![]() |
新創業研究所 E-Mail: info@trijp.com 〒 311-1203 茨城県ひたちなか市平磯414-7 来客用駐車場があります ☎ 029-229-0225 |
|||||||||||||||||||||||||||||
(節子) 今の大不況から脱出するにはどうしたらいいのかしら? 節約に節約を重ねて首をすくめるようにして生き伸びて外需が回復するのを待つような生き方は通用しない。そんなことをしていると、日本経済の地盤沈下が一層進んでしまうから。グローバリゼーションは止めようがないので、競争の外でぬくぬくしていることは不可能だものね。 (高哉) 何よりも生き延びなければならない。そのためには、無駄遣いを徹底的になくすことは必要。但し、これだけでは短期的には大丈夫だけど貴女が言うように中長期的には生き延びることができない。世界金融危機が発生する前からあった日本の窮状の根本的原因をしっかり認識した上での対策を講じなければならない。「急がば回れ」だ。 (節子) 日本の窮状の背景にあるのは、貴方からこれまで学んだことを私なりに整理すると次の図式になるんだと思う。 先を行くアメリカと新興国の挟み撃ちになってしまった ⇒ 伝統的な共同体が崩壊傾向を示すようになった ⇒ 閉鎖主義に逃げ込んだ ⇒ 世界の資金が日本をバイパスするようになった ⇒ 成長すべき企業の業績が低迷し、新しい成長分野の開拓が停滞した。 (高哉) そうなんだよ。世界のエアーポケットの中に入ってしまい大打撃を受けた冷戦終結後の日本の製造業がそうであったように閉鎖主義が災いしていることに注目しなければならない。 信頼できる枠の中で自由に行動できることを大事にするのが圧倒的大多数の日本人。したがって、何かあると、日本モデルのような伝統的な共同体にしがみつく気持はよく理解できる。しかし、このような体質の温存は歴史的転換期には道を必ず誤ることを肝に銘じなければならない。進取の気性なくして競争社会を生き抜くことは困難なんだ。(新興国台頭時代の日本の活路 ⇒ 『人生再構築プロジェクトの必要性を位置づけた文章』) (節子) だとすると、プロフェッショナルを目指すことが幸福の条件になった日本人は女優の三田佳子さんを少しでも見習わなくてはならないわね。 人生再構築プロジェクトの必要性を位置づけた文章にあるようなことをしなければならない。こういう認識の下で彼女の自叙伝『てとテと手』を読んで、三田佳子さんの凄さが身にしみるほどよく分った。全身全霊を打ち込むようにして仕事をするんだもの。『四畳半物語・娼婦しの』で娼婦役を演じた時の逸話には心を打たれた。 (高哉) 娼婦・しののことを考えて思わず涙を流し、スタッフから大好評を得た。ところが、成沢昌茂監督は「三田さん、もう一度撮っておきましょう」と言い、「最後の台詞にきたら障子の桟に軽く手を触れながらフッと顔を上げ、三つ数えてからまた目を伏せて」と一連の振りの説明をした。この通りにしたらよっぽど哀しく心にじーんと染みる演技になった。 ── この一節のことでしょ。三田佳子さんはどうしてこんなことができると思う? (節子) 仕事に完全を期する習性を持ったプロフェッショナルだからよね。事に臨んでとことん集中できることは凄いことだと思う。こういう理解でいいのかしら? (高哉) その通りだけど、『個性的才能を引き出す性格診断』をする立場上、補足説明を加えたい。・・・・・彼女は役に応じたイメージングができ、その通りに役を演じきることができる性格の持ち主であることがさっき言った「心にじーんと染みる演技になった」という結果を生んだのだと思う。 (節子) 普通は「自分にこういう役柄が合っている」となりがちなのに、三田佳子さんにはそういうのがない。「組織の中に納まっていると、役柄に枠をはめられてしまう」といったようなことを理由に東宝を飛び出してフリーになったことが示すように進化し続けている。これは「カイゼン」が得意だが知的アクロバットを必要とする独創は苦手な日本人の中にあって出色の存在よね。 生きている枠組みが安泰であればいいけど、そうでなくなると、冷戦構造終結後の日本の製造業のようになってしまう日本人は三田佳子さんを見習わなくてはいけない。 (高哉) リスクをものともせずに進化し続けようとするエネルギーはどこから生まれると思う? 娼婦・しのの名演技の原動力とはまた別のものがあると思うんだ。 (節子) 「なんとしてでも生き抜こう!」とする意欲じゃないかしら? バスに轢かれそうになり、乗っていた自転車からとっさに飛び降りて難を逃れた。・・・・・周囲の人々が騒然としている中を涼しい顔をしてさっさとそこを立ち去った。こういう少女時代の逸話が 『てとテと手』の中にあったでしょ。 (高哉) あったあった。彼女は世紀の大女優になるべくしてなった人だ。・・・・・ここまでは良いが、息子・裕也君のことを考えると、問題がありそうだ。役を演じきる。生き抜く意欲がとてつもなく強い。この辺りに息子・裕也君の性格と決定的な違いがあるからだ。
|
||||||||||||||||||||||||||||||