[TRI] Total Renovation Institute Clear GIF 新創業研究所
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渡辺高哉はこんな人物 | E-mail

【斬新な着眼】



→May I help you ?…を人類全体が言い合わなくてはならない。この認識が米国の新戦略理解の締めくくりである──「イラク問題」「北朝鮮問題」「東電等の不祥事問題」「政治の劇場化現象」の一体化から考える(4)

 社会を構成する人々の相互依存を拡充する──、これが雇用機会を限りなく拡大する一番よい方法です。なぜなら、「相互依存の拡充⇒自前主義の削減+自分ならではのことに専念したい本能⇒アウトソーシング(外注)ニーズの拡大」…という図式があるからです。

 しかしながら、上記の図式の実現は容易ではありません。なぜなら、信頼関係が確立されていて始めて相互依存が拡充できるからです。相互依存の拡充のためには社会を構成する人々の考え方を変えなければならないのです。

 ところが、この難しいことの実現にとってフォローの風が吹き始めました。人々の考え方を変えるのに必要な大きな環境変化が発生しつつあるからです。この環境変化の影響の大きさは産業革命以来のものかもしれません。

 筆者の母は実家のある沼津から末弟がいる那須に引っ越しました。彼女は知的好奇心旺盛ですが、91歳という高齢から来る難聴のために補聴器を使っても電話での会話ができません。そこで、筆者は彼女にメールを送り続けています。以下の文章は、このメールのひとつをほぼそのまま転用したものです。その方が分かりやすい、と判断したからです。



 アメリカの特殊な歴史、超大国になった立場──、この二つを認識して、「アメリカがイラクを攻撃しようとしているのにも一理があるのね」…とお母さんは思われたことでしょう。問題はイラクのフセイン政権を打倒した後どうするかです。なぜなら、打倒し放しですと、二つのことが起こりかねないからです。

イスラム教の信者達のアメリカに対する反感が強まり、テロ組織が世界中に拡散し
かねない。

 イスラエルのシャロン政権のパレスチナに対する強硬姿勢にアメリカのイラク攻撃が加わりますと、イスラムの民衆は「反イスラム軍事行動の全面展開が始まった」…と誤解して、潜在している「ユダヤ・キリスト教勢力対イスラム勢力の反目」に火がつきかねないのです。

世界各国が軍備拡大競争に走りがちになり、世界平和が著しく損なわれかねない

 ロシアをも含めてアジアには軍事拡大競争が潜在しています。なぜなら、中国の「経済的躍進⇒軍事力拡大」…という図式が実現されつつあるからです。したがって、アメリカのイラク攻撃はこの潜在しているエネルギーに火をつけることになりかねないのです。

 上記したようなことがイラク攻撃の後で発生しないようにするためにはどうしたら良いのでしょうか?

大きな環境変化に襲われる時こそ、生活や仕事のあり方を抜本的に見直しさせる絶好のチャンスである

 結論から先に言いますと、世界が抱える大きな問題解決に結びつけるような大構想を打ち立てて、その中にイラク攻撃並びにその後始末の仕方を位置づけることをしなければなりません。そうすれば、「肉を切らせて骨を切ったんだな」…ということで世界の納得が得られるだろうからです。

 但し、上記の問題解決策は、「大きなチャンスやピンチを伴う環境変化が発生した。あるいは発生しつつあるチャンスをものにし、ピンチを回避するための方策を策定する」…といったようなものでなくてはなりません。
 
 なぜなら、人ができ上がった生活や仕事のリズムを崩すことを許容する。いいかえれば、生活や仕事のあり方を再構築しよう…と思うようになるのは、二つのいずれかの場合だけなのがほとんどだからです。
 
生活破綻の危機に瀕する等によって築き上げた基盤が崩れそうな場合(恒常性の維持本能が強く刺激される場合)

事情が変わって自分の能力にスポットライトが当たる可能性が出てきた場合(生存の拡大本能が強く刺激される場合)

 独りでの生活が困難にならなければ、長年住み慣れた沼津の家がお母さんにとって一番である──、これと同じように、人は何事もなければ生活や仕事のリズムを変えたがらないのです。

