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【斬新な着眼】



→中小企業の大企業迎撃作戦のあり方(その2) ― インターネット小売業の雄である、AmazonとeBayの戦いに学ぶ〈1999/7/16〉

 eBayが開発してきた市場にAmazonが攻め入ってきた。相手は経営基盤のしっかりした大企業。eBayはどのように迎え撃つべきか。eBayが事業戦略を適切に策定する大前提は、Amazonの事業展開の可能性と限界性を読みきるための、Amazonの行動力学の解明である。これが前号の要旨。

 Amazonは理論的には日常的に消費される生活必需品の市場を席捲できる。なぜなら、次のことが指摘できるからだ。

 消費者は商品を熟知しているので、比較購買したり、感覚機能で確認してから購買する必要性はほとんどない。したがって、低価格、かつ必要なときに直ちに消費者の手に入ることを保障できることが、この種商品小売業の成功の鍵である。

 上記「低価格」を実現できることにおいて、店舗販売している小売業は無店舗販売している小売業にとても敵わない。Amazonと同程度の売上規模であるB&Nは235店舗を有しているが、そのために投資した金額は約472万ドル。一方、Amazonの固定投資はコンピューターなどであって、その金額は僅か56万ドル。このようになっているのが何よりの証拠である。

 でも、Amazonが消費者の求めるものを適量に仕入れることができなければ、上記「コスト上の有利さ」は理論倒れとなってしまう。在庫不足は機会損失に、過剰在庫はコストアップに結びつくからだ。

 そこで、Amazonが開発したのがone-click-order-system。消費者がクレジットカードを使って自動決済するが故にできる、顧客別の販売実績の蓄積データを使って、顧客別の次の購買行動を適切に予測し、その結果に基づいて仕入れを行なえるようになっているのだ。

 だからといって、Amazonのようなインターネット小売業が日常的に消費される生活必需品の市場を席捲できるというわけにはいかない。なぜなら、消費者はインターネット小売業に対して、「期日までに果たしてきちんと配達してくれるであろうか」という不安を抱きがちであり、これが販売をうなぎ上りに伸ばす壁となっているからだ。

 そこで、Amazonはクイック・デリバリー体制を確立するために、世界中にデリバリー・センターを確立することとなった。AmazonがeBayの牙城である、競売で価格を決める分野に進出したのは、このことと大いに関係すると言えそうなのだ。理由は次の通り。

 世界中にクイック・デリバリー・センターを確立することは二つの事業リスクを負うことを意味する。ひとつは損益分岐点の大幅上昇がもたらすもの。(このリスクは既に発生し、同社は赤字決算となってしまった)

デリバリー・センターへの投資を売上増に結びつけようとして増やした在庫が不良在庫になりかねない。これが第二の事業リスクである。この第二の事業リスク対策となるのが、競売で価格を決める分野への進出である。この分野に進出してノウハウを蓄積しておけば、不良在庫を単に投売りすることなく、適切な価格で捌ける。Amazonはこのように読んでいるはず。

 上記「推論」が正しいならば、Amazonが競売分野への進出における商品構成は自ずと限界が生まれるのではないかと思われる。高収益を狙うあまり、趣味性の高い商品のウェイトを高めると、上記「第二の事業リスク対策」にはなりにくいからだ。したがって、世界中に張り巡らされるデリバリー・センターへの在庫は必需性の高い商品が中心にならざるを得ないのではなかろうか。

 それからAmazonは成熟した生活必需品だけではなく、将来の生活必需品も取り扱わなくてはならなくなるであろう。消費者の嗜好が変わった場合、市場が成熟した生活必需品だけであると、上記「one-click-order-system」適用による取扱商品は先細りとなりかねないからだ。

 上記「推論」が正しいならば、Amazonが予定していると言われている、Amazonの店舗事業への進出は道理に適っている。なぜなら、市場が成熟していない商品に対しては消費者は感覚機能で確かめてから購買したがるので、無店舗販売は困難となるからだ。

 ここで注目しなければならないことがある。eBay経由で中古品を販売している小売業が数多くある模様なので、Amazonがこの小売業と競合する形で店舗事業に進出するのであれば、eBayはこの小売業を味方に引き入れることができる。ライバルの新しい行動は脅威であると同時に好機でもあるのだ。              

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