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【斬新な着眼】


2006.11.19

→絶体絶命のピンチにどう対処すべきか?― 馴れ合い主義が無用状況におけるサバイバルのあり方を映画『交渉人』から学ぶ ―

映画を観ていない方は物語のあらすじを予め理解しておくことをお勧めします

ローマンが嵌められる対象に選ばれたのはなぜか? トラブルに巻き込まれないためにはどうすべきだったのか?

(節子) 『交渉人』の見事な結末は冷静になって考えると、守備位置を間違えたために大ファインプレイを演じた野球の外野手のような気がしてならない。ローマンが罠に嵌められないような生活・仕事をしていればよかったんじゃないかしら?

(高哉) 貴女の問題提起は真剣に受け止めなければならない。なぜなら、日本の組織人が置かれている立場は二つの図式が示すように様変わりしつつあるからね。

 過去:集団主義の時代であった ⇒ 終身雇用制度の下に年功序列式人事システムが採用されていた ⇒ 組織内の人間関係は擬制的家族であった ⇒ ぬくぬくしていられた。

 今後:脱集団主義の時代になった ⇒ 人事考課は能力・成果主義に基づいて行われる ⇒ 組織内の人間関係はビジネスライクになる ⇒ ぬくぬくしていられなくなる。

 家族ではなくライバルに囲まれて仕事をする度合いが強くなった (強くなる) 以上はそれ相応の覚悟をしなければならない。

(節子) そうよ。いつの間にか上司と部下の立場が逆転なんてことがざらになりつつあるのよ。自分が提供したノウハウを使って同僚がどんどん出世して自分は置きざりにされることがすごく多くなってきたんだから。だから、ローマンが罠に嵌った原因を分析して一般化できる未然防止策を考える必要があるのよ。

(高哉) ローマンが罠に嵌められた背景には状況証拠につながる次の図式があったからだよね。

 ネイサンが年金基金横領事件の内偵を進めていることは知られている + ローマンは年金基金を巧みに横領しやすい立場にある + ローマンはネイサン殺害現場にたった独りでいた + ネイサンと行動を共にすることが多いローマンはネイサンを密かに殺害しやすい

 ⇒ 「ネイサン殺しの犯人はローマンかもしれない」と思われやすい + ローマンが関わっていたかもしれない拳銃がネイサン殺しに使われた + 海外預金口座がローマンの自宅から発見された ⇒ 「年金基金を横領し、ネイサンを殺したのはローマンである」と断定的に疑われた。

 このような状態に追い込まれることに結びつく火種が発生しないようにする。発生しても直ちに消すことができるようにすればいいんじゃないの?

(節子) 理屈はそうだけど、現実的にはそんなことはできっこないわよ。だって火種が発生しないようにするためには火種となることを予め知っていなければならないでしょう。何が起きるか分からないのにそんなことは無理よ。

 敏速な事後処理だって同じことよ。どこから火が出るのか分からないのに火がついたら直ちに消すなんてできるわけがない。

(高哉) 与えられた仕事は黙々とこなす。それ以外のことは何も考えないでボーっとした状態でいる。日本人の伝統的な生き方を踏襲するのであれば、貴女の言う通りだと思うよ。でも、「こうなったらこういうことが起きやすくなる」ということが緻密にモデル化され、これが頭の中に入って入れば、話は違ってくるんじゃないかなぁ。

 過去の延長線上を歩むことで事足りる。何かあっても周囲の人々が助けてくれる。こういうことが通用するのであれば、受身の姿勢で変化や異変に対処するやり方でもよい。しかし、環境が様変わりしたからには「将来の見通しを立てる ⇒ 変化の連続の中に身を置く ⇒ 異変が引き起こす災害を未然防止する」という図式の行動が必要になると思うんだ。

(節子) その話ってなんとなくしか分からない。具体例で説明してくれないかしら?