 環境変化はでき上がった既成勢力の力をあっという間に奪ってしまうこともあります。ひとつだけ例を挙げましょう。

 真空管ラジオ全盛時代のラジオ商の必要不可欠な要件はラジオの修理技術でした。なぜなら、真空管ラジオには、「かさばる⇒配送が容易ではない⇒メーカーに配送して修理すると極めて高くつく」…という宿命がついて回っていたからです。したがって、ラジオ商の立場は磐石でした。
 
 ところが、トランジスタラジオの登場により事情が一変してしまいました。なぜなら、「小型であるので配送が容易である⇒メーカーの修理センターで修理される」…となってしまったからです──、このことは生き抜くことを願うのであれば、環境変化への変身的な適応が必要になることを意味します。
 
 以上の説明からお分かり頂けましたように、アメリカが他国の協力を得つつ世界システムを再構築したい。こういうことを願うのであれば、世界的に大きな環境変化の時をおいて他にないのです。
 
 飲み水場に連れて行った馬に水を飲ませるためには、馬に水を飲みたい…と思わせなければ駄目である──、という諺を肝に銘じなければならないのです。

 アメリカが大構想を打ち立てて世界各国の協力を引き出すことを容易にする、大きな環境変化としてどんなものがあるでしょうか?

 地球環境問題よりも人類に直接的な影響があるものを選びますと、大きく分けて三つあるのではないか、と私は思っています。

(人類共通の大きな環境変化1) デフレの種が先進国に幅広く奥深く撒かれてしまっている

 日本銀行は保有している金の範囲内でしか現金を刷れない時代がありました。この金本位制が採用されていた時代は景気の拡大に歯止めがかからざるを得ませんでした。逆にどんどん悪化する景気に対して手の打ちようがありませんでした。

 ところが、お母さんが結婚する前後の昭和初期の大恐慌を契機にこの金本位制が廃止され、日本銀行はその気になれば、いくらでも現金を刷ることができるようになりました。景気はいくらでも拡大できるようになったのです。だからといって、経済成長を続けることができるわけではありません。壁が色々あるのです。

 すぐに悲観してしまうのが人間。そこで、国がお金を払って公共事業をやったりする財政拡大がしばしば行われるようになりました。

 お金を貸すのが銀行の役割ですが、貸した相手が潰れてしまうかもしれません。こういう不安がありますと、貸し渋りが発生して景気が拡大できなくなってしまいます。そこで、借金を株のようにして売買する。つまり、銀行融資の証券化による危険分散…という方法が考え出されました。

 でも、借り手に覇気がなければどうしようもありません。そこで、経営幹部に勤務先の株を安く手に入れさせ、株の値上がり分がそっくり利益になるような方法が考え出されました。

 不景気の抑制、景気の拡大のための方策が次から次へと導入されたのです。そうです。需要を限りなく拡大するための万策が講じられてきたのです。

 こういう場合でも、個性的需要対応型の製品生産が行われるとか、製品供給力が限られているとかであれば、企業収益は上がります。

 ところが、そうではありませんでした。機械を使って手作りの製品を大量生産するのが多くの企業の基本スタイルである上に、新興工業国が排出されたからです。かくして世界的な過当競争が展開されることになりました。
 
 そうしたところに登場したのが、コンピューターやインターネットの普及です。個性的需要に自動的に対応できる…等の可能性があるために、企業収益向上の期待が持たれ、将来利益を見込んでアメリカを中心に株が大きく値上がりしまた。

 ところが、消費者が「割高でもいいからどうしてもこれが欲しい」…と思えるような製品が少なかったために、情報革命は消費者の方に有利に働き、企業の過当競争は一段と激しくなりました。

 消費者の情報収集力が飛躍的に強化される中にあって、産業界は需要を大きく上回る形で産業界はほぼ一直線での生産能力を拡大し続けてきてしまったのです。したがって、アメリカですら、企業収益は長期低下傾向を示しているのです。

 庭を使って行った我が家の養鶏業は食料不足の時代だったから生計を助けることに結びついた──、このことをお考え頂ければ、上記の理屈に納得できるものと思います。

(人類共通の大きな環境変化2) 世界同時不況の種が幅広く奥深く撒かれてしまっている

 国内の景気が悪い時は輸出で稼ぎ、雇用を安定させることができる。逆の時は逆のことができる──、世界の自由貿易にはこのような効用がある、と言われてきました。ところが、そうではなくなってしまったのです。世界経済の一体化はどこもそこも不況一色…ということに結びつきそうになっているのです。主な理由は三つあります。

