[TRI] Total Renovation Institute 新創業研究所
E-Mail: info@trijp.com
〒311-1203 茨城県ひたちなか市平磯町414-7
 来客用駐車場があります
TEL 029-229-0225


新創業研究所が掲載した数多くの有益コンテンツがGooleで第1位にランクされています

トップページ


個性的才能を引き出す性格診断の勧め

第2部 悲劇の人生の裏に臨機応変力のなさがある ─ 人生・仕事の問題解決者を登用しなかったことが悔やまれる ─

『孤独の賭け』から学ぶ

性格無知が最強のコンビ形成を妨げてしまった

2008.5.25

物語のあらすじを予め理解しておくことをお勧めします

ボタンの掛け違えが百子の梯二郎からの独立を決定づけた

(節子) 梯二郎は事業上の大事を抱えていて余裕はなかったにもかかわらず、お金だけではなく時間とエネルギーを百子に投資した。彼女が彼の夢の事業展開におけるキーパーソンとして位置づけていたにしても大変な犠牲よね。ところが、百子は梯二郎の掌からするりと抜け出してしまった。

 百子がそういうことをしかねない人間ならともかくそうではない。執念深いので、恨みだけではなく恩も深いはず。そういう人間がどうして恩ある人を裏切るようなことをしてしまったのかしら? 「梯二郎に対する激しい怒りが後押してくれた」という理解を前回の議論でしたけど、それだけでは物足りなくなった。人間関係の失敗例としてこの問題を採り上げたいの。

 『孤独の賭け』は天才的企業家だった梯二郎の挫折並びにずーっと負け組みだった百子の勝ち組への大躍進がメインテーマとして受け取られるかもしれない。しかし、大事な人を惹きつけることができなければ最終的な幸せを得ることはできない。このことを考えると、二人の人間関係の失敗の方が重要なテーマではないかと思うようになったの。

(高哉) 同感だね。「自分は過去も今も凄く大切な人間として扱われきている。実にいい人生だった」と思いつつ、あの世に安堵に満ちた表情で旅立つことできる。これが究極の幸せだからね。梯二郎と百子はこうなれる可能性がある人間だった。というのは、電撃的に惹かれあい、ぎくしゃくしながらも執着しあっていたからね。にもかかわらず、人間関係が失敗に終わったのはどうしてなのか? これまでの議論と重複する箇所もあるけど、次の場面の分析から始めたい。

 梯二郎は300万円(現在価値で約3000万円)で買い取った土地家屋を契約金として百子の名義にし、彼女を洋裁店とバーの雇われ経営者として登用した。ところが、百子は独立を視野に入れてこの土地家屋を現金に換えて株式投資をすることになった。こうなったことの真相究明は次の二つの謎解きから始めなければならない。

梯二郎は名うてのやり手。にもかかわらず、甘い計算をすることになってしまったのはどうしてなのか?

百子は恩を忘れない人。にもかかわらず、裏切り行為を密かに画策してしまったのはどうしてなのか?

(節子) 梯二郎が甘い計算をすることになってしまったのは、何事もポジティブに考えるのでついつい攻め一方となる。この癖はネガティブにも考えて始めて可能になる守りを知らないことに結びつく。そして、この背景に梯二郎の性格がある。いいかえれば、梯二郎は自分の性格に振り回されて甘い計算をすることになってしまったのだと思う。

 百子が裏切り行為を密かに画策してしまったのは、「滅多なことでは人を信用しない ⇒ すべからくマイペースで事を運ぶことに強く執着する ⇒ 梯二郎のコントロール好きを敏感に感じ取った ⇒ 事業が上手くいってもいかなくても梯二郎の支配下に置かれるのは嫌だと思った」という図式のなせる業。いいかえれば、百子は自分の性格に振り回されて裏切り行為を密かに画策してしまったのだと思う。

(高哉) 梯二郎と百子は性格に振り回されている限りは相性が良くないんだよね。でも、百子は梯二郎に強く惹かれていたので、二人の間を引き裂くことに結びつきかねない裏切り行為を直ぐには考えなかったと思う。 百子は何事も過去の経験に照らして想いを巡らせて「よしこれだ」となることが多い人だからね。

 「よしこれだ」が裏切り行為を密かに画策することになってしまったのは、梯二郎が百子の感情を逆なでするボディー・ブローを度々撃って、これがボディー・ブロー効果になってしまったからだと思う。

(節子) 横暴極まりない発言を梯二郎は繰り返していたことを考えると、貴方の意見に賛成するしかないわね。

 「50万円(現在の価値で約500万円)の追加融資はOK。利息は日歩10銭ではなく3分でOK。但し、3ヵ月分の利息の代わりに自分の自由に今直ぐさせてくれ」は経済的には気前がいいかもしれないけど、百子のような性格の持ち主にとっては反吐が出るほど嫌なことよ。もっと酷いのは「投資しているのだからたまにはこちらの都合に合わせて一晩付き合ってくれ!」という言葉よ。百子が「一日も早く梯二郎から独立したい」と思うのは当然過ぎるくらい当然よ。

 それはそれとして、百子に全面的に同情すべきかどうかを判断するためには聞きたいことがある。百子が梯二郎から洋裁店「ボヌール」を買い取った背景には、梯二郎の事業がピンチに陥っていることを業界誌の記者から知らされ、「このままではボヌールが第三者の手に渡ってしまう。店の買取を急ごう!」となったことがあると思う。

 この限りでは百子の行動に正当性がある。しかし、業界誌の記者から聞いたことを梯二郎に直ぐに伝えなかったことには問題を感じる。どうして黙っていたのかしら?

