[TRI] Total Renovation Institute 新創業研究所
E-Mail: info@trijp.com
〒311-1203 茨城県ひたちなか市平磯町414-7
 来客用駐車場があります
TEL 029-229-0225 


新創業研究所が掲載した数多くの有益コンテンツがGooleで第1位にランクされています

トップページ


個性的才能を引き出す性格診断の勧め

第2部 悲劇の人生の裏に臨機応変力のなさがある ─ 人生・仕事の問題解決者を登用しなかったことが悔やまれる ─

『孤独の賭け』から学ぶ

性格無知が天才型事業家を挫折に追いこんでしまった
 ― 梯二郎の全てが百子との関係に現れている ―

2007.12.23

物語のあらすじを予め理解しておくことをお勧めします


自分の思い通りに事を運ぼうとして墓穴を掘った

(節子)
百子は一流の洋服デザイナーの地位を確立。不況に突入する前に株を売り逃げ。そして、「ボヌール」を500万円で買取り、200万円、現在の貨幣価値に換算すると約2000万円が手元に残った。一方、梯二郎はタレントとしての百子を自分の事業のために使うことなく挫折。したがって、二人の孤独な賭けは百子の勝利、梯二郎の敗北で幕を終った。

 梯二郎が挫折してしまったのは、事業が伸るか反るかの大事な時に百子にうつつを抜かしていたからではないかしら? やっとの思いで開店させた娯楽の百貨店が完全に軌道に乗る前に海上カジノをメインテーマにする大歓楽境構想を具体化させようとしていた。そういう時に百子との交流があったのよね。

(高哉) 前にも言ったように、彼女は夢の事業を成功させるためになくてはならない重要人物。したがって、「百子にうつつを抜かしていた」という表現は当たっていない。とは言うものの彼女にかなりの時間とエネルギーを奪われただけではなく、事業の邪魔をされたことがあった。このことを考えると、彼女の存在がマイナスになったことは否めない。しかし、挫折の主な原因は他にある。というのは、「順調」から「挫折」に転じてしまった原因を図式化すると、次の通りになるからだ。

 景気が長期低迷に転じた ⇒ 銀行が貸し渋りに転じた ⇒ 高利貸への依存度が拡大した ⇒ 金利が嵩んだ。と同時に不況がレジャー産業を直撃したために営業利益が激減した ⇒ キャッシュ・フローが極度に悪化した ⇒ 高利貸による代理弁済が執行された ⇒ 一部の不動産以外の全ての資産・権利を失った。

(節子) 不況がレジャー産業を直撃してもこれを逆手に取った事業のやり方はなかったのかしら? 梯二郎はレジャー産業のことを知り尽くした天才なんだから何か手があったはずよ。

(高哉) 不況成金を相手にした事業を考えた。しかし、資産のほとんどが担保に取られていたので、考えついた事業を展開するための資金調達ができず指を咥えているしかなかったようだね。

(節子) 貴方がいつも言っている「こうなったらこうする」というシナリオはなかったのかしら? なかったとしたら頭脳明晰な梯二郎がどうして非常時に備える考えがなかったのかしら?

(高哉) どんなに有能な人物でも何かに熱中していると、視野がどうしても狭くなってしまうんだ。火事場の馬鹿力のことを考えれば分かりやすいんじゃないかな。こうなっている時は神業のような力を発揮する。しかし、直面している問題のことしか考えられない。こうならないためには、社長自ら陣頭指揮する。いいかえれば、本人が全力で挑戦する場合は有能な参謀を登用しなければならない。

 だから、僕は大事を決断・決行する前にシミュレーション・サービスを受けることを強く勧めるんだ。そうしないと、「ケチれば損をする」ことになってしまう。大型のプラントを海外で建設する時に建設作業に従事する人々に事前にしっかり教育しないと、次の図式にはまり込んでしまうことがほとんど。これと同じことなんだ。

 大幅の納期遅れになる ⇒ 大幅のコストアップになる ⇒ 採算割れとなってしまう。のみならず、信用失墜を招く。

(節子) 超ワンマン社長であった梯二郎の限界が露呈されたというわけね。彼がタイムリーに参謀を登用していれば、景気動向を適切に判断し、「こうなったらこうする」というシナリオを予め頭の中に入れて適切な行動を採り、挫折することはなかったわね。

(高哉) これで百子の存在は梯二郎の挫折の主な原因ではなく促進要因だったことが分かったよね。ただ、百子に夢中になった分、参謀登用の必要性を気づきにくくしたということは否定できない。

