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【世界の出来事から問題解決の方法を学ぶ】



→ユーロ誕生と企業経営

1. ユーロランドは自由貿易志向だが、域内交易にシフトする

(1) ユーロランドは自由貿易を推進する

 「ユーロランドの市場は閉鎖的になるのではない」かという懸念が一部にあるが、基調としては決してそのようなことにはならないであろう。保護貿易的態度を示すことはあっても、それは景気の低迷や駆け引き上からのものに過ぎないであろう。なぜなら、ドイツは世界自由貿易を推進し、ユーロランド全体がドイツに協力せざるを得ないからである。

 ドイツの製造業はユーロ誕生を受け、域内の低賃金国へとシフトしつつある。ところが、ドイツはアメリカのような先端産業育成力がないに等しい。自動車や機械のような伝統産業を洗練させることはできても、いわゆるイノベーション力がすっかり萎えてしまっているからである。したがって、ドイツは域外との交易を拡大したり、アメリカの企業と積極的にタイアップしない限り、産業が空洞化しかねないのである。

 このような立場にあるドイツであっても、ドイツはヨーロッパ経済の牽引車的存在。ドイツなくしてのヨーロッパ共同市場はあり得ない。となれば、ユーロランド全体は上記したドイツの立場に理解を示し、協力せざるを得ないのである。

 このヨーロッパ共同市場の世界自由貿易推進傾向に拍車をかけるのがイギリス。アメリカの金融・資本の支配力は元々世界ダントツ。これをウォール街と政府が結託して行った金融・資本のグローバリゼーションによって更に高めることとなった。

 一方、ヨーロッパは金融・資本市場の統合を行ってきたとはいえ、各国まちまちの通貨を使っていたのでは、アメリカの力に対抗すべくもない。そこで、生まれたのがユーロ。しかし、統一通貨・ユーロが誕生しても、世界一のファイナンシャル・センターを持つイギリスの参加がなければ、ヨーロッパの金融・資本市場はアメリカに対抗の仕様がない。

 このようなユーロランドの完成にとって不可欠なイギリスは開放経済の旗手のような存在。となれば、ヨーロッパ共同市場はその経済運営において、ドイツのみならずイギリスにも迎合せざるを得ないのである。

(2) 域内交易のウェイトが拡大する

 ユーロランドは上記したように、基調としては自由貿易を推進する。ところが、結果としては、域外交易よりも域内交易の方が拡大する。ユーロランドの市場は域外にも開かれたものになるとしても、交易のウェイトは域外外から域内にシフトせざるを得ないである。

 ヨーロッパ大陸は東南アジアとは違い、海に面していない国が存在する。したがって、東南アジアとは違って、元々域外よりも域内交易を志向しがち。このような元々の傾向に、域内のボーダレス化を一段と推進するユーロ誕生が加わる。だから、交易のウェイトは域内にシフトするのである。  域内交易のウェイトが高まるのは上記したことだけが原因するのではない。ユーロ誕生によって域内企業の競争力が強化され、域外からの輸入よりも域内での購買にシフトする圧力がかかる。このようなユーロ効果もあるのだ。

(3) イギリスの有利な立場は維持される

ファイナンシャル・センターとしての地位が向上する

 イギリスは国家としての意思を表示しさえすれば、いつでもユーロランドに参加できる。その上、ヨーロッパ随一の経済解放度を誇っていることなどがあって、外国からのイギリスへの直接投資が拡大し続けてきた。

 しかしながら、イギリス不参加の状態でユーロが誕生。このような状態で、イギリスの有利な立場は果たして維持されるのであろうか。この有利な立場が損なわれるのであれば、「イギリスの影響力もあって、ユーロランドは自由貿易を推進する」という先ほどの前言を見直さなくてはならない。果たして、どうであろうか。

 ユーロ誕生によって、イギリスが誇る世界一のファイナンシャル・センターがどうなるか。そして、イギリス経済の成長力はどうなるか。この2点を検討することによって、イギリスの有利な立場は維持されるのかが分かる。

 ユーロ誕生に伴って、為替取引きはユーロランド内ではなくなり、域外通貨とユーロの為替取引きだけとなる。となると、この為替取引きはユーロランド内の各国が個々に行うよりも、どこかで一本化しようという動きが当然のこととして出てくる。

