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【斬新な着眼】



→May I help you ?…のエネルギーが日本に充満する。このことに不良債権の加速処理が大きく貢献する──「イラク問題」「北朝鮮問題」「東電等の不祥事問題」「政治の劇場化現象」の一体化から考える(5)

 国民の最大の関心事になっている不良債権の加速処理は日本経済にどんな影響を及ぼすのでしょうか? 株価が示すように悲劇の始まりになるのでしょうか? 強力な支持を打ち出したアメリカ政策当局の考え方通りに日本の夜明けに結びつくのでしょうか?

 銀行業界の再編成並びに不良債権の急速処理の狙いは実現できない。しかしながら、「人々の相互依存の拡充⇒May I help you?の推進」…にとって神風になる──、と筆者は判断しています。

 適切な劇薬を投与することなく日本経済は再生できない──、ここまで日本は追い込まれていますが、不良債権の加速処理は図らずも適切な劇薬の第一弾となるのです。

 筆者の母は実家のある沼津から末弟がいる那須に引っ越しました。彼女は知的好奇心旺盛ですが、91歳という高齢から来る難聴のために補聴器を使っても電話での会話ができません。そこで、筆者は彼女にメールを送り続けています。以下の文章は、このメールのひとつをほぼそのまま転用したものです。その方が分かりやすい、と判断したからです。



 先進国はデフレ経済に突入した。「私でお役に立てることがありましたらなんなりと申し出てください(May I help you?)」…と言い合えるような世の中にしなければならない。そして、私がこの実現の方策を提案する──、このような内容からなる前回のメールを読んで、

 お母さんは「不良債権が加速処理されるようになれば、世の中はもっともっとせちがらくなって、そんな悠長なことを考える人はいないんじゃないの?」…と思われたのではないかと思います。

日本再生に一番必要なのは個人のパワーアップである

 そこで、銀行業界の再編成をも含めた金融問題への政府の本格的な取り組みの本件に対する影響分析から始めます。

 小泉首相から経済問題を全面的に託されることになった竹中経済財政・金融担当大臣が採ろうとしている政策は失敗する可能性が大です。そして、変な話ですが、この失敗は「人々の相互依存の拡充⇒May I help you?の推進」…にとって神風になる、と私は判断しています。

 (孤立感を深める同大臣に対して全面的支持を打ち出した、アメリカ政策当局の日本の個人パワーの弱さに対する認識は甘い、と言わなくてはなりません。9・11事件をビジネス・チャンスとして捉えた──アメリカ人にはこのような前向きなところがありますが、日本人はこのような大事件が発生しますと、しゅんとなってしまいがちなのです。

 だからといって、不良債権急速処理に反対する他の大臣や自民党議員と私の考え方は根本的に異なります。不良債権処理は「個人の自己実現意欲の鼓舞」「個人の自己実現を妨げるものの除去」の二つと並行させなければならない──、私はこういう考え方を一貫して持ち続けているのです。 ⇒日本経済を再生させる方法)

不良債権の加速処理は失敗する可能性が大である

 弱い銀行は潰して銀行の数を少なくする⇒競争が少なくなるので収益力が大幅に改善される⇒健全になった銀行が産業界をしっかりと支える⇒不良債権を加速処理して時代遅れの企業を市場から撤退させる⇒市場から撤退した企業の人材や資金等を成長力のある企業に移転させる⇒日本経済が再び成長路線に乗る──、この金融業界再編成並びに不良債権加速処理の目的が達成されない可能性が大である、とする理由は大きく分けて四つあります。

(理由1) 一直線での成長が不可能になったために必要不可欠になった創造的問題解決能力が銀行業界に大幅に不足している

 「東大の法学部を卒業して人事畑で30年仕事をしてきました」…だけでは触手を動かす経営者はいなくなったことから明らかなように、時代は洞察力や知恵を働かせ問題を創造的に解決する能力を要求しているのです。ところが、銀行には知恵者はほとんどいないようなのです。

 「リストラで人員が大幅に削減されたので、資金需要発掘のための人員を配置する余裕がない」…という銀行経営者に目立つ発言が何よりの証拠です。プッシュのマーケティング(訪問販売、巨額広告等の物量で勝負する販売活動)一本やりで、プルのマーケティング(顧客の方から訪ねて来るような吸引力で勝負する販売活動)のことなんか念頭にないようなのです。これでは潜在している優良企業を発掘して育成すること等期待しようがありません。

