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 ニーズには本当と嘘がある

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【脱集団主義の時代】


渡辺高哉著『脱集団主義の時代』 (1997.1.7刊) より転載

→個別企業再生の秘策

14. 人為的リスクを排除する秘訣

成長分野への進出、事業機会の確実な把握、能力の見直しと入れ替えの円滑化の三つが適切に行えても、「後は運です」と言われますと、なんか拍子抜けがしてしまいます。だったら、これまで通りに成り行き経営の方がよいのではないかと思うのです。だってそうでしょう。成り行きだったら、何かあったら後追いしやすいですから。

 ですから、「運は呼び込める」との先程の言葉は凄くいいです。勇気が沸いてきて、「大変なことを楽しく」やれそうなのです。でも、そんなこと可能なのでしょうか。

新規事業・新商品の開発で失敗するのはこの問答集の前のところで紹介したような、着想は素晴らしかったが、環境変化に合わせた商品の改良改善を怠ったことが原因するようなことばかりではありません。ニーズには「本当と嘘」があることに気づかなかったばかりに商品仕様の設計を間違えて最初から大失敗することだってあるのです。


ニーズには本当と嘘がある」って、「こういう商品が欲しいが、但し、こういう条件が充足しなければ買わない」にもかかわらず、「こういう条件」を詰めることなく、「こういう商品が欲しい」と聞いただけで新規事業・新商品開発に踏み切って失敗することを指しているのですか。

その通りです。消費者が本当に必要としてるのは「立体型の洗濯乾燥機」であるにもかかわらず、「洗濯機と乾燥機の一体型の潜在需要大」という市場調査の結果を得て、「並列型の洗濯乾燥機」を量産したがほとんど売れずに、デッドストックの山を築いてしまったM社。

 「医療機器のニーズは大きい」という市場調査の結果を得て、医者の診断論理は標準化からほど遠いことに気づかずに、量産して大失敗したT社。この二つなどがいい例です。いずれもアンケート調査の失敗なのです。


「アンケート調査の失敗」っておかしなことを言いますね。できるだけ数多くの消費者の意見を聞くにはアンケート調査しかないではないですか。それとも、できるだけ数多くの消費者の意見を聞くのにアンケート調査以外の何か巧い方法があるのでしょうか。あるのでしたら、是非教えて下さい。

できるだけ数多くの消費者の意見を聞く手段としてアンケート調査に勝る方法はありません。但し、調査したいことについての仮説もなくして、いきなりアンケート調査をすることは絶対に避けなればなりません。創造性の高い結果を得たいのであれば、三段階の作業が必要です。

 調査したいことに対して意見交換や文献調査などを行い、「こういうことが分かったが、こういうことがまだよく分からない」というところまで知識レベルを高めてからアンケート調査票を設計する。これが第一段階です。

 アンケート調査を行う前に、調査事項についての仮説がありますと、回収されたアンケート調査を見ながら、色々な集計方法がひらめくものです。このひらめきを生かした集計作業が第二段階です。

 集計結果をただ単に並べるだけの調査報告書では創造性の高いものとは言えません。「こういう仮説を立て、この仮説の検証と肉付けを行うためにアンケート調査を行った結果、こういう結果が得られた。この理由は多分こういうことだろう」といったような解説が必要です。これが第三段階の作業です。

 ですから、調査結果を得たい人はアンケート調査を他の人に委託するにしても、第一段階の作業には深くかかわり、調査結果の仮説を持たなくてはなりません。仮説を持つことにより、調査報告書に接し、色々なひらめきが生まれたり、場合によっては集計のやり直しを指示できたりするからです。


アンケート調査の前に仮説設定の作業を充分に行うと、「何を知っていて何を知らないか」が分かるので、盲点のない調査課題が設定できるだけではなく、強烈な問題意識を持てる。したがって、ひらめきにより秘められている事実が発見できるので、リスクの発生を未然防止できる。こういうことをおっしゃりたいわけですね。

