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【脱集団主義の時代】


渡辺高哉著『脱集団主義の時代』 (1997.1.7刊) より転載

2006.4.10並びに2006.7.28に緑色部分更新

→個別企業再生の秘策

15. 全員参加型の新創業プロジェクト

 日本的経営が完全になくなっていないことを前提にしながら企業成長を勝ち取るための四つの条件を実現する方策はよく理解できました。でも、この四つの条件を実現させる大前提は「創造的企業風土」だと思います。この企業風土が日本の企業にあればよいのですが、このような風土は概して醸成されていないと判断しています。 

 なぜなら、日本の企業は概して企業家精神を発揮して高いリスクに挑んだ経験がないに等しいからです。この問答集の前のところで出てきた「量産効果追求サイクル」が通用したために、量産効果追求一辺倒への傾斜は本当は高いリスクが伴うのですが、実際のところリスクは異常に低かったのです。

 だからこそ、新規事業・新商品開発のための市場調査も詰めの甘いものになってしまったのではないでしょうか。企業家精神を発揮して高いリスクに挑んだ経験を積まずして、詰めの厳しい調査は行えるわけがありませんから…。

 ところが、事態は一変して、「量産効果追求サイクル」が通用しなくなってしまった。今こそ、「創造的企業風土」の下、企業家精神を発揮して高いリスクに挑まなくてはならない。「しかし、それは望めない」となれば、企業成長を勝ち取るための四つの条件の実現に向けた足どりはふらついたものになるのではないかと心配なのです。

 事業展開シナリオ策定に参加することにより、「よしこれだ!」と前向きの姿勢になれても、「創造的企業風土」がありませんと、この前向きの姿勢は長続きしないと思うのです。組織の風圧は凄いですから…。それに、事業構造を適切に再構築したり、オリジナルな商品開発に成功し続けるに必要な構想力は長い間潜在したままで鍛えられていない。

 日本的経営の崩壊や母産業都市機能の再構築が必要不可欠になったので、「創造的企業風土」は実現するでしょうが、成り行き任せでは時間がかかりすぎます。短時間で理想的な企業体質が実現できる妙策があったら、是非教えて下さい。

「創造的企業風土がないので、新規事業がやりにくい。わが社のこの保守的な体質はなんとかならないでしょうか」と愚痴をこぼす人は少なくありませんが、こういう会社を実際に見ますと、二つのことのいずれかが原因している場合がほとんどなのです。

 開発を担当する部門自身が新規事業開発を適切に行うための方法論に精通していないため、他部門の人が何となく危険を感じて反対に回る。あるいは開発部門だけがこの方法論に精通しているために、他部門の人は開発目標を正しく評価できないために、「理解できないことは賛成できない」となってしまっている。これが原因のひとつです。

 仮にこの関門をパスできても、新規事業の開発には長期採算主義が適用されなくてはならないにもかかわらず、逆に短期採算主義が適用されたために、冷や飯を食わされ、寂しく会社を去ったような悪しき実績がありますと、新規事業を担当したがらない。誰しも損をしたくありませんから。これがもうひとつの原因です。

 社会的動物である人間、特に集団主義の中で生きている日本人には「変わりたくても変わることができない」ということがあることも忘れてはなりません。(補足説明 ⇒『周囲の人々の習慣の壁&異俗を排除する文化の壁』) この問題の解決に役立つのが大手を振って変わることを可能にする全員参加型の新創業プロジェクトなのです。


 全役員と全従業員が参加しての事業展開シナリオ策定作業は、「企業が生き抜くためには事業構造を再構築しなければならない。事業構造を再構築するためには、かくかくしかじかの能力を企業内に新たに取り込まなくてはならい」というコンセンサス形成に結びつくだけではなく、「創造的企業風土」づくりにも貢献できるというわけですね。

 こんな大きな効果があるのでしたら、全役員と全従業員が参加しての長期経営計画の策定作業は実施してみたいものですが、全員参加となると巧くいかないのではないでしょうか。全員の意見を組み入れるのであれば創造的なものにはなりにくい。さりとて、少数者が強引にまとめてしまうと、当事者意識が期待できなくなってしまう。どうすればよいのでしょうか。

全員に当事者意識を持たせ、かつ全員に適切な新規事業開発を可能ならしめる方法論を修得させつつ、創造性の高い事業展開シナリオなど策定に成功するためには、実行しなければならない条件が四つあります。

