こじれてしまった関係を正常に戻す方法 ― WTO(世界貿易機構)加盟並びに大使館誤爆を巡る米中関係から考える(その3)〈1999/7/2〉
4、WTO加盟の意外な効用
WTO加盟は、中国自身にとってだけでなく、先進国全体、ひいては世界全体に大きなメリットをもたらすことは必至。なぜなら、次に述べるようなことが指摘できるからだ。
中国は法によってではなく、政治的指導者の恣意的判断によって事が決せられることが少なくない。したがって、外国人としては安心して中国に財産を持ちこんだり、投資を行うことができるとは言い難いところがある。
ここに中国のWTOへの加盟の大きな意味がある。中国はWTOに加盟したからには、WTOのルールにしばられることとなり、上記した「政治的指導者の恣意的判断によって事が決せられること」は許されなくなるからだ。言い換えれば、WTOが中国内外国人の財産保護並びに不正取り引きの阻止を保障してくれるのだ。
すると、どういうことになるのか。世界中の企業や個人が安心して中国と経済交流できるようになる。言い換えれば、中国全体が世界のネットワークの中に組みこまれ、世界中の人がそれぞれの独自の観点で中国を有効利用するようになる。
中国国内のネットワーク化が遅れていることが中国経済の停滞の原因にひとつになっているだけに、中国が全世界のネットワークの中に組みこまれていくことの経済的効用には計り知れないものがある。
中国経済は地域別に分断されているので、中国全体としての過度の重複投資に結びつきやすい。これは経済のデフレ化を促進するだけではない。資金の有効利用を阻害し、育つべき産業が育たなくなる。
分断された中国の各地域経済が世界のネットワークの中に組み込まれていくことにより、過剰設備の稼働率が良くなるだけではなく、世界が求めるものを生産するための新たな設備投資を行うことを通じて、育つべき産業の育成も可能になる。こんな効用が期待できるのだ。
それから、中国の全世界とのネットワーク化は中国がコソボのような空爆を受けないですむことにも結びつくことを忘れてはならない。なぜなら、中国全体が世界のネットワークの中に組みこまれていけばいくほど、中国にとって人質となる、世界各国の中国本土全域への進出が拡大するからだ。
中国全体が世界のネットワークの中に組み入れられることは、上記した経済や安全保証上の効用をもたらすだけではない。中国の民主化にも大きく貢献する。様々な人と自由闊達に交流できることは個人の自由度の拡大に、個人の自由度の拡大は開かれた社会の実現に結びつくからだ。
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