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強大な相手と対峙した時のあるべき態度は追従しかないのでしょうか? 「否」です。どんな相手にも必ずアキレス腱があるからです。それではこのアキレス腱をどのようにして見つければよいのでしょうか? 「これがアキレス腱だ」と思わず叫べるように相手に働いている行動力学を見抜くことです。 上記の考え方をアメリカに当てはめるとどういうことが言えるのでしょうか? アメリカのアジア政策の前提条件を眺めて見ましょう。三つの図式が浮かび上がってきます。 図式1 : モンロー主義に基づき国際的な孤立政策を採用した ⇒ ナチス・ドイツ並びに軍国主義国家・日本の台頭を許した ⇒ 第二次世界大戦が起きた ⇒ 孤立政策を再び採らないことを決意した ⇒ 未来の超大国・中国を睨んだバランス・オブ・パワーを徹底することとなった。 図式2 : 中韓朝ロの一体化が進みつつある ⇒ 市場原理が追求しにくい広大な市場が生まれる可能性が出てきた。(理由 ⇒ 『アジア人だけで共同市場を形成したい思いがある』) 図式3 : アメリカは世界ダントツの産業構造高度化力を持っている ⇒ 世界経済の外延的拡大ができなくなると、アメリカの存立基盤はたちまち弱体化する ⇒ 万難を排して世界の成長ゾーンに進出しなければならない。 アメリカは上記の図式1・2・3を踏まえてどうすべきでしょうか? 中国がアジア市場を支配する前にアジア市場の支配力を抜本的に強化すべきでしょう。どうしたらこれを実現できるのでしょうか? 一番自然な方法はアメリカがアジアに対して母産業都市機能を提供する。いいかえれば、世界ダントツの産業構造高度化力の維持・強化を実現させることではないでしょうか。 この狙いは容易に実現できるでしょうか? 「否」でしょう。製品・サービスの寿命が短くなったことを考えると距離的に遠すぎるし、モノづくりの点ではアメリカはいまいちだからです。 かくしてクローズアップしてくるのがアジアの中心に位置し、モノづくりにおいては世界ダントツの力を持っている同盟国・日本の存在です。だからこその、前述した下記の二つの対策なのです。
日米新租税条約の締結と米軍基地再編成の日米合意を有機的に結びつけることにより、日本はアメリカとウィン-ウィンの関係を構築できるのです。いいかえれば、日本の協力なくしてアメリカの未来は大きく開かれないのです。したがって、 「強く要求しすぎるとアメリカが日本から撤退してしまうかもしれない」なんてことを恐れることなく主張すべきは主張しなければならないし、それが可能なのです。更には、運命共同体である日本の利益を守る大義名分をフルに使えます。したがって、アメリカを通じて世界を動かすことだってできるのです。
日本の対中国カードは中国共産党独裁体制の維持には日本政府の協力が必要不可欠であるで述べたようなことだけではありません。 日米新租税条約が締結された + 郵政民営化が日本国内の民間資金を潤沢にする ⇒ アメリカの対日直接投資が拡大する ⇒ 母産業都市機能を提供する形で日米融合企業によるアジア市場の支配力が進む──、という図式は、中国の日本叩きはアメリカとアジア叩きにもなることを意味する。のみならず、下記の図式にも結びつくことを忘れてはならないのです。 インド等の巨大な市場への直接投資が拡大しやすくなる + 中国の反日感情が日中経済関係の悪化に結びつく ⇒ 日本企業のインド等の巨大な市場への直接投資が拡大する ⇒ 中国元の価値が急落してパニックが生じる。 (筆者は商社マン時代に半年ほどインドに滞在したことがありますが、同国に対するイギリスの影響力は想像を超えたものがあるという鮮烈な印象を持っています。一方、日本企業の対インド進出は出遅れの感があります。したがって、日英新租税条約を活用して日英融合企業がインドへの直接投資を行うのもひとつの方法になると考えています) 日本との対立は中国の未来を奪い去ってしまうのです。小泉首相の「靖国参拝問題は中国の対日外交カードにならない」という発言は間違っていないのです。 したがって、「中国との関係を修復しなければならない」と中国の首脳に擦り寄る必要はないのです。悠然と待ちの姿勢を堅持すれば良いのです。逆の姿勢は「日本の指導者には斬新な着眼のかけらもない」ことを世界に向かって公言して、日本の信用失墜に結びつきかねません。 同じようなことが中国側にも言えます。中国の対日強硬姿勢の継続は「中国の首脳は判断が甘い」となり、直接のみならず間接的にも自縄自縛となることでしょう。先行きが不透明な時代になりました。