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【斬新な着眼】



「嫌老社会」から「好老社会」へ(堺屋太一)(2003/10/14号)

この小論の論理的整理並びに補足

日本経済の診断

 日本経済の足を引っ張っている消費低迷の仕組みはどのようになっているのでしょうか? 認識しなければならないのは、日本の社会を蓋っている惰性です。

大多数の日本人が罹ったままになっている病
  素早く反応できる運動神経と新しい技術を覚え馴染む記憶力をひたすら重視する…という近代工業化社会の惰性が続いている。

 惰性が改まることなく続いている背景には、日本の社会をがんじがらめにすることに結びついた、下記の図式があるのです。

 規格型製品の大量生産が可能であった ⇒ 規格型製品の大量生産を効率的に行うために必要な人事評価制度が採用された ⇒ 採用された人事評価制度に適応できる能力や習慣が工業部門において急速に根付いた ⇒ 圧倒的な地位を占める工業部門の影響を受けて、非工業部門においても工業部門の評価制度が根付くこととなった ⇒ 肉体が衰えている高齢者を軽視・蔑視する風潮が根付いた。

 近代工業社会の惰性は高齢者蔑視の風潮を根付かせただけではありません。固定された狭い役割にしがみつく習慣が醸成されたために、バリバリの現役世代が様変わりした環境に適応するのを妨げることにも結びついています。(イメージ例 ⇒『旧態依然とした分類にこだわる書店』、『係長のような経営者』、『総合的判断の必要性に全く気づかない経営者』)

 そして、上記の惰性 (大多数の日本人が罹ったままになっている病) が2段階の悪影響を生み出し、このことが大きな原因となって、消費低迷を招いているのです。

高齢者は上記の惰性に縛られて、「伝授すべき知恵も人脈もない厄介者が人を呼ぶにはお金しかない」と間違って思い込んでいる。

高齢者は上記の間違った思い込みから脱出できないために、現役時代の貯えで悠々と暮らせる年齢になっても、なお節約に努めて年金の中からでも貯蓄している (70歳以上でも平均貯蓄額は1,800万円)、

日本経済の処方箋

 経済の牽引役になるべき消費を拡大するために四つからなるポリシー・ミックスを実施する。

50~60代の現役世代への「生前贈与拡大」「介護の不安や恐怖からの解放」のプレゼントを通じて消費や投資を拡大する ── こうなることを願って、85歳を超えた高齢者の生活は、国が丸抱えで面倒を見る。その代わり、年金の支給額を現在の生涯平均賃金の約59%から50%程度に引き下げる。

 この政策実施に必要な財政負担は「85歳以上の老人は約250万人 × 500万円 = 約12兆円」であって、現在の年金支給額や介護保険料と比べても驚くほどの金額ではない。

70歳まで働くことを選べる社会をつくる ── こうなることを願って、60前後の人が働きやすいオフィスのデザインを、全知全能を結集して考える。あるいは在宅勤務を普及させる。

によって、高齢者が保有する不動産や株式の現金化が大幅に減る (遺産相続時の不動産や株式の評価額が割高になるので、「親父、頼むから家や株は処分して貯金にしておいてくれ」というのが実態) ⇒不動産や株式の売却が大幅に減り、値上がりする。

④ によって、各自治体は高齢者サービス合戦をするようになる ⇒ 高齢者産業を誘致する ⇒ 高齢者がお金を払って楽しみと誇りを得られるサービスが増える + 高齢者が自立と自律できるように意識改革する ⇒ 高齢者自身の消費が実際に拡大する ── この図式実現を願って、

 高齢者が多い自治体には消費税の配分を増やす等、高齢者を養うと自治体に有利になる制度にする。

 欧米ではレストランにシニアー・メニューがあるし、公園は高齢者用に設計したものが多い。日本はその逆となっている。

指摘された核心的な問題や対策の概念拡大と論理化

なぜ嫌老社会なのか?

 “濡れ落ち葉”的存在になりがちだからです。その背景に、二つ図式があります。

規格大量生産の追及が可能であった ⇒ 組織内の技能伝承は容易であった + 個性の必要性は皆無に等しかった ⇒ 加齢に応じて市場性のある職業的能力を強化することは不可能に近かった。

人間は高齢になればなるほど自尊心が強くなる。しかし、職業的能力がこの自尊心に伴いにくい + 知力を鍛えることなく齢を重ねてきたために思考が偏狭かつ頑なになりがちである ⇒ 高齢者は不快な存在になりがちである。

 現役時代の貯えで悠々と暮らせる年齢になっても、なお節約に努めて年金の中からでも貯蓄している背景には深刻なものがあるのです。しかしながら、上記のように原因の原因の解明努力によって、抜本的打開策がイメージできたのではないでしょうか?

