具体例の第二はデフレの直撃を受けた成熟市場のひとつである「フィットネスクラブ」に地方都市で参入して成功した某社です。どうしてこういうことができたのでしょうか?
深く潜在している新しい需要発生に結びつく環境変化に気づき、潜在需要顕在化の条件を見抜き、この条件を実現させたからです。
この地方都市に起きた環境変化は次の通りです。離農者が増加し、かつ車社会になりました。これは運動不足を招き、健康への関心を自ずと高め、大都会で評判のフィットネスクラブへの憧れが生れました。しかし、料金が高いために高嶺の花です。
集客に有利な駅周辺の不動産利用料金は目の玉が飛び出るほど高いので、コストダウンのために 「プールは屋上に敷設」が常識になり、これが悪循環を招くことになりました。プールを屋上に敷設するためには、コストが高い堅牢な建築物が必要、高コスト吸収のためには高付加価値経営が必要、高付加価値経営のためにはプロのインストラクター雇用が必要
・・・・・───、となっている。これが大都会のフィットネスクラブを高料金にしてしまっているのです。
高料金の理由が分ったので、対策を講じることになりました。「健康志向が高まった」ことに焦点を当てて、プログラムを粛々とこなす促成インストラクター採用などの低コスト化を徹底して、潜在需要を顕在化させたのです。野菜栽培の創意工夫も同類の例です。
(飢えの心配がなくなり、飽食の時代になった ⇒ 美味しくて栄養豊かな野菜が求められるようになった) + 化学肥料は野菜を育てることに役立つが、野菜本来の力を引き出せない
+ 日本の土壌はミネラル分が不足している ⇒ 痩せている土地に牡蠣殻の粉末を散布した ⇒ 野菜が料理の主役になることを狙って、達人シェフが経営するレストランに野菜を直売した。
習慣がロックインしていない新参者には三つの利点があります。新しいニーズを生み出すことに結びつく大きな環境変化に気づき易いがひとつ。もうひとつは新市場開拓に必要なゼロベース発想が可能であることです。最後はのひとつは「積み上げ努力の習慣がロックインしていない→知的アクロバットを伴うジグソーパズル思考の習得が円滑に進む」です。 |
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