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【斬新な着眼】



→ぬかりない行動が複雑時代を生き抜きたい個人・組織に要求される。この認識が米国の新戦略理解の第二歩である──「イラク問題」「北朝鮮問題」「東電等の不祥事問題」「政治の劇場化現象」の一体化から考える(3)

 「世界全体のことを考えて行動しなければならない」「創造的な問題解決能力が要求される」「不確実性が高くても先手を取って断行せざるを得ないことがある」「見返りがなければ危険に見合う行動を採らない」「仕組みで世界の安定化を図らざるを得ない」──、アメリカにはこの五つが要求されています。

 責任ある子沢山の母親のあるべき行動を念頭に置きつつ、この五つを噛み締めるように理解しますと、積極派ビジネス・パーソンはあるべき行動指針を必ず学べることでしょう。

 筆者の母は実家のある沼津から末弟がいる那須に引っ越しました。彼女は知的好奇心旺盛ですが、91歳という高齢から来る難聴のために補聴器を使っても電話での会話ができません。そこで、筆者は彼女にメールを送り続けています。以下の文章は、このメールのひとつをほぼそのまま転用したものです。その方が分かりやすい、と判断したからです。



 「でも私こんなに長生きしたらあきられちゃうよぅ・・・」というお母さんの言葉がホームページに載っていましたが、そんな心配はまったく無用です。なぜなら、お母さんは知的好奇心が旺盛だからキャッチボールのような会話が成立する。何事も真心がこもっているので、相手にお母さんのためになんとかしてあげたい、と思わせる──、こういう二つのことがあるからです。

 お母さんが知的好奇心旺盛であり続けるためには、「ほおーっ」「なるほど」...と思えるような形で新しい知識をどんどん吸収することです。この面でのお手伝いを私なりにこれからもさせて頂きます。

 このメールの前の前の「お母さん、アメリカのこと、他人のことがよく理解できるようになるお話です」….はいかがでしたか? 人も国も樹木の節のような取り除きようがない癖がある。この癖が我慢できないのであれば、交際しないようにしなければならないが、アメリカはそうはいかない。となれば、この癖を見抜いてうまく付き合わなくてはならない──、という結論に達したのではないか、と思います。

子沢山の母親はやりがいのある苦労をしなければならない。同じようなことがアメリカにも言えるかもしれない

 でも、アメリカの建国の歴史が生み出した癖を知っただけでは駄目です。お母さんのこれまでの人生を思い起こしてください。独身の時と5人の子供を持った時とではお母さんの行動様式は否応なく変わったはずです。

 5人の子供夫々に気配りをしなければならない。子供の間でいざこざが生じたら調停をしなければならない。子供の将来のために家計のやりくりをしなければならない──、このような責任が加わるからです。そして、この責任遂行は親自身のためでもあります。親の責任を放棄したり、いい加減であったりしますと、良心の呵責に耐えかねて心身が蝕まれてしまうからです。

 親の責任を放棄して平気な人が最近増えているようですが、この背景には「かくかくしかじかの人生を送りたい(送らなければならない)」….というものがないにもかかわらず、自由が与えられたことがあります。こういう人は気楽なように思われますが、死を迎える時に必ず報いを受けます。

 なぜなら、人は死期が近づくと、人生の総決算をして、悔いが多いことに改めて気づきますと、死を恐れてパニックのような状態に陥りやすくなるからです──、このことを私は看病を通じて故・洋子ととことん付き合って知ることができたのです。

 お母さんを理解するためには、生まれながらの、そして生き様によって強化された性格だけではなく、逃げようがなくできあがった社会的立場(5人の子供を持ったという立場)の影響を認識しなければなりません。

 同じことがアメリカについても言えるのです。なぜなら、アメリカは他国に対して親のような愛情を持っていないにしても、大切な商売相手が世界中に広がっている(世界中に利害が広がっている)からです。

グローバリゼーション時代においてダントツの超大国の地位を保つためには、5種類の行動が要求される

 アメリカの逃げようがなくできあがった社会的立場とは一体何だと思いますか?