 ここに、ドイツのフランクフルトがクローズアップしてくる必然性がある。だからといって、フランクフルトがヨーロッパのファイナンシャルセンターになるというわけにはいかない。ロンドンの存在があるからである。

 ファイナンシャル・センターとしての自由度や人材の集積度などの面で、ロンドンの方がフランクフルトよりも優位性が高いのは誰しもが認めるところ。この差は大きい。2つの力が顧客集団を引っ張り合うとき、ちょっとした差が決定的なものになる。こういうことは様々な社会現象で立証済みなのである。

 これに対して、「イギリスはユーロランドに参加していないので、ユーロランドのファイナンシャル・センターに相応しくないのでは」という意見が聞こえてきそうだが、この意見は正しくない。なぜなら、ユーロは様々な通貨と交換される。このことはこの面で圧倒的な力を持つロンドンの有利性が一段とクローズアップすることに結びつくからである。

イギリス経済の開発が一段と進む

 次のような事態が発生すると、イギリス経済の持ち味は大陸ヨーロッパにシフトし、イギリス経済は衰退の道を歩むことになってしまかねない。

 ヨーロッパ大陸の経済開放が進み、かつ金利水準が引き下げられるので、イギリスよりもヨーロッパ大陸の方が直接投資の対象として選好される。したがって、イギリスよりもヨーロッパ大陸の方の内需拡大が進む。企業の設備投資が進む上に、低金利から来る為替レートの低下が加わって、外需もイギリスよりもヨーロッパ大陸の方が拡大しやすい。

 上記したようなことが果たして起きるのであろうか。結論を先取りして言うと、逆のことが発生する確率のほうが高そうである。なぜなら、次のことが指摘できるからである。

 ユーロランドは慢性的な高い失業率。中道左派政権がこの状態を解決できないとなれば、政治的に命取りになりかねない。しかも、世界経済はアメリカを除いて低迷。アメリカですら、1999年の後半は景気が息切れしそう。そこで、ユーロランドの政治は、雇用拡大のために内需拡大を、内需拡大のために金利水準の引き下げを要求。

 ところが、ヨーロッパ中央銀行はこの要求を突っぱねて今日まで来ている。なぜなら、ユーロランドの高い失業率の真の原因は、金利水準が高すぎるから内需が拡大できないことにあるのではなく、ユーロランドの経済改革が硬直的な労働市場を典型とするように、アメリカやイギリスに大きく遅れていることに原因するからである。したがって、ユーロの金利を引き下げるとしても、そこそこのものになるであろう。

 政治家に経済改革を決断させ、ユーロランドのインフレなき長期経済成長を実現させ、ユーロの価値を高め、ユーロをドルに対抗できる世界の基軸通貨に育てたい。世界に類のないほど政治から独立したヨーロッパ中央銀行はこのようにことを願っているはずなのである。

 しかしながら、ユーロランドの経済改革を行うには時間がかかる。直接投資先の魅力としては、これだけでも、当面はヨーロッパ大陸よりもイギリスの方が上であるのに、イギリスの方が更に有利になる条件が加わる可能性がある。

 イギリスは長らく景気拡大を続けてきたので、ユーロランドよりも景気の落ち込みは大きくなる可能性が強い。しかも、イギリスは高金利の国。金利引下げの余地が大きいのだ。しかも、ユーロランド参加をめぐって次のような対立がある。産業界は経済のボーダレス化のメリットを受けたいために、ユーロランドに参加したい。ところが、ユーロランドに参加すると、高金利を捨てなくてはならなくなるので、消費者は反対しているのである。

 ブレアー政権、産業界のいずれも、「ユーロランドとイギリスの金利格差が少なければ、ユーロランドに参加できるのに」という思いは強いはずである。

 このような内部事情がある上に、景気が低迷すれば、金利水準は容易に引き下げられるであろう。このように推論しても良いのではなかろうか。

 それから、ユーロランドに比べて、イギリス経済の方が低迷し、しかも、金利格差が縮小するとなれば、ポンド安・ユーロ高となり、イギリスの対大陸ヨーロッパの輸出は拡大すると考えてもおかしくはないのではなかろうか。

 以上から明らかなように、イギリスへの直接投資水準は維持され、しかも、低金利。その上、外需は拡大。そして、いずれ、内需も拡大。結果として、イギリス経済はユーロ誕生後も拡大する可能性が強いというわけである。

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