企業改造のありかた ― ボトムアップで準備を進めよう〈1999/3/30〉
企業倒産の嵐が吹き荒れる韓国で面白い動きが出てきている。倒産した企業の元従業員たちが結束して、自分が所属していた企業を買い取り、自分たちで経営しようとしているのだ。わが国の企業人はこのことを他人事で眺めていてはいけない。わが国にも2年以内に企業倒産のラッシュがあることが十分に予測できるからである。(理由 ⇒『ユーロ誕生と企業経営』)
韓国における元従業員による企業再建は、債権者との関係で、必要な資産や権利を十分に確保できないなどが原因して、今のところ成功例は限られているようである。でも、だからといって、この動きを低く評価してはならない。
企業のポテンシャルを過去の延長線上から評価すれば、「これまでの事業しかできなかったのだ」ということに落ち着きがちであるが、未来から評価すれば、話は変わってくる場合が多い。パンや惣菜しか製造・販売いない企業でも、総合検診システムの製造・販売の可能性を秘めているといった具合に。(この事例の詳細 ⇒『成長分野に成功裡に進出する秘訣』
そして、上記したような形での企業の立ち上げは、韓国経済全体にしめるコングロマリッド的な財閥のシェアを低めようとしている韓国政府にとっては歓迎すべき動きであるので、政策的な支援を得られるであろう。
同じことがわが国においても言えるのではなかろうか。なぜなら、わが国が最優先して取り組まなければならないのは、雇用の拡大だからである。倒産企業再建の事業構想が魅力的であれば、使命感を持って中小企業の育成に取り組んでいる、中小企業金融公庫などが融資を真剣に検討してくれるのではなかろうか。
中小企業金融公庫での融資が実現できれば、同公庫の斡旋で、中小企業投資育成会社からの出資の道が開けるのも夢ではない。但し、事業構想に魅力がなければならないのは言うまでもない。そして、事業構想が魅力的であれば、国民一般からの出資を仰ぐことだって可能となろう。「横浜ブリューゲルス」ですら、横浜市民は再興に成功したのだから。こういう形で市民パワーを活用する。時代はそういう方向に動いているようだからである。
ところで、わが国の企業人は自分が所属する企業が倒産してから立ちあがることで間に合うのであろうか。「否」の可能性の方が強い。なぜなら、前掲の論文で述べた「ユーロ効果」が浸透し、「チャンスは後ろ髪のない禿坊主のようである」という格言がずっしりと重みを増すことを肝に銘じなければならないので、今できることを明日まで延ばすことは命取りなることが日増しに強くなっていくからである。21世紀を生きぬけるようにするための、企業改造を急がなくてはならないのである。
「企業改造」というと大仕事なので、こういうプロジェクトに正式に乗り出すためには、企業として正式意思決定が必要となる。そして、この意思決定に時間がかかる企業がまだまだ多い。そこで、ひとつの提案だが、経営陣の了解をとり、従業員が社内横断的な勉強会を作り、この勉強会の中で企業改造のフィージビリティ・スタディーを行うというのはどうであろうか。
上記した勉強会が発展して、企業改造プロジェクトが正式に発足し、適切に運営されれば、企業は倒産を免れることができる。仮に万が一倒産しても、事前に企業改造の可能性が検討されているので、元従業員による企業再建を短期決戦で成功できる。どちらに転んでも、勉強会は無駄にならないのである。
上記「勉強会」を発足させるに際して、「忙しい中、個人的に何のメリットがあるのだろうか」という人には、「適切なコンサルタントを勉強会の指導者として登用すれば、構想・独創の秘訣を学ぶことができ、個人的にも大いに得する」という言葉を返させて頂きたい。これからの企業人の成功の鍵は構想力・独創力であることを肝に銘じなければなければならないのである。
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