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イラクを平和的に再生させることは可能だったかもしれない

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【斬新な着眼】


 シリーズ「日本を復活させるためにはどうしたらよいのか? 本格的な共同市場に参加するしかない!」は2003年12月27日から2004年3月15日の間に掲載しました。以下のコンテンツは当時のままになっていることを念頭に置いてお読みください。

共同市場は世界経済統合を妨げない (2004/1/12号)

経済運営を成功させる方法は一様ではない

 通貨危機に襲われたアジア諸国に対する米国財務省・世界銀行・国際通貨基金の三者が「財政縮小」「民営化」「市場自由化」を強行して、失敗に帰した。一方において、中国は独特の経済運営を行い、成功を収め続けている。 ── これが何よりの証拠です。

 文明Aの国と経済交流することが文明Bの国にとっての唯一の生き延び策であったとします。こういう場合は、「A・B両国はAのルールにしたがって頻繁に交流する ⇒ Aのルールに基づく思考・行動がBの新しい習慣になる」という図式成立の可能性があります。

 但し、AのルールがBの伝統的な価値観に反するものですと、「Bが繁栄するようになる ⇒ 自分達固有のものが繁栄をもたらしたのだ、とBは思い始める ⇒ Aへの反発という旗印の下にBは結束し始める」という図式が鎌首を持ち上げてきます。

 人間は自尊心が強く、自尊心は本源的なものに向かいがちであることを忘れてはならないのです。米国の力をも借りて経済的に繁栄するようになった韓国の強い反米感情が良い例です。

 このように考えると、地域主義は世界経済統合の妨害に結びつきそうです。果たしてそうでしょうか?

ワンパターン方式では改革だって巧くいかない

インサイダーとアウトサイダーの限界を克服できる巧いやり方がある

 米国の対イラク戦後処理が円滑さを欠いているのはどうしてなのでしょうか? 対アフガニスタン同様、アメリカのコンサルタントが投入されていますが、イラク人の潜在能力を引き出しつつ改革を進めるというよりは押し付け型の色彩が強いからなのではないでしょうか。

 それではイラク人によるイラク人のための改革であれば巧く行くのでしょうか? 市場経済への移行のための改革であれば巧くいかないでしょう。なぜなら、“知りすぎ・知らなさ過ぎ”のリスクが発生して、様変わりした環境に適応するための改革は巧くいかないからです。インサイダーにもアウトサイダーにも限界があるのです。それではイラクの改革はどのように進めるべきであったのでしょうか?

 企業の再構築に大きな効果を発揮する、全員参加型の新創業プロジェクトを応用すべきであったのではないかと思えてなりません。なぜなら、この方式であれば、外部のコンサルタントの構想力・独創力を活用しつつ、内部の人材の潜在能力を最大限引き出すことが可能になるからです。この考え方を是とするならば、

中国が独自のやり方で経済改革に成功したことを踏まえた、イラク社会になじみやすい方法を戦争突入前に練り上げる。

上記の方法に基づく経済改革推進の中心的役割を担うイラク人を事前に幅広く捜しておく。
米国や国連をバックにしたイラク人による暫定政権を終戦と同時に設立する。
C イラク人によるイラク人のための改革プロジェクトを導入して、「上記の暫定政権の担い手の指導力を抜本的に強化する」「イラク人の潜在能力とやる気を引き出す」の二つを実現させることによって、改革を推進する、

という4段階アプローチの採用がイラク改革のあるべきやり方であったと思われます。


イラクを平和的に再生させることは可能だったかもしれない

 イラク改革のためにはフセイン政権を軍事攻撃により打倒することが唯一無二の方法だったのでしょうか? このような疑問を抱くのはオーナー社長が長期に渡って経営してきた。いいかえれば、鶴翼型支配ががっちりとできあがっている企業の再構築を成功させたことを思い出したからです。

 成功のポイントは、御曹司を実行委員長にする全員参加型の新創業プロジェクトを導入したことにより、二つの効果があったことにあります。

(効果1) 超ワンマン社長の情報網(指示系統)を全面的に活用できた。
(効果2) 御曹司が未来進行形の事業展開の適切なあり方を頭に叩き込むことができた。

 フセイン大統領には二人の息子がおり、後継者候補として育てられていただけに、後継者の真のリーダーシップ並びに組織全体の活力の抜本的強化に絶大な威力を発揮して企業再構築を成功に導く「全員参加型の新創業プロジェクト」の応用により、イラク再生は可能であったのではないかと思えてなりません。