その通りです。「カイゼン」ではなく、オリジナルな商品を開発するのであれば、知らなくてはならないこと、やらなくてはならないことはどこかにちゃんと用意されているなんてことはないことを覚悟しなければなりません。しかし、知識開発の素材となる情報は人間の頭の中を含めれば無尽蔵です。

 無尽蔵に存在する情報から適切な情報を選択し、適切な組合せを行うことに成功するためには、五つの条件を備えていなければならないのです。まず必要なのは前々へと駆り立てる挑戦精神です。この挑戦精神がなければこんな大変なことは実行に移すことはできません。

 このような挑戦精神を豊かにするためには、「自分の置かれた立場は到達目標にほど遠い。なんとかしなくては」と思い続けるような状況に追い込むことが必要です。このハングリー精神が第一の条件です。

 ハングリー精神がいかに旺盛であっても、特定の世界で成功し続けるとついついできてしまう固定観念がありますと、重要な情報を見過ごすことになりかねません。そういう意味で、固定観念をなくし、臨機応変にアンテナの張り直しができなくてはなりません。この臨機応変に視座を適切にできることが第二の条件です。

 臨機応変にアンテナの張り直しができても、アンテナの性能が悪ければ必要な情報をキャッチできません。そこで必要になるのが専門知識を臨機応変に更新し情報に対する判断力を適切にすることです。この原動力となるのが何事にも「なぜだろうか」と思えるような感受性です。この知的好奇心を常に旺盛にすることが第三の条件です。

 情報活動がここでストップしますと、独創性のない平凡な結論しか出てきません。キャッチアップや「カイゼン」主義から脱するためには、頭の中に蓄積された知識の独創的組合せや独創的な組合せから生まれる飛躍的な発想が必要です。この独創性に結びつくひらめきを次々と生むのが第四の条件です。

 いかに数多くのひらめきが生まれても、そのままですと、支離滅裂であったり、実現不可能であったりします。そこで必要になるのが、ひらめきを論理チェックしつつ、補完的な追加発想をするために、ひらめきを論理の連鎖にまとめことが必要となります。これが第五の条件です。


特定の世界で成功し続けると、どうして固定観念が生まれやすくなるのでしょうか。人間は加齢に応じて構想力が強化される可能性があるにもかかわらず、固定観念がこれを阻むという話がこの「問答集」の前のところでもありましたので、固定観念発生の仕組みをこの際しっかりと認識し、今後の人生指針にしたいと思っているのです。

火事だけが煙を出す原因ではないにもかかわらず、煙を見て火事と決めつけるようなのが固定観念ですが、特定の世界で成功し続けると、ついつい固定観念が生まれたり、強化されたする原因は三段階に亘って存在しているのです。

 社会経験を積むにつれてやらなくてはならないこと、やりたいことは増える。一方において、社会経験を積むにつれて「こうなったらこうなる。こうだったらこうだ」という経験則が増える。となると、経験則に従った機械的判断、プログラム化された思考に頼りがちとなります。これが固定観念が生まれる温床です。

 但し、思考プログラムの精度は人によって大きく異なります。過去の経験則が使えず、しかも助けてくれる人のいない世界での仕事の経験が豊かであればあるほど思考プログラムの精度は高くなります。言い換えれば、固定観念が少なくなります。

 ところが、集団主義と「カイゼン」主義の世界で業種や職種を変えることなく人生を送り続けてきた人がほとんどですので、本人の潜在能力とは無関係に思考プログラムは単純なものにならざるを得ません。かくして、固定観念の温床に固定観念がしっかりと育つことになるのです。

 しかも、このような状態で成功を続け、権力の座につきますと、聞く耳を持たなくなり、固定観念は強化されることになるのです。だから、賢明な権力者は辛口の助言を平気でする秘書や外部ブレーンを求めたりするのです。


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