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(節子) 現代は民主主義の時代。しかも、変化が激しい。したがって、織田信長のような独裁者が組織全体を臨機応変に動かすことは困難。仮にできても、やる気はあるけど能力がついていかないということだってある。 個性的な性格があり、この性格が仕事の向き不向きを決める。しかも、知識と実戦経験があって始めて職業的な専門能力が確立される。こういうことだってある。組織全体が臨機応変に動くためには工夫が要ると思うの。 (高哉) 企業が臨機応変の経営行動を採るための壁としては貴女が今言った専門的能力の壁の他に挑戦力の壁もある。追われる」から「追う」仕事への転換が必要になったで紹介した、僕のような独断でとてつもないことを行う人間は例外中の例外であると考えた方が無難。世界最小の100万分の1グラムのプラスチック製歯車を創った人物のように社長の全面的バックアップが必要だろうね。 但し、このやり方だって限界がある。例外的人物が例外的に挑戦するのを待たなければならないからね。この人物が例外的であるというのは、次の図式にはまりこんでいる組織が多いからなんだ。 攻めよりも守りに傾きがちなピラミッド型組織にどっぷり浸かってきた ⇒ 大事を決断するのは上の人であるという思い込みが染みついている ⇒ 自主的に大事を決断する経験が乏しくなっている ⇒ 上の人はその上の人が決断することであると逃げてしまいがちとなる or 失敗するとプライドが傷つくと思って決断を躊躇ってしまいがちとなる。 (節子) それって停滞している中小企業にも見られるいわゆる大企業病ね。習慣の壁を取り除くには時間がかかるので、「わが社の経営資源を提供しますので、プロジェクトを持ち込んでリーダー役を演じてください」と宣伝して外部から凄腕の人材を募集した方が良いわね。 だとすると、「アメリカの選択する」から「日本の育てる」に戻るべきであるという最近の論調とどのように折り合いをつけたら良いのかしら? (高哉) 取引先も社員も育てた方が良いに決まっている。理由は二つある。前に言ったことの繰り返しになるが、「企業の求心力を高める ⇒ 転職率を極力低くする ⇒ 経験の浅い人材でも高質のサービスを提供できるようにするという手段の採用をも含めて従業員を教育する」という図式が必要である。これがひとつ。変化の激しい時代は現場を預かっている社員からの提案が必要不可欠。派遣社員にはこういうことは期待しにくい。これがもうひとつの理由。 にもかかわらず、「日本の育てる」が見直されて「アメリカの選択する」になってきた理由を考える必要がある。「取引先や従業員を育てようとする ⇒ 癒着する ⇒ 臨機応変力を失う」という図式になったことが嫌われたことの根本的な原因になっているんだ。 (節子) 分った。生え抜きの社員だけで何もかもやることを止めて積極的に中途採用をしたり、貴方が今さっき言ったプロジェクトを持ち込んでくれる外部から凄腕の人材を大歓迎するような組織運営に改めれば良いわけね。 (高哉) その通りなんだよ。そうすることによりとてつもなく優秀な人材を登用できるようになる。日本の伝統的な人材登用の仕方が間違っていることを理解して貰うためにイギリスのメージャー元首相の経歴を紹介させてもらうよ。 高校中退 ⇒ 土木作業員 ⇒ 失業保険受給者 ⇒ 見習いで大銀行に入行 ⇒ 為替部門の部長に昇進 ⇒ 取締役に就任 ⇒ 41歳で保守党の党首に就任 ── こういう人生を歩んだ。日本ではまったく考えられない。大反省が必要だよ。 (節子) 貴方がいつも言っているオープンリソース経営への転換が必要ね。でなければ、企業は価格競争から非価格競争路線への転換が困難になってしまう。でも、安易にアウトソーシングをするのは危険じゃないかしら? 私も経験しているけど、外注先には結構いい加減なところがあるのよ。
(高哉) おっしゃる通りで、アウトソーシングは毒にも薬にもなる。携帯電話世界ナンバーワンのノキアはほぼすべてを内製することに拘った垂直統合型事業を続けた結果、インターネット対応に遅れをとって業績ががくんと落ちてしまった苦い経験をしている。その結果、アウトソーシングを積極的に取り入れた。これなんかは「薬」の良い例だろうね。 一方、同業他社の横並びを排してインソーシングに拘って成功した日本レストラン・システムのような「毒」の例もある。この会社は次の図式を実現させているようなんだ。 別会社で一本化して野菜の仕入れをしている ⇒ この仕入れ会社は野菜価格の変動を店舗への売価に転換させることなく販売価格を極力一定に保っている ⇒ 店別の利益比較が容易にできる ⇒ 店別の市場性の判断が容易にできる ⇒ 店舗のスクラップ&ビルドあるいは業態の変更が容易にできる。 (節子) このオープンリソース経営のあり方と関係すると思うので、多国籍企業のことで質問したいことがある。多国籍業化の目的をコストダウンに置くことは市場の個性的欲求に適応しにくくする。だからと言って世界中に散在する子会社が好き勝手なことも問題がある。どうすればいいのかしら? (高哉) 世界中の関連企業・事業所を一体的に掌握する ⇒ それぞれの特徴を適切に認識する ⇒ ニーズの質やタイミングに合わせて臨機応変に仕事を割り振る──、といった具合の事業展開が必要になるだろうね。 問題はそれぞれの特徴を適切に認識するためにどうしたらいいかだけど、本社のやり方を押し付けるのではなく現地の実情に合わせた創意工夫を引き出す。こういうやり方がいいんじゃないかな。IBMだったと思うけど、インドにあるコールセンターの運営の仕方を現地に任せたところ素晴らしい成果を発揮したので、このやり方を他の国にも適用させたそうだ。 このような成功を偶然ではなく必然にするためには、少なくとも経営幹部の性格を見抜く必要がある。というのは、性格は行動力学に、行動力学は個性的才能の醸成に確実に結びつくからね。
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