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 チームプレイの落とし穴「合成の誤謬」
 人間は行動力学「性格と歴史的立場」に支配されやすいことを認識しよう! 

 2014.4.14掲載(2016..6.29更新)


創造的問題解決の源「悩み事の根本的原因解明」の勧め 
── 戦後最大の謎『三億円事件』の総合的創造的考察 ──

 秘めた(潜在)事実・チャンス発見の秘訣を本文から学び取ってください

 世の中が複雑になるにつれて問題解決に結びつく事実は気づきにくく、かつ広く散在するようになりました。したがって、闇雲に行う調査は樹海をさ迷うような状態になり、徒労を重ねるばかりとなります。どうしたらよいのでしょうか?

 鋭い直観回路入手に結びつく人生を送る or 鋭い直観回路を難問発生後に入手するために緻密な仮説を設定して「芋蔓式の調査と数珠繋ぎの思考」を行うor 総合的創造的脳力者が主導する執拗なQ&Aサービスを受けることです。これは新事業開発においても交渉事においても必要不可欠になりました。→新規事業開発成功に必要な理論的条件が完備していた深く潜在している新成長機会の継続的発掘の秘訣

 有効な具体策になる複雑問題の核心を突く脳力入手を可能にするサービスメニューを是非お読みください。

 緻密な仮説設定を嫌がる人に待ち受ける陥穽
 問題解決脳になっていない ⇒ 臨機応変力が欠如したままである ⇒ 難問解決行動は座礁に乗り上げる。のみならず、安易な姿勢が災いして鋭い直観回路入手に向けた人生の再スタートを切ることができない ⇒ 先行き不透明時代に呑み込まれる。

 →私共の悩み事相談は新時代の切り札「鋭い直観回路」入手に向けた人生の再スタートが切れるように緻密に設計されていることを肝に銘じてください


 上記したことの本質は、金言「知恵の寸借や知識の詰め込みだけでは挑戦的な新しい行動を引き出せない。引き出せたとしても挑戦的な行動が長続きしない」にも当てはまります。→いわゆる専門家への丸投げでは本当の意味での当事者意識は生まれない

 ウォークマンがiPodの追撃を受けて惨敗したのは、優れた技術力に頼り、市場ニーズに焦点を合わせた構想・独創を怠ったからです。→鋭い直観回路に基く果敢な行動力が企業の業績拡大を可能にする。この逆の事例も少なくありません。→老害発生の仕組みからの脱却は企業の業績拡大を可能にする

 同じようなことが交渉事にも当てはまります。癒着体質は真相解明を困難にする隠蔽体質に発展し、この隠蔽体質は次の図式の下に強化の方向にあるからです。

 (グローバル化と情報化とIT革命が進む一方である ⇒ 後発が先発にキャッチアップすることが容易になった ⇒ 比較優位の長期持続が困難になった) + (日本的集団主義の影響を受け続けてきた ⇒ 戦略発想力が鍛えられていない ⇒ 臨機応変に比較優位性を創り出せない) ⇒ 比較優位性創出のために道義に反する行動を採る。

 「真相解明が困難なのは仕方がない」ですまされるでしょうか? 「否」です。なぜなら、次の図式が示すように真相解明が社会生活を円滑に送るために必要不可欠になってきたからです。

 (世の中が成熟した ⇒ 活躍の場が狭まった) + (物質的に豊かになる等の共通目標を持ちにくくなった ⇒ エゴとエゴがぶつかり合い易い小さな物語の時代になった) ⇒ “小宇宙”を相互に理解しあい、利害を創造的に調整する交渉の出番が多くなった。

 日本の社会に癒着体質が染みついた仕組み
 村落共同体集合体の発展形である日本モデルが根付いた ⇒ 異俗に対する免疫力が培われなかった ⇒ 人間関係をウチとソトに峻別する習慣が根付いた ⇒ 性格と歴史的立場を見抜く力がないに等しい ⇒ 馴染みがない相手を警戒する。(具体例 ⇒ 『日米のビジネス・パーソンの行動の際立った違い海外に店を構えながら日本の顧客しか相手にしなくなった』)

 「このままでは人間関係は固定されてしまうので、この状態から脱したい」というニーズに応える形で登場したと考えられるのがSNSです。しかしながら、人間関係をウチとソトに峻別する「習慣の力」が災いして社会横断的人的交流は思うように進んでいません。

 深く潜在している新成長機会の発掘、難交渉の妥結。いずれにおいても鋭い直観回路頼みの芋蔓式の調査と数珠繋ぎの思考が必要不可欠な時代になったのです。そこで、テレビドラマ『三億円事件』(実際に起きた事件×推理小説家・松本清張×脚本家・竹山洋)を渡辺高哉が総合的創造的に考察した結果である「真相解明(悩み事の根本的原因解明)の見本」を提起することになった次第です。

 最後に一言。「深く潜在している新成長機会を発掘することなくして未来がない。証明困難事を証明しないと窮地から脱出できない。何とかしたい。スカイプを使った悩み事相談を受けてこの願望を叶えたい」という方は、何らかの工夫を講じて本文を読む前にテレビドラマ『三億円事件』を視聴することを強く勧めます。


 直観頼りの芋づる式と数珠繋ぎが真相解明を可能にする
── 「これだ!」となるような開発目標を思いつくに至る二つの例が示すように創造的問題解決は「天啓のような閃き→強い執念の源「わくわく感」の入手→ジグソーパズル思考ヘリコプターのような行動」によって可能になることを認識しよう! ──

追跡困難を意図した手の込んだ行動が犯人割り出しに結びついた
── 隠蔽工作が招いた誤算の論理(1)──

(節子) テレビドラマ『三億円事件』では明確でなかったことを推測して補うと、3億円強奪は6段階の行動で完結されたと言える。

    物陰から現金輸送車の出発を確認した後、盗難車1に乗って3億円を積みこんだ車を追い、行き先を確認してから盗難車1を乗り捨てる。そして、白バイに乗った警官を装って3億円を積みこんだ車を再び追う。(このことは犯人が3億円を積んだ現金輸送車が目的地に向かう日時を予め知っていたことを意味する)

    犯行当日前に銀行支店長宅に爆破予告 ⇒ 関係者はこのことを予め認識 ⇒ 白バイ警官を装った犯人の警告「この車にも爆破物が仕掛けられているので、直ぐ降りてください」 ⇒ 犯人が車の下に取りつけた発煙筒から煙が立ち込めるのを見て全員が現金輸送車を降りて一目散の駈けだし──、という手順で3億円を積みこんだ車ごと強奪した。

    3億円を積みこんだ現金輸送車を盗難車2が置いてある別の場所1まで走らせて、ジュラルミンのケースに入っている3億円をこの盗難車2に移し替える。(この場所1をわざわざ中継点に使ったのは、捜査がの場所2〈留守中の小林ユカ宅〉に及ばないようにするためであると思われる)

    この盗難車2を別の場所2(事件発生の1週間後に焼失した、留守中の小林ユカ宅)に移動。3億円をジュラルミンのケースから大きな袋に入れ替え。3億円が入っている大きな袋を待機させてあった盗難車3に積み、別の場所3(3億円追跡が不可能な米軍キャンプ空き地)に行き、この車をここに一時隠す。この間に3億円の行方が不明、500円札のみに通し番号があることが公表された。


盗難車2には実行犯特定の証拠物「イヤリング」を入れた空のジュラルミンのケースを積み込み、場所2に放置した。(小林ユカは浜野健次が殺されたことを知り、自殺しようとして衝動的に自分の家に火を点け、その結果、家が焼失してしまったのです)

    実行犯特定の証拠物「イヤリング」を入れた空のジュラルミンのケースが積み込みこまれた盗難車2はの場所2から犯行とは無関係な別の場所4(団地の空き地)に移動させ、シートを被せて放置。(ジュラルミンのケースに付着している泥がの積み替え場所突きとめに結びついた) そして、米軍キャンプ空き地に一時的に隠していた盗難車3は寄宿している姉夫婦宅に移動させた。

     大きな袋に入れた3億円は義兄の伯父(公安の仕事をしていた元警察庁高級官僚)が経営している、足のつきようがない治外法権的場所である戸田警備保障の金庫に入れた。

 これって用意周到な知能犯よね。完全犯罪になってもおかしくないのに犯人が割り出されたのはどうしてなのかしら? 読者が独自に抱えた証明困難事象を証明する際の参考になるように説明して欲しい。

(高哉) 証明困難な事象を証明するために必要不可欠な「点を見抜き、点と点を結び線にし、線と線を結んで面にする」創造的な作業の成果だ。これを図式化すると、次のようになるんじゃないかな。

 (からまでの一連の行動をやってのけるためには土地勘が必要不可欠である ⇒ 「地域社会に馴染んだ人物が犯人」と断定した) + (まともな人間はこんな不埒な行動を採る筈がない ⇒ 地域社会の不良に的を絞った) + (ジュラルミンのケースに付着している泥はの詰め替え場所の土地のものと判定された