(高哉) 大洪水はどうして発生するのか? だからどうすれば未然防止できるのか? を例にとって説明させて貰うよ。

 崖の斜面に潅木が沢山生えているでしょ。これを放置しておくと、潅木の枝が崖の中に入り込んでいってしまうんだ。すると、崖の表面が盛り上がったような状態になってしまう。この状態に豪雨が直撃すると、次の図式になってしまうんだ。

 土砂崩れが一斉に起きてダムに砂利が溜まる ⇒ ダムがプールできる水の量が大幅に減る (ダムの治水機能が損なわれる) ⇒ 大雨が降り続けるとダムの水が下流に大量に流れる ⇒ 大洪水が発生する。

(節子) 分かったわ。天候の様子を眺める ⇒ 豪雨を予知する ⇒ 崖に急いで赴く ⇒ 潅木の枝を崖の斜面から取り出す──、という図式の行動を採れば、大洪水は未然防止できるってわけね。社会現象でも同じことが言えそうね。具体的にはどうすればよいのかしら?

(高哉) 「人生・仕事においてどういう事態が発生したらどのようなプロセスを経て失敗したり、ローマンのように嵌められるか?」を意思決定モデルがきちっと描けるように思考の三原則(全体を見る/長い目で見る/根本的に考える)を適用できるプロフェッショナルを登用して、徹底的なシミュレーションを定期的に行う。

 その上で、組織内の要所要所に情報網を張り巡らせて置けばいいんじゃないかな。情報網って勿論人的ネットワークのことだけどね。

(節子) 折角人的ネットワークを張り巡らせても必要な情報をタイムリーに提供してくれなければ何にもならないんじゃないの? このことはどうすればいいのかしら?

(高哉) 要所要所の人物に対して「ギブ先行型の人間関係を築き上げる ⇒ 常に協力したいと思うようになる ⇒ 頭の中に入っている意思決定モデルに基づいて「こういうことがあったらすぐに連絡してください」ということを伝える──、という図式を実現させる。

 但し、本人に政治力が不足していると無視されかねないので、政治力にとって一番大事な成長株のイメージを確立しておく必要があるだろうね。そのためにはビジョン効果を身につけておかなければならない。

(節子) オーラが満ちていて始めて成長株のイメージの確立が磐石になるから、こういうことの実現に抜群の効果を発揮する個人ビジョンの適切な開発が必要になるわねえ。だったら、さっき言っていたシミュレーションの時に一緒に個人ビジョンを開発しておけば、費用対効果がよくなるわね。この作業のハイライトは性格と由来の識別というわけね。

(高哉) その通りだよ。人と接触した時の反応の仕方が人それぞれでしょ。おせっかいを焼きたがったり、見栄を張ったり…。性格は行動の原動力なんだ。したがって、人生行路は性格次第。だからといって性格の宿命から逃れることができないというわけではない。自分の性格の由来を知っていれば、自制心が働いて性格に振り回されることなく乗りこなすことができる。

(節子) この性格を乗りこなす努力が才能を磨くことに繋がるというわけね。おせっかいを焼いても人に嫌われるのではなく、尊敬されるようになるためには相手の鬱積した欲求を見抜き、この欲求に応える形でおせっかいを焼くといった具合に…。したがって、人間としての進化を確実に導き出す個人ビジョンになるためには、

 性格に合わないような進路を決して選択しない。だからといって、性格に合った進路であればよいというのではなく、才能を磨き上げることができるように性格を乗りこなす人生設計をする──、ということが必要になるというわけね。但し、この人生設計に心から納得するためには、

 「なるほど。そういうわけで自分はこういう性格の持ち主になったんだ」「自制心が働くことなく性格に振り回されたためにはうまくいかなかったんだ」「うまくいったのはたまたま自制心が働いて性格を乗りこなしたからだったんだ」とならなければならない。

 そのためには、数多くの事実を認識して分析しなければならない。この事実の認識・分析の材料になるのが悩み事の実態や人生史というわけね。

(高哉) その通りだよ。人でも企業でも歩んできたこと、やってきたこと、反応されたこと…は全て貴重な調査資料なんだ。この調査資料がきちっと認識できさえすれば、なんとでもなる。悩み事を抱えている当事者に「立ち往生の絵上に付した記載事項を細大漏らさず箇条書 or 会議録音して頂きます」ということをワタナベ式問題解決へのアプローチを適応する際に要求しているのもこの考え方の一環なんだ。(関連記事 ⇒ 『大事を成し遂げるためには脳を目的に合った状態にすることが肝要である』)

 (完)


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