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【斬新な着眼】



→合理追及を徹底できる体質こそが不況脱出の決め手 ― 大塚家具独り勝ちの仕組みに学ぶ〈1999/6/18〉

 98年の総売上高4兆円超、これをピークに91年には4兆円、大手のハヤミズなどが倒産、中小でも倒産や統廃合が続出。わが国の家具業界はどん底の状態。少子化・婚姻率の低下・長引く不況の影響でビルや住宅の着工件数がすっかり低下してしまったからだ。

 このような中にあって、大塚家具のみが業績を急拡大。95年から二桁増を維持、99年12月期の売上は600億円(前年対比14%増)、経常利益58億円(前年対比16%増)が見こまれているのだ。どうしてこのような独り勝ちを演じることができるのであろうか。

 客数最大化を、次いで品揃えの適正化を実現させている。この適正な品揃えが客数の最大化の維持に結びついている。こんな仕組みの経営を行っていることに秘訣がありそうだ。そこで、この経営の仕組みをやや詳しく見てみよう。

 他店よりも高いものがあれば、価格を引き下げる、最低価格保障、輸入品の国際標準価格化、超大型店の下での品揃えの広さと深さの徹底的追求。この三つが客数最大化の手段となっている。

 どこよりも安く、どこよりも豊富な品揃え。客数最大化が実現できて当り前。問題はどうやって利益を出すかである。

 会員に対して、担当者をつけてコンサルティングを行ない、顧客の種類別のニーズを聞き出し、売れ筋の定性データを把握。会員に対して実施しているショールームの内覧の際に、顧客データを書きこませているが、これによって、定性データの定量データへの転換に結び付けているはず。

 家具は利幅が大きいが、物が物だけに店内在庫のコストがべらぼうにかかる。でも、確実に売れる商品のみを店内在庫にするのであれば、宣伝費としては安いもの。大塚家具は売れ筋商品の品揃えの最大化を上記のやり方で実現させている。だから、どこよりも安く、どこよりも豊富な品揃えであっても、利益を出せているのだ。

 大塚家具の徹底した合理主義経営を他社が簡単に真似られるであろうか。短期的には可能でも、長期にわたっては無理であろう。なぜか。次のことが指摘できるからである。

 事業環境は刻々変化していく。この変化に適応できるためには、経営の現場にいる人間の身体が好ましい方向に臨機応変に動く必要がある。言い換えれば、本能のような体質が大事なのだ。いちいち考えてではなく、本能的に振り抜いたらホームランになる頻度が高い野球選手のみがホームラン王になれるように。

 大塚家具の好ましい企業体質はどのようにして醸成されたのであろうか。日本経済が順調であった頃から「業界の秩序を乱す」ということで取引停止処分を受けたことがしばしばあるほど、脱横並び経営を行ない続けてきたからこそなのである。

 脱横並び経営で成功するためには、市場主義の立場になった、たゆまざる創意工夫が必要となり、この積み重ねが好ましい企業体質の醸成に結びついたのだ。場外ホームランのような大ヒット商品開発に成功し、長年にわたってその商品に依存し続けてきた企業の体質がすっかり駄目になる。こういうことがよくあるが、これとは逆の関係なのだ。

 好ましい企業体質の醸成という視点でヨドバシカメラを見ると、参考になるものがある。同社は全店の店別の売上・粗利益・バランスシートが閉店すると直ちに分かるようになっている。となれば、仕入れた商品は毎日売りきる。最新式のコンピューターを使って1人で4人分の仕入れを行なう。こんなコストダウ努力は常識となる。

 でも、売上が上がらなくては大きな粗利益を稼げない。この点にも抜かりがない。店別店員別の売上が毎日分かるようになっているのだ。店員はおちおちできないのだ。でも、店員の自助努力には自ずと限界がある。そこで、メーカーのディーラーズ・ヘルプを巧みに引き出している。

 店別商品別の売上が分かるようにして、「この店のこの商品の売上が少ないのはメーカーさんの店員教育が足りないからだ」という迫り方をして、実をあげているようなのだ。

 こういう場合、商品をダンピングすると、メーカーとしてはディーラーズ・ヘルプに身が入らなくなるが、この点にも抜かりがない。ポイント制を採用することにより、顧客の購買総額に対して10%の払い戻しをしているのだ。

 メーカーがプロとして真剣勝負せざるを得ないようにする工夫は他にもある。古い家電店が伝統的に採用している荒利益の補填や店内装飾費用の負担などは一切廃し、部門別メーカー別の実績をメーカーに毎日送り、メーカー間の競争を煽っているのだ。


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