 但し、二人の息子に市場経済への移行の必要性を痛感させるように創意工夫を凝らして時間をかけた事前の教育を行うことが前提条件であることは言うまでもありません。

 事前教育のポイントは二人の息子に盲点に気づかせることです。そうなればしめたものです。なぜなら、人間は誰しもが固定観念を抱きがちであり、この固定観念が盲点を、盲点が現状肯定に結びついているからです。

 筆者はこの考え方に基づいて企業改革の妨げとなっているガンのような存在になっていた経営者の態度を様変わりさせることに成功したことがありますが、この背景には上記の考え方に基づいた2段階アプローチがあったのです。

(第1段階) 全員参加型の新創業プロジェクトを導入して、中間報告書を提出し続ける。

 この経営者は徐々に元気を失っていきました。自らの盲点に気づき、自分は新時代の経営者として相応しくない、と思うようになったからでしょう。

(第2段階) 提出した最終提案書をじっくり読んで頂いてから質疑応答会を開催した。

 この経営者が提起した疑問点をことごとくその場で論破して、最終提案書についての賛同を得ることができました。のみならず、この経営者は自主的に退陣を決意しました。

 上記の成功をボクシングに例えると、第一段階は数多くのボディーブロー、第二段階はアッパーカットだったのです。人が絡んだ問題で事を成就しようと思ったならば、“刷り込み”を先行しなければならないのです。

 但し、人間誰しもが「悪しき知覚プロセス」に陥りがちであることを念頭に置いたコミュニケーション活動が必要であることを肝に銘じた行動を採らなければ、努力は空回りすることを忘れてはなりません。

 上記のような方法の採用の妥当性を主張すると、2種類の反論が生まれるかもしれません。

(反論1) フセイン大統領の息子を教育する機会を得ることはできないのではないか? ── 直接的に教育する機会が得られなくても、マスコミの有効活用によっていくらでも可能です。筆者は請け負い事業を成功させたことがありますが、この成功の要因のひとつにPR代理店を使ったパブリシティの積極的展開があるのです。

(反論2) 企業経営と国家経営は違うのではないか? ── 「この反論はもっともだ」と思うしかないでしょうか? 「否」です。なぜなら、

 個人・企業・地方社会・国家・世界の運営・改革のあり方の本質は「思考の三原則」を適用したジグソーパズル思考の達人になるための行動指針にあるように修練を重ねることによって同じであると言い切れるようになるからです。地域経済の経験皆無の筆者が『豊田市地域商業近代化ビジョンの策定』で成功したのが何よりの証拠です。

鬱積した不満をとことん聞き、とことん理解する ── これが新創業プロジェクト成功の要諦である

 定年や早期定年で退職した夫が「これからは夫婦水入らずの生活を楽しもう」と思って帰宅した。すると、妻から「退職金の半分を私にください。そして、離婚してください」と言われてしまう。夫婦仲はさぞかし…と思うとさにあらず。夫婦の仲はずーっと比較的円満であった。── こういう事例が少なくありません。どうしてなのでしょうか?

 浮気をしない。給料はそっくり渡してくれる。それなりに思いやりがある──、といった具合に、世間的には理想的な夫である。しかしながら、専業主婦以外の潜在能力を認めようとしない。「自分だって羽ばたけるのに…」という不満が積もりに積もっている。

 変な話ですが、このような不満は抑圧が必要な時は「我慢しなければ…」という自制心が働いて爆発しないものです。ところが、夫の退職並びに退職金の入手により、「妻としての役割を終わらせることができる」と安心して、鬱積した不満に火がついた。だからなのです。

 こうなってしまったら離婚するしかないのでしょうか? 「否」です。どうしても婚姻関係を続けたい、と夫が思うのであれば、離婚回避は可能です。妻に溜まった不満を吐き出させて、彼女の気持の理解と感情の共有を行えば、妻は離婚を思いとどまる可能性が大なのです。但し、妻の性格が生み出す行動力学の認識が必要不可欠であることは言うまでもありません。

 フセイン政権崩壊後のイラク人にも上記の妻に似た感情が生まれたのではないでしょうか? フセイン政権が崩壊して鬱積していた不満を安心して爆発させている、と考えられなくもないのです。