  ⇒ の詰め替えが行われたであろう家の持ち主「小林ユカ」の身辺調査が行われ、彼女が暴走族「立川グループ」のアイドルであることが判明した ⇒ 立川グループのリーダー「杉本三郎」と親密な関係にある「浜野健次」が容疑者として浮上した。

(節子) 小林ユカの人間関係を調べれば、浜野健次が彼女の恋人であることは容易に分かる。その上、の犯行に使われた遺留品がある。この二つから「浜野健次が実行犯」と断定するに至ってもおかしくない。しかし、からまでの一連の行動は浜野健次がやってのけることは不可能ではない。

 にもかかわらず、「杉本三郎が共犯者」とされたのはどうしてかしら? 杉本三郎は事件が発生する前から深夜喫茶にいて事件のことをテレビニュースで知り、仲間と喝采していたというアリバイが成立していたのよ。

(高哉) 浜野健次は からまでの一連の行動を単独で企てるような知謀の持ち主ではない。彼の歴史がこのことを物語っている。

 小学校5年の時から母親代わりの姉を心の奥から信頼している。この姉が結婚してからぐれて不良の仲間入り。しかし、相変わらず姉夫婦宅に寄宿したまま。秀でた知謀の持ち主だったらこんな体たらくにはならない。 このことに駄目押しとなるできごともある。小林ユカとは別のガールフレンドから勧められたマリファナ吸引を断り、「意気地なし」と言われたので、「家には青酸カリがあるんだぞ」と反発したことがある。

 問題となる人物の性格と歴史的立場を見抜くことができれば、行動力学が分かり、「そういうことをするかどうか」が判断できるものなのだ。→『孤独の賭け』から学ぶ三度目の覚醒剤吸引で実刑となった三田佳子の二男

追跡困難を意図した発言がキーパーソンの存在発覚・証言に結びついた
── 隠蔽工作が招いた誤算の論理(2)──

(節子) 留守中の小林ユカ宅で3億円をジュラルミンのケースから大きな袋に入れ替えた。空のジュラルミンのケースに残されていたイヤリングは小林ユカが浜野健次にあげたものであった。この二つが「実行犯は浜野健次」という断定に結びついたわけだけど、「小林ユカが事件の真相解明の鍵」となったのはどうしてかしら?

 捜査記録にはイヤリングも小林ユカも残っていないので、主人公の武田が「空のジュラルミンのケースに残されていたイヤリングは小林ユカが浜野健次にあげたものであった」ことを知りようがないし、新潟の人と結婚するために立川に住まなくなったんだから「浜野健次の元カノ」というだけで武田の調査が彼女を素通りしてもおかしくない。

(高哉) 主人公の武田は元担当刑事の協力で「3億円が入っていたジュラルミンのケースに付着している泥が小林ユカの家が所在していた場所のものである」「小林ユカと浜野健次は恋人同士であった」ことを知っていた。ところが、共犯者容疑の杉本三郎は小林ユカが「米兵の恋人がいたので、無関係の浜野健次にイヤリングをあげる筈がない」と言っていた、と嘘をついた。

 この偽の証言を聞いた武田は「どうして嘘をつくんだろうか? 小林ユカを追跡して欲しくない重大なことが隠されているはずだ」となったからだ。

(節子) 素行不良だが、3億円強奪のための緻密な作戦を考え出すような杉本三郎が後でばれるような嘘をどうしてついたのかしら? 読者が独自に抱えた証明困難事象を証明する際の参考になるように説明して欲しい。

(高哉) 主人公の武田は真相解明の緻密な仮説を設定していたので、「犯人は3億円を立川基地に隠したんじゃないですか?」と杉本三郎の胸元に直球を投げ込むような発言をした。したがって、杉本三郎は武田の鋭い勘に驚き、「やばい。矛先をかわさないと自分の悪事がばれてしまう」となり、思わず嘘をついたんだと思う。性格発衝動脅迫の支配を受けると、墓穴を掘ってしまう典型例だ。

(節子) 「小林ユカを追跡してほしくない重大なことが隠されているはずだ」と思うに至った武田が小林ユカに会うために新潟に行くのは当然の成り行き。しかし、彼女が真実を語る動機が見つりにくい。結婚に敗れていたにしても将来のことを考えると、元カレとのことを赤裸々に語るのは損よ。にもかかわらず、小林ユカが武田に全てをぶちまけたのはどうしてかしら?

(高哉) 小林ユカは浜野健次を忘れるために結婚したが、この気持ちが結婚相手に伝わり、離別された。「自分と一緒に人生を送ろう」という気持ちの証としてイヤリングを空のジュラルミンのケースに残した健次が自殺したなんて嘘に決まっている。最も信頼している姉に殺されたので、「こんなお姉さんと一緒のお墓では可哀想」なので、彼女が浜野健次の霊を無縁仏として弔っている。── この気持ちを誰かに理解してもらいたい気持ちで一杯であった。

 こんな時に、事件の真相の緻密な仮説が設定されているために泰然自若としている主人公の武田が目の前に現れ、小林ユカの心情に配慮した態度を採ったからだ。いいかえれば、武田が小林ユカの「気持ちをシェアして欲しい」という女性本能を刺激して心理的一体感を創出することができたからだ。

(節子) 貴方が言っていることは「健次は3億円強奪の実行犯だけど、同情に値するところがある」と小林ユカが思っていることに対して武田が理解を示して初めて可能になる。でも、何を証拠に「健次が3億円強奪の実行犯」であることを彼女が知っていたとするのかしら? この点がはっきりしないと、貴方の説明は崩れてしまう。

(高哉) 小林ユカは自宅に訪ねてきた杉本三郎に「健次は強奪したお金は1円も着服しなかった」と言ったシーンがあった。これが何よりの証拠だ。但し、ユカのような将来の伴侶候補が存在しているにもかかわらず、捕まったら刑務所入りのような大きな賭けをしたこと、健次を小学5年生の時から母親代わりで育ててきた姉の戸田悦子が弟殺しをしたことの謎は残る。この点については「関係者の性格と歴史的立場の洞察は謎解きを可能にする」で明らかにしたい。

3億円の痕跡発見の困難さが黒幕浮上に結びついた
── 隠蔽工作が招いた誤算の論理(3)──

(節子) モトカノである小林ユカの認識「浜野健次が3億円強奪の実行犯」があっても警察が「本人が自殺」としてしまえば、「死人に口なし」となり、事件は迷宮入り。こういう事態をどのように覆したのかしら?

(高哉) 緻密な仮説設定が生み出した鋭い直観回路の賜物だ。気づきにくいことを気づくことができれば、ジグソーパズル思考が適切にできるようになるからね。この様子は次のように図式化できる。

 ( 浜野健次は青酸カリ入り紅茶を自宅で飲んで死んだ ⇒ 「浜野健次あるいは姉夫婦が青酸カリを合法的に入手した筈」となるが、「その可能性はない」という調査結果が出た) + ( 3億円を米軍立川基地の空き地に一時隠したので、「証拠を徹底的に隠す筈」と思っていた ⇒ 青酸カリ入手を裏工作できる人物探索に向けて脳細胞間の円滑なネットワーキングが行われた)

 ⇒ 浜野健次の義兄「戸田雄一の父親的存在である伯父「戸田重光」が公安担当の警察庁の元高級官僚であるという事実にぴんときた ⇒ 「戸田重光が事件の黒幕」と推定した。

(節子) それって真の頭の良さの原動力「脳細胞間の円滑なネットワーキング」ができて初めて可能なことよね。記憶を総動員して考え抜く機会づくりを積極的にしないと、そんな脳力は身につかない。その場しのぎの人生を送ってきているが故に脳力強化とは無縁になっている人はどうすればいいのかしら? 閉塞・立ち往生状態から脱出できず悶々とする人が多いのよ。

(高哉) 深刻な悩み事を抱えたら、脳細胞間の円滑なネットワーキング力強化に向けた徹底的な議論ができる悩み事の根本的原因の解明のための話し合いをすることを強く勧めたい。

(節子) 事件の黒幕「戸田重光」が真相解明のための情報ゾーンの中に入っていて初めて今の貴方の説明に納得できる。「戸田重光は親類の一人にすぎず、事件とは無関係」となり、思考の対象外となってしまうのが普通。にもかかわらず、真相解明のための情報ゾーンの中に入ったのはどうしてなのかしら? 情報ゾーンは偏りがちであることが多いのよ。→デフレ経済の本当の理由と脱却策

(高哉) 主人公の武田は事件の真相について緻密な仮説を設定したので、「浜野健次は自殺ではなく他殺された筈」「他殺に使われた青酸カリは非合法活動ができる人物が関与して入手された筈」と推定した上で、浜野健次が居候していた姉夫婦宅前に赴いた。いいかえれば、この仮説の検証と肉付けに向けて脳細胞間の円滑なネットワーキングが行われ易い状態になっていた。ここがみそだ。

 こういう状態を創り上げることは創造活動の生命線。この認識がワタナベ式問題解決へのアプローチの第一ステップ「 問題解決策が入手できそうでできない状態…になって頂きます」となっていることを理解して欲しい。

(節子) 武田が赴いた姉夫婦宅の二階で洗濯物を干していた姉「戸田悦子」が武田の自己紹介と呼びかけを受けてさっと身を隠して、カーテンの陰から武田を凝視する姿を晒してしまった。この時、武田は「やったな」と小さく呟いた。

 戸田悦子の不自然な態度は仮説「浜野健次は自殺ではなく他殺された筈」があったので、「浜野健次に青酸カリを飲ませて殺害したのはこの姉かも」「姉が弟を殺害するには何か深い事情がある筈」と武田に思わせてしまい、武田の日本での調査をサポートする調査員・高原薫と中原涼子の間で次の会話が交わされることになった。

    中原  (二階に姿を見せた健次の姉を指さして)自殺した健次の姉です。夫は警備会社に勤めています。
    高原  警備会社の社長は夫の伯父です。元々は警察庁の官僚でした。戸田重光と言って公安関係の担当をした幹部で政治家にも顔が広いという噂があります。

 こうなれば、武田が「戸田重光が黒幕役を演じれば、青酸カリ入手だけではなく事件隠蔽の裏工作は可能」と思っても不思議はない。しかし、戸田重光がそんな危険なことをする動機はあったのかしら?

