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(節子) 百子は念願の躍進を手に入れることができた。しかしながら、美香と梯二郎との別れが代わりにやってきた。この二つの出来事は百子から挑戦精神を奪い取ることに結びつくことが懸念される。 信子が美香に寝取られた男と無理心中。このことを「あほや」といった美香を叩き出した百子は身体から大事なものが抜け出すように感じてしまった。こうなってしまったのは、美香が自分と似ているので育てようと思うほどだったはずだからよ。 そうでなければ、美香が家出をしてアパートの前で佇んでいたのを見て震えがきたにもかかわらず家の中に引き入れて同居を始めたりしないわよ。不吉な予感がしたから震えが来たはずなんだから。 梯二郎との別れも心に引っかかるものがある。 挫折した梯二郎の借金の申し入れが中川京子のためであることを知った百子はこれを断った。傘を差さずに歩いて去っていく梯二郎を百子は窓越しにじっと眺めていた。このシーンは凄く意味深い。梯二郎の挫折を伴う形で躍進を遂げた百子には空しさが残ったはずよ。 (高哉) 美香と梯二郎との別れに対する貴女の感想は当たっていそうだ。というのは、次の図式が百子を待ち受けることになるかもしれないからだ。 (自分と似ている美香を叩き出した ⇒ 自己否定感がひしひしと押し寄せてくる ⇒ 生きる勇気が失せていく想いに襲われる) + (梯二郎と交流できなくなる ⇒ 自分の才能を認めてくれる唯一の人物と接触できなくなる ⇒ 生きる勇気を与えてくれる有能感を味わうことができにくくなる) ⇒ 自己否定感が襲わないようにするために本能的にうつ状態になる。そして、この状態を放置すると、本物のうつ病になる。 どんな人間であっても自己否定されることは耐え難い。自己否定を受け入れることは生きることに絶望することに等しいからね。こうならないために、本能的にうつ病になることだってある。うつ病は生命維持本能の作動結果であることが多いようなんだ。 今言った「生きる勇気を与えてくれる有能感を味わうことができにくくなる」のことだけど、この背景には、「自分が大事にしている相手を惹きつけて今を最高に生きたい」という性格もある。 (節子) 美香と梯二郎を失ってしまうと、「自分が大事にしている相手を惹きつけて今を最高に生きたい」という性格からくる想いは実現しにくくなるわね。これは成し遂げた躍進の喜びを大幅に減らしてしまうほど大事なことである。このことを実世界の例で説明してくれないかしら? (高哉) 僕の体験が使えると思う。僕は請け負ったユニオン・シューズ・チェーンの形成を相良竜介著『日本の頭脳集団』で大きく取り上げられるほど成功させた。しかし、喜びよりも虚しさの方が大きかった。この背景には、ユニオン製靴の商品開発システムを再構築して“完成”させようとした。ところが、努力の成果を自分が創りあげた秩序にとことん拘る、オーナー社長である水口社長に潰されたことがある。 この時は僕の虚しさの原因を理論的に説明できなかった。しかし、性格診断できるようになった今は違う。僕にも「自分が大事にしている相手を惹きつけて今を最高に生きたい」という性格があるからだと説明できる。 (節子) 美香と梯二郎を失ってしまったことは百子の才能の源である三つの条件に少なからざる影響を与えるわね。そこに“持てる者の弱み”が加わるかもしれない。というのは、百子が美香を捜し出すために入った、不良の溜まり場でチンピラ学生に怖じつけづいたことがあったからよ。百子は次の図式の下に置かれたんだと思う。 チンピラ達は失うものがない ⇒ 向こう見ずになって自分に危害を加えるかもしれない ⇒ せっかく掴んだ今の立場を失うかもしれない ⇒ 「君子は危うきに近寄らず」の心理が働いた。 それまでの百子は失うものがなかったので、大胆な行動を採ることができた。ところが、この時の百子は洋裁店「ボヌール」の経営者になり、コレクションで名声を獲得できた。したがって、一大躍進が約束された立場になっていた。いいかえれば、失うものができていた。 元気の元である美香と梯二郎を失ってしまった。その上に、“失うもの”ができてしまったことは百子の才能の源である三つの条件に大きな影響を与えると考えてもおかしくない。となると、百子のひらめき力、ひいては臨機応変力も影を潜めてしまうんじゃないかしら? 織田信長を上司に仰ぎ、羽柴秀吉をライバルに持つようになってから持ち前の臨機応変力を失い、悲劇の道をまっしぐらに走るようになった明智光秀のような人は後を絶たないと思うの。様変わりした環境の下でも通用できるように臨機応変力を再構築する方法を教えてくれないかしら? (高哉) 強迫観念に駆られていると、「性格に振り回されることの悪影響が出る ⇒ 視野狭窄症や拘禁服着用症に罹る ⇒ 臨機応変力を失う」という図式にはまってしまうのが普通。ところが、百子は「叔父夫婦になんとしてでも復讐したい」という強迫観念を持っていた。にもかかわらず臨機応変力を失わなかったために躍進を遂げることができた。こうなったのはどうしてなのかを考える必要がある。 (節子) 「ビッグになって叔父夫婦が住んでいる土地家屋を買い取って彼らを追い出したい」という挑戦目標があった。このことがフィードバック回路を円滑に作動させて、試行錯誤的な体験を糧にすることができたからよね。 そうか、分かった。「よしこれだ。なんとしてでもやり遂げよう!」と再びなれるように人生目標を作り直すことに成功すれば、様変わりした環境でも臨機応変力を持つことができるようになるというわけね。 (高哉) その通りだよ。そういう意味で、個性的才能を引き出す性格診断を前提に行う未来進行形の自己物語創造があるわけだけど、視野の拡大と問題意識の強化を適切に行うことを忘れてはならない。 さもないと、間違った方向で臨機応変力を持つことになってしまう。(参考資料 ⇒ 『洞察力はやり方次第で短期間に身につくものです』) (節子) 「自分が大事にしている相手を惹きつけて今を最高に生きたい」という価値観の持ち主である百子は元気の元である美香と良き理解者である梯二郎のような存在がなくても大丈夫なのかしら? (高哉) 大事なことをうっかり忘れるところだった。美香や梯二郎のような人間が身近にいないと、次の図式に陥ってしまう可能性が大きい。 空虚感に襲われる ⇒ (集中力がなくなる ⇒ 創作力が萎えてしまう) or (空虚感を埋めるために不純異性交遊等の逸脱行為に走る ⇒ 創作が疎かになってしまう) ⇒ 折角得た地位から滑り落ちてしまう。 溢れるばかりの才能を持っている。しかし、非常に気難しい。こういう百子と似ている。あるいはこういう百子を本当に理解できる人間と密接な関係を持つことができて初めて彼女のような人間は才能を発揮できることを忘れてはならないだろうね。
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