 だとすると、米国の採るべき態度は、軍事的反撃ではなく「溜まった不満を吐き出させる ⇒ 吐き出された不満の理解と感情の共有を行う」という手順を踏むことではないでしょうか。これが企業の再構築プロジェクトを経験してきた筆者の率直な感想です。

 既にお気づきになられたと思いますが、この場に全員参加型の新創業プロジェクト論を持ち込みましたのは、創造的な手法を用いれば異文化同士の融合は可能であることを申し上げたかったからなのです。

 過去の延長線上の行動を採ることが不可能な革新的なことを行なうためには、何事においても「これだ!」と言えるような突破口が必要です。価値観を異にした国や人々の経済的融合を実現させることを可能にする突破口が果たしてあるでしょうか?

同一文明同志だからといってまとまるわけでもない

 話を価値観問題に戻します。経済運営ルールを始めとする価値観・習慣が似た国同士であれば、共同市場の形成は成功できるのでしょうか? 「否」です。なぜなら、政治体制を異にする国が経済的に融合するためには、欧州共同市場がそうであるように、

 「共同市場形成以前から円滑な交流が行われている」「強力な指導力を発揮できる国が存在している」── の二つの条件が必要だからです。

 ということは、イスラム世界には共同市場を形成できる条件が揃っていないことを意味します。なぜなら、イスラム世界は三つの特徴を持っているからです。

(特徴1) 同じイスラム教でも宗派が異なる。国境線が人工的に決められた──、という二つの条件が重なってアラブ世界においては国家間の対立が激しい。

(特徴2) アラブ人はファミリー志向が強いので、部族としてのみしか結束しない。したがって、国民の国家への忠誠心が低い。イスラム教の特徴であるネットワーク志向が国内ではなくイスラム世界横断志向に結びついている──、という二つの条件が重なって、強力な国家が生まれにくい。

(特徴3) 由緒あるトルコはオスマン・トルコ没後、西洋志向を強めたので、他のイスラム世界からの信頼が不足している。したがって、同国がイスラム世界をまとめるのは容易ではない。

 イスラム世界がこのようになっていることは世界の大きな不安定要因と言わなければなりません。なぜなら、二つの事実があるからです。

(事実1) 先進国とイスラム世界の人口が2050年に拮抗することが予測されている。

                                  Business Week / April 21の14頁より転載

(事実2) イスラム教は決着が付くまで戦い抜くことを奨励している。

                         The Economist January 10th 2004の18頁より転載


 価値観を異にした国や人々の経済的融合を実現させることを可能にする突破口がありそうです。但し、可能性にしか過ぎません。果たして具体策はあるのでしょうか?

資本・技術の国際化が現地人の雇用拡大を支える

 経済運営ルールを始めとする価値観・習慣が全く異なる人々の長期間密着は紛争に結びつきやすい。似た者同志であってもまとまるわけではない ── この人類社会の厄介さを乗り越えてイスラム世界の共同市場を形成するためにはどうしたらよいのでしょうか?

 サウジアラビアに工業化(脱石油依存経済への転換)の必要性を痛感させる ⇒ 自国の労働力の質の低さを痛感する ⇒ 独力での工業化推進が困難であることを痛感する ⇒ 他国経済の外延的拡大が自国に及ぶことの必要性を痛感する ⇒ 技術開発力豊かなイスラエルを中核とする中東共同市場の必要性を痛感する──、という図式を実現させることです。

 上記図式実現の鍵である、サウジアラビアに工業化(脱石油依存経済への転換)の必要性を痛感させることは困難なのでしょうか? 「否」です。なぜなら、

 地球環境の回復・保全の必要性から石炭のガス化・燃料電池・バイオマス等の代替エネルギーの開発・利用が急進展する ⇒ 燃料源としての石油への依存度が激減する──、というサウジアラビアにとって悪夢のような図式が十分に考えられるからです。

 このように申し上げますと、「オイルメジャーは石油資源開発のために膨大な投資を行ってきている。したがって、この投資を無駄にするような政策転換を阻止するために、強力な政治力を駆使するであろう」という反論が生まれるかもしれません。