(理由2) 現行の金融業法には矛盾がある

 「中国等の躍進⇒日本から工場の消失傾向」…だけに目を取られがちですが、アメリカの企業が優れた特殊技術を持った日本の中小企業に出資して囲い込みをどんどん行っています。

 将来性があれば2〜3年利益が出なくても目をつぶる──、これがアメリカ側の出資姿勢。今どれだけ利益を出しているかが問題である──、これが日本側の出資姿勢。だからなのです。この理由の理由はなんなのでしょうか? 次のような事情が日本側を近視眼的にしてしまっている、と私は理解しています。

 将来性があるからじっくりと育てたい⇒金利支払いを当分免除する⇒貸付先が「要注意先」から「要管理先」になる⇒貸し倒れ引当金を3倍にしなければならなくなる⇒リスクに見合う高い金利を要求する⇒借主の企業側がしり込みしてしまう。

(理由3) 銀行経営にはスケールメリット追求の限界がある

 質的能力において日本を大きく上回っているアメリカの銀行業界ですら、巨大銀行よりも中堅銀行の方が利益率が高いのです。この背景には「規模の巨大化⇒官僚的な組織運営⇒顧客第一の姿勢喪失」…という図式があるのです。

 顧客第一の姿勢が必要な背景には、「高度のプロフェッショナル・サービスの提供が必要になる⇒組織よりも顧客利益に忠実であることが要求される」…という図式が銀行経営を待ち受けていることがある、という判断があります。

 高度のプロフェッショナル・サービスの提供が必要になる…ということは銀行業界に限ったことではありません。全産業に共通して言えることです。したがって、サービス事業の本質の理解と適切な対応がすべてのビジネス・パーソンに求められるようになります。

(理由4) 受け皿となる企業の合理化が進行中であるので、吐き出される人材や資金を受け入れることができない場合が多い

 貸借対照表の健全化のためにゼロ金利でありながら借入金の返済が行われるという不思議な現象が発生している背景には、現事業の合理化、新規事業開発──、この二つを円滑に進める方策が見つからないことが多いのではないか、と思われます。

強力な助っ人を斬新な着眼に基いて探索・登用しなければならない時代がやってきた

 柳沢前金融担当大臣が更迭される前に「金融政策だけでは日本経済は再生できない」…と言っていたとのことですが、これは「正直である」…と高く評価しなければなりません。しかしながら、「策がない」…という発言は無責任です。創造的問題解決のプロフェッショナルを在野から幅広く真剣に捜し出して、「どうしたらよいか」…と相談すべきだったのです。
 
 そうすれば、統合戦略とアクションプラン策定が適切に行なわれ、上記の四つの理由は解消に大きく向かっていたことでしょう。

 (新時代に適応できるようにビジネス・パーソンの能力を組織的に再構築する方法について関心のある方は ⇒社内ビジネス・クリニックの設営)

 お金をかけて立派な施設を建設するよりも自発的な自習に時間をかけた自習を行う方が教育効果は遥かに高い…という調査結果があるにもかかわらず、設備投資型投資に邁進する──、これと似たところが日本の政府にはあるのです。

 日本の政府のやっていることは、時代が様変わりしてしまったために職業的能力が陳腐化してしまった⇒経済生活が困窮を極めることになり、借金がかさんでしまった──、こういう人物が能力を時代に適応できるようにすることなく、生活資金を注ぎ込み続けるようなものである、とも言えます。

 極貧、しかも多額の借金を抱えている。そういう中にあって5人の子供を全員大学に進学させたい──、私の少年時代の我が家はこういう難問を抱えていました。お母さんはお父さんと一緒になってこの難問をものの見事に解決しました。この背景には、大げさに言いますと、次に述べるような実に鮮やかな統合戦略とアクションプランの策定と実行があったのでした。

 家族全員を労働力に使えるし、餌代を無料にできる、養鶏を中心とする小規模畜産業を営み、コンスタントな現金収入、家族の栄養源の確保、お父さんを労働力から開放…の三つを実現させました。