(高哉) 浜野健次は3億円を米軍立川基地の空き地から自宅に運び入れ、通し番号が公表されている
500円札を焼却しているところを帰宅した義兄「戸田雄一」に見つかった。慌てた義兄は健次の要請を受けてこの3億円の緊急避難先として勤務先「戸田警備保障会社」の金庫を選んでしまったことが運のつきだ。

(節子) 勤務先の金庫が警察に一番発見されにくい場所であることは理解できるけど、健次を説諭して自首させなかったのはどうしてかしら? そうすれば、「勤務先の金庫に運び込んだお前(戸田雄一)も共犯だからな」と脅され、観念して殺害を決行するに至ることはなく無罪ですんだのよ。義弟の健次が3億円強奪の犯人であることを知り動転し、冷静な判断ができなくなり、「警察に見つかったら大変なことになる。安全なところに隠さなければ」と短絡してしまったからかしら?

(高哉) その通り。早い時期に両親を失ったが、父親代わりの戸田重光のお蔭で何不自由なく育った生い立ちは

       人生のナビゲーター役である父親から独立した人間としての生き方を習得していない。
       母親の愛を満喫していないので、“青い鳥症候群”に、更には楽観主義になりやすい。
       自己保存や求心力よりも精神的満足を大事にしやすい。

 ────、ということに結びつき、その後のその場しのぎ的生き方が加わって、お人よしの性格を醸成した筈だからだ。その証拠となる他の言動と人物評があったことを思い起こして欲しい。

 伯父の戸田重光の雄一に対する評価「何かあると自分(戸田重光)に頼る癖が抜けていない」、3億円強奪犯である弟の健次と縁を切らせて夫の身を守るために離婚を申し入れた妻・悦子に対して返した言葉「他の女と一緒になるなんて考えられない」 (妻・悦子は女性遍歴を重ねた筈の雄一にとってやっと見つけた母親のような存在であると思われる)…がそうだ。

 したがって、雄一がふらふらと安易な道を選んでしまい、3億円を勤務先の金庫に運び込んでしまったに違いない。

 戸田警備保障会社は従業員の給与不払いが続くほど経営が窮地に陥っていた。しかも、戸田雄一は戸田重光に親代わりとして育てて貰ったこと、義弟の健次が警察沙汰になる度に裏から手を回して無罪放免にしてくれたこと…等の恩義がある。となれば、「3億円を伯父に渡したい」となっても不思議はない。

 こういうことが健次の要請を受けることに結びついた。こういう意見があってもおかしくないが、彼の性格を考えると、この意見は現実的ではない。人の行動の動機を判断する際に大事なのは性格と歴史的立場を見抜くことだ。歴史的立場だけでは片手落ちとなる。

(節子) 戸田重光が持ち込まれた3億円を見て、信用失墜を恐れて狼狽した。にもかかわらず、金庫に入れることに同意したのはどうしてなのかしら? このことが発覚したら犯罪人になるので、親族の不始末に起因する信用失墜どころの騒ぎではない筈よ。

(高哉) 一瞬狼狽したけど、直ぐに「しめた。これで滞った従業員給与の支払いができる」「3億円は大勢の従業員から分散されて生活費として使われる。これが長期間続くので、3億円の足は絶対につかない」「問題は浜野健次の存在だ」と思い直した筈だ。

(節子) だから戸田重光は「腐ったリンゴがひとつでもあると、周りのリンゴも腐ってしまう」と戸田雄一
に謎かけをしたのね。謎かけをされた雄一は健次殺害を決意したが、躊躇っていた。そうしたところに背中を押されることが生じた。

 訪ねてきた刑事を姉が追い払ったものの健次は「3億円のことでだろ?」「
110番しろ。3億円を勤務先に運び入れたお前(義兄の戸田雄一)も共犯だ」と言われた雄一は自分の身を守るために警察に電話をしようとした。これを阻止しようとして二人はもみあい。力に勝る健次は雄一を押し倒して殴りかかった。姉は夫の雄一を身を捨てて庇い、事なきを得たが、観念して弟の健次入浴中に青酸カリ入りの紅茶を用意。これを飲んだ健次は果ててしまったのよね。

傍目にも判る冷静さを欠く言動の源「後ろめたさ」が真相解明に結びついた
── 隠蔽工作が招いた誤算の論理(4)──

 しかし、戸田重光が青酸カリ入手の手配をした上に、真相を隠蔽したことが証明できなければ、事件は迷宮入りのままよね。どうして戸田重光の悪行を暴くきっかけを掴むことができたのかしら?

(高哉)
事件の真相を掴んだ主人公「武田」が杉本三郎を心理的に追い込み、杉本三郎が3億円強奪の共犯であることを認め、事件の全貌を説明。戸田重光が青酸カリ入手に関わったことを白状したからだ。

(節子) 杉本三郎が3億円強奪を“成功”させるまでの経緯を全て白状した背景には「武田にこれ以上追及されたくない」「3億円強奪事件の時効は成立している」ということがあった。ところが、「時効成立は刑法上だけであって、民法上はそうではない」ことを知らされて、民法上の告訴対象から外してもらう代わりに、より詳しい事実を白状。その中に、戸田重光が青酸カリ入手に関わったことも入っていたのよね。

 民法上の告訴対象になっても浜野健次はこの世に存在しないので、「証拠不十分」となる可能性が高い。大立者である戸田重光のことをちくったら自分に危害が及ぶ危険性がある。にもかかわらず、杉本三郎が主人公「武田」が提案する取引に応じた深層心理を他にも応用できるように詳しく説明して欲しい。

(高哉) 杉本三郎は暴走族のリーダーから不動産・クラブ・中古自動車販売業を営む企業の社長に成り上がった人物。しかし、3億円強奪共犯者。したがって、事件の時効が成立してやれやれと思っていたところに頭の切れる武田の執拗な追及を受けて「折角掴んだ今の立場を失うかもしれない」と不安だった。そういう精神状態であったので、武田が提案する取引に飛び乗ったんだと思う。

 これは難交渉成功の要諦「相手の性格と歴史的立場を見抜く ⇒ この歴史的立場を行動期待値引き出しに向けて迫り上げる ⇒ 行動期待値引き出しの引き金を引く」の具体例だ。

(節子) 武田が提案する取引に飛び乗った背景にある「(後ろめたい ⇒ 不安な気持ちで一杯である) + 不安を掻き立てられるできごとに遭遇する ⇒ 真相発見に結びつく言動を採る」という図式は弟「浜野健次」を殺害した姉「戸田悦子」にも適用できる。

      主人公の武田が浜野健次の姉夫婦宅に初めて赴いた時の姉「戸田悦子」の態度は不自然であった。

      健次の死因は分かっていないと辻褄が合わないのに死んだ時の状況を「夫が何を飲んだのか、と弟の健次に向かって言った」と戸田悦子は武田に説明した。 (これはこの姉夫婦が青酸カリを健次に飲ませたことを白状したも同然であることを意味する)

      救急車の出動なく、(健次死亡確認の連絡を受けた)伯父「戸田重光」が健次の死亡現場に駆け付けた。(これはこの姉夫婦が致死量に達する青酸カリを健次に飲ませたことを白状したも同然であることを意味する) 

 ────、という三つの局面があったからね。いずれも冷静さを欠いたままの言動は真相解明に結びつく材料を提供することを示唆するものばかり。

(高哉) 貴女が今言ったことは他の交渉事にも応用できる。というのは、「交渉相手が隠している事実を掴みたい」「相手から行動期待値を引き出したい」場合は、交渉相手に対して「想定外の言動を突如として採る ⇒ 平常心を失わせ、適切な判断をできなくさせる ⇒ 冷静であれば、決して受け入れない要求を呑ませてしまう」という巧妙な方法を採ることが有効である場合が少なくないからだ。

