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 日本において個が抑制され、個人の起業が困難であった理由


【ホームページ開設の記念論文】



→日本経済を再生させる方法 

5. 日本経済再生の鍵は個の解放

 個を抑圧し、国民全体を清清粛々と動かすことができた。だから、短期間で世界第二位の経済大国にのし上がることができた。その反面、思考の三原則を適応した、構想力の養成がおざなりにされてきた。というよりは、無視されてきた。これがこれまでのわが国の実態なのでした。
 
 となれば、持続力ある開発を可能ならしめる新しい成長機会を産業界は追いきれるはずがありません。なぜなら、この論文の問題提起のところで申し上げましたように、この種のビジネス・チャンスは、個の解放があって始めて生まれる。そして、このようにして生まれたチャンスは、構想力があって始めてものにすることができるからです。

 構想力不足の弊害は他にもあったのでした。バブル発生の原因となったパッチワーク的対策を講じたり、不良債権問題で典型的に現れたように、問題を先送りし、事態の悪化を招いてきた。これがそうでした。

 鮮やかな効果を発揮し続けてきた社会システムが環境不適応を引き起こしているからには、時代の変化に適応できるような社会システムを創らなくてはなりません。個人が人間改造を、企業が組織革新を行うように。新しい環境に適応できなくなったために、姿を消したり、過去の面影をまったく失ってしまった国・企業・個人はいくらでもあるのです。

 それでは、わが国が目指すべき社会像とは一体どんなものなのでしょうか? そして、それをどのようにして実現させたらよいのでしょうか?

 構想力をさほど必要としないから、個を抑圧してきた。そして、その結果が個を一段と抑圧してきたことを考えますと、「なぜ個が抑圧されるに至ったのか」を考えることから始めなければなりません。適切な問題解決を策定したいのであれば、問題発生の仕組みの理解を先行させなければならないからです。

日本において個が抑制され、個人の起業が困難であった理由

 わが国は体制内ではなく、アウトサイダーとして身を置く限りは、社会的に大きく羽ばたくことはほぼ不可能でした。なぜなら、実質的な社会主義体制が確立されているために、アウトサイダーはどこに行っても、邪魔が入ったからです。

 社会的に有益なオリジナリティーあふれるアイディアを考え出しても、どこかの系列に入っていないと、社会全体から押しつぶされてしまう。これなどは「邪魔」のひとつの例です。それではなぜこのような邪魔が可能だったのでしょうか?

 既存勢力間で市場が分割管理されているために、既存勢力に所属していないものは市場活動すら許されない。そして、この系列が社会の隅から隅まで行き渡っている。こういうことがこの「邪魔」の背景にありました。

 これまで取引のなかった業者が新製品を有名百貨店に持ち込み、「これは面白い」ということになりますと、次のようなことが起きるのが、この「邪魔」のひとつの例です。新製品の見本は、「私のところでやりたい」とういう手が挙がるまで、取引のある業者に廻されるのです。

 そして、必ずといっていいくらいに、この新製品は取引のある業者のどこかで取り扱われるのでした。最初に新製品の見本を持ちこんだ企業は無料でアイディアを提供したと同じことになるのです。

 必ずどこかの業者の手が挙がるようなことになるのは、百貨店側が「これは面白い」と思うものであれば、取引のある業者のどこかが生産できるからなのです。なぜなら、売れる新製品は従来のものの「カイゼン」ですんだからです。

 このようにいいますと、「カイゼンではすまないものを持ちこめばいいのに」という声が聞こえてきそうですが、この考え方はこれまでは通用しなかったのです。なぜなら、既存のものの「カイゼン」が可能であれば、それ以外のものへの需要が生まれにいくい、ということがあるからです。

 こういうこともあって、どこの系列にも所属しないベンチャービジネスはわが国では育たなかったのです。そして、このような実態が社会的に有益な価値を持つ新しいものを生み出す風潮を摘み取ることに結びついていったのです。

 「ベンチャー・ビジネスは育ちにくいから、それでは大企業で」と思っても、大企業の中は保守的ですから、ここでも、新しいものはやはり育ちにくかったのです。

 個人の抑圧は別の面でもありました。終身雇用の下での年功序列が社会全体にほぼ行き渡っているために、転職は経済的にも地位的にも損する。そして、所属する組織は終身雇用制度であるし、また、「カイゼン」が可能であるために、飛び跳ねるような思考・行動は好ましくありませんでした。そこで、枠外思考を抑制し、枠内思考を奨励するために減点主義が社会全体で採用されることとなり、日本人の縮み思考は普通のこととなりました。

 このようにして集団が同質化しますと、異質な者は集団全体から排除されてしまいます。この背景には、笑えない人間心理があります。人間誰しも、自分と同じような価値観や信念を持っている人物と接していると、自分が賞賛されているような良い気分になるのです。

 そして、度が過ぎますと、異質なものに接すると、「きわめて不愉快」ということになってしまうのです。ある一流企業の社長が「あいつは酒を飲まないから面白くない」ということで、有能な部下を遠ざけてしまう。こういうことだって起こるのです。

 組織の風土が自分になじまないのであれば、転職すれば良いのですが、終身雇用制度の下での年功序列が根づいている日本ではそうはいきません。となると、自分を殺して、生きていかざるを得なくなるのです。

 そして、企業内は「カイゼン」主義追及の場。上司の言うことを素直に聞かないと後が怖い。したがって、「思考の3原則」(全体を見る/長い目で見る/根本的に考える)を適応する機会はありようがなく、構想力は養成されようがなかったのです。

