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(節子) 梯二郎と百子はどんな人だったら相性がいいのかを最後に考えてみたい。梯二郎なんだけど、こんな激しい人には中川京子みたいな女性がいいんじゃないかしら? 以前の議論の中に出てきた夫婦完全融合への道を歩むことによって得られる効用のことを考えるとつくづくそう思うの。 (高哉) 何よりも心の中の平和を願うことが事なかれ志向に結びついている。いいかえれば、相手に合わせてアイデンティティができあがる。こういう状態を通じて自己保存を図りつつ高潔な生き方をしたい。こういう性格の持ち主である中川京子にとって梯二郎は理想に近い男性かもしれない。 というのは、「ダイナミックで自分より遥かに優れている梯次郎と融合する ⇒ 心の平和を保つことができる」「尊敬できる梯次郎に献身する ⇒ 人間として理想的な生き方ができる」という二つの図式が相乗効果を発揮しつつ実現されやすいからだ。 (節子) でも、温和で忠実な中川京子には百子のようなスリリングな魅力はないので、梯二郎は物足りなさを感じていた。このことは梯二郎が夫婦完全融合への道を歩むことによって得られる効用の重要性を痛感しない限りずーっと尾を引きそうね。軽率な行動を採りかねないところは訓練で直るけど、こればっかりはどうしようもない。 激しさでは百子は梯二郎に負けていない。しかも、滅多なことでは人を信用しないので、孤独になりがち。こういう女性には蒔田二郎のような包み込んでくれる優しさのある男性がいつも傍にいることが必要だと思うの。ところが、彼女は彼の求婚を断ってしまった。どうしてなのかしら? (高哉) 蒔田二郎は「何の特徴もない貧しい人でも平和に生きる権利がある」と強く思い込んでいるので、コツコツと地道に生きる人をとても大事にする。したがって、和と秩序を乱すことに結びつきかねない、突出した行動をとても嫌う。一言で言うと、現状維持主義者。 一方の百子は環境変化に逸早く適応しようとすることに結びつく、ピンポイントのアイデンティティを臨機応変に追及・確立する習性の持ち主。したがって、現状維持主義者の蒔田二郎とは生きる方向が正反対。だから、「生活を共にするなんてとんでもない」となって求婚を断ってしまったのだと思う。 (節子) 蒔田二郎の性格が生み出す行動力学を見事に見抜いたわね。時々あって慰めてくれる相手として相応しいかもしれないけど、伴侶としては相応しくないことがよく分かった。彼は日本人の代表選手かもしれない。というのは、彼は多くの日本人がそうであるようにワーキング・プアーから抜け出したいと考える場合は「突出した行動を必要とする自助努力」ではなく「皆で仲良くを可能にする国の施策」の道を迷うことなく選ぶでしょうからね。 (高哉) その言葉で蒔田二郎の性格が生み出す行動力学が日本の労働行政を担う公的機関の責任者が僕に言ったことと見事に符合することに気づいた。 僕がある公的機関から講演を依頼され、『環境変化にどのように適応すべきか?― チャンスやピンチに強くなるために ―』という演題を提案した。そしたら、「環境変化への適用なんか考える日本人はいないんじゃないですか?」と言われてしまった。その時は吃驚したけど、蒔田二郎のことを知り、「彼は日本人の代表選手かもしれないではなく、代表選手以外の何者でもない」と思うに至った次第さ。僕のこの感想に駄目押しとなる面白い実話を紹介しよう。 僕が三菱総研時代に『新規事業開発の手引き』というマルチクライアント・プロジェクトを解雇処分覚悟で仕掛け、大成功を収めた。(詳しくは ⇒ 『新規事業開発成功に必要な理論的条件が完備していた』) この出来事に対して「サラリーマンなのにどうしてそんな危ない橋を渡るのか」とか「時期が来るまで待てばいいのに」という人が少なくなかったんだ。 (節子) 多くの日本人の実態が痛いほどよく分かった。