 介護施設で生活していた母親の最後を看取った僕の知人の弟が葬儀終了直後に採ったやり方がそうだ。他の遺族全員が“葬儀の心理学”の世界に入ってしまった様子を分かりやすく説明すると、

 弟は「お母さんの遺産は僕が全額貰います」と突然宣言した(被り続けていた仮面を剥いだのだ) + 「恩義ある母親の葬儀直後にもめごとをしたくない」という雰囲気が場を支配していた。いいかえれば、この弟以外の遺族は重大な盲点が生じやすい精神状態に置かれていた

  ⇒ 遺族全員はこの弟が用意していた財産分割協議書に署名捺印して、夫(遺族の父親)の全遺産を引き継いだ母親の全遺産をこの弟にせ占められてしまった──、という図式になる。(転ばぬ先の杖 ⇒ 『プロフェッショナル・シミュレーション』)

「浜野健次自殺」の偽装工作が真相解明に結びついた
── 隠蔽工作が招いた誤算の論理(5)──

(節子) 浜野健次の姉の夫「戸田雄一」の伯父「戸田重光」が青酸カリ入手を手配し、事件を迷宮入りさせた黒幕である、と推定するに値する二つの材料があった。

 公安担当の警察庁元高級官僚であった + 日本には不正の温床「癒着体質」が根付きやすい ⇒ 警察の弱みを握り続けやすい ⇒ (職業から得た人的コネクションを活用して民間企業を操作しやすい ⇒ 青酸カリを密かに入手しやすい) + 警察と事件の真相隠蔽取引をやりやすい──、という図式(戸田重光の力の源泉)がひとつ。

 もうひとつは三億円強奪の共犯者「杉本三郎」から戸田重光が青酸カリ入手の手配をした証言を得ていたこと。しかし、この二つだけでは「戸田重光が事件の黒幕だ」と断定できない。となると、真相解明の努力は頓挫してしまう。主人公の武田はどのようにして難関をくぐり抜けることができたのかしら?

(高哉) 警察側は「健次が青酸カリを現金と一緒に窃盗した」という偽の供述書を作成し、このコピーを主人公・武田の日本での調査をサポートする調査員・高原薫を誘き寄せて渡した。そして、この偽の供述書授受の現場写真を公表したことが墓穴を掘ることに結びついたからだ。

 武田の日本での調査をサポートする調査員・高原薫が刑事を「女性問題をばらす」と脅し、捜査に協力させる、という事実無根のできごとをでっち上げた。その一環として偽の供述書を受け取る現場を週刊誌のカメラマンに写真を撮られる。そして、警察がこの写真を記者会見で公表する。── こういうシーンがあったでしょ。あれがそうだ。

 これは明らかな詐欺行為であるので、武田側は「警察が真相隠蔽に必死になっている」と確信した。そして、この動機解明が事件の真相解明に結びついた。ストレスが溜まってしゃかりきになると、重大な盲点を生み、臍を噛む結果を招くことはよくあることだ。→ 第一次安倍政権崩壊の根本的原因

(節子) 武田側と警察側のぎりぎりの攻防戦が演じられたのね。武田側が真相解明に向けて緻密な仮説を設定していなければ、警察の策略に引っ掛かり「万事休す」となっていた。ところが、逆だったので、「警察は真相を隠蔽している」と断定できたために武田側は勇気百倍になった筈だから。警察は武田側に超難問解決の切り札「イノベーションのロジック」をうかつにも注入してしまったのよね。

 しかし、警察が真相隠蔽に必死になったのはどうしてなのかしら? 戸田重光の脅しがあったとしても脅しに屈することなく事件の真相を公表して捜査の遅れが確信犯「浜野健次」を死亡させてしまったことを詫びる。この方が長い目で見ると、警察の信用を守ることになると思うの。

(高哉) そうなりにくいのが官僚の世界。確信犯を死なせてしまうと、「警察の脇は甘い。犠牲を伴う捜査協力の意欲が萎えてしまう」と世間に思われやすい。したがって、このような失態は身分制の下で減点主義が根付いている世界では担当者だけではなく上層部も一蓮托生となって致命傷になるのだ。したがって、ほぼ全員が立場を守ることで汲々となり、白を黒と言い包める「官僚の無謬性」ができあがっていることを理解しなければならない。

 以前住んでいた都心マンションの理事長が自分の非を絶対に認めなかったのは、
20歳過ぎから定年まで官僚であったために染みついた悲しき性のなせる業なんだ。

(節子) 官製バブルとその崩壊劇の真犯人が見つからなかったのは当たり前ね。自分が関わった悪行がばれると命取りになる戸田重光と警察が結託して「事件とは無関係な浜野健次が自殺した」として事件を迷宮入りにしたのは、自然の成り行きがあることがよく分かった。お蔭さまで福島第一原発事故の本質の理解も進んだ。

 でも、戸田重光の悪行がばれることになった理由が分かりにくい。武田側の確信「警察が真相隠蔽に必死になっている」に結びついた戸田重光の白状「甥の雄一の頼みを聞き入れて佐伯メッキ工業に頼んで青酸カリ入手を手配した」があったのはどうしてなのかしら? 主人公の武田が青酸カリのことで切り込んでもとぼけてしまえばすむことだと思うの。

(高哉) 主人公の武田が青酸カリのことで切り込んでとぼけると、「頭の鋭い武田の調査が一段と進み、とことん追い込まれてしまう」と思い、咄嗟に判断して「自分は青酸カリ入手に関わった。この青酸カリは甥の雄一の妻・悦子がトイレに流して捨てた。一方、供述書にあるように浜野健次も独自に入手していたので、これを使って自殺した筈」となったんじゃないかな。

 青酸カリ入手に関わったことを白状した上に、嘘をつくことは自分で黒幕であることを認めたも同然だ。武田側の確証「戸田重光が黒幕」を知らなかったことが運のつきだ。知っていれば、心の準備ができるので、平常心の敵「性格発衝動脅迫の支配」を受けなくてすんだろうからね。

(節子) 貴方の今の説明は緻密な仮説を設定して自信満々の状態で話し合いに臨めば、「追い込まれた相手は真実を白状する。しかし、白状した真実が自分を襲うことがないように咄嗟に嘘を付け加える ⇒ 真実が分かった上に嘘がばれる ⇒ 隠されていた真相に基づいて交渉を有利に進めることできる」となる見本になる。── この見本の具体例として貴方の今の説明をもっと分かりやすく要約して頂けないかしら?

(高哉) 隠されていた真相に基づいて交渉を有利に進められる見本のような行動を主人公の武田が採ることができたのは、難問解決に必要な「なんとかしなくては…と強く思い込む ⇒ よしこれだ…となる ⇒ なんとしてでもやり遂げよう」となるイノベーションのロジックを次の手順で自らに注入したからだ。

    浜野健次は3億円強奪事件の実行犯である。彼は自殺ではなく青酸カリ入りの紅茶を飲まされて姉夫婦に殺害された。青酸カリ入手と事件隠蔽の黒幕は戸田重光である。── この一連のことに主人公の武田は確証を掴めていた。しかし、戸田重光の動機が不明確なままであると事件迷宮入り状態は打開できないので、「なんとかしなくては」と強く思っていた。

    によって武田の脳細胞間ネットワーキング力一段と強化され、「3億円が行方不明なままであること、戸田重光には捜査の手が延びにくいこと、大勢の人が分散的に使えば3億円に足がつきにくいこと」等から 「戸田重光は3億円を社員の給与に流用したのではないか」と推測するに至った。

    の仮説を検証するために調査したところ、「戸田重光が経営する警備保障会社の社員給与は3億円強奪事件発生前の暫くの間不払いが続いていた。ところが、事件が発生してから数か月後の昭和44年1月から2年間だけは社員給与は順調に支払われていた」ことが判明。かくして武田は「戸田重光は健次を亡き者にする働きかけをし、かつ事件を隠蔽したことは間違いない」と確信するに至った。

    があるので、武田は泰然自若とした態度で戸田重光と対峙。たじたじとなった戸田重光は観念。立場を利用して甥の雄一が青酸カリを入手できるように手配したことを白状した。しかし、警察の偽の供述書を盾に使い「浜野雄一は自分で窃盗した青酸カリを飲んで自殺したのでは」とばれる嘘をつき、これが“決勝点のオウンゴール”になった。

 通説「人間は潜在脳力の2%程度しか使われていない」は、その場しのぎの習慣が災いして遭遇する難問に立ち向かわずに尻込みしてしまうからだ。スカイプを使った悩み事相談はこの壁乗り越えの工夫を凝らしていることを理解して欲しい。


練り上げた応対辞令力が真相解明の総仕上げを可能にする
── 知・情・意三位一体の源「緻密な仮説の設定」の威力を認識しよう!──

(節子) 隠されていた事件の全貌が明らかにされても物証がない状況証拠だけでは一件落着とはならない。姉夫婦が青酸カリ入りの紅茶を飲ませて浜野健次を殺害したことを白状して初めて戸田重光と姉夫婦を逮捕できる。したがって、姉夫婦が嘘をつき続ければ、事件は永久に迷宮入りになってしまいかねない。

 健次の姉「戸田悦子」が泣き崩れて白状。義兄「戸田雄一」も観念して謝罪したので、一件落着となったわけだけど、この背景にある主人公の武田の離れ業を一般化できるように説明して頂けないかしら?