(理由1) 同一企業グループ内での国際分業が進んだ

 製品のデザインはA国、この部品生産はB国、あの部品生産はC国、部品の組み立てはD国…といったような国際分業が当たり前になり、世界経済は一本化されてしまったのです。となれば、不景気は連鎖反応せざるを得ません。

(理由2) 外国にある子会社の業績が本社の利益を大きく左右するようになった

 アメリカ国内のヨーロッパ系企業のアメリカ国内販売はヨーロッパからアメリカへの輸出の4倍以上…といったように、他国に工場進出する企業が増えました。となりますと、アメリカが不景気になると、その分ヨーロッパに本社がある企業の収益は落ち込むことになる──、といった具合に他国の経済動向は自国経済に直接大きな影響を与えるようになってしまったのです。

(理由3) 株の相場は世界一体的に動くようになった

 外国企業の株を持つ人が増えました。いいかえれば、世界の証券市場の一本化が進みました。したがって、世界同時株安…となっても不思議はないのです。

(人類共通の大きな環境変化3) 不景気の時には公共事業を拡大したり、金利を引き下げたりする政策を採用できなくなってきた

 一つ目の橋は物凄く便利に感じた。ところが、すぐ近くの二つ目はそれほどでもない──、このことから明らかなように、総需要拡大のために国が行ってきた公共事業の経済効果はどんどん減ってしまいました。自動車がほとんど通らない道路のようにお金の無駄遣いになってしまったのです。
 
 (世界主要国の最近20年とその前の20年と比較して上記のことを証明したデータがあるとのことです)

 公共事業の経済効果が薄れてしまったのは上記したことだけが原因しているのではありません。世界各国の経済が開放されるにつれて、「特定国が突出した公共事業を行う⇒外国産業からの輸入に向けられてしまう度合いが大きくなる」…ということも原因になっているのです。

 だからといって、金利をいじっても駄目です。金利引下げの余地がないから…というだけではありません。市場に根強い需要が秘められていない──、このことの方が大きいのです。「金利が下がったので買うなら今だ」…というようなことが可能であって始めて金利の引き下げが効果を持つのです。

 「アメリカは大丈夫でしょう?」と思われるかもしれませんが、これも駄目なようです。なぜなら、株式市場のバブル、住宅市場のバブル…という二重の資産効果によって消費が目一杯行われてしまったからです。
 
 アメリカの民間部門は既に預金はなくなり、借金状態になっているのです。株式や住宅が値上がりしてくれれば、借金が実質的に減りますが、産業界の実態等のことを考えますと、このようなことは期待薄なのです。


 「1」「2」「3」の私の説明は、現状路線を歩む限り、世界経済の前途には悲惨な状態が待ち受けている...という言葉に置き換えることができます。

世界中の人々が May I help you ?…と言い合えるようにする──、これが三つの大きな環境変化への一番の適応策である

 日本再生のためには、人々の関係は「もたれあい」から「自立と自律」への転換が必要不可欠である──、こういうことがよく言われます。だからといって、社会構成員がお互いに無関心でよい、というわけではありません。むしろ、社会構成員の相互依存の度合いを拡充させることが必要な時代がやってきた、と言わなくてはなりません。

 但し、相互依存の拡充にも二つあることに留意する必要があります。

自助努力のない“おんぶに抱っこ”的なもの

「こういうことをしたい。しかし、こういうことが自分には不足しているので助けて欲しい」…ということを言い合ってお互いに補完関係に入るもの

 上記@の人間関係は長続きしないし、仮に長続きするとしても、社会的に有益なプラスアルファは生まれません。そうならないためには、「もたれあい」から「自立と自律」への転換が必要なのです。つまり、Aの人間関係が必要なのです。そして、Aの人間関係の輪を世界中に広げることが焦眉の急になりました。主な理由は二つあります。

(理由1) 相互干渉が必要になってきた

 アメリカ経済が風邪を引くと、他国は肺炎になりかねない。日本のみが大幅に金利を引き上げると、「アメリカにお金が行かなくなる⇒米ドルの価値が下がる⇒アメリカから他国への輸出が拡大する⇒他国の失業率が一段と悪化する」…という負の連鎖反応が発生しかねない──、世界経済はこのようにも一本化が進んだのです。

