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【斬新な着眼】



→サービス事業を本格化させたい。企業がこう願うのであれば、発想の転換が必要不可欠である──プロ野球「近鉄球団」・中村紀洋選手の優柔不断行動の深層から考える

 ご無沙汰しています。二つを可能ならしめる日本経済再生策の構想がまとまるまで『斬新な着眼』はお休みにしよう。このように思っていましたが、構想確立⇒連載開始…の時期が大幅に遅れる見通しとなりました。
 
人々の相互依存関係が拡充する(May I help you?…の輪が拡大する)⇒ニュービネス・新技術の開発が進む⇒日本が輸入大国に転換する。

個人的に得するから積極的に行動したい…と思える。(個人のパワーアップ⇒企業のパワーアップ⇒日本経済再生…といった具合になる日本経済再生策を策定したい、と思っているのです)
 
 そこで、その後も母に送り続けているメールの中からビジネスに役立てそうなものをピックアップして紹介させて頂くことになりました。
 
  (筆者の母は実家のある沼津から末弟がいる那須に引っ越しました。彼女は知的好奇心旺盛ですが、92歳という高齢から来る難聴のために補聴器を使っても電話での会話ができません。そこで、彼女が人生の最終章を生き生きと生活することを願って、彼女にメールを送り続けているのです)
 
 以下の文章は、このメールのひとつをほぼそのまま転用したものです。その方が分かりやすい、と判断したからです。


 
 去就が朝日新聞の一面記事となるほどの国民的関心事となったプロ野球の中村紀洋選手は「近鉄球団」に正式に落ち着くことになりました。1月8日のことでした。

 メッツからは「パールハーバー以来」、日本国内では「結局は金か」と激しく非難されることになった同選手の行動の深層には、今後の日本の企業のあり方に貴重な示唆を与えてくれるものがあります。

 近鉄からフリーエージェント宣言した中村紀洋選手は巨人との交渉を決裂させ、阪神に気を持たせた後、2段階の行動を採りました。

(第1段階目の行動)幼い娘が3人いる同選手は元々大リーグに行く気はなく、「自分はどの程度評価されるのか」を知りたかった程度だった。にもかかわらず、米国大リーグのメッツと契約寸前にまでになった。

(第2段階目の行動)にもかかわらず、近鉄の梨田監督との夜を徹しての話し合いの結果、 このメッツから近鉄へ…と態度を急転直下させた。

中村選手はなぜ夢遊病者のようにメッツと契約寸前になったのか?

  メッツの本拠地・シェイスタジオを訪れ、充実した施設と本場の雰囲気にぐらりと心が動いたからなのだそうです。どうしてなのでしょうか? 中村選手が雰囲気に弱い女性的な性格だからでしょうか? 「否」です。自尊心を十分満足できる仕事場の雰囲気に満ちていたからでしょう。

 そうだとしたら、「どんな雰囲気であろうと全力投球をするのが本当のプロである」…と中村選手を非難すべきでしょうか? これも「否」です。理由は次の通りです。

 舞台で歌う歌手のことを考えてみてください。観客が多ければ多いほど、観客の拍手喝采があるほど歌手は持てる潜在能力を発揮します。そうなのです。サービスの質を高めるためには、サービス提供者は感動のあまり顧客に全てを捧げるようになることが必要なのです。

 そして、そうなるためには、「素晴らしい舞台だ。自尊心がくすぐられる。全力を出し切らなければ」…と思わせるような舞台装置も必要です。みすぼらしい舞台だったら気分がしらけて、実力を発揮できなくなるのです。

 このように言うと、「繊細すぎるのでは?」と思われるかもしれませんが、それは間違いです。なぜなら、「繊細である=感じる力がすごくある=表現能力がすごくある」…ということが言えるからです。

 だから、一流のサービス提供者に一流のサービスを提供してもらうためには、感動を与えなければならないのです。サービスの質は提供側と受けて側の共同作業のあり方によって決まる…という側面もあるのです。

 引退して久しい山口百恵さんはスタッフをもてなしてから歌の録音に臨んだそうです。どうしてなのでしょうか? 彼女は「スタッフと一体化できる⇒“乗る”状態で歌える⇒レコードを聴く人の心を捉えることができる」…ということを本能的に知っていたからこその行動なのでしょう。

 プロ野球の本質は舞台歌手と同じです。中村選手はメッツの本拠地・シェイスタジオを訪れて、舞台装置の素晴らしさ、プレイに対するアメリカ人の率直な反応を想像して、「こんなところで野球ができたら潜在能力をとことん発揮できる」…とわくわくしながら思ったのでしょう。

中村選手の「メッツ物語」は新時代における日本の企業経営と人間関係にどんな教訓を残したか?