(高哉) 悦子は弟を殺害した後、「健次は警察沙汰になることを繰り返してきた。周りは札付きの不良ばかり。人生の伴侶になって支えてくれるような人もいない。そうしたところに、逃げようのないとんでもないことをしでかしてしまった。これ以上生きていてもいいことはない。私が終生弔ってやればいい」と自分に言い聞かせて気持ちを無理やり落ち着かせていた筈だ。

(節子) ところが、主人公の武田から小林ユカの発言「健次はお姉さん(悦子)をこの世の中で一番信頼していた」「殺したお姉さんと一緒のお墓では可哀想だから私が健次を無縁仏として弔っている」を聞かされて、悦子は自分の思い違いに気づき、「取り返しのつかないことをしてしまった。悔いても悔いきれない」となってしまったのね。

 小林ユカが健次の人生の伴侶になれる人物であることを知り、泣き崩れた時の悦子の「そんな女性がいたなんてどうして早く言ってくれなかったの」は象徴的発言よね。でも、物的証拠を突きつけられたわけでもないのに自分が弟殺害犯であることを白状したのはどうしてなのしら? 黙っていれば逃げ切ることができたのに。

(高哉) 「弟殺害は弟のため」と言い聞かせても良心が疼き続けていた + ( 何度か会ううちに「武田は事件の全貌を知っている模様である」と判断するに至った ⇒ 真相がばれるのを恐れていた) ⇒ ストレスが溜まる一方となり、一触即発の精神状態に追い込まれていた。いいかえれば、白状せざるを得ない潜在要因があった。そうしたところに潜在要因を顕在化させる顕在要因が加わった。

 武田は最後の面談の冒頭で姉に「弟の健次さんが疑われて自殺したことを本当に気の毒に思います」「健次さんが死んだ後もオートバイを処分せず嬉しそうにエンジンをふかしていましたね。片時も弟さんのことを忘れていないんですね」と言った。これは気持ちをシェアすることを大事にする女性心理に沿う姿勢。

 武田はこのことが示すように夫婦に対しては紳士的に振る舞ったので、畏怖の念に好感が加わり、健次の姉「戸田悦子」の武田に対する感情傾向が良好になり、贔屓の気持ちが生まれ、「観念して白状しなければ」という思いが脳裏を過った。そうしたところに自分に言い聞かせていたことが一気に崩れてしまう事実を知らされ、激情を引き出す心理的反転効果が生じたからだ。→性格発衝動脅迫

(節子) 「真相を何としてでも解明したい」と強く思っていた + 緻密な仮説を設定して「芋蔓式の調査と数珠繋ぎの思考」を行って真相を解明した ⇒ 難問解決力の源「イノベーションのロジック」が注入された──、という図式が主人公の武田に実現されたので、交渉相手の心を揺り動かすことができたのね。

 難問を解決するためには鋭い直観回路に基く果敢な行動力に結びつく問題解決に相応しい脳の状態を創り出す必要があることがよく分かった。智恵のつまみ食いだけでは駄目な場合が多いことを肝に銘じなければならない。→私共の悩み事相談は新時代の切り札「鋭い直観回路」入手に向けた人生の再スタートが切れるように緻密に設計されていることを肝に銘じてください

 貴方が商社マン初期早々に開発した4段階アプローチにも通じるこのやり方を分かりやすく説明してくださらないかしら?

(高哉) 交渉成功の火種があった。この火種を燃えやすいようにした。この火種に思い切り点火した。 ── この三つが重なったことが真相解明の総仕上げを解明したとも表現できる。これまでの議論を要約すると、次の通りになるんじゃないかな。

    戸田悦子は自分の殺害行為を必死になって正当化していた。と同時に、健次の自分に対する想いを理解していなかった。いいかえれば、彼女の気持ちは元々崩れやすいので、適切な刺激が与えられると白状しやすい心理状態であった。(交渉成功の火種があった)

    武田の悦子に対して採った言動は、彼女に武田に対して贔屓する気持ちを芽生えさせた。その上、聞き漏らしがないようにする工夫が凝らされた。いいかえれば、武田の言葉が悦子の心にすとんと落ちやすい心理状態になった。(火種を燃えやすいようにした)

    悦子は自分の重大な盲点をずばり突かれて、「健次に申し訳ないことをしてしまった。償いをしなければ生きていくことができない」と思うに至った。いいかえれば、の反転効果が悦子の感情を激しく揺さぶった。(火種に思い切り点火した)

 悦子の夫「雄一」にとって、妻「悦子」は必要不可欠な存在なので、夫はごく自然に妻に従うことになった、と言える。


各人各様の小宇宙”の洞察が不可解な言動の謎解きを可能にする
── 人間は行動力学「“性格と歴史的立場”」に支配されやすい。「相性の心理学」があることを認識しよう!──

(節子)
樹海をさ迷うような状態から脱しないと、真相解明行動は徒労に終わってしまうことがよく分かった。しかし、調査の焦点が絞り込まれても人の心に奥深く潜む事実を発掘しないとどうにもならない。この発掘作業をこれまでの議論を補足してまとめて頂けないかしら? これまでの議論をよく読めば分かることだけど、それでは不親切だと思うの。

ホモの鮫島が自分の偽証言を撤回したのはなぜか?

 『三億円事件』が迷宮入りしたのは戸田重光と警察の共謀があっただけではない。事件当時のアリバイ「浜野健次がラブホテルで鮫島と一緒であった」という厚い壁があったことも忘れてはならない。鮫島は「あの日は健次と一緒だった」とどうして言い張らなかったのかしら? 主人公の武田に「ごめんなさい。嘘をついていました」と言っても何の得にもならない。それどころか警察に睨まれてしまいかねない。

(高哉) 愛しい人を庇いたい気持ちが理屈に合わない行動を採らせた。この背景に鮫島がホモであることがある。これが結論だ。ホモになる人はそれなりの理由があって「積極的に行動するのではなく、求心力で相手を魅了したい」と思いがちな性格の持ち主の場合が多い。

 はるな愛さんは本物の女性よりも女性的な魅力に結びつく容姿の持ち主。それに事業経営をやってのけられる才能があるので、泰然自若としていられる。しかし、鮫島の場合はそうではないので、自分に好意を抱いてくれた健次に対する執着心が強い。これが健次の死後も「愛しい健次を庇って死んだ健次を求心力で魅了したい」となったんじゃないかな。大事な人への思いは死後も続く場合が多いからね。

(節子) 鮫島が「あの夜(事件当日の未明)は健次と一緒に星を見た」と言ったのに対して武田は「事件当日は雨が降っていた」と切り替えし、鮫島の嘘がばれてしまった。このことが鮫島の性格と歴史的立場に響いて白状するに至ったということね。

小林ユカが真相解明の鍵となった証言をしたのはなぜか?

 「浜野健次が実行犯」とするためには健次が3億円を抜き取り空にしたジュラルミンケースの中にイヤリングを入れたこと等の状況証拠を積み上げていく必要がある。それから「健次自殺」を打ち消すためには戸田悦子による弟の健次殺害の状況証拠も必要。

 いずれの状況証拠も小林ユカが提供したわけだけど、得にならないどろこか警察に睨まれかねない発言を彼女がしたのはどうしてなのかしら?

(高哉) ユカは健次と心理的に一体化していた。前にも言ったようにこのかけがいのない人物がこともあろうにこの世の中で一番信頼していた実の姉に殺害された。このやるせない気持ちを誰かに理解して欲しかった。そうしたところに、自分の気持ちを理解してくれそうな武田が登場したので、抑圧していた気持ちが溢れ出した。これが結論だ。

 愛に飢えている。一方、目立ちたがり屋。保身や求心力よりも気持ちを率直に表現することを大事にする。こういう性格の持ち主でなければ、武田が物わかりのよさそうな人物であっても彼にとって都合のよい言動は採らなかったと思う。しかし、そうではなかったので、武田の雰囲気とイヤリングの写真提示は彼女の性格と歴史的立場に響いたんだと思う。

(節子) 納得できる。健次はユカと同じく両親をなくしているので、お互いに寂しさを分かち合える。しかも、若い男女ということもあって惹かれあっていた。その上、危険を冒したのに報われていない健次の気持ちを誰かに伝えたい気持ちになっていた。しかし、自分を理解できそうもない相手だったら真相を打ち明けない。ところが、前にも言ったようにそうではなかったので、真相を打ち明けることになったのよね。

 女性は自分の気持ちをシェアして欲しい気持ちが元々強い。その上に、彼女の性格と歴史的立場が重なれば、自分の気持ちを理解してくれそうな武田にイヤリングの写真を見せられ涙が溢れ出して二人の懐かしい思い出と実のお姉さんの健次殺害疑惑を打ち明けるのは、ごく自然の成り行きだと思う。

 健次が3億円を抜き取り空にしたジュラルミンケースの中にイヤリングがを入れたことは「自分と共に生きよう!」というメッセージとして受けて止めた。天涯孤独のユカにとって健次はかけがいのない人物。そのお返しとして健次を無縁仏として弔うことにしたはず。

 「言葉の背景には言い尽くせないことが含まれているので、短絡的に解釈してはいけない」が口癖の貴方(→プロフェッショナルQ&A)だから分かって貰えると思うけど、「健次さんを殺したお姉さんと一緒のお墓では可哀想」は彼女の気持ちを語りつくしたものではない。

(高哉) 涙を溢れ出させた後のユカの言動には武田の心だけではなく、健次の魂をわがものにしたい気持ちも込められていたんじゃないかな。ユカのような性格の持ち主は相手と心理的に密着したい思いから半端じゃない行動を採りがちだからね。こういう心理にフィットできたので、武田は彼女から行動期待値を引き出せたんだと思う。

共犯者「f杉本三郎」が事件の内幕を白状したのはなぜか?

