日本経済再建のために自由闊達な人的交流の促進を
― 日本経済の貯蓄・投資の不均衡の悪化から考える(その2)〈1999/6/15〉
3 人を惹き続けるためには個人ビジョンの開発を
それでは人を惹き付ける魅力はどのようにして身につけたらよいのであろうか。自分ならではの魅力ある特徴を再発見する。これが第一歩である。この第一歩を踏み出すためには、未来社会を展望して、自分の売り物をしっかりと認識しなければならない。過去の延長線上からでは発見できなくても、未来から眺めることにより、自分の売り物は発見できるものなのだ。
人は停滞するものを嫌い、成長し続けるものを憧れる。したがって、人を惹き続けるためには、発見した自分の売り物は一生を通じて磨き続けなければならない。問題はどのようにして磨き続けるかであるが、生活や仕事をしながら自分の売り物を磨かなくてはならない。そうでなければ効率がよくないし、長続きしないからだ。
生活や仕事をしながら自分の売り物を磨く。このように言うと、同じ生活や仕事をし続けなければならにないように聞こえるが、決してそんなことはない。なぜなら、次のことが指摘できるからである。
セールスマン(ウーマン)のプロが「こういう場合はこういうやり方」という形でセールの能力を磨いていけば、経験主義から脱した応用範囲の広いセールスの能力を培うことができるようになり、衰退分野から脱出して絶えず成長分野で活躍できるようになる。
また、セールスの成績を上げるために、パソコンを駆使するようになり、セールスの能力の中に情報処理能力も含まれるようになり、この能力を使って、セールス以外の仕事でも成功できるようになるかもしれないのだ。
やらなくてはならないこと、やりたいことが沢山あるにしては、人生は短すぎる。したがって、意義ある人生とするためには、「何を捨て、何をやるか」の選択が重要となる。但し、適切に選択した道であっても、しばしば不順調となる。
このようなときにものを言うのが「自分の売り物はセールスの能力。このセールの能力を磨き続けることにより、出世魚のように自分を発展させることができる。その理由はかくかくしかである」といったような、適切なビジョンの存在である。
このように言うと「予め描いたシナリオ通りに人生はいくものではない」という反論が聞こえてきそうだが、この反論には次の言葉を返したい。
かくかくしかじかの理由でこのようなシナリオに基づいた人生を送りたい。このような内容からなるビジョンがしっかりと頭の中に入っていると、聞こえないものが聞こえたり、見えないものが見えてくるようになり、臨機応変に環境適応できるようになる。必要な情報は探索しなくても向うの方から飛び込んでくるようにするのが理想だが、問題意識を適切、かつ旺盛にすることにより、この理想が現実のものになるのだ。
成り行き任せの人生、主体的であっても模範とする生き方をただ単に真似るだけの人生であれば、上記したような真の情報力の必要性は低い。しかしながら、主体的、かつオリジナリティの高い人生を送りたいのであれば、その必要性はきわめて高いと言えよう。オリジナリティを求めれば求めるほど、そのまま役立つ形で存在する情報はないからだ。
オリジナリティを求めるのであれば、何かに触れてひらめく必要がある。このことをしっかりと認識しなければならないのだ。
4 自由闊達な人的交流を行なえるようになることによる直接的メリットは何か
人を解き放ち、潜在能力を発揮させることを通じて、事業構想力の強化に、事業構想力の強化は新産業・新企業の創出に結びつく。自由闊達な人的交流はこのように社会経済的に大きな効用をもたらすのであった。
但し、上記しただけでは、自由闊達な人的交流へ向けて人をかりたてることはできない。他に行動の選択の余地がないのであればともかくもそうでなければ、「今を最高に生きる」ことを求めがちなのが現代人だからである。
それでは「自由闊達な人的交流ができさえすればなあ」と人々が切望している。言い換えれば、家族や友人・知人に頼んでもらちがあかなくなってきたものがあるのであろうか。「おおあり」なのだ。なぜなら、次のことが指摘できるからだ。
ありふれた人・物・サービス・情報はあり余っている。一方において、一人一人の心の奥底に個性的な欲求が渦巻いている。したがって、自分の個性的ニーズの充足先をきょろきょろ探しまわっている人が増えているのだ。
自由闊達な人的交流ができさえすれば、上記「きょろきょろ探し」はきわめて効率的に行なえるようになるのだ。
「今年の1−3月期の国内総生産は年率で7.9%になった」という新聞報道を見て、「日本経済の貯蓄・投資の不均衡の悪化から考える」の表題に違和感を覚える向きが少なからず存在するであろうので、一言コメントしておきたい。
「3月までに仕事が完了しない場合は、代金を支払わない」 これが発注主から公共事業関係の仕事に携わっている方々に浴びせられてきた言葉。したがって、3月は突貫作業が横行し、4月に入って仕事がパタッと止まってしまった。
上記「年率で7.9%」の背景にはこのような実態があることを忘れてはならない。したがって、貯蓄・投資の不均衡が悪化しているのが日本経済の基調であることは間違いのないところなのだ。
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