[TRI] Total Renovation Institute 新創業研究所(古河イノベーションセンター)
〒306-0024 古河市幸町4-31(来客用駐車場があります)→道案内
東京から乗換なしで60分前後の古河駅から徒歩13分です→鉄道路線図   

E-Mail: info@trijp.com
TEL 0280-23-3934

2018.12.25

トップページ


【斬新な着眼】



→緊急の課題である“孫悟空”の短期育成はイノベーションのロジック注入によって実現できる──、あの高橋尚子さんと小出監督の動静から考える〈2003/3/11〉


 “孫悟空”が今なぜ日本で必要なのか

    ―常識にとらわれない発想・行動が企業を救うからだ ―

 今日は「孫悟空のような行動を採ってきた私の実際の話をします」という先週のメールの約束の履行です。分かりやすくするために、自問自答の形を採った説明をします。

(質問1) 孫悟空的な行動って、どんな状態を指すのでしょうか?

(回答1)所属企業の新しい市場価値を創造する。そういうことが可能かつ必要であれば、社内の命令系統を無視してでも新しいことに果敢に挑戦する──、これが孫悟空的な行動です。先週のメールの中でうたってある通りです。

(質問2)孫悟空のような行動が今なぜ必要なのでしょうか?

(回答2) 日本経済復活のためには、量産・量販型の工業製品に代わる新しい産業を起こさなくてはならない。そのためには、一人一人の個性をとことん大事にしなければならない。ところが、残念ながら日本の大多数の経営者はこういう経営をしにくい。(このことは先週のメールで申し上げたのでした)

 となると、その気になった個人は独断専行的な行動を採るしかない。だからなのです。

(質問3)日本再生に必要不可欠な孫悟空的な行動を採る人が皆無に等しい。日本の社会がこうなっているのはどうしてなのでしょうか?

(回答3)抽象的なことを想像して、その結果に基いて果敢に挑戦する人が皆無に等しいからなのです。

 古代は中国、明治時代はヨーロッパ、第二次世界大戦後はアメリカ…といった具合に先進国が先生だった日本人に根づいたのは実績主義、横並びの習慣です。その様は、遺伝子の支配を受けているかのようです。難破してしまった「タイタニック号」にひっかけた、次のジョークを否定する人がいないほどです。

 救命ボートに全員乗り切れず、女性や子供を助けるために何人かが犠牲にならなくてはならない。英国人に「貴方はジェントルマンだ」と言うと、彼は悠揚としてボートを離れた。米国人には「貴方はヒーローになれる」と言うと、ガッツポーズで海に飛び込んだ。次にドイツ人に「これはルールなのだ」と言うと、納得して従った。最後に日本人に「皆さんそうしていますよ」と言うと、周りを見渡しながら慌てて飛び込んだ。

(質問4) 新産業を起こすことに成功すれば、企業利益拡大を通じて給料があがります。ほとんどの人がこのことを待ち望んでいます。必死の行動だって期待できます。となれば、実績主義、横並びの習慣なんか吹き飛ばしてしまうのではないでしょうか?

(回答4) そう願いたいものです。でも、現実はそうではないのです。なぜなら、気が遠くなるほど長年続いた実績主義、横並びの習慣は3段階にわたる影響をもたらしているからです。

1. 麻痺した感覚が新産業創出に結びつくチャンスを気づきにくくしている

 オートメーション装置の監視者は「ノントラブルの長時間継続⇒感覚麻痺⇒トラブル看過」…という事態に陥りやすいものですが、この現象は日本の産業人にとって他人事ではないのです。

 なぜなら、日本の伝統的社会にどっぷりと浸かり続けますと、「人間関係の固定化⇒集団の同質化⇒異俗排除傾向の発生⇒異俗に対する免疫力衰退⇒自己否定を避ける本能拡大⇒異俗の徹底的排除(抑圧的環境の実現)⇒新しいものとの断絶⇒感覚麻痺(思考力低下)」…となってしまいがちだからです。

2. 構想力・独創力の大幅不足がチャンスをものにしにくくしている

 過去の延長線上を突っ走る。あるいはもぐら叩き的な対策を講じる──、こういうやり方が日本人には遺伝子のように根づくに至っています。

 このようになっていまいますと、チャンスに仮に気づいたとしても、チャンスをものにすることはできません。三つの例がこのことを如実に物語っています。

所属している業界の枠を超えた技術要素を組み合わせる(衝突でへこんでも暫くすると、元に戻る自動車のバンパー等)

顧客の抱えている問題の創造的解決策を提案して、その実現手段となる業界の枠を超えた製品・サービスの組み合わせを提供する(老朽化したビル別の節電ノウハウを武器に、断熱材・節電機器等のパッケージのリース代で儲けるニュービジネス等)

あらゆる問題を体系化して、核心的な問題を見抜き、この問題に焦点を合わせた対策を講じることよって、表面的な問題は将棋倒し的に解決する(真の個人パワーの強化による構造改革と景気回復の円滑な実現等)

 新しい時代のチャンスは上記の三つの例が示すようなことが実現されないと、陽の目を見ることができないのです。ただひたすら努力をすればよい時代は終わったのです。

 (「構造改革が先か、景気回復が先か」…なんてことを真剣に議論している政府筋と著名な専門家たちのことですが、彼らの努力は認めますが、洞察力が欠落している…としか言いようがないのです)

3. 徹底したリスク回避志向が成功確率の高いことへの挑戦を妨げてしまう

 三菱総研時代に吃驚するようなことを経験しました。時効ですからお話しするのですが、ある日、M金属鉱山の取締役研究開発部長が私を訪問。そして、次のようなことを言ったのです。

 「こちらの狙い通りの新規事業開発の計画書を作成して頂けませんか?」「私達は作成の能力を持っています。でも、私達が自分で提案書を作成するわけにはいかないのです。三菱総研の表紙がついた提案書が欲しいのです」

 事情を色々聞いてみた結果、次のようなことがあることが分かりました。

 同社は創業時だけの事業をやっているわけではない。いいかえれば、新規事業開発に成功した歴史がある。ところが、新規事業に携わった人々はことごとく悲哀を味わった結果、淋しく退社している。全社員がこのことをしっかりと見ているので、必要性があるにもかかわらず、誰一人として新規事業開発の仕事に従事したがらない。

 新規事業開発は正鵠を得たものであっても、軌道に乗るのに時間がかかります。したがって、長期採算主義の下で人事考課をしなければなりません。ところが、同社の経営者にはそのような認識がない。だからなのです。私はこの仕事を引き受けたでしょうか? 私がそんな仕事をする訳がありません。無論お断りしました。

 そうではない企業もありますが、M金属鉱山と似た企業は少なくありません。むしろ増えてきたようです。この背景には、失敗はリストラの大義名分になる…ということがあるようです。退職金、企業年金、労働市場等の問題がありますので、サラリーマン的行動には致し方がない面もあります。



目次の前にある文章をお読みになっていない方へ

 上記の文章は筆者の母へのメールを転載したものであることをご承知おき下さい。



   ▲トップ

前のページへ 【目次】 次のページへ


トップページ