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2018.12.25 |
【斬新な着眼】

緊急の課題である“孫悟空”の短期育成はイノベーションのロジック注入によって実現できる──、あの高橋尚子さんと小出監督の動静から考える〈2003/3/11〉
高橋尚子さんはなぜ独立したのか
― 組織の掟が“孫悟空”の演技を困難にするからだ ―
シドニーオリンピックの女子マラソン優勝者・高橋尚子さんが来月末(母にメールした時点のことです)に積水化学を退社することになりました。このニュースは「ああそうですか…」ではすまないものがあります。なぜなら、日本の企業のこれからのあり方に貴重な示唆が含まれているからです。私の自問自答の形で解説します。
(質問1) 高橋尚子さんは積水化学に所属していても、マラソン選手としての特別扱い並びに社員プロとして他社のコマーシャルへの出演…の継続が約束されている。にもかかわらず、なぜお世話になった同社を退社しなければならないのでしょうか?
(回答1) 昨年末に積水化学を退社した、尊敬する小出監督の指導を受けるためです。同監督は自身が代表取締役になり、株式会社「佐倉アスリートクラブ」を設立していたのでした。
(質問2) 積水化学の社員であれば、給与所得が保証されていますが、独立しますと、そうはいきません。積水化学を退社した後の高橋さんの経済生活はどうなるのでしょうか?
(回答2) スポンサーを見つけて自分で稼がなくてはなりません。彼女は自分に宣伝媒体価値を認めてくれる企業や個人を探さなくてはならないのです。でも、彼女の価値のことを考えますと、多額の金額を払うスポンサーが見つかることでしょう。候補が既に存在しているかもしれません。(母にメールした時点での想像です)
(質問3)社員プロとして他社のコマーシャルへの出演の延長として他社の指導者の世話になってもいいはずです。にもかかわらず、高橋尚子さんは積水社員のままであると、どうして独立した小出監督の指導を受けることができないのでしょうか?
(回答3)積水化学には新しい監督が既に就任しているからです。社内に監督がいながら他社の監督の世話になるわけにはいかないからなのでしょう。
「巨額のスポンサー料を負担できないから」という考え方は成立しそうもありません。なぜなら、彼女のとてつもなく大きな宣伝価値は、積水ハウス等を含む積水グループでこの宣伝価値を吸収しきれないとしても、彼女を使った宣伝効果のあるドラマ、キャラクター・グッズの開発・販売等など、色々なことが考えられるからです。
(質問4) 高橋尚子さんだけは他社の監督の指導を受けることができる。このような特別扱いがどうしてできないのでしょうか?
(回答4) 社員プロとして他社の広告もできる。これは許容できても、他社の監督の指導を受けることまでは許容できないからなのでしょう。
積水化学の社員である高橋尚子さんが他社の監督の指導を受けることは、積水化学本業の社員が自社ではなく、他社の人間の支配下に入ることを意味する。こういうことを放置すると、企業経営の生命線である指揮系統を無視してもよい…ということにまで発展しかねない。だからなのでしょう。
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個性抑圧型人事管理は成功要因から失敗要因に転じてしまった |
この回答4から大きな問題が発生します。 なぜなら、企業経営の生命線である指揮系統に潜んでいる考え方の見直しが必要になってきているからです。日本の企業ではどのような人事管理が伝統的に行われてきたかの説明を行うことからこの問題を取り上げます。
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日本の企業における伝統的な人事管理
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日本は組織に所属する人間は自分を殺して清々粛々と動くことが当たり前の社会でした。だからこそ、日本は戦後の荒廃から立ち直り、世界第二位の経済大国に短期間でのし上がることができたのです。
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日本における伝統的な人事管理の背景
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日本の社会は長い間、先進国に既にあるものの改良・改善で事足りました。古代は中国、明治時代はヨーロッパ、第二次世界大戦後はアメリカ…といった具合に先進国が先生だったのです。
そして、日本を短期間で世界第二位の経済大国にしてくれた、冷蔵庫・洗濯機・冷暖房機等の必需品の大量生産・大量販売が可能であったために、「枠を外れた行動をしてはならない」とばかりに減点主義が社会全体に普及しました。
したがって、現存するものを否定して新しいものを創造する精神が多くの日本人から消え失せてしまいました。そして、高性能なロボットのような人間が輩出されることとなりました。
以上の説明をお読みになり、「そうか。人事管理のあり方を根本から見直さないと、日本は再生できない」と思われたことでしょう。その通りなのです。なぜなら、前にも申し上げましたように、冷蔵庫・洗濯機・冷暖房機等の必需品が国内に普及しきった上に、中国等の開発途上国で生産した方が有利になってしまいました。日本は方向の転換が必要になったのです。これから必要なのは、高性能なロボットのような人間ではなく、独創的な、いいかえれば、個性的な人間だからです。
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日本再生に必要な人間像と社会のあり方 |
一人一人がやりたいことを率直に表明できる。やりたいことを組織的に応援する。「やりたい」と表明し、組織的な応援が得られたことを一人一人が責任を持って完遂する──、こういう一連のことができるようになければならないのです。
上記のようになって始めて日本の企業、ひいては日本経済は再生に成功できるのです。そうです。経営システムに個人を全面的に従属させる時代は終わったのです。
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日本の経営者の気の毒な事情 |
独創的・個性的な人間は遠ざけられがちで、面従腹背であったとしても清々粛々と動く人々しか扱ったことがないに等しい。こういう経験しかしてない日本の経営者は大変な時代を迎えたわけです。でも、再生に成功するためにはこの事態を乗り切るしかないのです。
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企業再生のために経営者が心がけるべきこと
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時代が要求する新産業創出のための子会社等で小さく実験して、その実験によって得られたノウハウを全社的に応用する──、こういうやり方が必要だ、と言えましょう。
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超社員中心型経営の実験を行う絶好のチャンスだったかも |
そうです。破天荒な行動を採る孫悟空のような超社員が始めにありき…なのです。そういう意味で、積水化学にとって高橋尚子さんはひとつの実験材料になれたかもしれないのです。理由は次の通りです。
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超社員が超社員であるためには、所属企業の新しい市場価値を創造できるのであれば、社内の命令系統を無視した行動を採ることができなければならない。
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特定社員だけが社内の命令系統を無視した行動を採ると、様々な波紋が広がり、不測の事態が発生するかもしれない。
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発生する不測の事態を認識して、「思わざる良い結果が生まれた。しめしめ」「この程度だったら大丈夫だ」「こうすれば、マイナスを最小限に食い止めることができる」…といったようになれる。
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小さな実験を生かして全社的な対策を講じることによって、“小さく生んで大きく育てる”という理想的展開が可能となる。
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目次の前にある文章をお読みになっていない方へ
上記の文章は筆者の母へのメールを転載したものであることをご承知おき下さい。
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