(高哉) 業界誌の記者から聞いたことを梯二郎に伝えることは「梯二郎が自分の挫折の噂が広がることを防止する措置を採る ⇒ 梯二郎の金詰り時期が先に延びる ⇒ 梯二郎が起死回生策を講じる時間的余裕が生まれる」という図式に結びつく可能性はないではない。しかし、そんなことを考える精神的余裕は百子にはなかったと思う。

 百子は「このままではボヌールは第三者の手に渡り、私の独立は不可能になってしまう」と単純に考えたのだと思う。ボヌールが第三者の手に渡ってしまうと、百子はもっと酷いことになってしまうからね。梯二郎には支配癖がある反面、百子の才能を誰よりも高く評価してくれるという良さもある。ところが、他の人にはそんなことは期待しにくいからね。

(節子) 百子の本質を詰めたいために聞くんだけど、彼女は「梯二郎の胸に飛び込みたい」という誘惑に駆られたけど、「自立した女でありたい」と思い返して自制したことがあったじゃない。この揺れ動く心理の背景にどんなことがあったのかしら?

(高哉) 百子の性格がものの見事に現れたシーンだと思う。というのは、この揺れ動く心理の背景には次の図式があることが考えられるからだ。

 滅多なことでは人を信用しない ⇒ 自分が捨てられるかもしれないという不安がある ⇒ 梯二郎の胸に飛び込んだ後で捨てられることは自分の無能を思い知らされることになる。

 この図式は雇われ経営者であることからくる不安に置き換えることができる。というのは、百子の強い独立志向の背景には「独立する ⇒ 思い切ったことができる ⇒ 有能感をとことん味わうことできる(詳しくは ⇒ 『自分の可能性追及にとことんこだわった』)」だけではなく、「独立する ⇒ 捨てられないですむ ⇒ 有能感を損なうことを防ぐことができる」という図式もありそうだからだよ。

(節子) となると、梯二郎の支配癖だけが百子を独立に駆り立てたわけではない。梯二郎の人間関係は共に成長する気持ちが薄くなってしまっていることにも大きな原因があるかもしれないわね。そうでしょ?

(高哉) 間違ってはいないけど、そのように結論づける前に百子の独立心の背景にある心理をもっと深く理解する必要がある。有能感をとことん味わうことができる。しかも、有能感を損なうことを防ぐことができる。こういうことが約束されるのであれば、百子は独立にはこだわらない人間だと思うんだ。

 挫折した梯二郎が百子に150万円(現在価値で約1500万円)を借りようとした。このお金が中川京子のためであることを知って断った。しかし、梯二郎自身の事業再出発のためであったら150万円だけではなく、百子の持っている全財産を注ぎ込んでもいい。こう思ったことが何よりの証拠だと思う。ここまでの犠牲的精神を持つに至った背景には、次のようなことがあるんじゃないかな。

 梯二郎は誇り高き人間であるので挫折後は自分の前から姿をくらますであろうという現実に直面して、この現実の持つ意味を自分の人生を振り返って考えた結果、次のようなことが順次想起されたと思う。

 自負する才能を誰も認めてくれない人生が続いていたので、自分は才能を発揮し切れなかった ⇒ 初対面でありながら自分の才能をずばりと見抜いてくれたことがきっかけとなり、自分は伸びやかに才能を発揮できるようになった ⇒ 自分の有能感を認められることが自分にとって一番大事なことであると思うようになった

 ⇒ 梯二郎が喉から手が出るほど欲しかった融資あるいは出資がふいになることを恐れることなく、土建会社の自分に対する暴言から自分を守ってくれた ⇒ 「この世の中で一人だけ選びなさい」と言われたら迷うことなく梯二郎を選ぶことに気づいた ⇒ 梯二郎が相変わらず自分を一番大事に思ってくれる限りは「自分の有能感を満足させてくれることにおいてダントツの梯二郎を全面的に支えたい。そのためだったら独立が維持できなくなっても構わない」となった。

(節子) 今の説明は納得できる。百子が自分の持っている全財産を注ぎ込んでもいいと思ったのは単なる恩返しではないのね。

(高哉) その通りだと思う。彼女は自分が躍進できたのは自分の才能のお陰だ。借金だって返しているだけではなく、逆に貸す立場になっている。したがって、梯二郎に対する負い目はない。一方において支配癖は嫌だけど、自分をよく理解し、男の中の男である梯二郎は好きだ。したがって、自分第一に考えてくれるのであれば、なんとしてでも梯二郎を助けたい。このように思っているんじゃないかな。


前ページへ 目次 次ページへ




 悩み事相談skype電話ご訪問…のいずれでもOKです



▲トップ  → トップページ