[TRI] Total Renovation Institute Clear GIF 新創業研究所
E-Mail: info@trijp.com
TEL: 03-3773-6528 FAX: 03-3773-6082
 〒143-0023 東京都大田区山王2-1-8 山王アーバンライフ401

トップページ | 今なぜワタナベ式問題解決なのか | 渡辺高哉の仕事 |
渡辺高哉の時代認識 | 渡辺高哉はこんな人物 | E-mail

【斬新な着眼】



→こじれてしまった関係を正常に戻す方法 ― WTO(世界貿易機構)加盟並びに大使館誤爆を巡る米中関係から考える(その2)〈1999/6/29〉

2、中国独自の立場とは何か

真善美を極めるのではなく、真善美を追い求める。このような特徴を持った儒教精神に影響された中国は階級意識が強く、欧米のような個人主義は未発達。その上、国全体としては都市化は緒についたばかり。となれば、アイデンティティを確立した個人の存在は限られたものとならざるを得ない。したがって、「社会全体をネットワーク化しよう」という動機は国全体としては低い。

 しかも、交通・通信手段などのインラフが不充分であることなどが原因して、中国の国内経済は地域別に分断されたままの状態が目立つ。動機が低い上に、インフラの整備も遅れているとなれば、中国社会のネットワーク化は大幅に遅れざるを得ない。それに、教育水準も低い。そして、中国は多民族国家。中国は分裂しやすいのだ。

 「分裂したっていいではないか」という声が聞こえてきそうだが、この意見は乱暴過ぎる。なぜか。「中国一国でこれだけの潜在需要があるから」といったような経済外交を有利にできる材料が使えなくなるだけでない。政治力の源泉となっている軍事力の維持・増強もままならなくなるからだ。

 以上からして、中国が共産党一党独裁、国内分裂を防ぐための市民弾圧を行いがちであることには理があるのだ。

 だが、中国がこのような社会秩序維持手段を採用することを欧米先進国が容認しにくいのも事実。人権・民主主義という国内の政治的圧力があるだけではない。民主主義のルールに基づいた政治的決定不在から来る、軍事的暴挙への不安もあるからだ。

  個人の解放を進め、生活非必需品の市場を開発する必要性はあまりない。これも中国が人権・民主主義を国是としないもうひとつの正当な理由となっている。

3、立場の違いが招いた対立

 三つの対立の説明を行おう。まず、中国のWTO加盟。米国は中国の対米鉄鋼輸出に対して、他国よりも厳しいアンチダンピング措置をとることを、WTO加盟条件にしようとしている。中国の経済開発を進めたいにもかかわらず、米国はなぜこのような強硬な姿勢を採るのであろうか。

 米国人の多くは「人権・民主主義軽視の中国との貿易赤字は拡大の一途。それに、スパイ疑惑もあるそうではないか」と思っている。民主党政権としては、2000年の大統領選挙のことを考えると、中国に甘い態度をとることは政治的に許されれないのだ。

 次に、コソボ空爆に対する中国の一貫した反対。前述したように、中国は反乱分子を弾圧せざるを得ない場合がある。コソボ空爆は、「普遍的な価値を養護するためには内政干渉は不可避であり、伝統的な主権概念の重要性は二義的である」とする人権・民主主義を実践したもの。中国がコソボ空爆を容認できないのは当然なのだ。

 最後に、大使館「誤爆」問題。中国の常軌を逸した反応は、アメリカが採ろうといる、厳しすぎるWTO加盟条件と大いに関係するのだ。アメリカの妥協を引き出すためには、中国の怒りを過度に演出しなければならない。こういう思惑の下に、中国の大衆を必要以上に扇動した。このように考えられるのだ。

 この問題は次のような一般的な問題に置きかえることもできる。A集団はB集団に反感を持っている。A集団のリーダーはこの反感を行き過ぎであると思っている。しかし、リーダーはその立場を守るためには、リーダーが率いる集団の意向を無視できない。

 このような場合、A集団のリーダーは「A集団のB集団に対する反感が収まる出来事が起きて欲しい」と願ったとしてもおかしくない。偶然か必然かは別にして、中国の在ユーゴスラビヤ大使館への誤爆は都合の良いとき起きたのだ。

 この誤爆犠牲者の家族が嘆き悲しむ姿が全米に淡々と放映されたならば、米国民として中国国民に対してなんらかのお詫びをしなければならないという「返報の礼」の精神が沸き起こったであろう。

 ところが、この誤爆に対する中国側のやりすぎは米国民の反感をかえって煽ってしまった。ここでひとつ考えなくてはならないことがある。江沢民国家主席を始めとする中国の首脳がこのようなやり過ぎをしてしまうほど愚かであろうか。「否」である。

 中国指導層は一枚岩ではない。革新派と保守派の対決がある。革新派の江沢民国家主席がその基盤強化のために大衆に迎合しようとした発言がめぐりめぐって大衆扇動に結びついてしまった。これが真相なのではなかろうか。            

次へ】 


●『斬新な着眼』を無料でお届けする電子メールマガジンを発行しています。ぜひご登録下さい無料)。

→バックナンバー:斬新な着眼

   ▲トップ


トップページ