 他国に追従する形では利益の拡大・維持並びに害悪の除去はできにくい──、こういうことでは世界ダントツの国。これがアメリカの社会的な立場である、と理解する必要があります。

 こういう立場はどんな影響を持ち込むのでしょうか? 主だった影響としては五つある、と私は理解しています。

(超大国化の影響1) 世界全体のことを考えて行動しなければならない

 独身の時は自分のことだけを考えることができた。ところが、5人の子供の親になると、そうはいかなくなる──、このように変化したお母さんに似た立場にアメリカは立たされているのです。管理職、更には社長になると平社員と同じような思考と行動は一切許されなくなるのも同じことです。

 アメリカはアフガニスタン攻撃の準備以来中央アジアに軍隊を駐留し続けることになった。世界中に石油を潤滑に供給できるようにする──、こういったことが「世界全体のことを考えて行動しなければならない」の例です。

 イスラム過激派のコントロール ⇒ アメリカを攻撃するテロの抑制 + テロに悩まされているロシア、中国、インドの3ヶ国のコントロール…が背景にあるのです。対米追従の姿勢をとり続けている日本には考えられない行動です。

 カスピ海には確定で300億バーレル、推定で3000億バーレル…と言われている物凄い量の石油が埋蔵されており、この石油を全世界に供給するためにはテロの存在が邪魔になります。なぜなら、建設が計画されている複数ルートの長い長いパイプラインはテロの容易な攻撃目標になるからです。そして、イラクのフセイン大統領はテロを支援している可能性が大です。

 こういうこともあって、アメリカはイラクを攻撃しようとしているのです。石油輸入を経済行為としてしか考えていない日本にはこれも考えられないことです。

(超大国化の影響2) 創造的な問題解決能力が要求される

 5人の子供はお母さんにとって同じように大切な存在です。だから、できるだけ平等に...ということを心がけてきたはずです。でも、お金が足りなければ、平等主義にも限界があります。戦後の混乱期の我が家がそういう状態でした。その上、我が家には多額の借金がありました。そこで、我が家は二つのことを並行させることになりました。


 ひとつは、人件費も餌代も要らない家族労働を使って所得と家族の栄養源確保のための養鶏等の小規模畜産業。もうひとつは、お父さんが所得を得ながら公認会計士の資格を取るための上京でした──、鮮やかな創造的な問題解決策をお母さんはお父さんと一緒になって考え出して、五人の子供を持つ親の責任を果たしたのです。見事に複雑な問題を解決したのです。
 
 複雑な問題を抱えがちなのはアメリカも同じです。イラク問題が複雑問題の良い例です。なぜなら、アメリカは二つの状態に挟み込まれているからです。

 イラクの大量破壊兵器の第一の標的はアメリカ。このイラクが間もなく核兵器を持つようになる。アメリカは経済に陰りが出始めてきた。したがって、アメリカはイラク攻撃を急がなくはならない。ところが、世界の圧倒的多数の国がアメリカのイラク攻撃に反対している──、これがひとつの状態Aです。

 一方、9.11事件の首謀者とされているオサマ・ビン・ラディン氏は「テロ攻撃によってカシミール紛争を激化させる ⇒ インド・パキスタン戦争を勃発させる ⇒ 軍事力が劣るパキスタンが負ける ⇒ 親米のムシャラク政権が崩壊する ⇒ アメリカのアフガニスタン等の中央アジア支配力が弱体化する ⇒ テロ勢力が強化され、アメリカを攻撃しやすくなる」…いう陰謀を巡らせているようです──、これがもうひとつの状態Bです。

 少なくとも、状態Aに対してアメリカは適切な対策を講じることに成功しつつあります。なぜなら、次のシナリオが実現されつつあるからです。

 ブッシュ大統領はアメリカ議会と同盟国に相談なくイラク攻撃を宣言した ⇒ 国内外の世論は内容ではなく攻撃の是非論一色になった ⇒ アメリカ議会並びに国連との協議に転換した ⇒ イラクには疑惑があることは周知の事実であるので、「反対」ばかりを唱えることができなくなった ⇒ アメリカ当局は一対一の裏交渉をしやすくなった。

