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ニーズの本当と嘘

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【斬新な着眼】


悔いなき人生はどうしたら実現できるか?
人生を生け花に見立てることである ―


うまくいかなくなったのはなぜなのか?

2005.7.11

詰めぬいた上での行動ではないからつまづく


予測制御できないとショックに耐えられなくなる

(節子) サッカー日本代表が06年にドイツで開催されるW杯に出場することが決まってよかったわね。前監督のトルシェ監督との軋轢、勝ち運に恵まれなかったために出てきたジーコ監督降ろし…等、日本サッカー界には色々あったけど、忘れられないのは藤枝市・W杯担当課長の自殺。

 市のスポーツ振興課長でセネガルキャンプ地藤枝市実行委員会事務局次長の岡村さんが02年5月の早朝に「仕事がうまくいかない。体調が悪い。疲れた」というメモを残して52歳という働き盛りの若さで自殺したのはどうしてなんでしょうね。

 自殺した前の日に行われたセネガル選手団との歓迎レセプション会場では「無事選手が来て、よかった」と来客と笑いあっていたそうよ。目的が達成できたんだから自殺する必要はまったくなかったんじゃないかしら?

(高哉) セネガルのサポーターがほとんど来なかったために期待していた経済効果が上がらなかった。したがって、8000万円近くの予算が無駄になってしまった。その反面、市民のスポーツの憩いの場であった市体育館がセネガル村となってキャンプ期間中は使えなくなってしまった。こういうことが原因しているようだよ。

(節子) お亡くなりになった岡村さんは市の経営責任者ではないんだからそこまで責任を感じる必要はないんじゃないかしら?

 民間企業で言えば、総務課長が外国からの大勢の視察客の接待役を仰せつかい、予算の範囲内で来客に満足を与えることができた。しかしながら、この効果が業績に反映されなかったので、責任を感じて自殺してしまったようなもんよ。釈然としないわよ。

(高哉) 筋論としてはまったくその通り。ところが、岡村さんの個人的背景が責任を感じさせてしまったようなんだ。この個人的背景を自殺の潜在要因と顕在要因に分けると次の通りになるかもしれない。

(潜在要因) (スポーツ振興課に配置換えになるまでは人里離れた山奥に勤務していた + 連日のように対人折衝をしなければならない仕事に就いた ⇒ 慣れないためにストレスが一気にたまりやすくなった) + トラブル続きで苦労が重なった ⇒ 精神的大ショックを受け止めることを可能にするフレキシビリティがなくなってしまった──、という図式。

(顕在要因) 岡村さんはPTA会長をやっていたということから窺われるように地元密着の真面目で責任感が強い人物であった + 8000万円近くの予算を使う等の犠牲を払いながら地元にとってメリットがなかった ⇒ 「申し訳ない」という気持ちで一杯になった。

(節子) セネガルキャンプ地が藤枝市に直ちに大きな経済効果をもたらすとは限らない。したがって、セネガルキャンプ地藤枝市実行委員会事務局の役割は次の図式実現に貢献することであると思っていればよかったのにね。

 セネガルキャンプ地を成功させる ⇒ 藤枝市の良好なイメージが国の内外に伝わる ⇒別の部署が良好なイメージの有効活用に結びつく経済政策を講じる ⇒ 藤枝市に経済効果がじわじわと生まれる。

 事実は受け止め方次第であるにもかかわらず、適切な受け止め方を事前にして置かなかったための悲劇ね。

 勝ち負けのない運動会のようなことを経験してきた、これからの世代の人は打たれ弱い。したがって、岡村さんのようになってしまうことを恐れて事なかれ主義に逃げこんでしまい、悔いを残す人生を送る人が多くなってしまうわね。なんとかならないかしら?


経験のなさを補うために必要不可欠なシミュレーションが不足していた

(高哉) 企業の経営者は今話題になった岡村さんと違って精神的な大きなショックに強い人が多い。だからといって、先行き不透明な分野に安心して突き進むことができるというわけではない。「何とかなる」という安易な気持ちで異分野の事業に乗り出したことが裏目に出た例は実に多い。

(節子) 新規事業ではないけど、安易な気持ちで新製品を開発することも多いわね。「ニーズの本当と嘘」という興味深いテーマで高哉さんに以前教えてもらった、開発当初の洗濯乾燥機なんかがそうでしょ?