百子はこういう日本人の代表選手のような蒔田二郎に飽き足らないものを感じるのは当然よね。魅力を感じるのは梯二郎のような人間となるんだけど、直ぐぎくしゃくした関係になってしまう。(詳しくは ⇒ 『ボタンの掛け違えが百子の梯二郎からの独立を決定づけた』) そうならなければ、百子は梯二郎と理想的な関係になれるのにね。 (高哉) ぎくしゃくした関係に仮にならなくても、理想的な関係になれないかもしれない。というのは、百子は自分の有能感にこだわる人間だからだよ。前にも言ったことがあるけど、自分の芸に対する聴衆の直接的反応を凄く大事にする都はるみやカーペンターズのカレンに百子は一部似たところがある。そうだとすると、彼女は自分の作品や接客の直接的評価が得られにくい大規模事業には向いていない。 ところが、梯二郎が百子を登用しようと思っていたのは大規模事業。前にも言ったけど、梯二郎はティー・サロン、美容院、ブティックをハイソサエティー向けの会員事業でやり、このチェーン・システム運営の統括マネジメントを百子に任せようと思っていたからね。 百子はこの構想に乗ったとしても長続きするわけがない。実験店舗の責任者にするような工夫を凝らさないと二人は巧くいかないだろうね。「二人は理想的なパートナーになれる可能性がある」という前言にはこのことを付け加えなければならない。 といった具合に、梯二郎と百子はどちらもちょっとやそっとでは相手と融合できない。二人が誰と結婚するにしても満足できる夫婦生活を送るためには、次の図式を実現させる必要がある。 彼我の人生史を適切に分析する ⇒ 彼我の性格を適切に認識する ⇒ 目指す人生の方向が一致している相手を選ぶ ⇒ 健全な家庭を築くことができるようにする ⇒ ブランド力の重要性を認識する ⇒ お互いに進化し続けて新鮮な魅力を保つ。 (節子) 人間関係にブランド力を持ち込むなんて面白いわね。ブランド力の重要性を分かりやすく説明してくれないかしら? (高哉) 馴染みのある企業の例を使わせて貰うよ。今ではなく昔のことだけど、「ソニーの商品だったら2割高くてもいい」と言う人が少なくなかった。ここにブランド力の重要性がある。 ソニーは創業当初からOEMではなく、ブランドメーカーだった。したがって、同社の名前は内外に幅広く認識されることとなった。その上、同社は後発企業の追従を恐れず次々と新製品を市場に送り届けてきた。その結果、顧客はわくわくしながらソニーが提供する新製品を待ち望むようになった。だからこそ、ソニーの製品は割高でも良かったんだ。 (節子) 今の話は人を惹きつけ続ける秘訣にも通じることがよく分かった。横並びではなく、その人らしさを引き出し進化させ続ける。すると、良い意味でのワクワク感が生まれるし、このワクワク感が実態以上の人物評価の安定化に結びつく。したがって、決して飽きられるだけではなく、「この人はかけがえのない人だから大事にしよう!」と思われるようになる。こういう解釈でいかがかしら? (高哉) ピンポン! 大当たりです。だから、個性的才能を引き出す性格診断が必要なんだ。これだけでもいいけど、人を惹きつけることにおいては凄い威力を発揮するオーラを発し続けたいのであれば、未来進行形の自己物語を創造することを勧めたい。 ポンピドー夫人はルイ14世の愛人という不安定な身分であった。にもかからず、この超ワンマンの太陽王から年老いても捨てられることはなかった。それどころか寵愛を受け続けて絶大な権勢を誇るまでになった。この背景には、彼女の進化し続けるためのたゆまざる努力があった。このことを付け加えて延々と続いた議論を締めくくりたい。(関連記事 ⇒ 『相性の良い伴侶獲得のための婚活成功術 / 脳細胞間のネットワーキングが円滑にできる 』) (完)
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