 (ドイツの現政権が「イラク攻撃断固反対」を唱えて選挙に勝ったことが示すように、状況判断力が不足している普通の人は誰しもがイラク攻撃に反対。だから、世界主要各国の首脳が表面的に反対を唱えているのです)

 英米連合がイラク疑惑の証拠を小出しにしかしていないのも複雑な問題を解決するための知恵である、と考えられます。なぜなら、「証拠がないのに…」という一色に国際世論を塗りつぶす(証拠があれば攻撃を是認せざるを得なくなる)──、こういう狙いがありそうだからです。


(超大国化の影響3) 不確実性が高くても先手を取って断行せざるを得ないことがある

 一歩先は暗闇。だからといって分かってからでは遅い。となると、いざという時に備えて買いたいものを我慢して貯金をしておく。母親の責任を全うするために子供個々の意見を無視する──、こういうことがお母さんにもあったはずです。

 アメリカは「疑わしくは取り除く」、他の多くの国は「きちっとした証拠を掴むことが先である」──、イラクに対する態度がこのように異なるのも同じことなのです。アメリカのこのような行動に対して主要国から少なくとも妨害がないようにするために、上記の状況Aに対する対策が着々と進んでいるのです。

 このように言うと、「威厳に満ちているよりも話合いができる親であることが求められている。企業の上司と部下の関係だってそういう方向に向かわざるを得なくなりつつある。そして、これは国と国の間についても同じこと。アメリカはこのことをどう思っているのか?」 ── こういう疑問が生まれるかもしれません。そこで、この点について釈明させて頂きます。

 重大な異常事態が発生した時に、関係者といちいち相談していたのでは間に合いません。だから、指導者(国)には一見独断専行的な断行が必要不可欠です。子供の命が危ない時のことを考えてくだされば、このことが良くお分かりになるはずです。でも、民主的な関係づくりは必要不可欠です。そこで、二つの工夫が必要になります。

 関係者全員が日頃から情報・知識の共有化努力をする。(その意味で、引きこもりや親子断絶…といった最近の傾向は是正が必要です) これが必要な工夫のひとつです。

 指導者(国)以外の関係者も重大事態について短時間で決断できるように日頃から訓練しておく。これが必要な工夫のもうひとつです。 ── ということは、関係者は大事な問題についてはお互いに徹底的な議論をすることが必要である、と結論づけることができます。

 この二つの工夫を凝らせば、「国内と違って、国外の少数意見は圧殺しがちである」…というアメリカに対する批判はなくなることでしょう。但し、アメリカのみが圧倒的な力を持っているのは健全ではありません。
 
 なぜなら、企業経営の世界でも、ワンマン経営者の下ではイエスマンだけがはびこり、経営を健全にするためのチェック&バランス機能が働かなくなることが多いからです。無視できない反対勢力があって始めて人は安心して社長に異議を唱えることができるものなのです。

 このアメリカに対するチェック&バランス機能は極めて大事なことですので、機会を改めてこの問題の創造的解決策についての私の考えを説明します。

 イラク問題でのアメリカのやり方の是非は「アメリカに遠慮することなく徹底的な議論をどうしたらできるようになるか」…を踏まえて論じなければならないでしょう。そういう意味で日本のマスコミは大いに反省しなければなりません──、お母さん、こういう視点でテレビや新聞を見てくださいね。

(超大国化の影響4) 見返りがなければ危険に見合う行動を採らない

 藪の中を歩くことを考えてください。先頭を歩く者は蛇にいきなり噛まれるかもしれません。薮蛇の危険があるのです。一方、後を歩く者は楽なものです。

 私も空家になった沼津の家の草取りをした時、汗だくになったので、途中から上半身裸になって高く生い茂る草むらの中に入ってしまったために、薮蛇ではなく、藪虫に襲われてしまったのです。峠を越しましたが、激しい痒みと痛みを伴う湿疹が腹・胸・両腕に広く広がり、間欠的な夜の睡眠を余儀なくされ続けているのです。