 市場調査の結果、「洗濯乾燥機の需要が多い」ということが分かった。そこで、洗濯機と乾燥機を横並びさせたものを大量生産。ところが、さっぱり売れない。そこで、調査をしなおしたら、「洗濯機と乾燥機を横並びさせたものを置くスペースがない」ということが分かり、立体型にしたらどんと売れたんだったわよね。

(高哉) 洗濯乾燥機は調査方法に誤りがあったわけ。もっとひどいのは調査をしないで、「えいっやっ」とばかりに異分野の事業に乗り出す例だって少なくない。その良い例になると思われるのがスカイネットアジア航空の立ち上げの中心人物になり、最大の大株主になった米良電機産業社長の米良充典氏。

 不十分な資金で事業に乗り出してしまったために無茶な経営を行い、信用を失墜。これに営業力不足が加わって経営が破綻してしまい、2004年6月5日に産業再生機構に対して支援を要請。減資の処置がとられることになったために、最大の大株主である米良電気産業は9億円の損を蒙ることになったそうだよ。

(節子) スカイネットアジア航空ってマラソンの高橋尚子さんのスポンサーになった会社でしょう? 不十分な資金で事業に乗り出したことのどこがいけなかったのかしら? 「小さく生んで大きく育てる」のが新規事業の常套手段じゃないかしら?

(高哉) 一般的にはそうだけど、最初から巨額の先行投資資金をどんと準備することが必要不可欠な事業だってある。航空会社なんかその典型。なぜなら、航空会社は次の図式が運命付けられているからなんだ。

 航空機の故障を理由とする欠航は許されない ⇒ 1路線運行の経営であっても複数機が必要となる ⇒ 一路線複数機であると航空機の稼働率が極度に悪くなるので採算が取りにくくなる ⇒ 複数路線運行が必要となる ⇒ 路線増加に応じてステーションや関連従業員が増加する ⇒ 損益分岐点が自ずと高くなる ⇒ 集客力がなければたちまち赤字になってしまう。

(節子)ケースバイケースの事業特性を認識した事業計画を立てないととんでもないことになってしまうのね。日本が他国に比べて起業率が断然低い背景には次の図式があるんじゃないかしら?

 (ほぼ一直線で経済成長を遂げてきた ⇒ ケースバイケースの事業特性を認識する必要がなかった) + (環境が様変わりした ⇒ 成長を遂げるためにはケースバイケースの事業特性を認識して新分野を開拓しなければならない) ⇒ 新分野開拓を躊躇してしまう。

 でも、そんなことを言っていたら日本経済は駄目になるだけ。日本の社会を生き抜くためには「和と共存の精神」が何よりも大事だと言うでしょ。この精神に基づいて新分野を開拓するというわけにはいかないのかしら?

新しい分野・製品・サービス・技術の開発成功支援


和と共存の精神が経験のなさを補える時代はとっくの昔に去った

(高哉) 「和と共存の精神」が何よりも大事であった背景には次の図式があったことを忘れてはならない。

 工業化が限りなく可能であった ⇒ ほぼ一直線での成長が可能であった + 「カイゼン」の積み上げが経営成功の鍵であった ⇒ 組織に乱れがなければ存続できた ⇒ 経済社会は“仲良しクラブ”のような性格でいることができた ⇒ 和と共存の精神があれば脳力・能力の不足は仲間が補ってくれた。

 小野グループ代表の小野幸太郎氏が引き受けた上場企業である「ニッセキハウス工業」が倒産した背景なんかは良い例だよ。事情を簡単に説明すると、次の通り。

 収益性に乏しい。経験や才覚を利用して経営を立て直す自信もない。にもかかわらず、恩ある銀行から頼まれて引き受けた第三者割当増資に応じた上場企業である「ニッセキハウス工業」が2002年10月に会社更生法の適応を受けることになってしまった。

(節子) 人間関係は「もたれあい」や「癒着」から「自立と自律」に転じなければならないというわけね。納得できるなぁ。甘えが身の破滅に結びついた人がいるもの。


孤軍奮闘の勇気がなくなるとあるべき行動が採れなくなる

(高哉) 甘えが身の破滅に結びついた人って秘書給与疑惑問題で代議士辞任に追い込まれた辻本清美さんのことを指して言っているんでしょ? 彼女は若いのに新時代のあるべき感覚で事に臨まなかったことが災いしてしまったと言える。

(節子) 辻本清美さんのことを特に意識して「甘えが身の破滅に結びついた人がいる」と言ったわけじゃないけど、面白いから彼女の話を詰めてくださらない?

 「彼女は若いのに新時代のあるべき感覚で事に臨まなかったことが災いしてしまった」ということは彼女の社会党の中での態度のことを言うのかしら?