(節子) やっとの想いで開店させた娯楽の百貨店が完全に軌道に乗る前に海上カジノをメインテーマにする大歓楽境構想を具体化させようとしていた。こういう大事な時だったことは百子との関係を悪くしたのでしょうね。

(高哉) その通りだよ。アイデンティティを臨機応変に再構築する特徴を持っている百子とうまくやるためには、次の図式を実現させる必要がある。

 (梯二郎が自分の性格と由来を認識している ⇒ 性格に振り回されるようになることに気づく ⇒ 「失敗したくない」「成功したい」という誰でも持っている本能が作動する ⇒ 視野狭窄症、ひいては拘禁服着用症に罹らないようにすることが可能になる) + 百子の性格、つまり行動力学を認識している ⇒ 百子が変な気を起こさないように早めに手を打つことができる。

 ところが、梯二郎は大歓楽境の資金調達を目的とした外資導入のことでしゃかりきりになっていた。このことが原因して次の図式に結びいたと考えられるからね。

 梯二郎が自分の性格と由来を認識していなかった⇒多忙さも手伝って性格に振り回されっ放しだった ⇒ 拘禁服着用症に罹り、しばらく会っていなかった百子に連絡をすることなくアメリカに行ってしまった ⇒ 有能感が損なわれることを極度に嫌う百子に裏切りの大義名分を与えてしまった ⇒ パー「ボヌール」の所有権を梯二郎から氷室に変更する裏工作が行われることになった ⇒ 裏切り行為を躊躇わせる壁が崩れたために、梯二郎からの独立の動きに加速がついた。

 良心に反するけど、やりたい。こういうことは一度弾みがついてしまうと、良心なんかふっとんでどどっといってしまうことが多いもんだよ。

(節子) 東野は百子のことで梯二郎に「手を切れ」ってしきりに警告を発していたじゃない。にもかかわらず、梯二郎はこの警告を無視した。東野の支配を受けることなく大歓楽卿の資金を調達するために外資導入のことでしゃかりきりになっていたとにしても自分のことを心配してくれる人を遠ざけるなんて梯二郎は肝が太そうで細いのかしら?

(高哉) そうではない。価値観の違いがあるんだ。この当たりのことを説明すると、次の通りになると思う。

 梯二郎は未来進行形の自転車操業型事業を展開する。一方、東野はこのような形で事業規模が拡大すると物凄く心配する恒産主義者。したがって、梯二郎が百子に借金して調達した資金をつぎ込んでいることは許しがたいこと。百子が梯二郎が夢みている事業を成功させるために必要不可欠な人材であることは理解できることではない。女道楽にしか見えない。

 
僕も仕事で似た経験をしたことがある。事業展開シナリオのことを説明した。そしたら、若い次期社長は気に入ってくれたが、年老いた社長は超一流大学出身でありながら理解できなかった。この背景には、その場凌ぎの世界しか経験したことがない。いいかえれば、目先のことしか理解できないことがある。言われがちな「日本人は欧米人に比べて抽象概念を理解する能力が極めて低い」ということも同じことだと思う。

(節子) 東野は代理弁済権付きで資金を提供しているわけだから梯二郎の会社が倒産しても実害はない。にもかかわらず、梯二郎に干渉していたのは親心もあったんじゃないかしら? だとすれば、梯二郎は「かくかくしかじかの事業的なメリットも考えて百子と交流を深めているんだ」といった具合の説明をきちっとすべきだったんじゃないかしら?

(高哉) 梯二郎が東野に全てを明かさなかったのは、二つのことが原因していたのではないかと思う。自分で考えて自分で行動することに慣れきっている。しかも、事業拡大に成功してきた。したがって、「うるさいなぁ」となっていた。人間はリズムにしたがって行動することが大好きな動物。このリズムに忠実になりすぎると、性格に振り回されて現実直視力を失ってしまう。

 交渉相手にこちらの全てが丸見えであると、相手は詳細な地図を見ながら目的地に赴くようなものになる。したがって、相手は思い通りの交渉ができる。その分、交渉はこちらに不利になる。こういうことが頭にあって、梯二郎は「自分の神秘性を保つために手の内を明かしてはならない」と思っていたかもしれない。これがもうひとつの原因というわけだよ。

←前ページへ 目次 →次ページへ




 悩み事相談skype電話ご訪問…のいずれでもOKです



▲トップ  → トップページ