(節子) 3億円を抜き取り空にしたジュラルミンケースの中にイヤリングを入れたのは健次であった。姉の戸田悦子が弟の健次を殺害した。── こういう状況証拠が揃っても健次が3億円強奪に至るまでの全貌が解明されないと、「健次が実行犯」と断定できない。

 この全貌を杉本三郎が白状したのはどうしなのかしら? 口を閉ざしていれば、「杉本三郎が共犯者」と断定されずに済んだのよ。

(高哉) 武田に疑われていることを実感した杉本三郎は追及の矛先を変えるために嘘をつき、これが墓穴を掘ることに結びついた。頭の良い人間は相手の頭の良さが理解できるので、自分の悪事がばれることを恐れての短慮のなせる業。これが結論だ。この背景には次のような彼の性格と歴史的立場があったんだと思う。

 求心力で周囲の人々を惹きつける性格の持ち主である彼の前に暴走族リーダーの座が用意されたので、欲求不満を晴らすためにこの座に衝動的に座った。しかし、頭脳明晰な彼にとって満足できるものではなかった。そこで、脅迫して大金を獲得しようとする等の模索を続けた結果、不動産、中古自動車販売、クラブ経営の社長にやっとの思いでのし上がることに成功した。

(節子) 武田に疑われていることを実感した杉本三郎は「社長の座を失うことになるのでは」と恐れて冷静さ欠いたことを言ってしまった。こういうことね。性格発衝動脅迫の支配を受けると、普段は泰然自若としている社会のトップリーダーでも人生を台無しにしてしまうことをやってしまうので、納得できる。

 →安倍元首相の政権投げ出し、クリントン元大統領のセックス・スキャンダル、明智光秀の悲劇、豊臣秀吉の大暴走は同根である

 でも、よく理解できないことがある。浜野健次をそそのかして3億円強奪を決行させたのはどうしてなのかしら? この3億円は戸田警備保障の金庫に運び込まれて全額が従業員の給与支払いに使われたのであって、彼は一円も得をしていないのよ。

(高哉) 彼の頭脳は仲間の中でずば抜けているので、仲間の尊敬を集めていた。しかし、「こんな連中相手に求心力の強さを満足させていてもしようがない」と思い、 「欲求不満が鬱積していった ⇒ 性格発衝動脅迫に支配された ⇒ 頭のいい人間らしくない言動を採った」という図式が実現したのだと思う。

(節子) 性格に振り回されると、どんな人間でも馬鹿げたことをしてしまう。その通りだと思う。それはそれとして杉本三郎が3億円強奪に至るまでの全貌を白状するに至ったのは、武田に追い詰められたからだけではなく、「自分は社長になっているのに浜野健次は死に至ってしまった。寝覚めが悪い」という良心の呵責もあったんじゃないかしら。

 それでなければ、「健次は自殺するような人間ではない」と言ってその証拠を示し、健次殺害犯捜しに協力しないんじゃないかしら。黒幕の存在に目を向けさせようとしただけではないと思う。私は「交渉事には相手の良心に訴えることも大事」と言いたいの。

事件の黒幕「戸田重光」が重い口を開いたのはなぜか?

 杉本三郎の自白のお蔭で事件の全貌が解明されたけど、「戸田重光が事件の黒幕」と断定できなければ、「浜野健次は青酸カリ入りの紅茶を飲まされて殺害された」という結論は得られない。にもかかわらず、戸田重光が「自分が青酸カリ入手の手配をした」と白状したのはどうしてなのかしら? 彼は“何事にも動じない”人物なので、性格発衝動脅迫の支配を受けて自白に及ぶなんて考えられない。

(高哉) 他人の支配をはねのけるためだったら断乎として闘うことを厭わない人間には「単独でもOKアレキサンダー大王タイプ」と「周囲の頼みがないとNO徳川家康タイプ」の2種類がある。前者は周囲の目をあまり気にしないので前人未到のことを成し遂げやすい。

 後者はニューフロンティア開拓に向いていないが、「周囲がその気になるまで時期を待つ ⇒ 先手必勝となりにくい ⇒ 裏工作をして勝機を創り出すしかなくなる」となりがちであるので、裏工作の達人になりやすい。戸田重光はどちらかと言うと、この後者、つまり徳川家康タイプの人間。

 そんな性格の持ち主である戸田重光が公安担当の警察庁高級官僚になれば、戸田重光の力の源泉が培われて隠蔽習慣ができあがり、揺るぎない「習慣の力」になっていくのは時間の問題。この「習慣の力」が働いて事件の黒幕役を演じる。のみならず、白状「自分が青酸カリ入手の手配をした」に結びついた。これが結論だ。

(節子) 「隠蔽習慣の力」が「運び込まれた3億円を会社経営に流用することに、邪魔な健次を消すことに、甥の雄一に彼の殺害示唆に、殺害に使う青酸カリ入手の手配に…順次結びついた」ことは理解できる。しかし、「隠蔽習慣の力」が白状に結びついたとするには無理があるんじゃないかしら?

(高哉) そんなことはない。主人公の武田が登場するまでは事件を迷宮入りにさせることを決断し、「捜査終了」を公表していた。この背景には次のような事情があった筈。

 警察は「3億円強奪の実行犯は健次」と断定。後はアリバイ崩し等の証拠集めだけであった。こうした時に健次が自宅で青酸カリを飲んで死亡したことを知った + 逮捕一歩のところまで追いつめた重要参考人の自殺は警察の信用を失墜させる + 健次の度重なる犯罪を伯父の戸田重光に頼み、もみ消してきた姉夫婦による健次殺害は警察の想定外である ⇒ 慌てた警察は「健次は不良なのでどこからか青酸カリを窃盗して服毒した筈」と短絡的に判断した。

 そして、時効が成立してから武田が事件の調査のために来日し、真相解明寸前に漕ぎつけた。そこで、武田の訴状にあるように戸田重光は「逮捕一歩のところまで追いつめた重要参考人の自殺は警察の信用を失墜させる」と警察を脅迫して事件を迷宮入りさせることに同意させていたので、自信満々で白状したのだろう。

(節子) 「偽の供述書だ」とすぐばれたじゃない。にもかかわらず、「ばれない」と思ったのも「隠蔽習慣の力」のなせる業だと言うのかしら? 彼の性格と歴史的立場を念頭に置いて説明してくださらないかしら。

(高哉)  どっしりした人間はどんな場合であっても不動心というわけではない。「小沢一郎氏は求心力が大事」「戸田重光は精神的満足が大事」という違いはあるが、頑として敵に立ち向かうところは二人に共通している。しかし、冷静さを失う事態に遭遇すると、ふらふらと口走ったり、行動したりするのが「頑として敵に立ち向かう」性格の持ち主の共通現象。

 主人公の武田に「カルフォルニアのワインと一緒に損害賠償裁判に使う証拠書類を送る」と言われて、武田を指さして「無礼者」と罵り決然と席を立った。小沢一郎氏も小沢一郎氏の行動力学解明の中に誤りなき重要人物対処策があるにあるように切れやすい。これが何よりの証拠だ。

 但し、「戸田重光の場合は直情径行性が浮上したため」「小沢一郎氏の場合は求心力がピンチに陥ったため」という本能的動機の違いがある。この違いが「戸田は得しないのに甥の雄一を溺愛し続けている」「小沢一郎氏は有力人物から次々と離反された」ということに結びついたかもしれない。

大金願望のない浜野健次を「3億円強奪実行犯」と断定できたのはなぜか?