(高哉) そうだよ。あの事件で誰も否定できない状況証拠があった。誰かに指示されなければ、秘書給与の流用のやり方を彼女は知りえなかったはず。土井たかこさんを失脚させるくらいの覚悟で原因を明らかにするための派手な論争を展開すればよかったんだ。

(節子) そんなことをしたら、土井たかこさんに睨まれて彼女は社民党の中での地位向上を目指すことが不可能になっちゃうんじゃないかしら? 社民党は土井たかこ党なんだから…。

(高哉) 土井たかこさんの辻本清美さんに対する評価は高くなかったようだ。だから土井たかこさんに睨まれることを恐れるべきではなかったんじゃないかなぁ? あの事件が起きる前に幹事長として国民的人気のある辻本清美さんではなく福島瑞穂さんを選んだ。このことが何よりの証拠じゃないかなぁ?

(節子) 日本は気が遠くなるほど長いこと集団主義が根付いていた社会よ。辻本清美さんがいくら若いからといって社会党内で孤軍奮闘するなんてことはしにくいわよ。・・・・・

 これまで説明してもらった事例は仕事の世界に限定されているけど、同じようなことは結婚・転職等の私的生活についても当てはまるわね。「シミュレーション効果を予め入手することなくして、新天地に踏み出してはならない」という教訓をもらったような気がする。

 ついでに『脱集団主義の時代』の著者に聞くんだけど、集団主義はどんな悪影響を与えているのかしら? 組織運営に焦点を当てて説明してくれないかしら? 辻本清美さんのような立場に立つ人のためにあえて聞きたいの。


集団主義から脱却しないと組織は内部崩壊する

(高哉) 現場を預かっている人間は「かくあるべし」ということを実によく知っている。但し、各現場の利益と組織全体の利益並びに短期的利益と長期的利益の調整が必要になる。

(節子) その調整のうまいやり方ってあるのかしら? 異なった様々な意見を足し合わせるのであれば、予算が膨れ上がってしまい、「費用 vs 効果」の問題が生じて組織全体として利益を上げることは不可能になってしまうし…。

(高哉) 次の手順の作業を行えば創造的問題解決策を捻り出すことに結びつく調整ができる。抜群の効果を発揮できることは実証済みなんだ。

 意見と意見を自由に戦わせる ⇒ 何が意見の違いを生んでいるのかを分析する ⇒ 見過ごされがちな貴重な情報・知識を入手する ⇒ 入手した情報・知識を素材に使ったジグソーパズル思考をする。

(節子) 意見と意見を戦わせる。しかも、出された意見を分析する。こういうことができる脳力が養われていないことがほとんど。仮にこのようなことができるにしても、そんなことを組織内の人間同士がやったら大変よ。

(高哉) ほとんどの日本人は合理性よりも組織内の人間関係や仲間意識を優先させるのが当たり前と思い込んでいるから今の発言が出てきた。この発言によって自ら集団主義の弊害を認めているよ。日本の多くの組織は集団主義に基づいた運営をしているために下記図式の罠に嵌ってしまっているんだ。

 合理性よりも組織内の人間関係や仲間意識を優先させる ⇒ 異分子排除の風圧が自然にできあがる ⇒ 意見と意見を自由に戦わせ、何が意見の違いを生んでいるのかを分析する勇気は封じ込められる ⇒ 異分子的な人材は組織に入ってこない。入ってきても「朱に交われば赤くなる」ということになってしまう

 ⇒ 集団は同質化し、組織は内向きになる ⇒ 世の中全体の動きを学習する意欲がなくなる ⇒ 環境変化に適応できなくなる。

(節子) 「日本の多くの組織は…」という言い方をしたけど、「日本の社会は…」と言い換えた方がいいんじゃないかしら? 今説明した図式は現在の日本経済にそっくり当てはまりそうだもの。

(高哉) 現在だけではない。日本は歴史的にずーっと同じことを繰り返している。なぜなら、明治維新以降の日本の歩みを簡単な図式で示すと、次の通りになるからなんだ。

 明治維新を行った ⇒ 明治維新の努力が30数年後の日露戦争の勝利で結実した ⇒ 日本の社会が衰退し続け、30数年後の第二次世界大戦敗北という結果を招いた ⇒ 欧米先進国へのキャッチアップという国家目標を掲げての努力が30年後の日本経済独り勝ちで結実した ⇒ バブル崩壊を契機に日本は衰退路線を歩み続けている。

(節子) となると、「日本経済は景気回復の踊り場」なんてことがマスコミで言われているけど、「失われた10年」ではすまなくなりそうね。「治にあって乱を忘れず」という格言がずしんと重みを持ってくるわねぇ。気を引き締めるために教訓的な企業の事例を紹介して頂けないかしら? (次号に続く)


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