八方塞りの袋小路から脱出する方法(その4) ―
金利も円相場も思い切って下げられないために、民需拡大がままならぬ日本経済を考える〈1999/8/13〉
◎中高年ホワイトカラーをコンサルタントにする、国家プロジェクトを起こす
経済界のホワイトカラー余剰人員をプールして、構想力・独創力を徹底的に強化する。そして、この方々を全国津々浦々に派遣、企業や住民個々のビジョンを共に創らせる。こういうことを可能ならしめる国家プロジェクトを起こすことを提唱したい。
上記「知的作業」は国民の構想力・独創力のレベルアップを一気に実現させるだけではない。地方の要所要所に本社機能を大集積させることに貢献する形での情報産業の育成にも結びつくであろう。なぜなら、次のことが指摘できるからだ。
ビジョンを共に創る作業が適切に行われると、「自分のビジョンをなんとかして実現したい」と思うようになる。すると、情報が欲しくて欲しくてたまらなくなり、情報が売れるようになる。強烈な問題意識があって始めて情報が価値を持つようになるのだ。このような工夫がないから、「情報化社会の限界」が云々されるのだ。
強化された構想力・独創力を具体的に駆使できるようになれば、新規事業・新製品(サービス)開発マインドは自ずと旺盛になる。このような人々が数多く存在する地域に企業が立地魅力を感じないはずがない。企業や住民のビジョンを共に創る知的作業は、地方の要所要所に企業の本社機能を大集積することに結びつくのだ。
上記の説明に対して、「日本的経営にどっぷりと浸かり続けた、中高年のホワイトカラーは鍛えがえがあるのだろうか」という反論が生まれそうだが、「大丈夫」と断言できる。質疑応答の適切な方法を習得すれば、構想力・独創力強化に結びつく、問題解決型の会議を行えるようになるからだ。(ホームページの「ワタナベタカヤのひらめきメモ」の「新規事業を成功させる人材開発の方法
― 政府の不況脱出策から考える〈1999/7/9〉」参照)
但し、上記「人材開発」には時間がかかることを覚悟しなければならない。また、開業医と大学病院のような、にわかコンサルタント支援体制が必要となろう。
6、円安傾向にシフトする
国民の構想力・独創力を強化すると共に、情報産業を否応無しに発展させる。この国家プロジェクトは巨額の財政支出を必要とする。膨大な人件費を必要とするだけではなく、情報インフラの整備を伴う形で全国的規模で事業展開をしなければならないからだ。(国民一人一人が必要な情報にアクセスできるようにするには、膨大な設備投資が必要なのだ)
したがって、財政赤字はますます膨らむこととなり、わが国経済の一時的なインフレ化は避けられないであろう。でも、円高圧力がなくなる上に、インフレが加わるので、待ちに待った円安傾向が実現するのだ。
但し、アジア諸国が通貨切り下げ合戦を行わないようにするためには、アジア各国が特徴ある産業を持たなくてはならないが、歴史的必然である共同市場の形成がこれを可能にしよう。(私のホームページの論文「ユーロ誕生がもたらす世界経済の行方と不況脱出の方法」参照)
7、民需が大拡大する
これまで述べてきたことが具体的になれば、消費は一気に拡大しよう。なぜなら、次の三つが相次いで実現するからだ。まず消費拡大のための環境が整備される。なぜなら、雇用不安がなくなる上に、物価が上昇するからだ。
消費拡大のための環境が整備されても、積極的な消費マインドが生まれなくては何もならないが、この点もクリアーされる。なぜなら、個人ビジョンの開発が自己実現欲求の強化に、自己実現欲求の強化が積極的な消費活動に、それぞれ結びつくからだ。
国民の消費が拡大すれば、自ずと企業の国内投資マインドは旺盛になる。そして、円高傾向から円安傾向への転換がこれを後押しすることであろう。問題は投資資金だが、これも大丈夫。直接金融の機会が広がると共に、次に述べるように、銀行の貸し渋りが是正されるからだ。
8、銀行貸出が拡大する
民間需要の回復は、物価下落に歯止めをかけることを通じて金利の引き上げを可能にする。のみならず、本源的証券投資機会の拡大を可能ならしめるので、投機のために資金を寝かしておくようなことが大幅に減り、その分、優良企業の金利引下げ圧力が減る。かくして、銀行の貸し渋りは収まるというわけだ。
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