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【斬新な着眼】



→成熟市場を勝ち抜くためには個性的ニーズへの合理的対応を(その1) ― フランスの化粧品小売チェーン店・Sephoraの革新的経営から考える〈1999/10/22〉

 コンサルティング・セールスを行う販売員が白衣を着て、専門用語を使い、美容の一流の専門家であるようかのように振舞う。このように演出されたイメージで販売商品の高価格を正当化する。但し、このままでは客単価が低くなりかねない。そこで、様々な商品をセット化して、客単価を大きくする準備をする。でも、このようにセット化された商品を買ってくれなければ何もならない。そこで、販売員を販売熱心にするために、コミッション・ベースの給与制度を採用する。

 このように用意万端整えても、顧客が沢山来なければ、折角の高収益事業のポテンシャルは顕在化しない。そこで、来店客数最大化を狙って、化粧品は百貨店の1階を中心的売り場にすることとなって久しい。だから、百貨店の収益の約2割を化粧品が占めているのだ。

 このような伝統的な化粧品商法に真正面から挑戦し、大成功を収めつつある化粧品小売チェーン店がある。その名はChristian Diorなどを傘下に収めている、フランスのLVMHが1997年にイギリスの企業から買収したSephoraだ。

 このチェーン店は最初から革新的経営で成功を収めていたわけではない。買収により経営主体が変わってから伝統を打ち破る経営手法を採用してからなのだ。買収後の僅かな期間で店の数は4倍となり、総店舗数は220ほどになった。

 顧客が自分の気にいった商品を自由に選択できるように、ブランド別に商品を陳列。選択の幅を広げるために、知名度の低い商品をも店内に陳列。顧客による商品の自主選択を徹底するために、顧客が質問するまで店員はしゃしゃり出ず、じっと待機。したがって、供給側の論理に基づいた、商品のセット販売は一切しない。そして、このような待ちの姿勢による販売を支援するために、コミッション・ベースの給与制度を採用していない。

 大躍進の源となったSephoraの経営革新の概要は上記の通り。若い世代を意識した、このやり方が成功であったことは、店舗数の拡大だけではなく業績にも現れている。化粧品の販売金額の年間伸び率を百貨店方式とSephoraとで比較すると、前者が3.5%であるのに対して、後者は11%になっているのだ。だからこそ、Sephoraの総収益は昨年55%伸びて、375百万ドルに達し、数年内に10億ドルになることが見込まれているほどなのだ。

 今年の10月14日にニューヨークの5番街に出店した最先端の店を簡単に紹介しつつ、Sephoraの成功の秘訣を他業界にも参考になるよう分析的に眺めてみよう。市場が成熟化するにつれて、モノを扱う企業は低収益を余儀なくされることが多いが、この壁を乗り越えるヒントが掴めるはずだ。

1、顧客を圧倒的に惹き付ける

 市場が成熟すればするほど、顧客ニーズは個性的になる。個性的ニーズに対応するためには、「自分はありきたりの店に来ているのではない」と思わせるような店の雰囲気づくりが必要になる。プライドが邪魔して、ダサイ店には入りたがらない。こういう顧客の深層心理にも配慮しなければならないのだ。Sephoraのニューヨークの5番街店は部族的な芸術作品を装飾品に使うことで、この問題に対応している。

 個性的な雰囲気を持った店であっても、個性的な購買行動を支援できなければどうしようもない。この支援活動で配慮しなければならないのは、顧客は専門家ではない場合が多いので、「この商品」という具合に予め決め込むことができにくいことだ。

 どうすればよいのか。商品供給者は様々な商品を一箇所に集める必要がある。だからこそ、Sephoraのニューヨークの5番街店は世界中から300ブランド、16000種類の商品を陳列。したがって、店舗面積は1951平方メートルと世界一のマンモス店となったのだ。

 でも、マンモス店になっただけでは顧客を惹き付け切れない。圧倒的な品揃えに直面して顧客は迷ってしまうからだ。そこで、Sephoraは他業界の経験則を使って、この問題への対応を行っている。レコード店や書店でよく見られるように、売れ筋ベストテン並びに新商品のコーナーを別々に設けた上で、前述したように、ブランド別の商品陳列を行っているのだ。

 顧客の便宜を図りつつ、品揃えをできるだけ豊富にする。そのための一番簡単な手段はSephoraの上記マンモス店方式。でも、業種によっては、あるいは企業によってはこのようなやり方が採れない場合がある。そういう場合、どうしたらよいのであろうか。

 商品の構成要素は幅と深さであることを考えると、スキンケアやメイクアップに特化するなど、市場を絞り込んで幅をカットし、深さで勝負する。あるいはAmazonのように、インターネット小売業を営む。こういったやり方が必要になろう。

 但し、インターネット小売業を営む場合は、「例外的な商品であっても必ず手に入る」という評判を確立することが、顧客を圧倒的に惹き付けることに結びつくことは言うまでもないであろう。

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