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個性的才能を引き出す性格診断の勧め

第2部 悲劇の人生の裏に臨機応変力のなさがある ─ 人生・仕事の問題解決者を登用しなかったことが悔やまれる ─

『孤独の賭け』から学ぶ

アイデンティティがあれば天才型事業家の挫折は防止できたかもしれない

2008.3.23

物語のあらすじを予め理解しておくことをお勧めします

能力の補完を行うことなく新分野に進出した

「好きこそものの上手なれ」だけを頼りに事業を拡大させた

(節子) 梯二郎は「自分ほど娯楽産業のことを知っている人間は他にはない」と豪語し、この豪語に相応しい実績を残してきている。30歳ちょっと過ぎでどうしてこんな凄い人間になったのかしら? これから最有望の知識・知恵産業の参考にするために彼がこうなることができた秘訣を教えてくれないかしら?

(高哉) 自分がそうであるので、快楽追求の仕方を知っている。このことがきっかけとなって次の図式が実現されているからだと思う。

梯二郎が30歳ちょっと過ぎで娯楽産業精通度No1になることができた理由
 快楽追求の仕方に関する脳の中にあるシソーラス機能が凄く発達している ⇒ 満足いく快楽を客に追求させるための方策を臨機応変に提供できる ⇒ このノウハウをふんだんに生かせるバー・キャバレー等の経営に乗り出した ⇒ 満足いく快楽を客に追求させるための方策を臨機応変に提供できることに結びつく脳の中にあるシソーラス機能が充実の一途を辿ることになった。

 性格に合ったことをして興味津々になって始めて学習したり経験したことが身につく。このことは凄く大事なことなんだ。複雑な人間心理を描いた小説を沢山読み、研究する文学部を卒業している。にもかかわらず、人の気持が分からない人が少なくないのが何よりの証拠だよ。好きこそものの上手なれの世界に入ることができなかった。このことが学問を無に帰してしまったのだと理解しなければならない。

(節子) 知識・知恵産業で成功を収めるためには性格に合った仕事につかなければならない。こういうことね。貴方が職業人としての数々の実績を挙げることができた背景には、生い立ちに由来がある構想力・独創力を駆使できる仕事を選んだことがある。このことが何よりの証拠と思うの。(詳しくは ⇒ 『トラウマになるような衝撃的な事故は類稀な才能に結びつく癖を生む』)

 梯二郎は性格に合う仕事をしてきたために30歳ちょっと過ぎで「自分ほど娯楽産業のことを知っている人間は他にはない」と豪語できるまでになった。にもかかわらず、野望を遂げる前に挫折してしまったのはどうしてなのかしら?

(高哉) 事業規模が大きくなるにつれて直接・間接の競合先が増える。総需要が拡大している時はこの影響はほとんどない。ところが、総需要が減少してくるとゼロ・サムの戦いとなるので、途端に影響が大きくなる。こういうことに対する認識がほとんどなかったからだ。

 こうなってしまった背景には、性格が醸成した類希な才能だけを頼りにして成功し続けてきたことが現実直視力を弱らせてしまった。いいかえれば、性格に振り回されたことがある。

異なった価値観の大物との付き合い方の認識が不足していた (野望を遂げる前に挫折してしまった原因1)

(節子) 自分の置かれる環境が変わると、自信があった臨機応変力が通用しなくなった。こういうことね。このように考えると、梯二郎が置かれた環境が変わったのは事業規模が拡大しただけではない。財界の重鎮である大垣氏とその奥方やカジノ構想で登場することになった実力政治家との付き合いもそうよね。

 自信があった臨機応変力がこういった方々との付き合いにおいて通用しなくなったことを、仕事を積極的に進める人に参考になるように理路整然と説明してくれないかしら?

(高哉) 大垣夫妻や政治家もさることながら最大の資金提供者である、大物高利貸である東野との付き合いが最も重要だよ。だから、この人物とのことを採り上げることにするよ。

 昭和30年代の後半においてはレジャー産業の株式上場は困難であった。さりとて銀行融資だって資金需要の精々1割程度しか期待できない。となると、高利貸しに大きく依存するしかない。しかし、そうすると、景気低迷による娯楽の百貨店のキャッシュ・フロー悪化を利用して締め上げが行われる。こうなるのを恐れて外国資本に大株主になって貰うことで海上カジノを中心にする夢の歓楽境を創りあげようと思った。

 この構想は東野にとって好ましくない。自分のビジネスが締め出されることもあるが、企業利益だけを考え日本を食い物にしかねない外国資本との提携は彼のナショナリズムに反することになると判断するからだ。その背景には、東野が次の図式の下にあったことが考えられる。

 (日本の社会で成功し続けてきた ⇒ 日本の体制をよしと思うに至っている) + (膨大な不動産を日本の中に持っている ⇒ 自分が保有している資産の価値は日本経済の繁栄いかんにかかっている) ⇒ 日本経済のマイナスになることはできるだけ排除しなければならないと考えている。

(節子) テレビ版『孤独の賭け』の中でアメリカ資本を導入しようとした梯二郎を東野が切り捨てることになった背景にはそういうこともあったのね。広い視野を必要とする世界に視野が狭いまま入って活躍しようとすると思わぬ伏兵が待ち構えていることがよく分かった。

 環境に適応し続けるためには「思考の三原則」(全体を見る/長い目で見る/根本的に考える)を適用できる人物の力を借りてポジションニング手法を忘れずに適用する。これをモットーにしなければならないわね。

