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(節子) 百子は激情に駆られると何をするか分からないところがあるわね。娯楽の百貨店のオープニング・パーティーで梯二郎にとって大事な招待客の一人に怒りに任せてビールをぶっ掛けたのがいい例よ。そうかと思うと、逆なこともある。 女として扱われることに凄く反発していた。にもかかわらず、バー「ボヌール」のマダム役を引き受け、女扱いをされても平気。客にお尻を撫ぜられても怒らないことにしたんだから。この矛盾はどう理解したらいいのかしら? ビジネス優先であることは分かっているんだけど、彼女の心中を解説してくれないかしら? (高哉) 自分の能力を否定されることに結びつく場合は女扱いされることに物凄く反発する。しかし、そうではなく自分の能力の肯定に結びつくのであれば、女扱いされることを我慢するんだと思う。客にお尻を撫でられる度に怒っていたらバー経営は失敗して一番嫌な無能感を味わなければならなくなるからね。 (節子) アイデンティティが場面場面で変わるところは百子の真骨頂。でも、アイデンティティが確立するまでは心の中が揺れ動くようね。洋裁店「ボヌール」の新装デザインを建築家の北沢に褒められて泣き出したくなった。しかし、ぐっと堪えた。こういう場面があったじゃないの。この場合における百子の心中を解説してくれないかしら? (高哉) 鋭敏だから感情に流される。しかし、アイデンティティが確立するまでは行動に移さない。アイデンティティが確立したら状況が変わらない限りそのアイデンティティに固執する。こういうことだと思う。彼女が感情に流されるのは心の中だけの場合と招待客の一人に怒りに任せてビールをぶっ掛けたようにアイデンティティが確立した結果である場合の二つがあるというわけさ。 (節子) 百子は気持ちの切り替えが容易にできる。いいかえれば、気持ちを引きずらず更新できる人。だから、梯二郎から借金をした上、男と女の関係になっても毅然としていることができる。こういうわけね。 百子はどんなに落ち込んでいてもパーテンや客の前ではそんな素振りは微塵も見せず快活に振舞っていたのも同じことである。こう理解してもいいんでしょ? (高哉) 結果としてはそういうことだけど、この結果の背景には二つの重要なことがあると思う。性格が幸いして「なんとしてでも成功したい」という想いが強い。これがひとつ。海馬が鍛えられているので胆力がある。したがって、ぐっと耐えることができる。これがもうひとつ。 (節子) 性格に振り回されないようにするだけではなく、性格を乗りこなすように鍛えなければならないということの教訓になるわね。百子は気を許していない時に限ってあどけない笑い方をするのはどうしてなのかしら? これも胆力のなせる業かしら? (高哉) 自分を取り巻く環境を敏感に洞察する ⇒ 自分の力不足を認識する ⇒ 「女の武器を使うしかない」と思う──、という図式の帰結だと思う。胆力がなければ、へなへなとなってこういう図式は実現できないけどね。 (節子) 百子は勝負師中の勝負師になることができているのは、前回の議論で説明したようにイノベーションのロジックが注入されやすいので、周囲の人々に感動を与えることができるし、本人の意思も強固になることができる。こういうことが原因していると理解していいのかしら? (高哉) まったくその通りだけど、ワタナベ式問題解決へのアプローチを巧く適用すれば、誰でも反発することなく聞く耳を持つことができてイノベーションのロジックの注入に成功できることを今日の議論で悟った。というのは、二つのことがクローズアップされたからだ。
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