 紛争に巻き込まれるのも同じことです。戦争ですから無傷ではすみません。それどころか、ベトナム戦争が示したように、物心両面で国の力を衰弱させかねません。アメリカが平定後の石油利権を担保にしてイラク攻撃を考えているのは当たり前のことなのです。

 話は変わりますが、鳩山代表が3選された民主党はみっともないほどのまとまりのなさです。原因は色々ありますが、議員達が似たようなタイプが多く、目先のポストのことでキョロキョロしてばかりであることも無視できません。同じことが日本のビジネス・パーソンにも言えそうです。どうしてこうなってしまうのでしょうか?

 しっかりした個人のビジョンと実現策がない。となると、目先の利益を追うしかない….からなのでしょう。私は30歳の時、請負の仕事をしましたが、このチャンスを与えてくれた企業のオーナー社長から私の行動指針になった、次のような言葉を貰いました。

 目先の利益よりも掲げた目標に近づくことが大事。でも、倒産してはなんにもならない。したがって、そこそこの利益を上げつつ、長期目標を目指すのが企業経営なのだ。

 そうです。上記した目先利益重視主義から脱却する最善策は、各人・各企業が「ビジョンと実現策」を適切に策定することなのです。

 私の専門(余人の追従を許さないと自負している得意技)が「ビジョンと実現策」を含む創造的問題解決のシナリオ策定になっているのは、上記オーナー社長の言葉を聞いた時、熱いものがこみあげてきて、「よしこれだ」…と固い決意をしたからなのです。

 仕事を重ねるにつれて問題がどんどん複雑な様相を帯びるようになっていくことを認識して、「創造的問題解決策の策定のためには総合的見地が必要不可欠になる」…と思うようになりました。だから、世界動向の洞察・狭い意味の交渉・事業戦略の一体化を心がけることになり、知人達の理解が得られない、危険な挑戦人生を送り続けることになっているのです。 

(超大国化の影響5) 仕組みで世界の安定化を図らざるを得ない。

 長女7歳、長男5歳、次男2歳、四男0歳...と揃ったわけですから、台湾時代のお母さんの子育ては大変だったと思います。子供一人一人に全力投球していたら時間がいくらあっても足りません。工夫が必要になります。私が現地人の女中さんにほとんど任されっぱなしだったのは自然の成り行きもあったかもしれませんが、お母さんの工夫のひとつだったのでしょう。

 親会社が数多くの子会社の株の過半数を握る。子会社が数多くの孫会社の株の過半数を握る──、ことによって一大企業集団の運営を行うことも同じことなのです。

 世界中に利害関係が広がっているアメリカも同じことが言えるのです。一番厄介なのは石油の宝庫である中近東のアラブ諸国との付き合い方です。なぜなら、このアラブ諸国は国境線は不自然な形で敷かれているために紛争が起きやすいからです。

 アラブ世界がまとまると怖いので、「各国に異質集団を内蔵させる ⇒ 各国がまとまりにくい ⇒ アラブが一体化することは考えられない」…という図式を実現できるように欧米が一方的に国境線を敷いてしまったのです。

 そこで採った手段はアメリカが中心となって先進国が王政や独裁者を支えることだったのです。国民の教育レベルが高くなければ、国内に内蔵された異質集団をまとめるには権威主義が一番効果があるからです。お母さんだって、「お母さんに向かってなんてことを言うの」「お父さんがこう言っていました」…といった具合に、子供を言い聞かせるのに権威主義を使ったでしょう?

 以上の説明により、「アメリカって子沢山の私の子育てのやりがいのあった苦労と似たところがあるのね」と思われたでしょうか? お母さんがそういう目でアメリカの動きを追ってくだされば、私としては大変嬉しいです。

 「(影響2) 創造的な問題解決能力が要求される」の箇所で述べた状況Bのこともありますので、「どんな環境変化がどんな指導国を必要としているか」等についてのお話を次回のメールでさせて頂きます。

(前号に戻る) (次号に続く)
                



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