 中国を代表とする開発途上国の経済的躍進を考えると、日本の企業が生き残るためには、サービス事業への本格的進出、サービス事業の高度化が必要不可欠です。日本が得意としてきたモノづくりはそうした中で活性化しなければなりません。

 それでは日本の企業は上記のような形で活性化できるようになっているでしょうか? 「否」です。なぜなら、次のような状態になっている企業が圧倒的大多数を占めているからです。

 本人に相談することなく一方的に職場を変更させる。部下の建設的意見を封じ込める。仕事面では上下関係があるが、人間としては対等…という関係を認めない──、といったような非人間的な処遇が横行しがちなのです。

 このような状態を改めない限り、「自尊心が満足されない⇒我を忘れて頑張るようにはなれない⇒潜在能力を最大限に発揮できない」…となって、サービス事業への進出、サービス事業の高度化…は困難にならざるを得ません。

 (部下の提案を業績拡大に結びつける方法を知りたい方は『プロフェッショナルQ&A』をお読みください)

 付加価値創出要因は製品。これが量産量販型の製造業。付加価値創出要因は人材。これが個性的需要対応型の製造業を含むサービス事業──、こういう対象性があることを忘れてはならないのです。

中村選手はなぜメッツから近鉄へと態度を急転直下させたのか?

 梨田監督の粘り強い懇請があったからですが、これをもって、「だらしがない。信念がない」…と非難すべきでしょうか? これも「否」です。なぜなら、過去の延長線上ではなく、不確実性の高い世界に飛び込む時は誰も迷いがあるからです。

 私は社会人になってから過去と断絶した世界に5回飛び込みましたが、いずれの時も不安が一杯でした。にもかかわらず、飛び込めたのは四つのことがあったからです。

小学校時代並びに中学校2年までの徹底した学校・勉強嫌いが災いして中学2年の終わりの時の成績はどん尻近く。そこで、高校受験を控えた中学3年になってから独学で猛勉強。その結果、学年全体で10番にごぼう抜き的にのし上がった。所要期間は約半年でした。
 
 (無理がたたって急性胆嚢炎になり、後半は病床生活⇒医務室での受験⇒1科目毎にカンフル注射を林先生に打って貰う」…という羽目に陥ってしまったのでした。そして、独学だったために、漢字の書き順の半分以上が間違ったままで今日に至っているのです)

高校入学時は最高のクラスに配置されたが、病床生活でついた空想癖等が災いして、成績はとうとうどん尻近くになってしまった。そこで、お母さんが森永先生に家庭教師を頼みましたが、[見込みなし」と断られるほどでした。

 私は悔しさ一杯になり、独学で数学を勉強して、約半年で解析T・Uの入学試験問題集で解けない問題なし…の状態になり、森永先生を問題の解き方で屈服させたり、試験で100点満点を取り、学年のトップに躍進。これは驚異的な出来事であったようで、「数学でどん尻からトップになった生徒は開学以来始めてのことです」とお父さんが学校から伝えられたとのことでした。

 (にもかかわらず、大学受験のことでお父さんと衝突して3年の時はほとんど通学しなかったのでした。そして、暗い青春時代を以来送り続けたのでした。だから、社会人になってから「30歳になるまでに歴史に残る仕事を成し遂げたい」…と思うようになれ、チャレンジャーのリズムを得ることができたのです。人生、何が幸いするか分かりません)

上記@Aで「その気になれば私には不可能なことはない」…という不遜な自信を私は持つに至った。その上、安宅産業を辞める前に捜し出した有力者と面談にこぎつけ、「困難を切り抜けるだけの精神力がある。だから、思い切ってやってみたらいかがですか」…というお墨つきを貰えた。

C そして、「困難を切り抜ける経験をしてビジネスの世界でも自信を持つに至った⇒この自信をバネに新たな挑戦をして成功させて、更に自信を深めた」…ということを繰り返せた。(リズムのなせる技…と理解しています)

中村選手の態度急転直下は新時代における日本の企業経営と人間関係にどんな教訓を残したか?

 破滅の淵に沈みつつある日本経済が立ち直るためには、製品の小型化・軽量化・精密化等の改良・改善中心ではなく、新しい産業を起こすことを中心に努力を傾注しなければならない──、というようなことを、12月12日付けのメールで申し上げたことを思い出してください。

 新産業を起こすということは、「新しい世界に飛び込もうとする⇒迷いが生じる」…という事態に遭遇することを意味します。中村選手がメッツに行こうとするようなものです。

 中村選手は古巣に留まることになりましたが、日本の企業にはそういう選択は許されません。迷いをなくして新産業開発を決断・決行するためにはどうしたらよいでしょうか? 中村選手の場合に即して言えば、次のようなことをすることがメッツ行きの決断・決行に結びついたことでしょう。

