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【斬新な着眼】



→歴史ある企業が負け組みから勝ち組みに転じる方法(その1) ―ドイツのPreussag社の鮮やかな変身から考える〈1999/9/17〉

 新規事業・新製品(サービス)開発は大きなリスクを伴いがち。そこで、生き残りのために、企業合併やリストラなどによるコストダウンが採用され続けてきた。ところが、この路線もそろそろ限界に近づきつつあるので、わが国企業の多くが一斉に成長路線を模索する日も近い。

 ところが、この企業成長は容易ではなくなった。なぜなら、販売可能な新天地も少なくなり、また隙間商品開発の余地が急速になくなりつつあるからだ。

 コカコーラがコーラの市場占有率35%に甘んじて成長の限界に悩んでいる時、「コーラの市場占有率では35%だが、飲み物の消費総量64流量オンスの内、コーラはたった2オンス過ぎない」と見方を変え、コカコーラはその販売を伸ばし続けることができた。その結果、世界中至るところでコカコーラが売られるようになってしまい、新市場開発の余地が極めて少なくなったしまった。地球的な成長の壁にぶつかったのだ。

 上記「コカコーラ物語」に対して、「コーラは新製品開発の余地が少ないから」という反論が寄せられそうだが、この反論は当らない。なぜなら、イノベーティブな企業で知られている米国の3Mですら、Post-it以降、さしたるヒット商品を生みだせないでいるからだ。

 薬品業界やソフトウェア業界は別かと思いきや、ここでも、このところ、大型のヒット商品はあまり出ていない。各業界共に、ウォークマンのような隙間商品が開発されつくされているに等しい状態になっているからだ。

 企業成長が必要だが、困難。この常識を破って、ドイツのPreussag社は鉄鋼・造船・工場建設などの事業からなるコングロマリッドからパッケージ・トラベル事業に変身し、ドイツ産業界の中にあって飛びぬけた株価上昇を享受できている。今年の株価上昇率を見ると、ドイツ企業の平均が12.2%、これに対して、Preussag社は43.4%となっているのだ。

 Preussag社はどうして上記したような離れ業を演じることができたのであろうか。CEOのFrenzel氏の前職は銀行の融資担当。ここで培った幅広い視野並びに人脈を、乗りこんだ融資先のPreussag社で存分に使えたからなのだ。

 Frenzel氏は銀行マン時代、市場規模が大きく、かつ成長性が高い分野にどんなものがあるかを認識できていた。したがって、旅行代理店網・ジェット機のチャーター便・ホテル網を成功裡に総合的に営んでいる、イギリスのAirtours社の存在がごく自然に目にとまった。そして、「停滞で悩むドイツの産業界はAirtours社を目指さなくてはならない」と思うようになっていた。

 したがって、同氏はPreussag社のCEOに転じるや、迷うことなく、他社を買収してパッケージ・トラベル事業に乗り出すことを決意した。(この買収に銀行マン時代に培った人脈が役に立ったことは言うまでもない)

 上記のPreussag社の鮮やかな事業転換のやり方はいわば「コロンブスの卵」。特別の参入障壁があるわけではない。したがって、この成功を見て、パッケージ・トラベル事業の各ユニットを経営する企業を買収し、それを成長性は見こめないが、資金的に余裕があるドイツの企業に売りつける。こういうことをやるところが続出してもおかしくない。

 そうなったら、事業転換に成功したPreussag社の相対的な優位性は大きく揺らぐことになるだろう。なぜなら、同社は地中海に根を張るリゾート・クラブを買収し、ドイツの顧客を動員するなど、先生格であるイギリスのAirtours社の上をいく事業展開をしているが、これとて他社の模倣は容易だからだ。

 それに、旅行代理店網の将来性は現状路線を歩む限り低い。なぜなら、インターネットの普及が進むと、最終消費者が航空会社やホテルなどと直接取引きをする度合いが高まるからだ。Preussag社の現状は華やかだが、前途には大きな事業リスクが待ちうけているのだ。

 同社は戦略発想をそのまま実行に移すことができたが、このようにはいかない場合の方が多い。折角提起された戦略を保守派がボイコットしたり、実行に移しても予算が不十分だったりするからだ。

 現状路線を歩む限り将来はない。しかし、今であれば資金的余裕が十分にある。このような状態に置かれた、わが国の伝統ある企業の変身は緊急の課題。そこで、Preussag社の上記事例を基に、このような企業が成長分野に鮮やかに転身できるための心得を簡単にまとめてみよう。

1、成長分野に進出する財源があることをしっかりと認識する

 成長が見こめない産業に位置しているとしても、歴史ある企業はそれなりに資産価値がある。限界企業の道を歩んでいるとしたら、市場が成熟している中にあって、市場占有率が低いからだ。

 でも、この企業が提供する商品は必需度が高い。さもなくば、長い歴史を経て生き残ることはなかったはず。したがって、このような企業は単独ではいずれ生き残ることはできなくても、市場シェアの高い同業他社にとっては魅力ある存在なのだ。

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