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個性的才能を引き出す性格診断の勧め

第5部 悲劇の人生の裏に臨機応変力のなさがある ─ 人生・仕事の問題解決者を登用しなかったことが悔やまれる ─ (ノンフィクション編)

性格無知 + 環境様変わり ⇒ 順調だった人生の暗転…ということもある

ポジショニング手法の適用を怠った→新しい立場の覚悟が不十分になった→臨機応変力を再構築しなかった→政権を投げ出すに至った…となった安倍元首相

2009.10.25

 ここで紹介する事例はインターネットなどの公開情報に基づいての推理結果であってクライアントを診断したものではありません。クライアントから知りえた情報が新創業研究所から具体例で洩れることは一切ありません。ご安心ください。



「戦略は細部に宿る」ことの軽視が適切な目標を却って仇にしてしまった ── 窮地であればあるほど創造的統合戦略が必要であることを忘れてはならない ──

「着眼は実に良かったのだが…」という御定まりのコースになってしまった

スローガンは適切な狙いがあってもタイムリーな説明がなければ空転するしかない

(節子) 安倍元首相で一番注目しなければならないのは平成18年9月29日の衆・参両議院本会議における所信表明演説の中で提示した「美しい国、日本」よね。これをどう評価したらいいのかしら?

(高哉) 「美しい国、日本」は素晴らしいスローガンだと思う。というのは、彼は経済成長と財政再建を同時に実現させようとする中にあって洞爺湖サミットのテーマを地球再生にすることで各国首脳の同意を精力的に取りつけた。このことを考えると、このスローガンで彼が本当は言いたかったのは次の図式の実現だと思うからだ。

 世界一のクリーン・テクノロージーを使って日本を“無公害”にするための広義の公共投資を行う ⇒ “無公害”国・日本をショーウインドウに使ってクリーンテクノロージーを世界に輸出する + その他の施策をも講じて日本を観光大国にする ⇒ 内外需の拡大を通じて雇用を拡大する ⇒ 財政の再建が進む。(関連コンテンツ ⇒ 『世界経済の超バブル崩壊克服のために日本が採るべき決め手&働く人を取り囲む環境』)

(節子) 貴方が今提起した図式であれば、「美しい国、日本」の求心力が高まり、内容の詰めが積極的に行われる。ところが、彼はこの具体的内容を(1)文化、伝統、歴史を大切にする国、(2)自由な社会を基本とし、規律を知る、凛とした国、(3)未来に向かって成長するエネルギーを持ち続ける国、(4)世界に信頼され、尊敬され、愛される、リーダーシップのある国 ── と定義した。

 これって新社長が就任挨拶で「品質とコストと納期を良くすることを私の公約にします」と言うのと似ている。だもんだから、貴方が「素晴らしい」と評価するスローガンは彼を酷評するための材料に使われることに結びついてしまった。どうして貴方がちょっぴり肉づけしたような具体的内容にしなかったのかしら?

(高哉) 政治歴も年齢も若いが故に支持基盤がいまいちの安倍さんとしては工夫を凝らして求心力を高めなければならない。小泉さんは国民を支持基盤にするために党内外の抵抗勢力を敵にする作戦を採った。しかし、そのために自民党内がガタガタになってしまった。そして、日本の国は乱れている(詳しくは ⇒ 『わが国は平和革命前夜のような状態にあることを認識する』)し、共同体は崩壊に向かっている

 ということで、安倍さんは自分の性格にもぴったりの「美しい国、日本」を実現させることを最上位の目標に掲げることになったのだと思う。ところが、創造的問題解決力のある人物が彼の周囲にいなかったので、新社長が就任挨拶で「品質とコストと納期を良くすることを私の公約にします」と言うのと似ていると貴女が酷評するような陳腐な肉づけになってしまったのだと思う。

 彼を支えるスタッフに恵まれていなかったにもかかわらず自民党の総裁になったことが失敗の最大の原因じゃないかな。というのは彼は和と共存のための目標を掲げ、目標を肉づけして実行する人材を不退転の姿勢で束ねることで力を発揮できる人物だと思うからだ。

自分と身内を客観視できないことも“ファーブルの毛虫現象”に結びつく

(節子) 自分の性格の可能性と限界を知らずして新分野に乗り出すことの危険性を物語る見本ね。自分の性格を知っていれば、「こういうことは得意だけど、ああいうことは不得意」という自覚をし、この自覚が足らざるを補うための準備に結びつく。こういうことなのでしょ? どうしてそういうことに気がつかなかったのかしら?

