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(節子) 梯二郎が価値観の違いを認めることがなかったばかりに東野に切り捨てられ挫折を余儀なくされた。この辺の事情をもうちょっと詰めさせて貰いたい。 梯二郎は将来の事業像という未来価値に重きを置く。ところが、東野は正反対の恒産主義者。したがって、二人は元々水と油。百戦錬磨の東野はこのことを最初から分かっていたはず。にもかかわらず、東野が梯二郎に巨額の資金を融資してきたのはどうしてなのかしら? (高哉) 梯二郎の事業は実績が示すように成長力がある ⇒ 梯二郎を融資先にすることは効率よく金利を稼ぐことを可能にする ⇒ 恒産を効率よく拡大できる──、という図式を頭の中で描くことができたからだと思う。 (節子) 価値観が違っても儲かりさえすれば良かった。こういうことになるわね。にもかかわらず、融資を引き上げることにしたのは、代物弁済の対象となる梯二郎の資産が放置しておくと下落して損をするからである。こう判断したんだと思うけど、何がこの判断に結びついたのかしら? 価値観の違いにあることだけではないと思うの。補足説明をしてくれないかしら? (高哉) 「このままでは損をする」となったことが原因であることは間違いないが、この背景には、次の図式があったのではないかと思う。 (梯二郎が百子と深い付き合いをするようになった ⇒ 公私混同のように思えた) + (景気が長期低迷局面に入った ⇒ 必需性の低いサービスに対する支出が減ることが見込まれた) ⇒ 梯二郎の事業の不透明性が一段と増した。 (節子) だったら、梯二郎としては東野との話し合いの余地はないわね。百子との付き合いは梯二郎の女性との付き合い方にあるにように単なる女道楽ではないんだから。でも、梯二郎は客観的に追い詰められていた状態だったにもかかわらず自信満々だったのね。というのは、人間の欲望の優先順位は「生命維持 ⇒ 安全保障 ⇒ 自己実現 ⇒ 社会統合への貢献」なんだから、「東野の膝に屈しないと、生き残れない」と思えば、女性との付き合い方は変わるはずだからよ。 あそこまで追い込まれていながら梯二郎が自信を失うことがなかったのはどうしてなのかしら? (高哉) 事業構想を打ち立てる ⇒ 事業を成立させるための戦略を立案する ⇒ 戦略発想に基づいて必要経営資源を巧みに調達する──、という図式が梯二郎の行動様式。そして、強烈な快楽追求意欲がこの行動様式を支えている。思いつきの正反対であるので誰も反対することができないほどのパワーがある。 だからこそ、大財閥・東日コンツェルンの総帥である赤松新平を口説き落として資本金の半分を引き受けさせて、日本最大のマンモス娯楽ビルの建設に成功した。しかも、不愉快な感情は一切受け入れない性格の持ち主。いいかえれば、プラス思考しかないような性格の持ち主。となれば、どんな事態になっても自信を失うはずがない。 (節子) そういう強気一点張りの梯二郎が日本最大のマンモス娯楽ビルのオープニング・パーティの後、「始まるまでは意気揚々だったけど、終わってみると逃げ場を失ったような気分だ」と中川京子に語ったのはどうしてなの? 弱気になる何かがあったんじゃないかしら? (高哉) 頼りにし、相応の報いをしてきた大垣から軽くあしらわれていることを認識させられ、「大垣を信用してこのまま突っ走っていいのだろうか。しかし、後には戻れない」という不安が脳裏を過ぎったからだと思う。 オープニング・パーティの主賓でありながら大幅に遅刻した上に挨拶もそこそこであった大垣の態度は事業を更に拡大させることを困難にしかねない、梯二郎のイメージ・ダウンに結びつく。そればかりではない。大垣の腹に一物があることを意味する。梯二郎を大きく育てたいのであれば、彼のイメージに配慮するはずだからね。大垣ほどの人物であればそういうことに抜かりはないと考えるのが普通だよ。 (節子) ということは、梯二郎は娯楽の百貨店の足固めに当面専念すべきだったのね。にもかかわらず、切った刀を返すが如くに海上カジノをメインテーマにする夢の歓楽境構想の実現に向けて走り出したのはどうしてなのかしら? (高哉) これまでの輝かしい実績で自信過剰になっている。その上、不愉快な感情は一切受け入れない。いいかえれば、プラス思考しかない。だからだよ。梯二郎のような性格は乗りこなす努力をしないと、「前進あるのみ」になってしまうのさ。
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