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【世界の出来事から問題解決の方法を学ぶ】



→ユーロ誕生と企業経営

6. 日米協調がアジアを共同市場形成に向わせる

円の大暴落阻止はアメリカとアジアの願い

 貿易赤字の拡大により、アジアにばら撒かれたドルをアジアの共通通貨にし、アジアの共同市場の形成を推進すると前述したが、このようなやり方であると、一つ大きな問題が発生する。円の供給量が拡大される中にあって、円需要が急速に縮小し、円が大暴落してしまうからである。

 それでは円が大暴落することがなぜ問題となるのであろうか。円安・ドル高が過度になると、アメリカの対日輸出がしにくくなる。のみならず、日本の製品の価格競争力が強くなりすぎ、他のアジアからの対米輸出に大きな限界が生じるし、アジア製品の対日輸出も伸びなくなるからである。これでは、アメリカもアジアも困るのである。

 となると、アジアにおける円需要を拡大しつつ、ドルをアジアの共通通貨にすることが必要になる。但し、アジアが円を必要としていればであるが。果たしてアジアは円を必要としているのてあろうか。この必要性を検討するために、アジア経済の実態を見てみよう。

アジアの内需拡大は困難になっている

 中国の膨大な人口は他のアジアにとってありがたい存在に見えるかもしれない。ところが、マレーシアやタイなどにとって対中国輸出拡大は困難であるだけではなく、先進国への輸出において強力なライバルとなっている。言いかえれば、ヨーロッパとは違って、アジアは域内の相互依存度はそれほど高くないのだ。

 なぜか。中国はアジアの中にあっても賃金水準が低い上に、とてつもない過剰生産設備を抱えているからなのである。この背景には中国経済がデッドロックにのし上げているという実態がある。躍進を続けてきた中国経済に何が起こっているのであろうか。

 通貨危機に襲われたアジア諸国の通貨の大幅切り下げなどにより、元が割高となり、外需が低迷している。中国の消費需要を支えているのは、都市住民だが、彼らは輸出拡大で中国経済が高度成長を長期にわたって継続していることに慣れている。ところが、この輸出に陰りが見えている上に、国営企業を中心にリストラの嵐が吹き荒れているので、将来に大きな不安を抱き、消費を抑制している。

 したがって、都市住民を住宅購入に駆り立て、内需を拡大したいとする中国政府の努力も効を奏していない。このような状態であるので,リストラの影響による失業率の拡大ばかりが目立っているのだ。

 このような場合、元を切り下げ、輸出を拡大する。あるいは金利を引き下げて、内需一般を拡大し、雇用を拡大する対策が考えられるのだが、中国の実態を考えるとこれがまた容易ではないのだ。

 元の切り下げの可能性が生まれると、元をドルに交換するために、国民は銀行預金の引き出しに走ってしまう。中国にはドルの闇市場が発達しているからだ。金利の引き下げでも同様のことが起きる可能性が大。そして、このようなことが現実になると、国民の高い貯蓄率に支えられている中国の金融システムはたちまちの内に崩壊してしまうのだ。

 内需が拡大できないのは、上記したような都市住民の将来不安から来る消費抑制や金利を下げられないことだけが原因しているのではない。個が抑圧されている上に、企業化に必要な人材・技術・金融の市場がないに等しいという体制的な欠陥があることは否定できない。

 中国経済が上記したような状態である上に、通貨危機に直撃されたアジア経済はすっかり元気を失ってしまった。だから、アジアの内需は拡大できないのだ。

円の大量注入によってアジア経済は再上昇できる

 デッドロックにのし上げているとは言え、中国には莫大な潜在成長力がある。資金不足がこの顕在化を阻んでいるのだ。だからと言って、ハイパー・インフレが怖いので、元を大量増刷するわけにもいかない。金利の引き下げですら実行できないのだ。国民が銀行預金を引き上げ、中国の銀行システムが崩壊して、ますます資金不足になってしまいかねないからだ。

 だったら、世界で通用する外貨を元の代わりに注入したら良いのではないか。こういう考え方が出てきてもおかしくない。だとすれば、円の需要を拡大するために、注入する外貨として円を用いればよいのだ。問題は中国の内部で円をどのように用いるかであるが、次のように用いるのが理想であろう。

