆで蛙”になるしかない

 「1 政府は超然と迷走している」「2 民間経済は優れた要素を生かせず低迷している」「3 個人のパワーが大幅に不足している」をお読みになり、

 「個人パワーの大幅不足並びにその原因の放置が1並びに2に結びついている」と結論づけられた方が多いことでしょう。この結論は正しいのです。なぜなら、時代は様変わりして、
 
 「知識経済の時代がピッチを上げて到来しつつある ⇒ 自分を殺して清々粛々と動くような人間集団の企業は存続できなくなりつつある」
 
 「情報化並びにグローバル化が急速に進展しつつある ⇒ 国民総囲い込み型の国家パワー発揮が困難になりつつある」
 
 という二つの図式の実現が逆戻りすることは決してないだろうからです。
 
 上記「二つの図式」のことを「国や企業の問題であって、個人には関係があまりない」と言えるでしょうか? 「否」です。なぜなら、二つの深刻な事態が浮上してきたからです。

年金不安があるだけではなく、“虎の子”の個人貯蓄が底をつく方向にある。 (証拠 ⇒ 『The Economist』掲載のデータ)
老後保証が困難になりつつある上に、退職金が最後の頼みの綱になれそうにない。 (証拠 ⇒ 『日経ビジネス』掲載のデータ)
 

 水の入った釜に火をつけて、その中に蛙を入れる。すると、蛙は徐々に水の温度が上がるので、生命の危険を察知することなく、茹で上がるまで釜の中に居続ける。 ── この“ゆで蛙”現象を他人事としてすますことができない時代がやってきたのです。

 国民一人一人が甘えを捨てて自立と自律を実現しない限り、にっちもさっちもいなくなりつつあることを肝に銘じなければならないのです。 (日本経済の現状と将来 ⇒ 『各種データ』)

 それではどうしたらよいのでしょうか? 羽ばたきたくても羽ばたけない状態に陥ってしまっている背景にある三つの理由として指摘した、若者の深層心理への適切な対処が必要であることは言うまでもありません。


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