 以上を総括していいますと、「良いものは良い。悪いものは悪い」が通用しにくい。いいかえれば、市場原理が追求しにくい社会。それが日本だったのです。

 「それでは新天地で活躍しよう」と思っても、国内には新天地は存在しないし、また創りようがありませんでした。すべてが東京一極集中。仕事がないので、田舎では人生の再出発もできないのです。

 すでにお分り頂けましたように、すべては「カイゼン」が可能だったことに帰着するのです。「東京一極集中はカイゼン主義と関係ないでしょう?」という声が聞こえてきそうですが、これは間違いです。なぜなら、社会全体で「カイゼン」主義を追及するには、分散型社会よりも集中型社会の方が便利だからです。(打開策 ⇒ 『人生再構築のための簡便手法』)

 ところが、時代は変わり、「カイゼン」よりも創造追求の方が必要となりました。しかしながら、「だから、個が解放される」という具合にはいきません。なぜなら、「良いものは良い。悪いものは悪い」とする。いいかえれば、市場原理を追求する世の中にするには、それ相応の条件があり、この条件の充足は簡単ではないからです。

 豊かな構想力を持つ。豊かな構想力を駆使できるような世の中にする。この二つが市場原理を追求しやすい世の中にする条件なのですが、いずれも充足は容易ではないのです。

 構想力は長らく軽視されてきたので、この強化はそうそう簡単なことではない。社会全体が人間関係重視や実績重視主義にどっぷりと浸かってきたので、「良いものは良い。悪いものは悪い」とするようには簡単にはいかない。こういうことがいえるからです。

 だから、日本経済の著しい地盤沈下を招いているのでした。このようなことは何も日本経済にだけ当てはまるのではなく、組織や個人についても同様であることは先に述べた通りです。

 個人や企業が転落路線を歩んでいるとしたら、「環境が変わってしまった。日本の社会の仕組みはどこかおかしい」といって嘆くのではなく、「なぜこれまで順調だったのか」を考え抜いた上で、根本的打開策を打ち立てなくてはならないのです。さもなくば、手遅れになってしまうのです。

 人間はリズムで動くところがあります。このリズムが狂ってきたら、早めに手を打たなくてはならないのです。なぜなら、坂道を転がって落ちたとき、時間がそれほどたっていなければ、ストップできますが、時間がたってしまうと、猛スピードなるが故に、手の施しようがなくなります。これと同じことが起きてしまうからです。

 話を日本経済のことに戻します。日本経済の現状を打開するには、悪しき実態の原因となるものを取り除かなくてはなりません。つまり、個の抑圧を止め、個を解放しなければならない。そして、構想力の養成を無視するのではなく、重視しなければななりません。そして、そのようなことを可能にするような、社会の仕組みを創らなくてはなりません。

 それでは個を解放し、思考の3原則を適応した、構想力を豊かにする社会をどのようにして創りあげたら良いのでしょうか。そして、何を目的にしたら良いのでしょうか。この設問に答えるために作成したのが下記の図表5です。

図表5 日本が目指すべき社会像とその創り方

 「良いものは良い。悪いものは悪い」とする風潮、つまり、市場原理が普及している。多様な活躍の機会がある。この二つの条件を充足するためには、国民の構想力のレベルアップが必要です。なぜなら、次のことが指摘できるからです。

 市場原理に基づいた行動を可能にするためには、判断力のみならず、「いざとなればどうにでもできる」という開き直りに似た自信が必要。そして、構想力があれば、この必要性に応えることができます。なぜなら、構想力は次のような特徴を持っているからです。

 思考の3原則を適用できなければ、優れた構想を提起できない。思考の3原則を適応しなければ、適切な判断を下せない。つまり、豊かな構想力と適切な判断力の源は同じなのです。

 チャンスを確実にものにしたり、窮地からの迅速な脱出を可能にする策を講じることができるのであれば、「我一人行かん」の自信を持てる。つまり、「いざとなればどうにでもできる」という開き直りに似た自信を持てるものです。そして、このようなことができずして、「豊かな構想力がある」とはいえないのです。

 以上の議論から明らかなように、わが国社会における個の解放の大前提は国民の構想力強化なのです。そして、日本経済の現状を考えますと、個の解放が経済のソフト化と内需の拡大に結びつかなくてはなりません。そして、このようなことを可能ならしめるハイライトは母産業都市機能の拡散です。なぜなら、次のことが指摘できるからです。

 先の図表3で示したように、東京一極集中は就労機会の偏在を生み、これも日本人の縮み思考を招いていたのでした。その意味で、多様な機会を作るためには、地方の要所要所にも、企業の本社機能を集積しなければなりません。いいかえれば、母産業都市機能を拡散しなければなりません。

 この本社機能を確立するためには、社会的に有益な新しい製品やサービスを次から次へと生み出すことができるようにならなくてはなりません。そして、豊かな構想力がこのようなことを可能ならしめることはいうまでもないことなのです。

 以上述べたようなことが実現できて始めて、一人一人の心の奥底から涌き出るようなニーズが具体的に生まれ、このニーズに応える開発力も育つ。そして、結果として持続力ある開発が可能なるが故に、工業製品の成熟化などを乗り越えて、内需拡大が可能となるのです。

 以上のことをシナリオ化して示したのが、図表5なのです。それではどのようにして図表5に位置付けられた、5つの要因を実現させたら良いのでしょうか。この要請に応えるのが以下の議論です。




 しかしながら、「日本において個が抑制され、個人の起業が困難であった理由」を吹き飛ばすことが可能な時代になりました。→窮地に陥っている日本経済の処方箋(フォローの風が吹くようになったのです)


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