不況脱出の決め手はコンサルティング・セールス
― 伝統的な金融・財政政策の機能不全の原因を考える〈1999/5/14〉
主要15銀行に合計7兆5000億円弱の公的資金が今年3月に投入された。一方、地方を加えた累積財政赤字は99年度末で600兆円GDP比121%に達する。にもかかわらず、民間の投資と消費が増えないのはなぜであろうか。
工業部門は競争力を失った設備が過剰(自動車産業では13,400,000万台の能力があるが、生産は10,000,000万台を割っているなど)。サービス部門は需要があるにもかかわらず、旧態依然とした経営を行っているために、極論すると、需要が素通りをしてしまっており、自己収縮してしまっている産業も発生している(仕事と家庭の両立を願う現代の若い夫婦を完全に無視している、お泊り保育をしない保育施設など)。
日本の産業界は全般的に世の中のニーズに本気で応えようとせず、過去の延長線上を突っ走るだけで現状を打開しようとしているために、消費が増えず、したがって民間の投資が増えないのである。それではどうしたらよいのであろうか。
自分の事業分野に応じて「売り物」(シーズ)を洩れなく認識する。その上で、このシーズのコンサルティング・セールスを行い、既存のシーズで事足りる場合は他社へのアウトソーシングをも含めて、そのままの形で販売する。いまいちのシーズは改良・改善を、需要はあるが存在しないシーズは新たに開発する。このような事業展開を行うことが求められていると言えよう。
工業製品メーカーは個性的な製品づくりに励むと共に、脱工業化を強力に進めなければならないが、この両方の同時実現に結びつくのが上記したコンサルティング・セールスであることに気がつかなくてはならない。
工業製品メーカーの脱工業化の進め方のひとつの参考になるのが、ハイテクのハードウェアーのデパートメント・ストアーからコンピューター・サービスのプロバイダーへの転換に成功しつつある富士通であると言えるのではなかろうか。
コンサルティング・セールスの進め方には色々あるであろうが、次のやり方をもひとつのやり方として推奨したいものである。
標的市場の課題分析を行い、コンサルティング・プログラムを開発する。このコンサルティング・プログラムに基づいた販売員教育を行う。その上で、サクセス・ストーリーを作るためのコンサルタントの同行セールスを行う。(サクセス・ストーリーをつくるためには、絶妙な質疑応答により、顧客の課題解決策を臨機応変に提案する能力が必要である。ここに、このような能力を持ったコンサルタントの登用が必要と考えるわけである)
なお、「コンサルティング・セールス」のあり方については、ホームページの「1 複雑時代におけるサバイバルの方法」の末尾に掲載してある、拙著「脱集団主義の時代」の「第4章 個別企業再生の秘策」をご参照頂きたい。
わが国社会は組織成員の情緒一体感をこよなく重視するので、外向きではなく内向きになりがち。したがって、組織を外向きにするためには、「社内よりもお客さんの方を向いて仕事をしよう」という掛け声だけではなく、外向きにならざるを得ない、コンサルティング・プログラムの開発などの仕組みの開発が必要不可欠である。
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