[TRI] Total Renovation Institute Clear GIF 新創業研究所
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【斬新な着眼】



→成熟市場を勝ち抜くためには個性的ニーズへの合理的対応を(その3) ― フランスの化粧品小売チェーン店・Sephoraの革新的経営から考える〈1999/11/5〉

4、ビジョン開発が大前提

◎Sephoraがプライベート・ブランド商品のウェイとを飛躍的に拡大したいのであれば、ビジョン開発が必要となる

 顧客を圧倒的に惹き付ける。購買行動の最適化を支援する。この二つを全面的に自社の売上に結びつける。この一連の経営行動が成熟市場で企業の繁栄を勝ち取るために必要。だが、インターネットの普及により、バーゲン・ハンティングが容易になったために、最後の三つ目は容易ではないのであった。

 Sephoraのプライベート・ブランド商品は、上記のバーゲン・ハンティング封じ込めに役立つが、プライベート・ブランド商品のウェイトが8%程度ではその効果には自ずと限界がある。したがって、商品の利幅拡大のためにも、プライベート・ブランド商品のウェイトの飛躍的拡大が必要になる。そのためには、顧客のストアー・ロイヤリティーを高めるためのブランド力の強化が必要。

 Sephoraはニューヨークの5番街へのマンモス店の出店とほぼ同時に大々的な広告に乗り出したが、この狙いはブランド力の強化。でも、プライベート・ブランド商品開発のためには、これだけでは不十分。

 プライベート・ブランド商品の開発を成功させるためには、店の顧客吸引力を高めるための広告のみならず、ライバルの追従を許さない、顧客にとって魅力ある技術開発が必要となる。Sephoraの商法が百貨店のそれを駆逐しつつあることから明らかなように、今の消費者、特に若者はイメージだけではごまかされないからだ。

 ところで、Sephoraはどのような商品の技術開発を行うべきであろうか。スキンケアであろう。なぜなら、この種の商品は肌の研究が必要であるという意味で、技術集約度が高い。それに、販売には専門的知識が必要であるので、百貨店商法の強みが発揮されている。したがって、スキンケアのための技術開発はSephoraにとってコスト・パフォーマンスが高くなる可能性が大なのだ。

 肌の研究が進めば、ライバル商品よりも機能性の高いスキンケア商品が開発できるようになるだけではなく、肌の特性に応じた合理的なコンサルティング・セールスが可能となり、Sephoraは百貨店の牙城を切り崩すことが可能となることを忘れてはならないのだ。

 でも、この研究開発にはそれ相応の先行投資が必要となろう。中途半端なものでは失敗に帰するであろう。思い切った先行投資を行うためには、Sephoraのスキンケアが仮に大きく伸びることはなくても、Sephoraの経営全体への波及効果が高いなどが確認できている必要がある。

 となると、スキンケアのための技術開発を行うためには、Sephoraは将来どのような事業展開をするかのビジョンが必要となる。肌の研究成果やスキンケアの取り扱いの拡大がSephora全体の業績拡大に結びつくのかどうかを確認するためだ。

 スキンケア同様、百貨店の得意商品であるメークアップの取り扱いをSephoraが拡大したいのであれば、やはりビジョン開発が必要となろう。なぜなら、メークアップでライバルを凌駕するには、顧客の個性的なトータル・ファッションの一環としてメークアップを位置付けなければならないからだ。このような使命を持った、トータル・ファッションの研究を思い切って行うためには、アクセサリーやアパレルなどを取り扱う必要があるかもしれないのだ。

◎グループ・パワーで大企業に対抗したいのであれば、個々のビジョン開発が必要となる

 大競争時代はルーズな経営を許さない。したがって、企業は生産システムの最適化や部品などの生産財購入の最適化が必要不可欠となる。この最適化ノウハウは資本財や生産財の提供企業の方がユーザーよりも優位性を実現できよう。なぜなら、資本財や生産財の提供企業の方が経験蓄積量を大きくできるからだ。最適化のための工夫はユーザーにとっては知識技術集約的臨時業務だが、提供企業の方は恒常的な業務だからだ。

 以上のことから明らかなように、資本財や生産財の提供企業は顧客の購買行動の最適化を支援することにより、Sephora同様の繁栄を勝ち取ることができるのだ。但し、資本財や生産財の提供企業のすべてがこのようなことができるわけではない。資本財や生産財のごく一部しか提供していない企業であれば、このような体制を確立することは採算的に難しくなるからだ。言い換えれば、中小企業の限界があるのだ。

 でも、コンピューターを使ったコンサルティング・プログラムを開発するなどして、顧客の購買行動の最適化を支援することの必要性は上記したような理由から高まるであろう。それでは中小企業はどうしたらよいのか。部品点数を増加させる観点でグループ化して事に当る必要があろう。

 上記のグループ化で事に対処する場合でも、個々のビジョン開発が必要となる。なぜなら、得意技術は磨き続けなればならない。磨き続けるためには「何で勝負するか」を決めなければならない。「何で勝負するか」を決めるためには、自社の将来展望が必要となるからだ。

グローバリゼーションを生き抜くためには、魅力ある特徴を持たなければならない。だが、いくら特徴があっても需要がなければどうしようもないことを考えると、「何で勝負するか」を慎重に決めなければならないのだ。

◎ビジョン開発は様々な効用を持っている

 成長分野に存続する。チャンスを逃さない。広義に捉えた能力を臨機応変に入れ替える。運を呼び込む。企業でも個人でも成長し続けるためには、この4条件を充足しなければならないが、ビジョン開発はこの4条件充足に結びつくのだ。なぜか。次のことが指摘できるからだ。

 ビジョンを開発そもそも成長分野に存続するためのもの。でも、チャンスを逃してしまうと、折角成長分野に位置していても成長できない。ところが、ビジョンがしっかりと脳裏に刻み込まれていると、問題意識が旺盛となり、微細な変化に気付きやすくなり、変化が集積して生まれる、チャンスとなる異変を待ち受けることができるようになる。

 チャンスを掴んでも能力がついていかなくては駄目。でも、ビジョンがしっかりと脳裏に刻み込まれていると、企業であれば不要な能力を放出し、必要な能力を取り込むことがタイムリーにできるようになる。個人であれば、計画的な能力開発が可能となる。

 チャンス到来、能力も十分。このような場合でも成功するとは限らない。経営資源が似ており、チャンスにも同じく恵まれていながら、片方は成功、一方は失敗。こういうことがよくあるのだ。何が成否の分岐点になるのであろうか。構想力・独創力の差が成否の原因となっている場合が多いのだ。

 そこで、必要なことがある。ビジョン開発をした結果、構想力・独創力が身につくような工夫を凝らすのだ。そのためには、適切な専門家と共同してビジョンを開発することが必要となろう。(完)


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