 そして、お父さんは単身で東京に行き、収入を得つつ、公認会計士の資格を取り、子供5人全員を大学に進学・卒業させたのでした──こういう体験をしたお母さんにとって、日本の政府のやっていることは歯がゆくて仕方がないことでしょう。

不良債権加速処理は社会横断的な相互依存欲求を目一杯溜め込むことに結びつく

 お母さん、安心してください。冒頭で述べましたように、竹中経済財政・金融担当大臣が採ろうとしている政策の失敗は「人々の相互依存の拡充⇒May I help you?の推進」…にとって神風になる可能性が大です。なぜなら、二つのステップが図らずも連携よろしく進むだろうからです。

(ステップ1) 個人の自由を制限する「国民総囲い込み体制」がほぼ崩壊した

 「年功序列式人事・退職金・企業年金の三点セット、右肩上がりの市場をバックにする終身雇用制度、内外の他社や組織に所属していない個人に仕事を回すことの困難性をバックにする系列取引。この三つからなる「長期拘束体制」。体制に所属しない企業や個人の徹底的排除を可能にしてきた「政官財の癒着体制」

 国民を蛸壺や樽の中に閉じ込めてきた、上記の「国民総囲い込み体制」が長引く不況等が影響して、ほぼ崩壊してしまったのです。羽ばたけるにもかかわらず鳥かごの中にいる小鳥のように振舞っている日本人がほとんどであるのは、ぬくぬくできる以上は未知への挑戦は避けたい…という心理が働いているからなのです。

(ステップ2) 羽ばたく心構えを持たなくてはならない…と間もなく思うようになる

 前述しましたように、不良債権処理の加速処理の結果、吐き出された大量の人材は行き場を失います。つまり、失業率が急拡大します。すると、人々の心理は「ぬくぬくできる以上は未知への挑戦は避けたい」から「追いたてられる以上は未知への挑戦をするしかない」…に変化することでしょう。

 そうすれば、「役に立ちそうでも知らない人には電話なんかしませんよ」…というような悠長なことが許されなくなる。つまり、May I help you?…と言い合う爆発的なエネルギーが蓄積されるはずです。多くの人々が“窮鼠猫を噛む”ような状態に近づくことが予想されるのです。


 「統合戦略とアクションプランの適切な策定が行われないのに一気にMay I help you?…の輪が広がっても構わないの?」…という心配は無用です。なぜなら、大学受験のことを考えてみてください。志望大学が決まらなくても、英語の勉強はしておかなければなりません。この英語に相当するのがMay I help you?…と言い合えるような世の中にすることなのです。

 財務省が減税規模の拡大に同意しなかった。小泉首相が10月11日の閣僚懇談会で補正予算の臨時国会への提案をはっきり拒否した──、この二つはMay I help you?…の輪拡大のエネルギー蓄積にとって好材料です。なぜなら、「デフレの影響軽減のための知恵を出さざるをえなくなる⇒社会全体で仕事を分け合う風潮が生まれる」…という図式の実現が大いに期待できるからです。

 でも、新しい行動を採りたがからないのが日本人です。周りをキョロキョロ見て、動く人が見つからないと自分も動こうとしない「横並び」が日本人にはしみこんでいるからです。そこで、このように溜まりに溜まったエネルギーを爆発させるための方策について次回のメールで説明します。アメリカが大きなプラスの役割を果たす必然性があることを予告しておきます。

 社会全体で仕事を分け合う風潮が生まれる…は、「日本の社会が一段と閉鎖的になる⇒産業構造の高度化が停滞する⇒日本は再びアジアの一辺境国家になる道を歩む」…ことに結びつきかねません。そうならないためには、創意工夫が必要であり、この創意工夫の一環としてアメリカとの関係のあり方が問われなければならないことを申し添えておきます。

 下記の四つに関心のある方は、『勝ち組メーカーに学ぶサービス事業戦略』(PHP研究所)をお読みになってください。

@ サービス事業の本質の理解と適切な対応のあり方
A 強力な助っ人の必要な条件(図表28 職歴から来る「革新性と思考の3原則」充足の度合い)
B  国民総囲い込み体制を支えてきた「伝統的ビジネス・モデルの仕組み」
C 現事業の合理化と新規事業開発の円滑な同時進行等の複雑な問題解決の方法

(前号に戻る) (次号に続く)
                




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