 こうなったらああする。ああなったらこうする…といったように、アメリカでの選手・家庭生活をする際に起こるであろう状況を漏れなく想定した上で、想定された状況別の対策を予め考え抜く。そして、「安心する」「予め覚悟しておく」…という結果を得ておく。(シミュレーションの重要性を深く認識したい方は『加藤紘一氏の乱』をお読みください)

 「予め覚悟しておくことがどうして決断・決行を可能にするの?」と思われることでしょう。「予め覚悟しておく⇒時間をかけて心や具体的な準備が自然に進む」からだ、とご理解ください。

 100メートルを走らなくてはならない…と思うと、心拍数の増加並びに血管の拡大が自然に実現するので、命を損なうことなく全力疾走できるようになる──、このような素晴らしい本能を人間は持っているのです。(この本能のことを深く認識したい方は『人・組織の動かし方 ― 予測制御の応用』をお読みください)

サービス提供者はパリーグのふがいなさから何を学ぶべきか?

 中村選手が巨人、阪神、メッツ…3球団の間をさ迷った背景には、パリーグの一層の弱体化があることは間違いないところです。なぜなら、「人気のセリーグ、実力のパリーグ」から「人気も実力もセリーグ」…となってしまったからです。パリーグはオールスターで連敗しただけではなく、覇者・西武は昨年の日本シリーズで巨人に無残な負け方をしたのでした。

 それではどうしたら良いでしょうか? 例えば三つのことを実施すべきでしょう。(再復活を目指す日本企業の経営のあり方にも参考になることばかりです)

(1)選手は観客に感動を与えるプレイをしなければならない

 社会が成熟化したために人々は脱日常感を求めています。しかも、プロ野球は必需性の高い商品を提供する産業ではありません。だから、プレイは感動に満ちたものでなければならないのです。

 それではどうしたら観客に感動を与えることができるのでしょうか?人間の本能を考えると、選手が「真剣さ」「成長」の二つを感じさせるプレイをすることでしょう。そのためには、過去の経験を活かした努力が感じられる形で球際に強いプレーをしなければなりません。

 常に努力を怠らず、しかも心から共感してくれる医師に死を待つばかりの末期ガン患者が安らかに身を任せるのはなぜなのかを考えてみる必要があるのです。サービス事業の本質を考えると、サービス提供者は先天的能力だけではなく、人間的魅力がなければならないのです。

(2) 観客にハイブリッド型の満足を与える

  成熟社会が求める脱日常感の中には「好奇心を満たしたい。微細なことを知りたい」ということもあります。「モノには新鮮さがなくなったし、地球が狭くなったからには、自らの精神空間を大きくしたい」という欲望がクローズアップするからです。

 プロ野球は上記の欲望にどのように応えたらよいのでしょうか?「ホームページを使って、選手一人一人の生き様を知らせる」「端末が備わった球場やデジタルテレビ等を使って、個性的な今の想いを知らせる」等などが考えられるのではないでしょうか?

 そうです。プロ野球がどんなに頑張ってもサッカーよりも時間がかかるとすれば、観客にハイブリッド型の満足を与えればよいのです。

(3)選手一人一人の自主性を最大限尊重する

 上記(1)(2)を実現させるためには、選手一人一人は個性的でなければなりません。集団の中に埋没した没個性的な選手には過去の経験を活かした努力が感じられる形で球際に強いプレーは期待しようがないし、生き様を知っても少しも面白くないのです。

 そして、日本では実現しなかった大家投手の才能の開花が大リークでなぜ実現できたのかを考えてみれば明らかなように、自主性の尊重は選手としての本来的な能力開発にも役に立つのです。

 少子化&塾通いのために、子供は社会的訓練を受ける機会が極度に減ってしまった⇒威張られたり、圧力をかけられるのを徹底的に嫌がるような人が増えた⇒押し付けは通用しなくなった──、こういう図式ができ上がっていることを踏まえて、魅力的な個性の持ち主を出現させることは容易ではありません。
 
 なぜなら、目の前の危機を放置して、『Xプロジェクト』を見て涙を流し、『ハリー・ポッター』を読み、わくわくしている──、このような日本人が急増しているからです。

 それではどうしたらよいのでしょうか? ボーナス・ペナルティーではなく、心の奥底から湧き上がってくる「内発的動機」に基づく夢をしっかりと持たせることです。そのために推奨するのが『ワタナベ式問題解決へのアプローチ』なのです。


 
 モノづくりの活性化に結びつくサービス事業のあり方、サービス事業の本格化のあり方、各人各様の“小宇宙”の見極め方…等の新時代に相応しいビジネスのあり方を知りたい方は『勝ち組メーカーに学ぶサービス事業戦略』(PHP研究所)をお読みください。



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