(高哉) そういうことに気がつかないのは何も安倍さんだけではない。目標達成のために足らざるを補うための準備を怠ったために失敗した例は無数にあるのが日本の社会。この背景には次の図式がある。

日本人が脳力・能力の補完をすることなく新しい立場に就きがちである理由

 (過去の延長線上を歩むことで事足りた時代が長く続いた + ウチとソトが明確に分かれた蛸壷型社会が長く続いた ⇒ 足らざるを補うのではなく身近な人材などで事を成就させる努力をしてそれなりの成果を上げることができた) + (日本的集団主義の影響を強く受けている + 自分の性格と由来を認識していない ⇒ 性格発衝動強迫の支配をごく自然に受けることになる ⇒ 現実直視力が欠如する) ⇒ マンネリズムに陥った行動を採りがちとなる。

 この図式に得心してもらうための面白い実例がある。某企業の経営企画部長に事業再構築の提案をした。そしたら、その経営企画部長は「そういうことをやるのは私の仕事です。したがって、先生を登用する余地はありません」という返事が返ってきた。この人物に新時代に相応しく事業を再構築する才能はないにもかかわらず。

(節子) 似たような例を私も知っている。ある企業の常務が自社のホームページを立ち上げようと思って専門業者に見積ったら200万円という数字が出てきた。この常務は「高すぎる」と言って断ってしまった。この背景には次の図式があるんでしょうね。

 マンネリズムに陥っている ⇒ 自分自身や自社の人材の費用vs効果に関心が薄くなっている ⇒ 必要な対価を払ってでも足らざるを補うことを発想しにくい ⇒ 「ケチれば損をする」という罠にはまってしまう。

(高哉) 過去の延長線上を歩むことでは駄目になった。にもかかわらず、複雑なことには目を背けてしまい、チャンスを逸したり、ピンチに陥ったりする。こういうことも今説明した図式の中に含めるべきだろうね。『超高速道路ががらがらに空いている状態であなたを待っている』にあるようにこの現象は日本病だとも言える。そして、安倍さんも例外ではなかった。

緻密なシナリオ発想が弱い権力基盤を盤石にし大事を成し遂げることを可能にする

(節子) 安倍さんは崩壊に向かっている共同体を再構築したいので、憲法改正や教育改革に熱心だった。でも、こういうことの効果が上がるのはずーっと先のこと。一方、年金問題、ワーキング・プアー問題など急いで解決しなければならないことが沢山あった。こういう状態を指して安倍さんは「望遠鏡を覗いて政治をしている」なんて悪口を叩かれた。

 「複雑なことには目を背けてしまうことが日本全体に横行している」ということがよく言われるけど、こういうことを指しているのかしら? そして、このことは安倍さんにも当てはまるのかしら?

(高哉) 憲法改正や教育改革などがさっき肉づけした「美しい国、日本」にどのような経路を辿って結びつくのかの説明が全くない。こういう意味では安倍さんは複雑なことには目を背けてしまったことになるんだろうね。

(節子) 首相であった安倍さん自身の給与30%返上宣言をしてまで取り組もうした、多くの国民の宿願でもある官僚のリストラがうまくいかなかったのも貴方に言わせれば同じことなんでしょうね。どうすべきだったのかしら? 長年の課題でありながらうまくいかない原因の構造をしっかり捉えないことに原因があるんでしょうね。

(高哉) その通りだよ。根本的原因の中に解決策のヒントは必ずある。官僚のリストラがうまくいかない原因を図式化すると、次の通りとなるんじゃないかな。あくまでも単純化してだけど。