 同じようなことが大垣夫妻や政治家にも当てはまるんでしょ。「色々な世界があるんだなぁ。猪突猛進は命取りになる」ということをもっと納得したい。そのために聞くんだけど、夢の歓楽境の中に予定していたカジノは政治家とどのように関わってくるのかしら? 政府の認可が必要である。これだけで政治家が色めくとは考えにくいのよ。

(高哉) フジヤマ、ゲイシャに代わる観光資源になる ⇒ 当時の日本が一番必要としていた外貨を大きく稼ぐことができるので政治家の協力が得られる ⇒ 競争を排除して独占ビジネスになる ⇒ 政治家とタイアップしての利権ビジネスになる──、という図式の事業家側の論理がある。

 それだけではない。ギャンブルの収益金の一部は第二の税金的な性格を持っていながら中央官庁経由で政治家が国会のチェックを受けずに自由に使えるという性格を持っている──、という政治家側の論理もある。オートレースの収益は経済産業省の総務課、競艇の収益は国土交通省の総務課、競馬は農林省の総務課がそれぞれ一括して管理しているようなんだ。

 こういう性格を持った事業を政治家が強引に推し進めようとすると、勘ぐられて政治的なスキャンダルの噂になりかねない。したがって、事業者は「カジノが国民にとって大きな利益になることを理路整然と説明する ⇒ カジノ認可OKの国民世論ができあがる ⇒ 政治家はリスクを感じることなく認可のための努力をする」という図式を実現させなければならない。

 ところが、このようなことを梯二郎が考えた節がなさそうである。これが事実であれば、景気動向とは関係なくこの事業は梯二郎にとって荷が重すぎたと思う。

ベンチャー・ビジネスを開花させる方策の認識が不足していた (野望を遂げる前に挫折してしまった原因2)

(節子) 海上カジノを中心にする夢の歓楽境のアイディアが小説では大垣夫妻に、テレビドラマでは政治家の協力を得た東野達のグループに横取りされてしまったじゃない。このことを梯二郎はどう反省すればいいのかしら? 「持てる者には勝てない。貧乏人は貧乏人でいるしかない」と格差の固定化を嘆くしかないのかしら?

(高哉) そんなことはない。弱者であっても創意工夫を凝らしさえすれば。先発の強者を尻目にいくらでも大成功を収めることができる。ところが、梯二郎はそうではなかった。特許で守ることができないアイディアで勝負しようとしている。

 にもかかわらず、アイディアを吸収しきることが可能な圧倒的力を持った既存勢力の力を借りて事業を展開しようとした。この甘さがアイディアを横取りされることに結びついてしまった。このことを反省しなければならない。

(節子) 梯二郎は「自分ほど娯楽産業のことを知っている人間は他にはない」と豪語し、この豪語に相応しい実績を残してきているのよ。こういう梯二郎抜きの事業はうまくいかないんじゃないかしら?

(高哉) 事業規模が小さい時は経営者の属人的能力の貢献部分が圧倒的に大きい。したがって、梯二郎がいる事業と梯二郎抜きの事業とでは大きな差が生まれる。ところが、 海上カジノを中心にする夢の歓楽境ほどの大規模事業であるとそうではなくなる。こういう場合、発行株式の過半数を握るとかの支配力を持たないと、事業構想だけを提供させて切り捨てられしまう“あんこ抜き”の危険性がついて回る。

 総合商社がアイディアに基づいて事業化に持ち込んだ後、流通支配権を握るのは“あんこ抜き”されないようにするためでもあるんだ。

(節子) 事業化に協力してきた他の人々が「梯二郎を外した事業だったら協力しない」ということは切り札にならないのかしら?

(高哉) 属人的な能力を持った人々の協力が必要不可欠な映画製作のような場合であれば、貴女が言うようなことが成り立つかもしれない。しかし、海上カジノを中心にする夢の歓楽境のような場合はそうはなりにくい。建設、運営のいずれの段階においても映画製作と違って属人的能力への依存度が少ないからね。

(節子) どうすべきだったのかしら? ベンチャー・ビジネス一般に役立つような説明をしてくれないかしら?

(高哉) だいぶ前に紹介した大手を尻目に躍進して磐石の地位を築いたSouth West AirlineやBombardierを思い出して欲しい。大きな隙間市場にターゲットを設定し、かつ既存勢力の力を一切借りずに事業に乗り出している。これが両社に共通している。いいかえれば、既存の大勢力が「アイディアだけを頂いて自分でやっちゃおう」という具合にはならないような参入障壁を予めビルトインした事業を展開しているんだ。

(節子) 娯楽の百貨店や海上カジノをメインテーマにする夢の歓楽境を建設・運営するにはトップクラスの人脈が必要。しかし、貧乏人上がりの梯二郎にはそんなものはない。となれば、大垣夫妻に頼るのは仕方がなかったんじゃないかしら?

(高哉) 大垣夫妻だけを頼りにするのは娯楽の百貨店で終わりにすべきだったんだ。その後は、娯楽の百貨店にやってくる大物との人間関係を地道に形成して、数多くの大物を頼りにするようにすべきだったんじゃないかな。こうならなかったのは、梯二郎が次の図式にはまってしまったからだと思う。

 自分の性格と由来を知らない ⇒ 「性格に振り回されそうになっている」ということに気がつかなかった ⇒ 「冷静に判断してできるだけうまくやりたい」という、人間が持つ素晴らしい本能が作動しなかった ⇒ 強迫観念にしたがった思考・行動を採ることになってしまった ⇒ 視野狭窄症、ひいては拘禁服着用症に罹ってしまった。


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