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【斬新な着眼】



→こじれてしまった関係を正常に戻す方法 ― WTO(世界貿易機構)加盟並びに大使館誤爆を巡る米中関係から考える(その4)〈1999/7/6〉

5、中国の心を動かす決め手

 WTO加盟の意外な効用の理論構築が完成でき、指導層がそれに納得し、かつ国民の啓蒙運動がうまくいきさえすれば、それで事足りるであろうか。

 米国民の啓蒙が思惑通り成功すれば、世論を重視せざるを得ない米国は実行に向けた政治的コンセンサスが容易に形成されるであろう。だが、中国側はそうはいかない。選挙の怖さがないというだけではない。

 世界のネットワークの中に中国がなされるままに組み込まれることを、中国の指導者は歓迎しないかもしれないからだ。なぜなら、このような状態になると、中国中央政府の統制力は低下し、中国指導層が抱いているであろう「アジアを統合して、中国元を共通通貨とする中国経済圏にしたい」という野望の実現が困難になりかねないからだ。

 上記「野望」は単に中華思想からのみ生まれるのではない。中国経済の現在の苦境を救うことに結びつくことも忘れてはならない。「元の価値を損なうことなく、元の発行量を拡大できればなあ」 これが中国当局の本音だろうからだ。

 中国経済は圧倒的な潜在成長力を持っている。言い換えれば、中国の輸出入量は果てしなく拡大できる。しかも、文明大国。したがって、中国経済が成長を持続でき、元の切り下げをしない保証が得られれば、外国人は「中国元の保有を増やしても損はない」と判断できるのだ。

 但し、上記「潜在成長力」を顕在化させるためには、先進国からの資本と技術の導入が不可欠。この先進国として、中国は米国ではなく日本を選択したいのが本音なのだ。日本の方が遥かにコントロールしやすい上に、日本の資本と技術で十分だからだ。「日本は米国とではなく中国と同盟関係を結んで欲しい」これが中国の本音なのだ。

 去る6月22、23日の両日、北京で開いた日中二国間交渉に出席した中国側代表者がWTO加盟問題で「13年待っても構わない」と発言した背景には、「日本を巻き込んで野望を実現してもよい」というメッセージが含まれていたのかもしれない。

 しかしながら、日本は日米安保条約のガイドラインにより、米国のアジア戦略の中にしっかりと組みこまれてしまった。(詳細については、私のホームページの「ワタナベタカヤのひらめきメモ」のバックナンバー「アメリカの世界戦略 ― 日米安保ガイドラインはドル経済圏拡大の手段〈1999/3/26〉」をご参照願いたい)

 「日本は米国との関係を絶ち、中国と同盟関係を結ぶことは決してしない。しかしながら、米国の行き過ぎは必ず是正する」ことを、日本は不退転の姿勢で中国に訴え、示し続けるべきであろう。

 こちらが優柔不断であると、相手に「なんとかなるかなあ」と思われる。ところが、こちらが不退転の姿勢を示し続ければ、相手は「仕方がない。相手の態度を与件にするしかない」と思ってくれる。これは上記した日中問題に限らず、交渉事すべてに共通して言えることなのだ。

 但し、そのためには、ビジョンを開発し、信念を持って不退転の姿勢を採る必要があるのは言うまでもない。「相手の心を動かすには信念を持たなくてはならない。信念を持つためには納得行くビジョンを開発しなければならない」のだ。  (完)


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