 (啓蒙度がいまいちの選挙民が多数を占めている ⇒ 国政を担うに相応しくない人物が政治家になっている度合いが強い ⇒ 政治家は選挙資金を稼ぐために利益誘導型政治を行いがちであった ⇒ 利益誘導型政治を行えるか否かは人間関係が極めて重要になることが政治家の世界にも年功序列が色濃く残ることに結びついた ⇒ 素人みたいな人が大臣になっていることが多くなった)

 + 政治家たちは当選や落選を繰り返している ⇒ 公務員が政策を作り、政治家や大臣はそのスポークスマンになっている傾向が強くなった ⇒公務員がマスコミの大きな情報源になってしまった ⇒ 政治家は公務員にとってマイナスになることを実行しにくくなった。

(節子) がんじがらめの構造になっていたのね。あの小泉元首相が国家公務員の5年間5%純減を盛り込んだいわゆる行政改革推進法を成立させたことに留まったのも当然というしかない。安倍さんはどうすべきだったのかしら?

(高哉)カエサルの養子だが、カエサルのようなカリスマ性はなかったので、元老院が大きな壁であったローマ初代皇帝アウグストゥスが権力をしっかり掌握したやり方にヒントを求めるべきだったと思う。彼は次の図式からなる巧妙なやり方を採用して自分の地位を不動のものにしたようだ。

 (元老院にとって“飴”となる共和制復帰を宣言した ⇒ 元老院は失った利権を取り戻せるので大喜びした) + ローマは属州の管理をどうするかという課題を抱えていた + 大きなメリットを与えられるとお礼をしたくなる本能を人間は持っている ⇒ 元老院はアウグストゥスに属州の直接統治を依頼した

 ⇒ アウグストゥスは統治しやすく、かつ経済的な大きな見返りが期待できる属州グループの統治を元老院に任せた。そして、そうではない属州グループを自分で統治することにした ⇒ 治安が乱れやすい属州グループがクローズアップされることになった ⇒ アウグストゥスはローマ並びに属州の治安維持のためにローマ軍の全権掌握を申し出た ⇒ 元老院はアウグストゥスにローマ軍の全権掌握権を与えた。

(節子) アウグストゥスって頭がいいのね。というのは、生殺与奪権となるローマ軍の全権掌握を可能にしたのは次の図式と言えそうだからよ。

 元老院は垂涎の的となるようなものを棚ぼた的に得た ⇒ やっと得られたものを失いたくない想いで頭の中が一杯になった。いいかえれば、性格発衝動強迫に支配された ⇒ 現実直視力を失い、隙が生まれた ⇒ アウグストゥスは間隙を突くが如くに決定的なものをさっと入手した。

(高哉) その通りだ。アウグストゥスは人間心理に精通している達人だよ。貴女の解釈を性格診断の専門家らしく表現すると、次の通りになる。

 性格無知のままである + 人間にはやっと得られたものを失いたくない想いで頭の中が一杯になるところがある ⇒ 性格発の衝動強迫の支配をついつい受けてしまうこととなる ⇒ 現実直視力を失うこととなる ⇒ 「後悔先に立たず」となってしまうことをやってしまうこととなる。(必読コンテンツ ⇒ 『性格発の衝動強迫の支配を受けないようにするための方策』)


多くの日本人が一触即発の状態になっている仕組み
 (先行きがどんどん不透明になっている + 個が埋没する時代が長く続いたので、個性を本当に受け止め理解できる人が殆どいない ⇒ 臨機応変力の必要性がかつてなかったほど高くなっている) + (降りかかってきた難問を受け止めて創造的に解決しようとしないその場しのぎの人生を送っている ⇒ 臨機応変力の強化が進みにくい) ⇒ 臨機応変力の欠如が露呈されるようになった ⇒ ピンチに陥ったり、チャンスを逸する度合いが極めて高くなっている ⇒ ストレスが溜まり続けたためにに悪しき性格発の衝動強迫に支配されやすくなっている。


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