 だから、各国は主権国家でありながら他国の干渉を受けながら自国の経済政策を決めるようになっているのです。そして、このような国家間の相互干渉は経済面だけではなく、その他の面でも必要になっています。地球環境問題等が良い例です。

 中国の工業開発には目覚しいものがあります。これ自体は喜ばしいことですが、石炭が中心的な燃料になっているために、裏日本は深刻な影響を受けているのです。なぜなら、中国本土から元々舞い上がっている黄砂にこの煤煙が混じったものが裏日本に雨と一緒に落ちてきて、人の健康を著しく損なうようになっているからです。

 以上の説明を読んで、「相互干渉が必要なのは国家間であって、個人間ではない」…と言ってはなりません。なぜなら、国家は個人の集合体だからです。北朝鮮の拉致問題が物語っているように、国民世論が政治を動かす時代になりましたので、なおさらのことです。ある国の横暴さが目に余るようだったら、その国の世論に効果的に訴えることができる時代がやってきたのです。但し、このようなことができるのは民主国家だけですが。

(理由2) ニュービジネス、ひいては多様な要素から成り立つ大型の新規事業の開発が必要になった

 
現在の産業界の担いが長い間置かれてき経営環境の特徴は大きく分けて二つあります。

 鉄鉱石を原料とする製鉄業を始めると、石炭化学の事業化が可能になる。航空エンジンを収めると、遠隔操作による航空のメンテナンス事業が可能になる…といったようなアメーバーのような事業展開が可能であった。これがひとつです。アメリカに特に言えることですが、短期利益志向の株価を意識した経営を行わなければならなかった。これがもうひとつです。

 かくして、似たような事業を行う企業がひしめき合うようになりました。このようなデフレの必然性を内蔵した状態から脱するためには、「歴史眼を持つ⇒断章取義を行って、超ハイブリッドな製品・サービスを開発する」…というような事業展開が急がれるのです。


 人類共通の大きな環境変化1・2・3の私の説明は、現状路線を歩む限り、世界経済の前途には悲惨な状態が待ち受けている…という言葉に置き換えることができます──、と前述しましたが、打開策はないのでしょうか? あります。所得を生み出す雇用を創出すればよいのです。だからといって、職業安定所や人材銀行任せでは駄目です。

 なぜなら、雇用を本格的に創出するためには、二つの作業を行い、その結果をすり合わせることが必要だからです。
 
過去の延長線上を歩むことしか考えていない企業のあり方を転換させる⇒異質の能力が必要になる⇒新しい雇用需要が生まれる。
 
仕事を探している人の才能分析をする⇒市場性のある才能を再発見する。あるいは才能開発の方向を設定する。

 潜在需要と潜在能力の発掘を並行的に行って始めて日本再生に結びつく形で本格的に雇用の創造が実現できるのです。企業も個人もその将来は志次第。ところが、当事者はあるべき志を知らないことが殆どですので、このやり方は大きな効果をもたらすこと間違いなし…と言い切ることができます。

 但し、潜在需要と潜在能力の発掘は高度の能力を必要としますので、ごくごく限られた人しか行うことができません。したがって、プロフェッショナルが相談相手を自分で探していたのでは「日暮れて道遠し」となってしまいます。それではどうしたらよいでしょうか?

 世界中の人々が「私でお役に立てることがありましたらなんなりと申し出てください(May I help you?)」…と言い合えるような世界システムを創り上げることです。

 信頼関係のある人間関係の輪が広がりますと、次のようなことが実現できるようになるのです。

   「貯金も底をつきかけてきた。このままでは一家心中するしかない」
 
   「私にできることがあったらなんなりとおっしゃってください」
 
   「貴方が毎日行っている犬の散歩を代行させてください。そして、代行料を私に払ってください」
 
「承知しました。私のような人を他にも沢山知っていますから、紹介しましょう。そうすれば、貴方は犬の散歩代行の総元締めになれる。そうしたら、しっかりした職業になることでしょう」

 少なくともこのようなニュービジネス創出を可能にする、「May I help you?」…と言い合えるような世界システムの創り上げ方を次回以降のメールで説明させて頂きます。

 なお、世界システム再構築の到達目標は、脱「アメーバー的な事業展開」を可能にするものでなければなりません。なぜなら、先進国産業界の大勢が工業化社会の慣性の呪縛から脱することができていない──、これが三つの大きな環境変化の根源にある、と私は判断しているからです。


(前号に戻る) (次号に続く)
                




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