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【斬新な着眼】



→自分に不利な交渉の流れを変える方法(その2) ― 台湾の「二つの中国」宣言問題を考える〈1999/9/7〉

2、台湾は「二つの中国」を認めさせるタイミングを捉える(タイミングを狙って交渉の風向きを変える)

 自分に不利に作用している「一貫性の原理」にメスを入れる。自分に有利になるように、交渉当事者に決定的な影響力のある人物の心を動かす。自分に有利になる環境変化を待つ、あるいは創り出す。

 交渉の流れが自分に決定的に不利になっている場合には、上記の四つを念頭に置いて、思い切った挙に出る必要がある。台湾の「二つの中国」宣言の背景を分析すると、この四つが念頭に置かれていることが分かる。

◎台湾人を独立へ向けて結集する

 香港は中国に返還される前は東京に次ぐアジアの一大金融センターであった。ところが、シンガポールにその地位を譲りかけている。「一つの中国、二つの政府」の下に、香港の独立は堅持されている。にもかかわらず、どうしてこのようなことになってしまったのであろうか。下記のような事実があるために、世界の投資家が強権国家・中国の影に怯えているからなのだ。

 中国政府は香港の内政には干渉していない。しかしながら、香港に対する疑念や不満の声が北京からしばしば聞こえてくる。だからか、香港の政府並びに実業界の大立者たちは常に中国政府の意向を気にしている。その上に、台湾と外交関係を持つローマ法王が香港に立ち寄ることを認めない言明をした。

 台湾が中国に併合されたら、香港の二の舞になりかねない。折角勝ち取った自由と経済的繁栄を是が非でも守りたい。これが多くの台湾人の想い。台湾の「二つの中国」宣言に対する中国の反発が強ければ強いほど、台湾人は独立へ向けて結集することであろう。事実そうなった。台湾の対中政策を所管する大陸委員会が行った調査によると、即時独立が今年4月の4%から14%に跳ね上がっているし、李登輝発言については65%が「支持する」と回答しているからだ。

 したがって、台湾側は自分に不利に作用している「一貫性の原理」にメスを入れることができたと言えなくもない。

 交渉に成功するには、交渉の到達目標に対して信念を持つ。言い換えれば、自らの心を動かす。その上で、迫力を持って相手の心を動かすことが必要だが、情勢が情勢だけに、相手の反発を読みこんだ「二つの中国」宣言はこの必要性に応えるものなのだ。

◎大胆な言動にはリスクヘッジが必要

 交渉の流れを変えるためには、思い切った挙に出る必要があるが、それなりに大きなリスクが伴う。事実、中国側は台湾を4段階(海上封鎖/ミサイル攻撃/制空権確保/強硬上陸)で攻撃することを公表している。そして、クリントン大統領は李統輝・台湾総統の発言に不支持を声明している。

 新規事業が失敗しても、開拓した販路を他に有効に転用することを予め考えておく。思いきった行動を採るためには、このようなリスクヘッジが必要だが、台湾の「二つの中国」宣言の場合、このようなリスクヘッジは考えられているのであろうか。

 李登輝・台湾総統は「中国は台湾に対して武力を決して行使しない」ということを読み込んでいると言えよう。なぜなら、次のことが指摘できるからだ。

◎ユーゴ空爆の事実が中国の武力行使を抑止する

 東西冷戦構造の終結により、イデオロギーの対立がなくなると共に、世界の統合力は低下し、不安定になった。そこで、欧米は人権・民主主義の擁護を冷戦構造に代わる秩序の規範として採用することになり、ユーゴ空爆に踏み切ったのだった。軍事攻撃を受けずとも、また、他国の主権を侵すことになっても、武力を行使する。欧米連合はこのことを全世界に知らしめたかったのだ。

 このユーゴスラビア空爆に中国は猛反発したが、結局は欧米連合に押し切られてしまった。したがって、中国はこのことをしっかりと頭に入れていると思ってもよい。言い換えれば、民主主義国家・台湾に対して武力攻撃を行うと、ユーゴスラビア同様の悲惨な目に遭いかねないことを、中国は十分に認識しているはずなのだ。

◎米国の国内政治が中国の暴挙を決して許さない

 中国が台湾に軍事攻撃する場合、欧米が結託しなくても、米国が単独で中国を抑止するであろう。李統輝・台湾総統はこのことをも織りこんでいると思ってもよいであろう。なぜなら、クリントン政権が中国の軍事行動に対して手をこまねけば、2000年の国政選挙で民主党は大敗北するだろうからだ。

 軍事機密漏洩並びに在ユーゴスラビア中国大使館誤爆の両問題以来、中国に対する米国の国民感情は悪化している。そういうところに、同盟国である台湾が悲惨な状態になることを、米国民は決して許さない。こういう事情があるのだ。

 以上から明らかなように、李統輝・台湾総統は自分に有利になるように、交渉当事者に決定的な影響力のある人物の心を動かせることを織りこんで、「二つの中国」宣言をしたと推測できるのだ。                          

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