(節子) 「青酸カリ入手を手配したのは自分だ」と戸田重光が言っても、戸田雄一・悦子夫婦が最後まで白を切れば、主人公の武田は万事休す。ところが、練り上げた応対辞令力が真相解明の総仕上げを可能にしたわけよね。でも、疑問がひとつ残る。浜野健次には大金願望がなかったのよ。こんな彼がどうして3億円強奪というとんでもないことをやったのかしら? 動機が分からない。

 明確な動機が分からなければ、白バイ用のヘルメット、警官の制服、発煙筒などの3億円強奪の遺留品は決め手にはならない。

(高哉) 健次の性格と歴史的立場とこれが生み出した脳力に引き金となるような事実が加わった。これが動機だ。空腹時に食欲をそそる香りが漂ってくると、お腹がグーッとなって我慢できなくなるのと同じだ。

 人を魅了して精神的満足を得たい。お姉さんが独身の時はこの気持ちを満足させることができた。ところが、お姉さんは結婚したために満足が不満に転じてしまった。この気持ちをお姉さんに分かって貰いたくて不良の仲間入り。そこで知り合った杉本三郎と小林ユカに自分の気持ちをぶつけた。しかし、お姉さんからのような満足が得られないので、この二人の心を掴みとりたいと思うようになった。

 そんな時に、杉本三郎から3億円強奪計画を持ちかけられ、「成功すれば杉本三郎だけではなく小林ユカの心を掴みとることができるのでは」と思い、この計画に飛び乗った。こういうことじゃないかな。

(節子) いくらなんでも幼稚すぎるんじゃないかしら? 計画は杉本三郎が立てたけど、瞬時の判断を必要とする強奪を成功させるだけの脳力を健次は持っていたのよ。

(高哉) 杉本三郎から3億円強奪計画を持ちかけられ時、心理的に追い詰められていた健次は性格発衝動脅迫の支配を受けて「なんとしてでもやり遂げよう!」となったのだ思う。豊臣秀吉が無謀極まりない朝鮮出兵を決行したのも同じだ。

(節子) 納得できる。柏連続通り魔事件の竹井聖寿容疑者が実家が極めて裕福でありながら金銭を強奪したのも性格発衝動脅迫の支配を受けた結果であると理解すべきだものね。

 こう考えると、健次が足のつくことに結びつく、
3億円を抜き取り空にしたジュラルミンケースの中に小林ユカの心を掴みとるために「小林ユカと人生の伴侶になりたい」という気持ちを込めてイヤリングを入れたのも理解できる。こうした健次の気持ちをお姉さんが理解していれば、悲劇は防げた筈よね。

(高哉) その通りだ。「姉弟の気持ちのすれ違いが悲劇の根本的原因」と結論付けることができる。そして、これは多くの人に対する警告として受け止める必要がある。なぜなら、メガトレンド「情報化とグローバル化の同時進展 + 小さな物語の時代の進展 ⇒ 家族・同僚間の住む世界・価値観の違い拡大」のなすがままであると、様々な形態を伴う悲劇が生じるだろうからだ。→悪循環の夫婦関係がフィードバック回路を奪った

相性の心理学


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 国民性「安定枠組みしがみつき」が問題解決の最後の壁である
── 手の打ち方が自ずと分かる「隠蔽工作の仕組み」を解明しよう! ──

(節子) 3億円強奪事件の真相が完全に解明されながら主人公の武田は国家権力の壁に阻まれて損害賠償裁判に持ち込むことですらできなかった。この根本的原因を教えて欲しい。そうすれば、貴方が常日頃言っている「根本的原因の中に創造的解決策が潜んでいる」が可能になると思うの。

(高哉) 日本経済の超長期低迷の原因「バブルの発生と破裂」の原因を組織の総力を挙げて解明する。このように旧経済企画庁が宣言しながらうやむやになってしまったのはどうしてだと思う?

(節子) 貴方は旧経済企画庁が宣言したことをたった一人であっさりとやってのけた(→バブルが発生した本当の理由) 。ところが、エリートが沢山揃っている大組織が宣言したことをうやむやにしてしまった背景には、日本的な事情があるんだと思う。私の理解はここまで。分かりやすく説明してくださらないかしら?

(高哉) 社会の知的インフラになりたい」と願い続けていた僕は総合的創造的脳力を培うために社会的立場や所得を犠牲にする人生を送ってきた。しかし、僕の狙いを理解できる人は殆どいなかった。二つのできごとが典型的な例だ。

      「世界はどうなる。だからどうすべきか」を解明するための単独研究に乗り出したことに対して七つ年上の友人の厳しい反応→私が研究プロジェクトに単独で専念することを決断した理由

      世界経済・日本経済・企業経営・人の動かし方を順次説明した講演に対する某社長の厳しい忠告→企業経営の本質を理解していない社長

 この二つのできごとの背景にあるのが日本的な事情。ここのところを考えて欲しい。そうすれば、「なるほど」となると思う。

(節子) 私は貴方から日本の宿痾について散々聞かれてきた人間なので、そこまで言われれば分かる。日本の社会に根付いている図式日本モデルが象徴するように蛸壺型社会である ⇒ 集団の和を優先する風習が根付くに至った ⇒ 日本的集団主義が根付くに至った ⇒ 与えられた役割にしがみつき、他人の役割にくちばしを入れてはならない風習ができあがった」が災いして貴方が遭遇した二つのできごとに結びついたんだと思う。

 チームプレイの落とし穴「合成の誤謬

(高哉) そういう風習があるところに「作業内容が広範囲に亘る」という事情が加わると、 仕事が分担して行われる ⇒ 各役割担当者は最終目的に配慮することなく“仕事のために仕事をする”習慣がごく自然に根付く ⇒ 合成の誤謬が発生しやすくなる」という日本独特の図式ができあがってしまった。この図式の直撃を受けたのが旧経済企画庁のうやむやな結果であったと理解すべきかもしれない。

 とんでもない大惨事「福島第一原発事故」の原因が解明されていないのも同じことだ。バブルが発生した本当の理由同様に僕は解明済みだけどね。こういう合成の誤謬が極めて多い社会が「自分が犯した過ちは大勢が関わった作業全体の中に隠れてしまうので、ばれっこない」という意識を生み出して日本人の隠蔽習慣が醸成された。となれば、隠蔽工作の達人「戸田重光」が警察と共謀して事件迷宮入りを演出するのはごく自然な成り行きだ。

 合成の誤謬の分かりやすい例
(2014年4月21日のTwittter)
 セウォル号の悲劇は「採算向上のための最上階増築+速度増のための船底の水減量+目的地に近づくにつれて船底の燃料減→目的地近くで船の均衡喪失→均衡回復のための舵切→積荷の急な偏在→急旋回」故の模様。「転ばぬ先の杖」の重要性を認識しよう!→http://www.trijp.com/approach/watanabe-apply.shtml

(節子) 複数専門家の知見をも拠り所にした小保方晴子さんの
STAP細胞論文、最終目的に配慮することなく仕事のために仕事をする習慣が災いしたと思われる袴田事件 ── は当事者の悪意ではなく、日本独特の合成の誤謬が原因しているだろうことがよく分かった。

(高哉) 小保方晴子さんの
STAP細胞論文のことだけど、STAP細胞は見つかったかもしれない。しかし、その経緯と再現のための方法の説明がコピペになってしまっている。そうであれば、合成の誤謬の例としてこの論文を用いるのは適切かもしれない。しかし、「だから怪しからん」というのは頂けない。

 寄って集って小保方晴子さん叩きをしているマスコミ報道は、僕が難問解決策を閃き、それを周囲の人々に伝えると、非難されたのと似ている。→斬新な着眼が生み出す画期的対策の例。このような組織風土からイノベーションを生み出すのは至難の業だ。→安宅産業破綻

 2014年4月10日のTwittter
STAP論文の本質は「執念→研究所転々→自己流→枠外思考故の発見」「社会の便利化→思考力低下→欠陥論文」かも。論文欠陥指摘ではなく、枠外思考故の発見を新技術に進化させよう!これは衆知を生かして複雑問題を解決するための秘策にも当てはまる。→http://www.trijp.com/approach/sfa02-6.shtml

  2104年4月11日のTwittter
小保方氏がコツ・レシピと独立実験成功者名を公表しないのは自然。性格「求心力強化意欲→強い上昇意欲の完全主義」と歴史的立場「人生を賭けた研究人生→もう少しで完成」があるからだ。「退職誘導ではなく完全燃焼させる」が理研の採るべき道だ。
http://www.trijp.com/profile/profile1.shtml

  2104年8月9日のTwittter
理研・笹井氏自殺は日本の宿痾「トップに非総合的創造的脳力者+(巨大・複雑プロジェクト故の役割分担+同氏の終盤参加→合成の誤謬発生→論文捏造)+枠外思考の小保方氏への反発内在→感情が勝った対STAP細胞批判噴出」への身を挺した抗議かも。
http://www.trijp.com/index02

 通信回線がそうであるように最初から完成を目指すと、「道遠し」となるので、作業はある程度で打ち切って実際に通信してみることが必要。実際に通信してみることによって不具合の箇所が発見でき、ピンポイントの修正行動を速やかに採ることができるからだ。これは早めの目次作成が創造的提案書を生み出すのと本質的には同じだ。→斬新な着眼の有無が問題解決策の質を決める

(節子) イノベーションを生み出したい人々はザッカーバーグの至言「完璧を目指すよりまず終わらせよ」を噛みしめて欲しい。こういうことね。でも、合成の誤謬を正さないと、福島第一原発事故のようなことはこれからも起きてしまう。ビジネスパーソンが身に染みて感じるような話をして頂けないかしら?

