老後の生活保証のためには挑戦的人生の継続を ― 若者の老後不安から考える〈1999/5/11〉
「自分の老後生活に対して不安を感じることがある」と応えた20代の男性と女性が86年の総理府調査によると、それぞれ23%と30%。ところが、最近の経済企画庁の国民生活選好度調査によると、それぞれ55%と53%となっている。
若者の老後不安のこの異常な上昇ぶりは「退職金や年金を今から心配している新入社員がいる」という現場からの声からも証明されている。ところで、老後不安は退職金や年金の保障にによって果たして解消されるのであろうか。「否」である可能性が高い。なぜなら、次のことが指摘できるからである。
大競争時代の本格的到来や工業型製品の製品技術の成熟化により、企業の成功の鍵は「カイゼン」力ではなく、構想力とネットワーキング力になってきた。この構想力とネットワーキング力は社員ひとりひとりの力に負うところが大きい。
魅力ある適切な構想は三つのことから生まれる。しっかりと記憶された知識を豊かにする。適切な視座の下、記憶された知識に基づいてブレークスルー発想する。インスピレーションを論理チェックする。
そして、上記したようなことを限りなく繰り返すことにより、構想力は強化されていくものなのである。したがって、構想力は加齢に応じて強化されていく可能性が高いのである。
但し、この可能性を現実のものにするためは、上記した「魅力ある適切な構想を生み出すために必要な三つの条件」の充足に結びつく、挑戦的人生を送り続けなければならない。なぜなら、多く人を観察し続けてきた結果言えることであるが、脳力が衰えるか否かの一般的な岐路は30才代の半ば・40才代の半ば・50才代の半ばの三回あるからである。(40才前で既にボケてしまう人がいる反面、老いてますます盛んなの人もいるのはこうしたことが背景にありそうである)
それでは、上記した三つの条件の充足を必要とする場面をどうしたらつくれるのであろうか。過去の延長線上の行動が通用しない場面に身を置く機会づくりに励み、問題解決のシナリオを自らが主体的に創ることである。
積極的人生を送ることが老後不安の解消に結びつくことは別の側面からも言える。70才位まではその気になれば、青年の肉体を保持できる。ところが、それ以降はつるべ落としのごとくに体力が衰えていく可能性が強い。
このようになっても、「幸せ一杯」を噛み締めることができるためには、三つのことが揃っていなければならない。情緒一体感を味わえる伴侶が居ること、どんなことでも話し合える友人・知人のネットワークがあること、「これは誰それさんでなくて駄目」といった具合に頼りにされる社会的位置に居ること、これが三つのことである。
この三つの条件を眺めて気がつくことがあるはず。本人が輝いていて始めて充足できるものばかりなのである。後ろ向きの人生を送る人間からは輝いて生きていくことは決して期待できないからである。ということは、前向きに生き続けていて始めて、体力が衰えても幸せな人生を送ることができるのである。
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