 この反論は長期に亘って成り立つでしょうか? 「否」と言うしかありません。なぜなら、中期的には燃料電池時代が到来しても石油は合成ガソリンに姿を変えて生き延びることができる。長期的には「現在の世界システムが続く限り貧富の格差は拡大する一方である ⇒ 貧富の格差のある異文明の密着は否定しがたい怨嗟を生み、この怨嗟がテロリズムを生む」という図式は永続するしかないからです。

 テロは米国だけではなくロシアをも標的にしているのはどうしてなのか…を考えてみる必要があるのです。

 「米国が腐敗しきっている現体制を支えている ⇒ 母国で理想社会を建設することは困難である ⇒ イスラム教徒が大勢住んでいる他国で理想社会を建設するしかない」という図式の下にイスラム教徒によるテロがロシアで頻発しているのです。

 イスラム教徒は増える一方であることを考えると、テロの対象は世界中に広がっていく危険性があるのです。となると、

 技術開発力豊かなイスラエルを中核とする中東共同市場を形成する + 新生イラクが市場経済のモデルになる ⇒ 周辺国はイスラエル経済の外延的拡大の恩恵を受ける ⇒ 貧富の格差が縮小するので、怨嗟の度合いが激減する + 先進国は資本と技術投下中心であって、長期滞在型の人的進出は極力抑制する ⇒ 共同市場の円滑な運営が持続できる──、という図式を実現させるしかないでしょう。

赤字問題を解決し、世界的地域主義推進によってメリットを生み出すグランドデザインを米国が創れるかどうかが成否の鍵である

 しかしながら、アメリカ主導で進められているイラクの改革が失敗したならば、アメリカ流の経済運営に対する信用を失い、上記共同市場構想は頓挫することになるでしょう。そして、大きな不安材料の存在を考えると、その危険性は大きいのです。

(不安材料1) イラクは内戦抑圧の重石が取り払われた状態にある。

 戦後の植民地政策から生まれた人工国家で、融和が困難なシーア派、スンニ派、クルド族、しかも、それぞれの内部はファミリー志向の強い数多くの部族によって分断されている。この分裂国家をフセイン政権の恐怖政治により辛うじて統一が保たれてきた。ところが、今や束ねるための箍(たが)が存在しない。 ── これがイラクの実態なのです。

                    The Economist December 6th 2003の19頁より転載

(不安材料2)
イラク人の多くは誘われると容易にテロリストになる。

 「日本の部隊(自衛隊)は日本の企業を連れてくる」「大勢の人を雇うらしい」。陸上自衛隊先遣隊が派遣されるイラク南部サマワでは、失業に苦しむ市民の間で過大とも言える期待が膨らんでいる。6日には約240キロ離れた首都バクダットからうわさを聞きつけた大勢の求職者がバスで乗りつける騒ぎになった。

 上記の2004年1月10日付け「朝日新聞(朝刊)」にあるように、イラクの一番の悩みは失業問題で、これは「食えない ⇒ 不満を占領しているアメリカに向ける」という図式に容易に結びつく危険性を孕んでいるのです。

(不安材料3)
米国が財政負担に耐えられないかもしれない

 米国の03年度(02年10月〜03年9月)は前年比2.4倍の3742億ドルに達した。そして、04年度には5千億ドルに達することが予想されている。(過去の最高額は92年度の2900億ドル) ── この背景には、870億ドルにのぼるイラク復興関連予算があることを忘れてはならないのです。

                         The Economist January 10th 2004の26頁より転載

(不安材料4) 共同市場の形成が緒に就かないかもしれない

 ラテンアメリカはメキシコの北米共同市場(NAFTA)を見て、16%の人しか市場経済に満足していない。メキシコ人自身ですらNAFTAの経済効果に対するプラスの評価が93年11月の68%から03年の45%に低下している。この背景に功罪半ばの具体的数字の実績がある。

Business Week December22の37頁より転載

 パンドラの箱を開けてしまったような状態になっているイラク問題は新しい考え方に基づく地域主義を推進して解決するしかない。しかしながら、上記「四つの不安材料」がある。これ以上の立ち往生状態を探すのは容易ではありません。

 構想力・独創力の抜本的強化のために、また独自のチャンス発見のために、みなさんが立ち往生からの脱出・躍進の事例研究のテーマとしてこの問題に取り組み、その結果を次回以降の「斬新な着眼」とすり合わせることを期待しています。


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