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【世界の出来事から問題解決の方法を学ぶ】



→ユーロ誕生と企業経営

4. 先進国と途上国の経済融合が進む

世界経済の理想は先進国と途上国の経済融合

 先進国は余剰資金を途上国に投資し、キャピタルゲインを拡大させる。拡大できたキャピタルゲインは、高齢者の年金並びに次世代産業育成投資に使われる。そして、国内の工業は徐々に開発途上国に譲り、国内は脱工業化を進める。

 脱工業化の典型はコンサルティングやコミュニケーションなどの情報産業。したがって、脱工業化が進むにつれて、高齢者の職域は拡大するので、年金の財源確保とあいまって、先進国に急速に忍び寄る高齢化問題は解決できるというわけである。その上、次世代産業を育成できるわけだから、先進国の将来も保障される。

 一方、開発途上国は天然資源の収奪に拍車をかけることのみが所得拡大の道といったような地球環境破壊的経済運営から脱するために、多様な工業化を進める。したがって、開発途上国の国民福祉が向上すると共に、工業製品の輸出により、先進国からの借金返済が進み、途上国独自の投資も可能となる。このような投資を通じて、先進国依存型の経済構造からの脱却も夢ではなくなる。

アメリカの高株価に代わる牽引車を必要としている世界経済

 以上が世界経済の理想的な姿。ところが、理想通りになっていないのが現実の姿である。他に所得拡大の道がないために、森林を焼き払い、そこで農業生産を行う焼畑農業を行う途上国が後を絶たない。

 その上、石油資源も無駄遣いされている。なぜなら、、石油輸出以外にさしたる所得獲得手段がないアラブ諸国などは石油価格の低下による所得減を石油増産により埋め合わせしようとして、石油価格を引き下げ、石油消費の拡大に勤しんできているからである。

 一方、先進国は余剰資金を途上国に安易に注ぎ込んだために、通貨危機が発生。結果として、国民所得の大幅減となってしまった途上国を生み出してしまい、世界経済は急速にデフレの様相を呈するに至ってしまった。したがって、余剰資金はアメリカに逃げ込み、これがアメリカの株式市場の活況を、この株式市場の活況がアメリカの旺盛な内需を、アメリカの旺盛な内需が世界経済を支えている。世界経済は実に脆弱な構図に下に運営されているわけである。

 通貨価値の下落分は資産の喪失の結びつくことはアジアで実証済み。将来仮に円が大暴落すれば、日本も同様の運命にさらされることになり、国家財政の破綻とあいまって、老後の生活は一気に惨めなものとなる。

 それでは、世界経済は救いようがないのであろうか。心配無用である。通貨危機の傷跡があるが故に、世界経済は理想的に運営できる可能性が生まれた。このように言うことができるのである。なぜなら、次のような世界経済運営のシナリオが考えられるからである。

 前述したように、世界経済を円滑に運営するためには、開発途上国の経済開発は必要だが、通貨危機の前とは違って、開発途上国独自の力では直接投資を拡大させることは困難である。なぜなら、通貨危機に直撃されたアジアを例にとると、次のような実態になっているからである。

 通貨危機は資産だけではなく、雇用までも奪い取ってしまったために、中産階級が大幅に縮小。そして、これが主な原因となって、内需が縮小。インドネシアで82%減、タイ43%減、マレーシア34%。ドルベースで言うとこんな状態になってしまったのである。輸出拠点としてはともかくも、投資先としての魅力がすっかり低下してしまったのである。

 それでは、輸出拠点としての投資先としてはどうかいうと、これも魅力が低下してしまった。アジアの輸出製品は日本からの資本財やハイテク部品がなくては生産できない。この輸入価格価格が現地通貨安・円高によって高騰してしまった上に、現地通貨の下落に歯止めをかけるための金利の引き上げが重なり、収益性が急速に失われてしまったからである。

 それでは、金融機関が長期的視野に立って、現地の産業を育成できるかというとこれも望み薄である。なぜなら、現地の金融機関は今回の通貨危機により、資金力を大きく失った上に、有望企業を発掘し、育てる能力が養われていないからである。このような質的能力は透明性が要求される環境の下で始めて培われるものであって、これまでのアジアの癒着的資本主義では望むべくもないのである。

アメリカは新産業創出並びにドル経済圏拡大に成功する

 したがって、開発途上国の直接投資を拡大するためには、先進国の積極的な働きが必要。ところが、先進国の投資家の投資態度は通貨危機前とは様変わりし、慎重になっている。だからこそ、開発途上国の資金不足は深刻なものになっているのだが、この状態は長く続くのであろうか。結論を先取りすると、「否」である。

 高株価から来る裕福感並びに労働市場の逼迫からくる先行き不安のなさが原因して、アメリカ経済の三分の二を占める消費需要が活況を呈し続けている。それから、2000年問題への対応の必要性からコンピューター関連の設備投資が進んでいる。このようなことがあって、1998年の四半期は予想以上の経済成長。1999年はそれから比べれば若干の落ち込みはあるが、それでも予想以上の成長ぶり。

 このような状態が今後とも続くであろうか。アメリカへの資金の流入環境を展望すると、プラス・マイナスが入り混じっている。中南米経済並びにヨーロッパ経済の落ち込みがプラス材料。金融機関への公的資金の導入により、資金が過剰から不足に転じた日本の金融事情、アジア経済が底を打ったこと、この二つがマイナス材料。