(高哉) 日本独特の合成の誤謬が生み出した悲劇は、熾烈な競争にされされている多くの日本企業も例外ではない。エアーポケットの中をもがくが如き状態になっている背景には意思疎通率が平均して15%程度でありながら合議制を採っていることもある。(打開策の例 ⇒ 『創造的衆知結集力活用』)

(節子) 3億円強奪事件の真相が完全に解明されながら主人公の武田は国家権力の壁に阻まれて損害賠償裁判に持ち込むことですらできなかったことに話を戻したい。3億円強奪事件の捜査責任者が「捜査資料は一切見せることができない」と言ってたけど、国政調査権を持っている国会議員に頼めばなんとかなるんじゃないかしら?

(高哉) 要請を引き受けてくれる国会議員がいたとしても真相を白日の下に晒すことは不可能だ。警察全体がぐるになれば、全てが曖昧になってしまうからだ。こういう組織全体に行き渡っている体質が災いしなければ、田中真紀子元外務大臣は意気込んでいた外務省改革ができたはずだからね。

チームプレイの結果を 「合成の誤謬」ではなく、「躍進の材料」にする方法があります
 自己主張の強い精神的視野狭窄症の人が増えているのはどうしてでしょうか? 指導的立場の人であっても「ストレスが溜まったり、自信過剰・興奮状態になったりする ⇒ 各人各様の行動力学に振り回さられる ⇒ 事態を自分の都合の良いように解釈してしまう」という図式に陥り、全体知欠如症になったり、信じられないような暴走をする「人間の業」があるからです。

 このような「人間の業」を前提に顧客のクレイムを単純にまとめることは合成の誤謬の極みになること必至です。なぜなら、クレームを受け取った人物は各人各様の解釈をする。その上に、クレーム一覧を見た開発担当者は各様の解釈をすることになるからです。

 どうしたらよいでしょうか? クレーム一覧を見る ⇒ 潜在事象を発掘する市場を支配するロジックの変化を見抜く──、という作業を総合的創造的脳力者に発注することを強く勧めます。

 この作業を新創業研究所に発注することを検討したい場合は「029-229-0225」に営業時間内にお電話ください。ビジネス・プロセスと費用について相談させて頂きます。

 国民性「安定枠組みしがみつき」は逆用できることを知ろう!

(節子) 国家権力の壁はどうやっても破ることができないのであれば、国家安全保障のために必要不可欠な特定秘密保護法は日本を暗闇の社会にしてしまう。こうならないようにするためのヒントが欲しい。このヒントになるように3億円強奪事件の迷宮入りの突破口を示してくださらないかしら?

(高哉) 企業の再構築を引き受けた時の僕がした経験が参考になると思う。 社長が選任した各職場代表者からなるプロジェクト・チームを預かり、得意とするイノベーションのロジック注入手法を用いようとした。プロジェクト・チームの最初の任務は「企業が抱えている問題の実態を支離滅裂を厭わず細大漏らさず記した資料」の僕への提出。

 最初から気乗り薄であったプロジェクト・チームは、僕がいくら説得しても、この資料提出の納期に間に合わせようとしなかった。クライアントの前では常に冷静であった僕の堪忍袋の緒がとうとう切れ、全身で怒りをぶつけた。そうしたら本来の仕事よりもプロジェクト・チームの仕事を優先させる程に熱気溢れる集団に変身した。どうしてだと思う?

(節子) プロジェクト・チームの深層心理は「(自分を信じるに至っていない ⇒ 不安がつきまとっている。さりとて馴染みのない他人を信じることができない) + 貴方のスバ抜けた脳力を事前に理解させていなかった ⇒ 社長から選ばれたからには、貴方を信じてついていきたい。しかし、そう簡単に信じるわけにはいかない ⇒ しばらく様子を見たい」という図式だった。いいかえれば、背中を強く押す何かが必要であった。

 貴方の熱意溢れる態度がこの必要性に応えることになったために、「先見の明がある社員は積極的になった ⇒ 将棋倒し現象が発生した ⇒ 腰の重い社員はバスに乗り遅れることを恐れて積極的になった。いいかえれば、適切な
“空気”がプロジェクト・チーム全体を支配するようになった」という図式が実現したからだと思う。

 私はこれまで『脱集団主義の時代』の著者である貴方から日本人一般の特徴を散々聞かせれてきた。だからこその理解ですけどね。でも、一企業と違って警察は巨大な権力機構。3億円強奪事件の迷宮入りの突破口を見つけることは不可能に近いんじゃないかしら? 「袴田事件が証拠捏造疑惑」とされるのに
48年もかかったのよ。

(高哉) 今僕が言った組織全体を支配する
“空気”は日本人にとって一種の安定枠組み。これを全面的に活用すれば、次の図式実現が可能になる。

 事件の真相を解明したら間髪を入れず匿名の週刊誌記事にする ⇒ 「正義の味方である筈の警察は真相を隠蔽することもある」という風評が広がる ⇒ 世間の感情傾向が主人公の武田にとって適切になり、贔屓の気持ちが生まれる ⇒ マスコミはこの贔屓の気持ちの支配を受ける ⇒ マスコミは安心して警察権力と立ち向かうことができるようになる ⇒ 主要マスコミ参加の下で事件の真相を記者会見で発表する。

 主人公の武田側が犯したミスは、警察が真相隠蔽のためのマスコミ対策を行える時間的余裕を与えてしまったことだ。したがって、これが響いて事件の真相発表のための記者会見に主要マスコミは参加できなかったし、参加したフリーのライターも裏から手を回されたために封じ込まれてしまった。



  テレビドラマ『三億円事件』の矛盾を補正して解釈した箇所
   「3億円が抜き出され空になったジュラルミンのケースは事件発生の4ヶ月後に発見された」では筋書き上矛盾が生じるので、「事件発生後一週間以内」と解釈した。

 主人公の武田が小林ユカから「事件が発生してから翌年に警察がやってきてイヤリングを見せられた」は誤り。佐竹元担当刑事の言うように「1週間後が正しい」と解釈した。

3億円強奪事件の刑法上の時効が成立してから主人公の武田が登場して事件の真相が解明されたのを警察は知り、事件幕引きの辻褄合わせのために偽の供述調書をでっち上げ。これを知ったからこそ戸田重光は青酸カリ入手の手配を白状、警察はこれを知った筈。警察がこれを問題にしなかったのは、「戸田重光は事件幕引きの実態を暴かない」「警察は青酸カリ入手の手配を不問に付す」という闇取り引きがあったと解釈した。
 

 新創業研究所が提供できるプロフェッショナル・サービス
  戦後最大の謎『三億円事件』の総合的創造的考察を行ったことで「新創業研究所は社会的問題の創造的解決の専門機関だ」と誤解しないでください。私共は秘めた真相の解明を必要とする様々な分野における難問解決を引き受けることができます。しかしながら、私共は打ち出の小槌ではありません。

 難問の実態がインプットされて初めて機能する構想・独創マシーンです。難問の実態は支離滅裂であっても構いません。新創業研究所の特徴は、例えて言うと、「欲しいけど見つからなかった魚を提供できるだけではなく、魚の見つけ方・捕り方も学べる」ことにあります。私共の登用をご検討くださいますようお願い申し上げます。

(経済界における潜在事象発掘の詳しい例 ⇒ 『真空機器振興ビジョン豊田市地域商業近代化ビジョン』)

専門知識だけでは生きていけない時代になったことを認識しよう!
   2014年11月17日のTwittter
社会現象「難問放置+ぶら下がり困難→自滅」は弁護士等の専門家にとって神風。なのに生活苦多し。専門的情報収集の容易化が「和優先→その場しのぎ→創造力欠如」を痛撃した結果だ。洞察力と知的アクロバット力を駆使しての潜在需要発掘例を示すべし。
http://www.trijp.com/persona/6-1-6-2.shtml
   2015年5月27日のTwittter
弁護士や公認会計士等の専門家受難の図式「(市場成熟→オリジナリティ創出困難化)+(インターネット普及→知識・情報の入手可能性拡大)→豊富な専門知識だけでは人を魅了できなくなった」は、知能ロボット脅威の前触れだ。鋭い直観回路入手を急ごう!http://www.trijp.com/hp_digest-old.shtml
  (2015年10月25日のTwittter)  
マスコミへの苦言。潜在事象発掘力の欠如→商品開発力の欠如→内外需の低迷→生産性の低迷→実質賃金の低下…を認識した報道を心がけよう!さもなければ、「世論誤誘導→国民のぶら下がり体質放置→財政破綻→国民生活困窮」に拍車をかけることになる。
http://www.trijp.com/pr/pr- index.shtm

「複雑時代を味方にする潜在事象発掘力を身に着けたい」と思われる方へ
 
案内を先にお読みになってください


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