したがって、無言の誘導力を持つイメージが極めて大事になりました。このことを日中双方とも肝に銘じなければなりません。 日米新租税条約、日英新租税条約、郵政民営化、インド等の巨大な潜在成長力を秘めた国の存在 ── この四つは中国の対日行動を穏当にする絶大な効果を持っているのです。 もうひとつ大事なことを指摘させて頂きます。著名な評論家がテレビ番組で声を荒げて叫んでいた「日本の資金をアメリカに流出させるために郵政民営化を行った。小泉政権はけしからん」は樹を見て森を見ない大きな誤りです。郵政民営化は上記したことから明らかなように日本再生のために必要不可欠なのです。 「日米関係は小泉首相とブッシュ大統領の個人的な関係が緊密なだけである。国と国の関係は空洞化の危険性を孕んでいる」ということが言われがちですが、相互理解をもっと深める必要があるとしても、両国の関係は疎遠になりようがないのです。日本の指導的立場に立つ人々の本質を見抜かない議論は日本の国益を損なうことを肝に銘じなければならないでしょう。
上記した対米並びに対中関係のあり方は戦略発想に基づいたものです。「戦略的な外交関係」と言うと、太平洋戦争の時の日ソ不可侵条約や日独伊三カ国同盟が想起されるでしょうが、これらは歴史が示すように甘い楽観に基づいたものでした。ここで言う戦略とは戦うのに有利な場面を詰め抜いて設定することを指します。 このような考え方はいつの時代でも必要ですが、太平洋戦争の責任問題でごたごたが続いている今の日本には特に必要です。なぜなら、下記のことが指摘できるからです。
上記した戦略的な外交関係の構築の延長線上に歴史的な必然を持っている地域共同市場形成問題も位置づけるべきでしょう。 アジア地域の共同市場の形成は欧州共同体(EU)のような経緯を辿るのが理想です。しかしながら、アジアの場合はそうはいきません。なぜなら、EUの場合とは異なる様々な特殊事情があるからです。地域安全保障条約機構が存在していない。中韓朝ロの一体化が進みつつある等などがそうです。そこで、考えられるのが下記の図式です。 上記した考え方で日本の母産業都市機能を強化する ⇒ これを梃子に用いてアジア諸国と二国間自由貿易協定(FTA)の輪を広げる ⇒日本が締結した二国間自由貿易協定(FTA)をまとめる形でアジア共同市場を形成する。 但し、日本のアキレス腱はエネルギー資源の確保です。これがしっかりしていないとエネルギー資源大国・ロシア外交の餌食にされかねません。ここで必要になってくるのが中東の石油産出国との戦略的な外交関係構築です。 日本は強化される母産業都市機能を駆使して石油産出国の産業多様化援助をする。そして、イスラム諸国の過剰になるであろう人口の受け皿役を担う。一方、石油産出国は農業革命、広域地域再開発、日本列島の特徴を生かせる24時間国際空港の建設等の大型投資案件目白押しの日本に積極的に投資する。──こういう共生関係を築き上げることによって日本はエネルギー資源を確保するのです。
イギリスのブレアー首相は国際コミュニティー重視の姿勢で外交を考えた。一方、小泉首相は力関係で外交を考えた。 ── こういう評価の下で小泉外交が批判されています。某元首相は「小泉君は外交を全くやってこなかった」と激怒したそうです。 こうした批判は正しいのでしょうか? 「否」です。なぜなら、小泉首相が「日米関係が良ければ、アジア外交はうまくいく」という発言の裏には二つの事情があるからです。 (事情1) 日本はアジア各国と対等の立場で交流したことがない + アジア各国もアメリカとの関係が突出している ⇒ アジアの横の関係はしっかりとした形でできあがっていない。 (事情2) 憲法9条の縛りがある ⇒ 強権的な国家になめられやすい。(例 : 北朝鮮の日本に向けたミサイルの発射、中国の強引なガス田開発準備、ロシアの北方領土周辺の開発推進等) 中国におもねる大物政治家もそうですが、今も昔も国家運営に甚大な悪影響を及ぼす軽率な言動を採る指導者が存在していることを国民はしっかりと認識しなければならないのです。(歴史的な事実 ⇒『第三の経済政策提言フォーラム』) 話を元に戻します。上記の事情1・2のハンディキャップを取り除くことに結びつき得るのが日米融合による日本列島を力強い母産業にすることや経済活動の安全保障力強化に役立つ日米新租税条約の締結並びに米軍基地再編成の日米合意なのです。理由は米軍基地再編成は大きな果実を生む先行投資になり得るで述べたことの他に二つ追加できます。 (理由1) 前述したように国別の自由貿易協定を積み上げ、かつ深化させ、その結果としてアジア共同市場を形成する ⇒ 日本のアジア各国と対等の立場での交流が進展する──、という図式が期待できる。 (理由2) アジア共同市場を形成する条件として北大西洋条約のような地域安全保障体制確立の必要性が生まれる ⇒ 日米安全保障条約を地域安全保障体制に進化させる──、となることが期待できる。 「だからと言って、日本は異文化接合力を発揮できるとはならないでしょう」という声が聞こえてきそうです。果たしてそうでしょうか? 日本は異文化接合力を発揮できる可能性は大です。主な理由は二つあります。 (理由A) 「日本の世界への貢献度はナンバーワンである」というアメリカのメリーランド大学の調査結果がある。「世界に貢献していますか?」という問いに対して33カ国中31カ国がYES、NOは中国と韓国のみとなっているのです。 (理由B) 最近陰りが見えますが、山崎正和さんが提唱している「柔らかい個人主義」が日本の社会に伝統的に根づいている。
上記の説明を読んで、「アジアと異質の文化を持つアメリカをアジアに溶け込ませて始めて日本は異文化接合力を発揮できるとなるのではないか?」という疑問が生まれるでしょう。 アメリカは多民族・多宗教がサラダのような状態で入り混じっている。にもかかわらず、国家としての統一性を維持できています。これは地球村を目指す世界の人々にとってアメリカ合衆国の存在は貴重であることを意味します。 ところが、アメリカは強引な行動やダブル・スタンダードを平気で採用するので、世界から嫌われる傾向があるのです。日本はこのようなアメリカの欠点を補うことができるのでしょうか? 大いに可能です。なぜなら、 日本の柔らい個人主義の背景にある内生変数重視思想はアメリカの欠点を補うことができるからです。 (詳しくは ⇒『米国は“外生変数重視主義”でOK。日本に必要なのは“内生変数重視主義”』) 「どうして?」と思われる方はイラク戦争が泥沼化した原因を認識することによって「なるほど」と頷かれることでしょう。この戦争は正当化できるにもかかわらず失敗の汚名を着せられることになってしまった。この原因は日本が最初からアメリカ政府の懐深く入り込んでいれば未然防止できた可能性がある人災なのです。(イラク戦争泥沼化の原因 ⇒『イラク再生を困難にしている潜在要因と顕在要因』) 但し、イラク戦争の泥沼化を防止できるのはプロフェッショナルの日本人です。一般の日本人では無理です。となると、今のままでは日本人がアジア共同体にアメリカ人を融合させることはできません。どうすればよいでしょうか? 自分の性格をきちっと識別する ⇒ 染みついた性格が各人各様の行動力学になっていることを認識する──、ということができる日本人を輩出することです。なぜなら、このような日本人の輩出は下記図式の多発に結びつくだろうからです。 好ましくない態度の人物に遭遇する ⇒ 「この人の行動は性格のなせる業である」と思える ⇒ この人物を優しく包み込むことができる ⇒ 以心伝心効果が生まれる ⇒ 好ましくない態度の人物の心が和む ⇒ 円満な話し合いができる。
日本の政治大国化が可能になったことを認識するための考察は個人の人生の送り方にも貴重な教訓を残してくれました。
2006.8.20のテレビ朝日の『サンデープロジェクト』に出演した民主党の菅代表代行は安倍官房長官を痛烈に批判していました。 「日米中の三等辺トライアングルではなく、日米同盟が最優先である」「太平洋戦争における日本の責任を肯定しない」 ── この二つの考え方には矛盾がある。このように発言したのです。 この発言をどのように評価すべきでしょうか? 論理と感情がごちゃごちゃになっている日本の伝統的な思考形態そのものであるのではないでしょうか。このことを分かりやすい例で説明しましょう。 ある人物が離婚した妻のある部分を母親に高く評価してコメントしました。そうしましたところ、この母親は「あなたは別れた奥さんとよりを戻したいの?」という言葉が返ってきました。 是々非々の考え方がないのが多くの日本人の実態なのです。これでいいのでしょうか? 「否」です。なぜなら、このような態度の先には二つの図式が待ち受けているからです。
社会的な相互依存関係をどんどん広げていかなければならない。先端的なノウハウをどんどん蓄積していかなければならない。── こういう時代になったことをしっかり認識して、論理と感情がごちゃごちゃになっている日本の伝統的な思考形態の脱却を急がなければならないのではないでしょうか。
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