【斬新な着眼】
        
       
       負けても堂々と再出発できる時代がやってきた
      ― ヤオハングループ元会長・和田一夫氏の近況から考える〈2000/10/16〉 
       
        個人と企業は今後何をなすべきか 
       
      8.ポジショニングと再ポジショニングをしよう 
       
       大変容の時代はピンチであるだけではありません。チャンスでもあります。なぜなら、前述したように、敗者復活の妨げとなっていた条件がなくなっていく…といったようなことがあるからです。 
       
       但し、大変容時代がもたらすせっかくのチャンスをものにするためには、冷静な分析思考が必要です。 
       
       「どうして敗者復活を妨げてきたのであろうか?」「敗者復活を妨げてきた条件はこれからも存在するのであろうか?
      存在しないのであれば、どうしたらよいのか?」を前述したように考え抜く。これが必要とされる冷静な分析思考です。 
       
       これまでの状態のよって立つ条件を探り出すことをポジショニング、今後を展望して成功するための新しいあり方を探り出すことを再ポジショニングと言います。そして、大変容時代の勝者になることを確実にしたいのであれば、このポジショニング並びに再ポジショニングを行わなければなりません。 
       
       最近うまく行かなくなってしまった。最近だけではなくずーっとうまく行っていない。今うまく行っているが将来もそうであるかどうかが不安だ。こういう事態から脱却したり、転ばぬ先の杖を入手するためにも、このポジショニング並びに再ポジショニングは威力を発揮します。 
       
       このポジショニング並びに再ポジショニングをきちっと行っていれば、銀行はバブルの張本人にならなくてすんだのです。なぜなら、「上司の言うことに間違いがあるはずがない」と圧倒的多数の一般行員が思い込んでしまったために、異常な貸し出し競争が行われ、日本経済の悲劇の元となったバブルが発生してしまったからです。 
       
       日本人は主体的な思考を停止し、「赤信号でも皆で渡れば怖くない」といったように盲目的に横並びになるところがあります。この染みこんだ悪しき習慣から脱却しない限り、デッドロックからの脱却も、チャンスのゲットもできないのです。 
       
       
      
      9.市場別の分社化を行おう 
       
       四国の今治造船は造船不況の中、ずーっと黒字を続け、未上場企業でありながら、今や新造船量で日本一です。造船専業で、あらゆる種類の船を手がけている。いいかえれば、わが国の造船業界の中にあって市場密着力NO1企業である。ここに成功の秘訣がありそうです。 
       
       総合的な品揃えが強みになる理由は次の通りです。 
       
       
      
        
          
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            個性化した需要を確実にゲットする最善策はコンサルティング・セールスを行うことである。なぜなら、個性的需要は潜在していることが多いので、提案が必要だからだ。 
             
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            コンサルティング・セールスのコストを回収するためには、特定市場別の顧客の需要を洩れなく充足できる品揃えが必要である。 
             
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            やりたいことが沢山ある。余暇が多様化してきたために、顧客はこれまでになく時間を大切にするようになってきた。したがって、ワンストップ・ショッピングを求める度合いが高くなった。 
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       でも、総合的な品揃えの実現が強力な市場密着力に必ず結びつくとは限りません。寝ても醒めても担当市場のことを考え続けなければ駄目です。総合的な品揃えの実現は市場に密着できるコスト力を可能にするにすぎないのです。 
       
       今治造船のような専業企業でない場合はどうしたらよいのでしょうか? 特定市場別の権限と責任を持たせた、市場別の分社経営を行うことをお薦めします。但し、権限と責任を持たせるに値するだけの人材が揃っていることが必要であることは言うまでもありません。なぜなら、適切な判断力と問題解決力のない人材に権限を与えることほど危険なことはないからです。 
       
      10.構想力・独創力強化投資を行おう 
       
       市場別の分社経営の担い手に相応しい人材をゲットするためには、従業員の構想力・独創力を強化しなければなりません。理由は次の通りです。 
       
       
      
        
          
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            世の中がシステム化され、複雑になってしまったので、大きな壁を感じてやる気が起きにくい。こういう人が増えているが、このような状態の打開に役立つのが構想力・独創力である。(でも、相変わらずのコネ社会であれば、せっかくの構想力・独創力も威力半減となります) 
             
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            人脈形成の武器がコネ力からアドバイス力に急速にシフトしつつある。いいかえれば、いわゆる大物とのコネがなくても、臨機応変に適切な構想を提起できる力がありさえすれば、自由自在に人脈を形成できるようになってきたのだ。なぜなら、蛸壺型社会からネットワーク型社会に転換してきた。同時に、模倣や「カイゼン」が困難になり、独創的なアイディアが尊重される時代になったからだ。 
             
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       以上の説明を読んで、「でも、年老いると誇りを持って働けなくなるのでは、構想力・独創力強化はしがいがなくなるのでは…?」という声が聞こえてきそうですが、とんでもない誤解です。理由は次の通りです。 
       
      
        
          
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            年老いた人々が支配する世の中に嫌気をさし始めた若者が増えつつある。なぜなら、年功序列が急速に崩壊しつつあるので、のんびりできない。その上、巨額の財政赤字が重荷になって、やる気をそぐからだ。若者は年寄りに当然として反感を抱くに至っている。かくして生まれつつある世代間対立を緩和するには、高齢者の就労機会を増やして、年金生活者の高齢者の数を減らすしかない。(社会的な要請) 
       
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            「思考の三原則」(全体を見る/長い目で見る/根本的に考える)の適用が必要な魅力ある構想を提起するには若者よりも年寄りの方が有利。なぜなら、付け焼刃の知識では役に立たないからだ。(高齢者の有利性) 
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       新時代のキーテクノロジーである構想力・独創力はどうしたら強化できるのでしょうか? 立ち往生状態に陥ってしまった時に、適切な専門家を訪ねて、3大効果を持つ濃縮法を採用して創造的問題解決策を共に策定することをお勧めします。 (完) 
       
       
      
             
      
      
       
      
       
       
       
      
       
      
       
       
      
       
      
      
      
       
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