(高哉) ところが、国民経済研究協会の窓口役であった企業の中長期経営計画を立案する調査部門が次々と閉鎖されていってしまったんだ。
(節子) よく分からないわねぇ。日本経済と各企業の成長がほぼ比例する「仲良しクラブ」の時代が終わって生き残りをかけた企業間競争が展開されるようになった。したがって、中長期経営計画を立案する調査部門のような企業の頭脳部分の重要性は増すんじゃないかしら?
(高哉) 理屈の上ではそうだけど、実際はそうではないんだ。中長期経営計画の立案に必要なのは「立案する手順の知悉」であって「創造的な経営計画力」ではなかった。
このように言うと、「スタッフに創造力がなかったから」と思われるかもしれないが、そうではなく、「過去の延長線上を歩むことができるので、数字を羅列する経営計画ですむ」という事情があったんだ。
(節子) 国民経済研究所は経済分析に代わる情報を開発して生き延びる努力をしなかったのかしら?
(高哉) 経営危機に陥り、顧客であった大企業の元調査部長をスカウトしてこの人物に経営を託して、従来の活動と関わりの薄い中国問題とIT(情報技術)分野の開拓に乗り出したようだよ。
(節子) 中国問題とIT (情報技術) 分野の開拓だったら社会の要請に合致している。にもかかわらず、経営破綻に追い込まれてしまったのはどうしてなのかしら?
(高哉) 「先発の同業者と比べて独自性がなかったことがこの新規事業の魅力不足に結びついた。従業員の個性を重視しない伝統的な大企業流の有無を言わせぬ命令で部下に仕事をさせるマネジメントが職員の反発を招き、組織が混乱状態に陥ってしまうことに結びついた。
── この二つの原因が重なってスタッフ増員に見合う収入増が実現できず、とうとう経営が破綻してしまったようだ。
(節子) 60年近くの歴史で築きあげた顧客基盤やその他の支持基盤を捨てることになってしまったなんてもったいないわねぇ。大企業の元調査部長に託して経営を再建しようしたことに根本的問題があるんじゃないかしら?
中長期経営計画の立案に必要なのは「立案する手順の知悉」であって「創造的な経営計画力」ではなかった、という先ほどの発言が引っかかるの。創造力豊かな人材でなければ、経営危機に陥った国民経済研究所の再建はできないんじゃないかしら?
こういう人事を決断した人の責任は非常に大きいと思うわ。 |
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