 中心人物が予め創造性の高い仮説をつくりあげ、「かくかくしかじかの理由によりかくかくしかじかと結論づけたいと思いますが、反論・疑問や補足すべきことはないですか。また、この点について教えて頂きたいのですが」といった内容からなる「ディスカッション・ドラフト」をまずつくることから作業を出発させる。これが第一の条件です。

 このディスカッション・ドラフトに基づいた徹底的な議論を全社レベルで展開する。但し、ほとんどの人は議論し慣れていませんから、とにかく何でもいいですから発言させ、「こういうことをおっしゃりたいのですね。ということは・・・・・」といった具合に話を発展させる工夫が必要です。これが第二の条件です。(詳しくは ⇒ 『概念拡大と論理型の会話』)

 議論の結果は録音しておき、中心人物が仮提案書を作成する。但し、議論の結果をただ単に整理するのではなく、録音内容を聞きながら、「なぜだろうか、だからどういうことが言えるのだろうか」と伸びやかな追加発想を行い、独創的な結論をつくり、この結論の根拠に各人の発言などを使わなくてはなりません。これが第三の条件です。

 この仮提案書ができあがったら、全社レベルでこの仮提案書の補正作業を行い、この補正結果をも踏まえた提案書を中心人物が作成する。ここで大事なのは補正結果は「この意見はこのように解釈した」といった具合にその趣旨を解する形で提案書に採り入れることです。意見は無視してもとらわれてもいけないのです。これが第四の条件です。


そういうやり方が実行できれば、全役員と全従業員をチューンアップしつつ、事業構造を適切に再構築するためのアクションプランができるわけですから、新創業プロジェクトの名が相応しいですね。でも、このプロジェクトを円滑に推進するためには全社レベルの組織化が必要と思いますが、この組織化はどうすればいいのでしょうか。

経営者でもない人物が長期経営計画策定のチャンスを与えられたとき、どうするかを素直に考えて見ればよろしいのではないでしょうか。全役員と全従業員が効率的に意見交換をするにはどうしたらよいか、やっとのことで策定される長期経営計画に対して社長が全面否定しないようにするにはどうしたらよいか。この二つを考えるのではないでしょうか。


そうですね。仮説の検証と肉付けを行う形で意見交換をしたいですから、仮説設定に必要な資料を集めたり、つくったりしてくれるスタッフがまず必要です。それから、企業の色々な立場を代表し、かつ問題意識が旺盛な人と濃密な意見交換をしたいですから、こういう人々からなる委員会をつくりたいですね。

 そして、この委員会メンバー一人一人が分担して全従業員との情報のパイプ役を引き受けて貰いたいものです。意見交換の時に、委員会メンバーの発言には全従業員の意見も反映して貰いたいですから。

 策定する長期経営計画の決定権は役員会に、経営責任は社長にあるわけですから、プロジェクト進捗の要所要所で全役員との意見交換も確実に行いたい。これを確実にするために、社長に新創業プロジェクト推進委員長に就任して貰いたいものです。このような考えでいかがでしょうか。

従業員代表である委員会メンバーが分担して全従業員との情報のパイプ役を果たすやり方ですが、一対一で意見交換をするのは効率がよくないですから、分科会の形を採って集合し、けんけんがくがくやって貰った方がいいでしょうね。分科会の形を採ることにより三つの効果が期待できると思うのです。同じことをする分科会が複数存在するわけですから競争意識を煽れること、これが効果のひとつです。

 それから、分科会としての正式発足ですから、全従業員に当事者意識が期待できること、これが二つ目の効果です。競争意識と当事者意識がある上に、集団討議ですから、責任ある活発な発言が期待できること、これが三つ目の効果です。


 「企業が新創業プロジェクトを導入したい。ついては新創業研究所の助力を得たい」というご要望に応える方法としては次の手順を踏むことをお勧めします。

 社内埋没資料から業績拡大策創出の第一・二段階の作業を新創業研究所が引き受ける + (社内を4分野に大別する ⇒ 経営陣全員を4グループに分割する + 分野別の代表的な論客を4人選定する + 全社員を4グループに分割する) ⇒ 私共が創りあげた業績拡大策に基づくくQ&A(選定された論客4人/新創業研究所)を行う ⇒・・・・・・・

 ●4グループに分割された経営陣の役割 : 分野別の代表的な論客の顧問
 ●4グループに分割された社員の役割 : 分野別の代表的な論客4人に対する意見具申


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