どうすれば好老社会になるのか?

 日本が嫌老社会から好老社会に転換するためには、一人一人が次のような図式実現に向けて努力しなければなりません。

 自分の個人ビジョンと実現策を適切に策定する ⇒ 構想・独創の喜びを認識する ⇒ 人間が本来持っている「繰り返しの快」本能が作動する ⇒ 加齢に応じた知力強化並びに肉体の若さ保持が実現する ⇒ 生涯現役の人生を送りことができるようになる。

●繰り返しの快とは何か?

 どうしてもやりたいからやる。困難を乗り越えて所期の目的を達成する。すると、この快感をまた味わいたい…ということで再び挑戦する。これが「繰り返しの快」です。

 立つことができた幼児が何度もこの行動を繰り返すことから明らかなように、人間には元々「繰り返しの快」を求める本能があるのです。

●個人ビジョンと実現策を適切に策定したいと思うようなるにはどうしたらよいか?

 日本人は横並び社会の中にどっぷり浸かり続けてきたために、ビジョン開発の動機は希薄です。したがって、「個人ビジョンを何としてでも開発したい」と思うようになるためには、

自立と自律が必要であり、かつ知識経済の時代が到来しつつある。
80歳台に脳力のピークを迎えることが可能である

 という二つのことをしっかり認識することです。(詳しくは ⇒『成長の4条件』)

 堺屋太一氏が「高齢者よ、自分の趣味を探し、誇りを持ってお金を使おう。そこで、人脈を培って人生を楽しみ、誇りを持って暮らそう!」と言っている背景には、上記したようなことがある、と理解すべきでしょう。

好老社会はどんな効用を日本経済にもたらすのか?

 年老いた人は働くことができない。のみならず、養護や介護の対象となる。したがって、高齢化社会の到来は悲観材料でしかない──、という通説を覆すことができるようになります。なぜなら、下記の図式が実現されるようになるからです。

 知識経済に必要な人材が日本社会に大量に輩出される ⇒ 生涯現役人生を送る人が増える + 日本の産業構造が高度化する ⇒ 年金問題を解決しつつ、日本経済の安定的成長が可能になる ⇒ 労働から喜働への転換を伴いつつ、雇用が拡大する。

より納得頂くための説明1 ― 独創的構想が必要な時代がやってきた

 ウォークマン的な製品・サービスが市場に行き渡っている。同時に、様々な知識が氾濫する時代になりました。このような現象をどのように捉えるべきでしょうか? 開発活動には大きな限界が生まれた…と言うべきでしょうか? 「否」です。なぜなら、製品・サービス並びに知識が氾濫している。この事実は創造に必要な素材が豊富であることを意味するからです。(詳しくは ⇒『ジグソーパズル思考』)

より納得頂くための説明2 ― 高齢者の方が独創的構想を提起しやすい

 それではどうしたら独創的構想を提起できるようになるのでしょうか?

しっかりと記憶された知識を豊かにする。
適切な視座の下、記憶された知識に基づいてブレークスルー発想する。 
インスピレーションを論理チェックする、

 といった具合に3ステップを踏むことです。

 若者と高齢者のどちらが上記の実行において有利でしょうか? 知力を鍛え続ける人生を送りさえすれば、高齢者の方が有利です。(詳しくは ⇒『80歳台に脳力のピークを迎えることが可能である』)

 それでは独創的構想を提起できる高齢者は直ちに輩出できるでしょうか? 「否」です。なぜなら、「今更無理」と頑なに思い込んでいる高齢者が殆んどですので、「構想・独創の喜びを知る ⇒ 繰り返しの快を求めて構想・独創し続ける」という図式の人生に転じる高齢者の数は極めて少ないからです。

 ここに、堺屋太一が提言している、四つからなるポリシー・ミックスの意義があるのです。但し、下記二つの実現に結びつく環境を整える必要があります。

高齢者の再生意欲を高揚しこそすれ決して妨げない。
若年者の構想力・独創力の継続的強化の意欲を高揚しこそすれ決して妨げない。

 具体例を挙げますと、下記のような図式を実現させる仕組みの開発、この仕組みを有効にするための目利きの発掘・登用が期待されます。

 多くの国民が未来進行形の自己物語をインターネット上に公表する ⇒ ニーズとシーズのすりあわせが円滑にできる ⇒ 臨機応変の社会横断的な適材適所が実現される。

 上記図式の実現の端緒になるのは、極度のマンネリに陥ったままになっている同窓会の運営革命ではないでしょうか。




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