 中国は良質の住宅だけではなく、国内をネットワーク化するための交通・通信手段が大幅に不足している。この不足と各地方政府の他地域に対する経済的閉鎖性があいまって、国内経済の相互依存を妨げている。

 域内の経済のパイを拡大しつつ、過剰生産を抑制することに結びつく、共同市場効果を中国は自ら放棄にしているわけである。そして、「ネットワーク化されていないから、経済のパイの拡大は困難。だったら、排他的になって、ゼロサム・ゲームを勝ち取った方が得」という判断が働いて、各地方政府の他地域に対する経済的閉鎖性が生まれているのであろう。

 したがって、中国の国内経済をネットワーク化するための交通・通信手段を前倒し的に整備するために、大量の円を注入すべきであろう。

 但し、これだけでは片手落ち。このネットワークを使った企業活動が盛んにならなくてはならない。でも、企業化に必要な人材・技術・金融の市場がないに等しいという体制的な欠陥があるのであった。

 ではどうすればよいか。大量の円注入の見返りに、中国の銀行はわが国の銀行と積極的にタイアップすべきであろう。このタイアップによって、わが国の人材と技術を銀行経由で臨機応変に注入することが可能となるからである。

 中国の金融市場の開放は漸次的に行う計画が策定されているが、円の大型借款を条件とすれば、この話に中国政府は乗ってくるのではなかろうか。

 それから、中国の農業近代化のためにも円を注入したいものである。高コストで過剰生産。したがって、政府の補助金を使わないと輸出できない。それでも余って腐らせている。これが中国農業の実態だからである。ここにもわが国の活躍の余地がある。

 中国農業の近代化によって生まれる消費需要は都市住民の買い控えを補い、国内経済ネットワーク化のための投資、それによって生まれる経済のパイの拡大と共に、内需を大幅に拡大することであろう。そうすれば、都市住民も将来不安がなくなり、消費が復活するであろう。

 中国が内需主導の経済成長路線に乗ることは通貨危機に襲われたアジア諸国にとって大きな意味を持つ。元の切り下げの危険性がなくなることを通じて、このアジア諸国の通貨価値が安定し、その分、先進国からの直接投資が拡大するからである。

 その上、中国の輸出圧力が減るので、このアジア諸国からの輸出が拡大しやすくなる。これを後押しするのが、アジアにおける円の国際化である。なぜなら、日本との間の輸出入を円建てで行えことができるようになれば、日本から輸入する資本財やハイテク部品が安く手に入るし、また、日本の低金利の恩恵を受けることができるようになるからである。

わが国のアジア経済牽引力強化が必要不可欠

 アジアを単純にドル経済圏にすることは円の大暴落に結びつき、アメリカのみならずアジアも迷惑する。だから、円需要拡大の可能性を検討。その結果、中国や通貨危機に襲われたアジア諸国に円を大量注入することがアジア経済の再浮上に結びつくことが分かったのであった。

 わが国の財政が黒字の場合は、余剰資金内であれば、アジアへの円の注入は問題がない。ところが、わが国の財政は破綻寸前。バブル経済の崩壊が巨額の不良再建に結びついた上に、長期不況により、企業収益も低迷。しかも、銀行は総資本利益率の大幅改善の必要性に迫られ、貸し渋り。したがって、民間経済も資金不足に悩まされており、またリスク負担力も大幅に低下している。

 国全体の資金不足は短期国債発行で対応しているために、長期金利の上昇は避けることができている。しかしながら、アジアへの円の大量供給となると、そうはいかない。中国や通貨危機に襲われたアジア諸国が円建て国債を発行することは望めない。なぜなら、リスクが高いために、高金利になり過ぎて、社会資本整備の採算が取れなくなるからである。

 となると、わが国政府が国債を発行するしかない。資金の用途から考えて、長期国債とならざるを得ず、長期金利の上昇を招いてしまい、わが国産業界が参ってしまう。

 そこで、長期国債を発行しても、長期金利が上昇しない。つまり、国に金を貸してもリスクを感じないような処置を予め講じる必要がある。そして、この処置はどうせなら、わが国がアジア経済全体を牽引できるようなものにしたいものである。

 日本経済再建策が上記したことに対応すると言えるので、このホームページで別掲している論文「日本経済を再建させる方法」をご参照いただくとして、ここでは、わが国の高齢化問題解決の仕方を提案するに留めたい。