 おおざっぱに言って、アメリカへの資金流入は減らないのではなかろうか。但し、アメリカの金利水準が相対的に高くなれば、その限りではないが、その可能性は少なそうである。なぜなら、金利水準を高くせず高株価を維持し続けると、次のようなことが起きて長期的にはアメリカ経済にとってプラスとなるからである。

 持続する高株価を背景に、情報産業などの新しい産業の発展の可能性が生まれる。そして、この可能性が一段と拡大する内需によって現実のものになる。問題は一段と拡大する貿易赤字である。ところで、貿易赤字の拡大がなぜ問題になるのであろうか。言うまでもないことであるが、ドルの過剰流動性となり、いずれドルの価値が暴落して、世界経済に様々なマイナスインパクトをもたらすからである。

 それでは、なぜドルの過剰流動性が生まれるのであろうか。ドルの供給量に比較して、ドルの需要量が少ないからである。それでは、なぜドルの需要量が少ないのであろうか。各国が自国通貨に固執するからである。

 ところで、各国は自国通貨に固執し続けることができるであろうか。「否」である。なぜなら、統一通貨・ユーロはユーロランドの産業界の創造力と競争力の強化に結びつく。のみならず、ユーロランド政府の産業界支援力を強化するだろうことは先に説明した通りだからである。

 このように考えると、自国通貨にしがみつく時代は終わりつつあるといえるのではなかろうか。自国通貨を放棄し、世界の基軸通貨を自国の通貨にすることを検討するのはアルゼンチンにとどまらなくなるのではなかろうか。

 自国通貨に代わり得る世界の基軸通貨としては、ドルと新たに登場したユーロであるが、どちらを選ぶかはどちらとの経済交流の度合いが高いかで決まる。このように考えると、アジアはドル経済圏になると考える方が自然である。

 アジアがドル経済圏になるということは、アメリカの貿易赤字によってアジアに流入したドルがそのままアジアの中で流通することを意味する。となれば、ドルの過剰流動性というも問題はなくなる。

 以上述べたように、金利水準を高くせず高株価を維持し続けることにより、アメリカは情報産業などの新産業の開発のみならず、アジアなどの開発途上国を自然にドル経済圏に組み入れることに成功できるわけである。となれば、アメリカの長期利益を追求する立場の中央銀行はアメリカの内需拡大のみを視野に入れた通貨政策を採り続ける。この可能性が強いのである。

アメリカの世界経済牽引力はダントツである

 アジアはユーロではなく、ドル経済圏になると考える方が自然であると前述したが、この考え方に無理はないであろうか。通貨危機の打撃を受けたアジアの国の中には反米感情をつのらせているところがあるし、中国の当局は「外貨準備の4割をユーロにすることを検討」と発表するなどしているからである。

 次のようなことが起きるようであれば、アジアはドルではなく、ユーロ経済圏になるであろう。

 世界大戦の危険性が生じたので、世界の富は経済が解放されており、かつ最強の軍事力を誇る国へと逃げ込もうとする。以前は最適の逃げ込み先はアメリカであったが、事情が変わってしまった。アメリカ、ユーロランドのいずれも経済の開放度は同程度であるが、いつのまにか、ユーロランドの軍事力はアメリカを凌駕してしまった。

 あるいは新しい産業を開発する力、つまり、産業構造を高度化する力において、ユーロランドがアメリカよりも優れるようになってしまった。こういう場合でも、アジアはドルではなく、ユーロ経済圏になる。なぜなら、産業構造を高度化できるということは、旧産業を直接投資(ユーロ投入)という形で、経済発展段階の低い国に譲ることに結びつくからである。

 ところで、現実はどうなのであろうか。アジアがドルではなく、ユーロ経済圏になるようなことは当分考えにくい。このように結論できる。なぜなら、次のことが指摘できるからである。意外なことに、東西冷戦構造の終結が幸いしてアメリカの軍事力は他国を一段と凌駕するものになってしまった。旧ソ連の崩壊やロシア経済の衰退からくる一極支配構造のことを言っているのではない。

 クリントン政権登場による軍事費の大幅削減並びに外敵の世界中への分散が幸いしたのである。冷戦終結に伴ってクリントン政権は経済優先を打ち出したために、軍事費は大幅にカットされることとなった。だからといって国防省は軍事力まで衰退させるようなことはしなかった。それが、自立し、自律力を持った組織の好ましい宿命というものである。人員を大幅に削減すると共に、徹底的な効率化を追及することとなった。その結果が、情報エレクトロニクスの最大限の活用である。

 この情報エレクトロニクスの最大限の活用にフォローの風となったのが、軍事環境の激変である。東西冷戦構造の終結により、世界大戦の危険性がほとんどなくなった代わりに、封じ込められていた宗教や民族的対立が噴出。その中には、周知のテロリズムに結びついている、イスラム教徒の反米感情もある。旧ソ連という強力な敵が消えた代わりに、外敵が世界中に分散して存在するようになったのだ。

 このような外敵に効果的に対処する手段は、冷戦時の核抑止力ではなく、敵の動きを逸早くキャッチし、ピンポイント攻撃を可能ならしめる、情報エレクトロニクスである。そして、前述したように、これをアメリカの国防省はしっかりとものにしたのである。

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