高齢者はわが国経済の宝的存在になれる

 わが国の人口高齢化は世界の歴史で例を見ないほど急ピッチで進む。だから、わが国の将来は暗い。このように捉えられがちであり、これも長期国債発行が長期金利の上昇に結びついているのは否定できない。この問題は「仕方がない」と諦めなくてはならないのであろうか。

 人間の身体的能力・精神的能力の発達と年齢の関係は個人差が極めて大きいことに注目しなければならない。40才前に肉体のみならず精神的能力が下り坂になるのが一般的姿である。ところが、70才になっても青年のような肉体を、80才になっても青年のような精神的能力を持っている人もいる。

 上記した差は生まれつきのものなのであろうか。「否」である。挑戦的人生を送り続けているかどうかが決め手となっているのである。ここに、このことを証明する、ある開発途上国における興味深い社会的実験の結果がある。

 地域社会を構成する人全員が「お前は役立たず」と特定の人物に長期にわたって言い続けると、その特定の人物は、その内、気力が衰えてくる。気力が衰えてくると、体力が衰えてくる。体力が衰えてくると、気力が衰えて来る。といったような悪循環になり、その内、死に至ってしまう。

 このことは、将来に希望を持って挑戦的な人生を送ることが若さを保つ秘訣であることを物語る何よりの証拠であると言えよう。

 工業製品の製品技術が成熟化してしまって、わが国お得意の「カイゼン」主義が急速に色あせてしまった。だからと言って、単純な新・珍・奇では成功できない。社会がすっかり成熟化してしまい、新しい製品コンセプト開発の余地がなくなってしまったからである。

 このような時代で必要なのは、様々な意見や要素に基づいて独自の意見やコンセプトを発想する。そして、この発想の説明材料として、発想の源となった様々な意見や要素を必要に応じて使いこなす構想力・独創力である。

 このような作法に基づいて開発された事業がきちっとした論理構成になっていれば、環境変化への適応も行いやすくなる。かくかくしかじかの理由により、この事業をこのようなやり方で行う。こういうことが予め明確になっていれば、環境変化に敏感にならざるを得ないからである。

 ところで、上記した、様々な意見や要素はにわか仕込みであっても、優れた構想・独創に結びつくのであろうか。「否」である。なぜなら、優れた構想・独創を生み出すためには、一瞬のひらめきがなければならない。このひらめきは、強烈な問題意識があるのみならず、豊富な知識がしっかりと記憶されていて始めて生まれるものだからである。

 但し、ひらめいただけでは駄目である。閃いた結果は論理的に詰め抜かなくはならない。この論理的な詰めを行う過程で知識の補完を行えば、それは生きた知識となり、閃きは優れた構想・独創に発展するのである。

 以上から明らかになったことは、年齢を重ねれば重ねるほど、優れた構想・独創を生み出す可能性が高くなるということである。但し、加齢に応じて記憶が豊かになり、かつ魅力的な構想・独創を生み出せるようになるためには、挑戦し続ける、つまり、頭脳を鍛え続けなければならない。

 このような考えると、頭脳を鍛えぬいた高齢者は日本経済の宝であると言うことになる。このような宝を持ち腐れにしなければ、わが国の産業構造の高度化を通じて年金の財源が増える上に、年金支払い額は大幅に減らすことが可能となる。

 活性化した高齢者の輩出は医療費の削減を通じて、国家財政の健全化にも貢献できる。なぜなら、活性化されていない高齢者は病気しがちで、その一人当たりの医療費は若者の2〜3倍かかるからである。

 ところで、日本経済は再生され、アジア経済の牽引車となることができれば、心配なく円をアジアに大量注入できるのであろうか。「否」である。円の暴落阻止のためには、円の需要を拡大することをアメリカが許可するとしても、アジアでのアメリカの影響力低下に結びつくことはアメリカが決して認めないであろうからである。

 金融も含めて日本の市場をアメリカに大きく開放し、アメリカの対日本影響力を強化せしめる。 その代わり、日本人の構想力・独創力を強化することにより、日本の対アメリカ影響力を強化する。 このようなことをしつつ、アジアでの円の国際化を進める必要があろう。

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